別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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読んだ人にしかわからない話。
ネタバレ。
第4章、後半部より抜粋。
足音立てずに、真っ直ぐ歩く。
唇を噛み締め、額に汗をかきながら、歩いていた。
「あれ、アサギ様、どうかさ」
二人の天空人がアサギに声をかけようとしたが、その台詞は途中で止まった。
虚無の瞳で宙を見つめる二人の天空人に声をかけず、アサギはその脇をすり抜ける。
頑丈な扉に右手をかざして、何かを呟くと、扉が音を立てずにゆっくりと開いた。
微動だしない天空人を微かに見やってから、アサギは小さく「通させてもらうね」と、呟いた。
停止したまま、まるで壊れた人形のように、天空人は動かない。
扉の中には巨大な水晶が浮かんでいる。
この部屋は天空城の一角・過去映しの間。
見たい過去が、映像となって水晶に流れる。
この水晶を見るのは二度目だった。
一度目は城内見学でここを訪れた。
不意に見つめたその先は、トビィが倒れている映像だった。
この水晶では過去へ飛べない、あの時アサギは無我夢中で受け渡されたばかりの絶対無二の呪文で過去へと飛んだ。
トビィ・サング・レジョン、その人を助ける為だけに。
そして、現在二度目。
ひやり、とした水晶に手を当ててみる。
ぼんやりと、おぼろげに映像が流れ出した。
観たくないけれど、観るしかない。
過去の自分の過ちを観なければならない、苦しくても。
流れ出す、過去、見慣れたベッドの上、自分とトランシスが眠っていた。
「離れて」
映像が視界に入ると、アサギは反射的にそう叫んだ。
「その人から離れて! 分かるでしょ、その人、嫌そうな顔してるっ! 離れなさいっ」
過去の自分に叫び、水晶を強打した。
けれど、流れる映像にそんな言葉が伝わるわけも無く、静かに二人は眠り続ける。
トランシスの腕の中、安らかに眠る自分が腹立たしく、唇を噛み締める。
「嫌がってるのっ、その人あなたのこと好きじゃないの、嫌いなの! だから、離れなさいっ!」
―――お前の瞳に、オレが映るのが耐えられない、オレの耳に深いなお前の声が届くから吐き気がする、オレの隣にお前が居るのが、邪魔で面倒で仕方ない―――
ドクン
映像に映っていたトランシスが、憎悪の念を込めて隣で眠っている自分を見ていた。
全く気がつかなかった、そんなトランシスの思いに。
この当時は、想いが通じているものだと思っていた、同じだと思っていた。
違っていたのだ、最初から。
自分で自分の都合の良いように解釈して、トランシスを縛り付けていた。
トランシスはこんなにも、分かりやすく自分を憎んでいたというのに。
「うぁっ」
トランシスを見つめ、アサギは思わず水晶に倒れこんだ。
乱れる鼓動、震えが止まらない身体、あの目が、怖い。
―――お前が勇者にならなければ、死ななかったのに、みんな。―――
弾かれて水晶を見た。
映像が変わる、この、映像は。
―――さようなら、偽者の勇者―――
あの日の、自分。
数ヶ月前の、自分。
校庭で、朝礼中に倒れた、自分。
「あ・・・」
乾いた唇で、震える声を絞り出す。
『浅葱!!』
幼馴染のリョウがそう叫んで、自分を抱きとめている。
「・・・や」
ガクン、と膝を曲げて、アサギはその場に座り込んだ。
あの日。
あの日だ。
あの日の映像だ。
「やめて」
小さく、鋭く、そう零す。
「やめてぇぇぇぇ、勇者になっちゃダメーっ!!!!」
アサギは絶叫すると、苦しそうに胸を押さえてリョウの腕の中に居る自分に向かって呪文を繰り出した。
勇者に、ならなかったとしたら。
渾身の力で両腕から魔法を放つ。
けれども、水晶はゆっくりとその魔力を吸い込むばかりだった。
映像は流れ続ける、残酷に。
「ダメ、やめて、起きちゃ駄目! あなたは、勇者じゃないの、偽者なの! ホントの勇者は別にいるの!」
―――お前が勇者にならなければ、ハイも、アレクも、サイゴンも、マビルも、みんな、みんな、死ななかったのに、なぁ?―――
―――何より、お前が勇者にならなければ、お前に会うこともなかったのに―――
私が、勇者の道を選ばなければ。
トランシスに言われた言葉が甦る。
鋭利で細い、針のような、それでいて猛毒が染み込んでいる凶器の言葉が。
アサギの心に突き刺さった、それは、どう足掻いても抜けない。
