別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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※本編第5回 選ばれた6人の勇者 の番外編みたいな感じと思われますです。
「どうして、どうして僕は選ばれなかった・・・?」
亮が呟いた、その言葉。
共に居られないのなら、アサギの傍を離れなければならないのならば。
亮のその強い想いが内に秘める力を呼び起こすのに、時間はかからなかった。
勇者としてその場で選ばれなくても、その器は十分過ぎる程彼にはあったのだ、けれどもそれぞれの石は、彼を指し示さない。
最初は小さな風が亮の頬を撫でた、優しく、やんわりと。
徐々に速く強くなる風、砂塵が校庭を舞い、鳥達が怯えて遠くへと飛び立っていく。
「誰か、誰か! どうか、アサギをっ」
自分が共に居られないなら、同等の力を持つべき者へと、せめて託そう。
このもどかしい想いを、誰かに託さなければ。
誰か、誰に?
「アサギの守護をっ!」
亮の叫び声がこだまする。
風に乗って、声が駆け抜けていく。
その願いは、想いは、誓いは、遠く遠く離れた地へと、風に乗ったまま届けられた。
風は呼びかける、今はまだ知らぬ、過去の仲間へと。
「・・・ふぅ」
4星クレオ、神聖城クリストバル近辺の森林にて。
石畳が真っ直ぐ伸びるその森を、一人の男が歩いていた。
紫銀の長い髪を一つで束ねて、額に変わった模様の布を巻き、整った顔立ちと鋭い視線、なかなかの美丈夫である。
その背に何かしら魔力を放つ長剣を携え、黙々と歩いていた。
聖なる結界が張られているはずなのに、先程から稀に魔物に遭遇するのは、どういったことだろうか。
「魔王の影響、か」
男、トビィは誰にというでもなく小さく呟く。
零した瞬間、左から何かが飛び出してきた。
それを慌てることなく手馴れた動作で剣を引き抜き、無造作に叩き落す。
何事も無かったかのようにそのまま剣を鞘に収めると、速度を落とすことなく速めることなく歩いた。
目指しているのはクリストバル、神託なんて信じないが、今は藁に縋る思いでその場所へと進んでいる。
人を捜していた。
何処にいるのか検討がつかないのだが、トビィは捜さなければ行けなかった。
クリストバルには高等な神官が集っていると聞き、手がかりを掴む為立ち寄ることにしたのだ。
捜しているのは、愛しい緑の髪の娘。
―――大丈夫、またすぐに逢えますから
そう言って笑ったのを最後に、離れ離れになったわけだが、その娘を捜して、早一月。
何処から来たのか、何処へ行ったのか、何故助けたのか。
謎だらけのその娘、名前は教えてくれた『アサギ』という。
痛いくらいの熱い日差し、トビィは軽く溜息を吐きながら不意に立ち止まる。
「・・・誰だ」
低く警戒しながら剣の柄に手を伸ばし、辺りの様子を伺う。
何かしらの気配を感じた、それがなんなのか分からないがトビィは神経を研ぎ澄ます。
気配はする、が、姿は見えない。
トビィは舌打ちして、剣を引き抜いたまま再び歩き出す。
注意深く鋭利な視線を森の中へと移していくが、やはり誰もいない。
その時、風が舞った。
石畳に落ちていた葉が数枚巻き上がり、トビィのマントを靡かせる。
再び足を止め、怪訝に宙にふわり、と浮きながら落下していく落ち葉を見ていた。
風が、優しくトビィの頬を撫でる。
剣の構えを解き、鞘へと戻すと、トビィは険しい表情のまま、振り返った。
何処かで、水滴が何かに落ちる音がした。
音が幾重にも重なって、曲を奏でる。
優しく、慈しみながら、大事なものに水を与える、そんな音。
乾いた大地に、溢れるほど注ぎ込まれる潤いの水の音。
「大丈夫だ、オレがなんとかする」
トビィは無意識のうちに、そう誰かへと言葉を発する。
それを聞き届けると、風は安堵したかのように徐々に消えていった。
足元に咲く花を見つめると、トビィは軽く屈んでその花を愛でる様に撫でた。
風の呼びかけに応えたのは、水。
水の姿を見て、風はようやく安堵した。
―――あぁ、彼なら大丈夫。必ず彼女を護ってくれるから。
青空を見上げ、トビィは眩しそうに瞳を細める。
遠い遠い場所で、亮が空を見上げて微かに微笑んだ。
風が傍に居られなくとも、芽の傍には水が居る。
最も芽を可愛がり、最も近づける水が居る。
小さな芽を護る為に、水は再び歩き出した。
目指すは神聖城クリストバル、その手前にある洞窟。
「どうして、どうして僕は選ばれなかった・・・?」
亮が呟いた、その言葉。
共に居られないのなら、アサギの傍を離れなければならないのならば。
亮のその強い想いが内に秘める力を呼び起こすのに、時間はかからなかった。
勇者としてその場で選ばれなくても、その器は十分過ぎる程彼にはあったのだ、けれどもそれぞれの石は、彼を指し示さない。
最初は小さな風が亮の頬を撫でた、優しく、やんわりと。
徐々に速く強くなる風、砂塵が校庭を舞い、鳥達が怯えて遠くへと飛び立っていく。
「誰か、誰か! どうか、アサギをっ」
自分が共に居られないなら、同等の力を持つべき者へと、せめて託そう。
このもどかしい想いを、誰かに託さなければ。
誰か、誰に?
