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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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光の中は心地良くて、揺ら揺ら揺られて、夢心地。
真っ白なその中で勇者達は呆然と佇んでいた。
気がつけば、そこはすでに異世界だった。
何時の間にこちらへ来たのだろう、見上げれば純白の天井、見渡せば純白の壁、全てが『純白』。
床だけが、靴の裏についた土で汚されていく。
歩くのが申し訳ないような、まるで積もりたての雪の広場。
勇者達は軽い刺激を瞳に受け、瞬きを何度も繰り返し瞳を慣れさせようとする。
慣れてくると、その場所が大きな部屋の中だということが判明した。
正面にドアらしきものがある、ノブだけが銀色に輝いていたから解った。


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※本編第5回 選ばれた6人の勇者 の番外編みたいな感じと思われますです。

「どうして、どうして僕は選ばれなかった・・・?」

亮が呟いた、その言葉。
共に居られないのなら、アサギの傍を離れなければならないのならば。
亮のその強い想いが内に秘める力を呼び起こすのに、時間はかからなかった。
勇者としてその場で選ばれなくても、その器は十分過ぎる程彼にはあったのだ、けれどもそれぞれの石は、彼を指し示さない。
最初は小さな風が亮の頬を撫でた、優しく、やんわりと。
徐々に速く強くなる風、砂塵が校庭を舞い、鳥達が怯えて遠くへと飛び立っていく。

「誰か、誰か! どうか、アサギをっ」

自分が共に居られないなら、同等の力を持つべき者へと、せめて託そう。
このもどかしい想いを、誰かに託さなければ。
誰か、誰に?

「アサギの守護をっ!」

亮の叫び声がこだまする。
風に乗って、声が駆け抜けていく。
その願いは、想いは、誓いは、遠く遠く離れた地へと、風に乗ったまま届けられた。
風は呼びかける、今はまだ知らぬ、過去の仲間へと。

「・・・ふぅ」

4星クレオ、神聖城クリストバル近辺の森林にて。
石畳が真っ直ぐ伸びるその森を、一人の男が歩いていた。
紫銀の長い髪を一つで束ねて、額に変わった模様の布を巻き、整った顔立ちと鋭い視線、なかなかの美丈夫である。
その背に何かしら魔力を放つ長剣を携え、黙々と歩いていた。
聖なる結界が張られているはずなのに、先程から稀に魔物に遭遇するのは、どういったことだろうか。

「魔王の影響、か」

男、トビィは誰にというでもなく小さく呟く。
零した瞬間、左から何かが飛び出してきた。
それを慌てることなく手馴れた動作で剣を引き抜き、無造作に叩き落す。
何事も無かったかのようにそのまま剣を鞘に収めると、速度を落とすことなく速めることなく歩いた。
目指しているのはクリストバル、神託なんて信じないが、今は藁に縋る思いでその場所へと進んでいる。
人を捜していた。
何処にいるのか検討がつかないのだが、トビィは捜さなければ行けなかった。
クリストバルには高等な神官が集っていると聞き、手がかりを掴む為立ち寄ることにしたのだ。
捜しているのは、愛しい緑の髪の娘。

―――大丈夫、またすぐに逢えますから

そう言って笑ったのを最後に、離れ離れになったわけだが、その娘を捜して、早一月。
何処から来たのか、何処へ行ったのか、何故助けたのか。
謎だらけのその娘、名前は教えてくれた『アサギ』という。
痛いくらいの熱い日差し、トビィは軽く溜息を吐きながら不意に立ち止まる。

「・・・誰だ」

低く警戒しながら剣の柄に手を伸ばし、辺りの様子を伺う。
何かしらの気配を感じた、それがなんなのか分からないがトビィは神経を研ぎ澄ます。
気配はする、が、姿は見えない。
トビィは舌打ちして、剣を引き抜いたまま再び歩き出す。
注意深く鋭利な視線を森の中へと移していくが、やはり誰もいない。
その時、風が舞った。
石畳に落ちていた葉が数枚巻き上がり、トビィのマントを靡かせる。
再び足を止め、怪訝に宙にふわり、と浮きながら落下していく落ち葉を見ていた。
風が、優しくトビィの頬を撫でる。
剣の構えを解き、鞘へと戻すと、トビィは険しい表情のまま、振り返った。
何処かで、水滴が何かに落ちる音がした。
音が幾重にも重なって、曲を奏でる。
優しく、慈しみながら、大事なものに水を与える、そんな音。
乾いた大地に、溢れるほど注ぎ込まれる潤いの水の音。