「勇者になるなぁぁぁぁっ、私っ!!」
キィン
右手首に填めている4星クレオ、勇者の伝説の武器『セントラヴァーズ』、自分の代物ではないのに、アサギは未だそれを装着していた。
その武器が慣れ親しんだ片手剣へと変貌し、水晶を破壊すべく攻撃を繰り出す。
けれども水晶はそれを弾き、やはり過去の映像を流していた。
「お願い、勇者に、ならない、で」
涙声で、力なく剣を床に落とすと、水晶に倒れこんだ。
私が勇者にならなければ、あんなに優しい人達が死なずに済んだ。
何より、大事な大事なあの人を傷つけることも、苦しめることも、なかった。
・・・あの人に、嫌われることもなかったかもしれないのに。
「勇者になるなぁぁぁぁっ、田上浅葱っ!!」
過去の自分に、絶叫する。
映像の中の自分は反して、凛々しく、勇ましく、現われた魔物を倒していた。
そして、思い出したのだ。
倒れた時に声を聴いた。
何処かで聴いた声だった、でも、思い出せなかった。
今、甦る。
悲痛で、涙声で、怒気を含んでいた、あの声は。
「私の、声だ・・・」
虚ろに呟き、自嘲気味に大声で笑った。
未来からの、伝言。
そう、未来の自分も、アサギに向かってメッセージを残していたのだ。
『勇者になるな』
その一言を訴えていた。
けれども、それに気がつかずに勇者になった。
だから今もこうして過去の自分は当然、勇者になる。
過去は、変わらない。
絶対無二の呪文を使って、過去へ赴き自身を殺せば、変えられる。
けれども、それにはリスクが生じる、簡単には出来ないことだった。
それに何より、自分を殺しては意味が無い、『また生れ変わってしまう』から。
転生を止める必要がある、その為には自分のこの仮初のイノチを根源へと還さなければ。
「やらなくちゃ、早く、思い出さなくちゃ」
ゆらり、とアサギは立ち上がると、何も無い床に躓いて転びながら、扉を目指した。
思い出せ、転生を終わらせる為に。
本来の居場所へと向かう道を、思い出さなければ。
扉を出て、アサギは天空城を後にした。
二人の天空人が、先程と同じように見張りを続けている。
過去映しの間を、護り続ける。
部屋の中で、水晶が微かに淡く光った。
※というわけで、聴いた声はトビィの声でもトランシスの声でもなくて、アサギの声でしたー。
という、ネタバレ(笑)。
ネタバレ。
第4章、後半部より抜粋。
足音立てずに、真っ直ぐ歩く。
唇を噛み締め、額に汗をかきながら、歩いていた。
「あれ、アサギ様、どうかさ」
二人の天空人がアサギに声をかけようとしたが、その台詞は途中で止まった。
虚無の瞳で宙を見つめる二人の天空人に声をかけず、アサギはその脇をすり抜ける。
頑丈な扉に右手をかざして、何かを呟くと、扉が音を立てずにゆっくりと開いた。
微動だしない天空人を微かに見やってから、アサギは小さく「通させてもらうね」と、呟いた。
停止したまま、まるで壊れた人形のように、天空人は動かない。
扉の中には巨大な水晶が浮かんでいる。
この部屋は天空城の一角・過去映しの間。
見たい過去が、映像となって水晶に流れる。
この水晶を見るのは二度目だった。
一度目は城内見学でここを訪れた。
不意に見つめたその先は、トビィが倒れている映像だった。
この水晶では過去へ飛べない、あの時アサギは無我夢中で受け渡されたばかりの絶対無二の呪文で過去へと飛んだ。
トビィ・サング・レジョン、その人を助ける為だけに。
そして、現在二度目。
ひやり、とした水晶に手を当ててみる。
ぼんやりと、おぼろげに映像が流れ出した。
観たくないけれど、観るしかない。
過去の自分の過ちを観なければならない、苦しくても。
流れ出す、過去、見慣れたベッドの上、自分とトランシスが眠っていた。
「離れて」
映像が視界に入ると、アサギは反射的にそう叫んだ。
「その人から離れて! 分かるでしょ、その人、嫌そうな顔してるっ! 離れなさいっ」
過去の自分に叫び、水晶を強打した。
けれど、流れる映像にそんな言葉が伝わるわけも無く、静かに二人は眠り続ける。
トランシスの腕の中、安らかに眠る自分が腹立たしく、唇を噛み締める。
「嫌がってるのっ、その人あなたのこと好きじゃないの、嫌いなの! だから、離れなさいっ!」
―――お前の瞳に、オレが映るのが耐えられない、オレの耳に深いなお前の声が届くから吐き気がする、オレの隣にお前が居るのが、邪魔で面倒で仕方ない―――
ドクン
映像に映っていたトランシスが、憎悪の念を込めて隣で眠っている自分を見ていた。