「アサギの守護をっ!」
亮の叫び声がこだまする。
風に乗って、声が駆け抜けていく。
その願いは、想いは、誓いは、遠く遠く離れた地へと、風に乗ったまま届けられた。
風は呼びかける、今はまだ知らぬ、過去の仲間へと。
「・・・ふぅ」
4星クレオ、神聖城クリストバル近辺の森林にて。
石畳が真っ直ぐ伸びるその森を、一人の男が歩いていた。
紫銀の長い髪を一つで束ねて、額に変わった模様の布を巻き、整った顔立ちと鋭い視線、なかなかの美丈夫である。
その背に何かしら魔力を放つ長剣を携え、黙々と歩いていた。
聖なる結界が張られているはずなのに、先程から稀に魔物に遭遇するのは、どういったことだろうか。
「魔王の影響、か」
男、トビィは誰にというでもなく小さく呟く。
零した瞬間、左から何かが飛び出してきた。
それを慌てることなく手馴れた動作で剣を引き抜き、無造作に叩き落す。
何事も無かったかのようにそのまま剣を鞘に収めると、速度を落とすことなく速めることなく歩いた。
目指しているのはクリストバル、神託なんて信じないが、今は藁に縋る思いでその場所へと進んでいる。
人を捜していた。
何処にいるのか検討がつかないのだが、トビィは捜さなければ行けなかった。
クリストバルには高等な神官が集っていると聞き、手がかりを掴む為立ち寄ることにしたのだ。
捜しているのは、愛しい緑の髪の娘。
―――大丈夫、またすぐに逢えますから
そう言って笑ったのを最後に、離れ離れになったわけだが、その娘を捜して、早一月。
何処から来たのか、何処へ行ったのか、何故助けたのか。
謎だらけのその娘、名前は教えてくれた『アサギ』という。
痛いくらいの熱い日差し、トビィは軽く溜息を吐きながら不意に立ち止まる。
「・・・誰だ」
低く警戒しながら剣の柄に手を伸ばし、辺りの様子を伺う。
何かしらの気配を感じた、それがなんなのか分からないがトビィは神経を研ぎ澄ます。
気配はする、が、姿は見えない。
トビィは舌打ちして、剣を引き抜いたまま再び歩き出す。
注意深く鋭利な視線を森の中へと移していくが、やはり誰もいない。
その時、風が舞った。
石畳に落ちていた葉が数枚巻き上がり、トビィのマントを靡かせる。
再び足を止め、怪訝に宙にふわり、と浮きながら落下していく落ち葉を見ていた。
風が、優しくトビィの頬を撫でる。
剣の構えを解き、鞘へと戻すと、トビィは険しい表情のまま、振り返った。
何処かで、水滴が何かに落ちる音がした。
音が幾重にも重なって、曲を奏でる。
優しく、慈しみながら、大事なものに水を与える、そんな音。
乾いた大地に、溢れるほど注ぎ込まれる潤いの水の音。
「大丈夫だ、オレがなんとかする」
トビィは無意識のうちに、そう誰かへと言葉を発する。
それを聞き届けると、風は安堵したかのように徐々に消えていった。
足元に咲く花を見つめると、トビィは軽く屈んでその花を愛でる様に撫でた。
風の呼びかけに応えたのは、水。
水の姿を見て、風はようやく安堵した。
―――あぁ、彼なら大丈夫。必ず彼女を護ってくれるから。
青空を見上げ、トビィは眩しそうに瞳を細める。
遠い遠い場所で、亮が空を見上げて微かに微笑んだ。
風が傍に居られなくとも、芽の傍には水が居る。
最も芽を可愛がり、最も近づける水が居る。
小さな芽を護る為に、水は再び歩き出した。
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