「大丈夫だ、オレがなんとかする」

トビィは無意識のうちに、そう誰かへと言葉を発する。
それを聞き届けると、風は安堵したかのように徐々に消えていった。
足元に咲く花を見つめると、トビィは軽く屈んでその花を愛でる様に撫でた。
風の呼びかけに応えたのは、水。
水の姿を見て、風はようやく安堵した。

―――あぁ、彼なら大丈夫。必ず彼女を護ってくれるから。

青空を見上げ、トビィは眩しそうに瞳を細める。
遠い遠い場所で、亮が空を見上げて微かに微笑んだ。

風が傍に居られなくとも、芽の傍には水が居る。
最も芽を可愛がり、最も近づける水が居る。
小さな芽を護る為に、水は再び歩き出した。
目指すは神聖城クリストバル、その手前にある洞窟。



手を取り合い、和気藹々と語り続けるサマルト、ムーン、アサギの三人。
が、突如後方から眩い光に照らされ、小さく悲鳴を上げた。

「ちっ、また追手か!」

とある、小学校の校庭。
現在昼休み中、校庭は生徒達で賑わっている。
色とりどりの衣服が校庭全体に散らばり、騒がしいほどだ。
その校庭の隅に、二つに並んだ鉄棒があった。支柱は赤のペンキで塗られている。
百六十センチ程のその鉄棒に、一人の少女が腰掛けていた。
風に髪を揺らす、気持ち良さそうにゆっくりと瞬きをしながら空を見上げて微笑んでいた。
柔らかそうなふわふわのセミロング、大きな瞳にサクランボ色した唇、桜色に色づく頬。
細長い手足に、小顔、幼いながらも発達して膨らむ胸、括れた腰。
非の打ち所が特に見当たらないような、完璧に近い容姿だった。
見る者を魅了し、すれ違い様に振り返らずにはいられない美少女。
容姿だけでなく、何故か彼女からは不思議な安心感を与える癒しの空気がやんわりと流れ出ているような・・・そんな雰囲気。
そこらの芸能人よりか、随分と愛らしい。
そんな鉄棒に座り込んで、空を見上げて呆けている彼女の名は、田上浅葱。
小学六年生、生徒会副会長。
当校にて、知らないものは存在しない、圧倒的な存在感を放つ娘だった。

7章(最終章)、最終話一歩手前の話。

トビィが髪を撫でながら耳元で囁いた。

「アサギの手料理が食べたい。最近口にしていなかったから」

最後の晩餐とは言わなかったが、そういうことだろう。
今晩が最後の二人の食事になることは、明白だ。

「では、キッチン借りて作りましょう。何が食べたいですか?」

アサギは軽く笑って、トビィの顔を覗き込んだ。

「いつもの、ポトフ、かな」

トビィがそう寂しそうに笑って注文したので、アサギは軽く眉間にしわを寄せる。
いつもの。
そう、いつもの。
分かりました、とアサギはゆっくり微笑むとその場を離れる。

「焼きたてのパンも必要だな、あと前菜。ワインはオレに任せておけ」
「お願いします、トビィお兄様」

一番最初にトビィ・・・もとい、遥か昔の過去のトロイという名のトビィに食べさせたのがポトフだった。
一瞬瞳を見開いて、トロイは弾かれたように叫んでいた。

「美味いっ」

その一言を、忘れることなく、何度転生してもトビィはアサギのポトフを真っ先に注文していた。
思い出してアサギは笑う、そんな自分の手料理を喜んで貰えて幸せだ。
エプロンなど持ってきていなかったので、巨大すぎるキッチンから料理人を追い出すと、そのままアサギは支度に入る。
幸い材料は揃っていた。
不慣れな場所で、慣れた手つきで野菜を切る。