全く気がつかなかった、そんなトランシスの思いに。
この当時は、想いが通じているものだと思っていた、同じだと思っていた。
違っていたのだ、最初から。
自分で自分の都合の良いように解釈して、トランシスを縛り付けていた。
トランシスはこんなにも、分かりやすく自分を憎んでいたというのに。
「うぁっ」
トランシスを見つめ、アサギは思わず水晶に倒れこんだ。
乱れる鼓動、震えが止まらない身体、あの目が、怖い。
―――お前が勇者にならなければ、死ななかったのに、みんな。―――
弾かれて水晶を見た。
映像が変わる、この、映像は。
―――さようなら、偽者の勇者―――
あの日の、自分。
数ヶ月前の、自分。
校庭で、朝礼中に倒れた、自分。
「あ・・・」
乾いた唇で、震える声を絞り出す。
『浅葱!!』
幼馴染のリョウがそう叫んで、自分を抱きとめている。
「・・・や」
ガクン、と膝を曲げて、アサギはその場に座り込んだ。
あの日。
あの日だ。
あの日の映像だ。
「やめて」
小さく、鋭く、そう零す。
「やめてぇぇぇぇ、勇者になっちゃダメーっ!!!!」
アサギは絶叫すると、苦しそうに胸を押さえてリョウの腕の中に居る自分に向かって呪文を繰り出した。
勇者に、ならなかったとしたら。
渾身の力で両腕から魔法を放つ。
けれども、水晶はゆっくりとその魔力を吸い込むばかりだった。
映像は流れ続ける、残酷に。
「ダメ、やめて、起きちゃ駄目! あなたは、勇者じゃないの、偽者なの! ホントの勇者は別にいるの!」
―――お前が勇者にならなければ、ハイも、アレクも、サイゴンも、マビルも、みんな、みんな、死ななかったのに、なぁ?―――
―――何より、お前が勇者にならなければ、お前に会うこともなかったのに―――
私が、勇者の道を選ばなければ。
トランシスに言われた言葉が甦る。
鋭利で細い、針のような、それでいて猛毒が染み込んでいる凶器の言葉が。
アサギの心に突き刺さった、それは、どう足掻いても抜けない。
「勇者になるなぁぁぁぁっ、私っ!!」
キィン
右手首に填めている4星クレオ、勇者の伝説の武器『セントラヴァーズ』、自分の代物ではないのに、アサギは未だそれを装着していた。
その武器が慣れ親しんだ片手剣へと変貌し、水晶を破壊すべく攻撃を繰り出す。
けれども水晶はそれを弾き、やはり過去の映像を流していた。
「お願い、勇者に、ならない、で」
涙声で、力なく剣を床に落とすと、水晶に倒れこんだ。
私が勇者にならなければ、あんなに優しい人達が死なずに済んだ。
何より、大事な大事なあの人を傷つけることも、苦しめることも、なかった。
・・・あの人に、嫌われることもなかったかもしれないのに。
「勇者になるなぁぁぁぁっ、田上浅葱っ!!」
過去の自分に、絶叫する。
映像の中の自分は反して、凛々しく、勇ましく、現われた魔物を倒していた。
そして、思い出したのだ。
倒れた時に声を聴いた。
何処かで聴いた声だった、でも、思い出せなかった。
今、甦る。
悲痛で、涙声で、怒気を含んでいた、あの声は。
「私の、声だ・・・」
虚ろに呟き、自嘲気味に大声で笑った。
未来からの、伝言。
そう、未来の自分も、アサギに向かってメッセージを残していたのだ。
『勇者になるな』
その一言を訴えていた。
けれども、それに気がつかずに勇者になった。
だから今もこうして過去の自分は当然、勇者になる。
過去は、変わらない。
絶対無二の呪文を使って、過去へ赴き自身を殺せば、変えられる。
けれども、それにはリスクが生じる、簡単には出来ないことだった。
それに何より、自分を殺しては意味が無い、『また生れ変わってしまう』から。
転生を止める必要がある、その為には自分のこの仮初のイノチを根源へと還さなければ。
「やらなくちゃ、早く、思い出さなくちゃ」
ゆらり、とアサギは立ち上がると、何も無い床に躓いて転びながら、扉を目指した。
思い出せ、転生を終わらせる為に。
本来の居場所へと向かう道を、思い出さなければ。
扉を出て、アサギは天空城を後にした。
二人の天空人が、先程と同じように見張りを続けている。
過去映しの間を、護り続ける。
部屋の中で、水晶が微かに淡く光った。
※というわけで、聴いた声はトビィの声でもトランシスの声でもなくて、アサギの声でしたー。
という、ネタバレ(笑)。
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