「・・・」

失笑。
一度で良いから、一度で良かったから。
パステルカラーの可愛らしいフリルのついたエプロンを身に纏って、愛する旦那様に料理を作ってみたかった。
食べる前に、口付けを。
今日は何かと聞かれたら、笑顔で答えるのだ。
手を止めて、叶わぬ夢に情けなく笑う。
途中の料理の味見をすべく、小皿を取りに行く為振り返る。

『ギルザーっ、ご飯出来たですよーっ!!』
「!?」

誰も居ないはずのキッチンに、人物が二人。
可愛らしい赤のチェックのテーブルクロスがかけてある、二人用のテーブルに一人の男が席に着いていた。
傍らに嬉しそうに笑顔を振りまく女が居る。

「え」

緑の髪と瞳、あれは、自分だ。
唖然と、その光景を見つめた。
混乱し、頭を抑えるアサギ、目の前の不可思議な映像は、止まらない。

『今日は何?』
『ギルザの大好きな焼きそばなのですよ♪ あと、明太子のおにぎりと、玉子たっぷりのスープ、ポテトサラダも作ったのです』
『良く出来ました』

濃紺の緩いウェーブがかった髪の男は、優しくそう微笑むと、アサギらしき人物の頭を撫でた。
くすぐったそうに笑う、アサギらしき女。
多分、自分。
けれども、口調がどことなく違うし、何よりその男を知らない。

「・・・誰」

アサギは眩暈を覚えながらも、二人を見ていた。
自分らしき女は、淡い黄色のフリフリのレースが大量に使われているエプロンを着ている。
慌しく、けれどもそれが最大の喜びであるかのように動きながら、食事を運んだ。

『一緒に食べようか、アサギ』
「!?」

がくん、と腰が抜ける。
あの男は、あの女をアサギ、と呼んだ。
ということは、やはりあれは自分だ。
けれども、知らない。
あの男を知らない、あんな光景を知らない。
未来であるはずもない、何故ならば明日自分は存在自体を消滅させるのだから。
願った夢が、そこにあった。
女の表情を見ていれば分かる、愛する人と幸せな暮らしをしている、そんな夢心地の笑顔。
私じゃないのに、私のような姿の女が、望む暮らしをしている。
渇望した、夢。
知らず、アサギの頬を涙が伝った。
そこに、暖かで優しい空気が流れている。
目の前で繰り広げられる、平凡な、それでいて幸福に満ち足りた食事。

「私、また身勝手な妄想を見てる」

喉の奥で忌々しそうに笑うと、アサギは頭を激しく振った。
ギルザなどという男は、知らない。
あんな口調の自分も、知らない。
不意にアサギが顔を上げると、ギルザ、と呼ばれた端正な顔立ちの男と視線が交差した。
交差した瞬間、その男が穏やかに微笑む。

「っ!!」

アサギは思わず赤面し、身体が電撃が走ったかのように硬直した。
映像が消える。
・・・妄想と視線が交差した。
馬鹿な。
アサギは自嘲気味に溜息を吐くと、深呼吸をし、料理に戻る。
ギルザ。
綺麗な細長い瞳、形の良い唇。
妄想の自分に、惜しみなく笑みを零し、大事に扱っていた。

「・・・いいな」

知らず呟く。
アサギはぎこちなくなった手で料理を辛うじて完成させると、ワゴンに乗せてそれを運ぶ。
ワインを何本か用意して、トビィが部屋で待っていた。
他愛の無い昔話をしながら、思い出して自嘲気味にアサギはトビィに語る。

「さっき、変な映像を見たの。『ギルザ』って知ってる? トビィお兄様」
「ギルザ? 人名か?」
「知らない、よね」

それ切り、アサギはその名を口にすることなく。
運命の夜が明けて行く。
ギルザ。
トビィも忘れていた、その名。
トビィがその名を知るのはそれから数年先の事。
アサギが思い出すのも、それから数年先の事。
今はまだ、知らない自分の未来の姿。
渇望した夢が叶った、自分の未来の姿。

※本編進めましょう、私(倒
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