別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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7章(最終章)、最終話一歩手前の話。
トビィが髪を撫でながら耳元で囁いた。
「アサギの手料理が食べたい。最近口にしていなかったから」
最後の晩餐とは言わなかったが、そういうことだろう。
今晩が最後の二人の食事になることは、明白だ。
「では、キッチン借りて作りましょう。何が食べたいですか?」
アサギは軽く笑って、トビィの顔を覗き込んだ。
「いつもの、ポトフ、かな」
トビィがそう寂しそうに笑って注文したので、アサギは軽く眉間にしわを寄せる。
いつもの。
そう、いつもの。
分かりました、とアサギはゆっくり微笑むとその場を離れる。
「焼きたてのパンも必要だな、あと前菜。ワインはオレに任せておけ」
「お願いします、トビィお兄様」
一番最初にトビィ・・・もとい、遥か昔の過去のトロイという名のトビィに食べさせたのがポトフだった。
一瞬瞳を見開いて、トロイは弾かれたように叫んでいた。
「美味いっ」
その一言を、忘れることなく、何度転生してもトビィはアサギのポトフを真っ先に注文していた。
思い出してアサギは笑う、そんな自分の手料理を喜んで貰えて幸せだ。
エプロンなど持ってきていなかったので、巨大すぎるキッチンから料理人を追い出すと、そのままアサギは支度に入る。
幸い材料は揃っていた。
不慣れな場所で、慣れた手つきで野菜を切る。
「・・・」
失笑。
一度で良いから、一度で良かったから。
パステルカラーの可愛らしいフリルのついたエプロンを身に纏って、愛する旦那様に料理を作ってみたかった。
食べる前に、口付けを。
今日は何かと聞かれたら、笑顔で答えるのだ。
手を止めて、叶わぬ夢に情けなく笑う。
途中の料理の味見をすべく、小皿を取りに行く為振り返る。
『ギルザーっ、ご飯出来たですよーっ!!』
「!?」
誰も居ないはずのキッチンに、人物が二人。
可愛らしい赤のチェックのテーブルクロスがかけてある、二人用のテーブルに一人の男が席に着いていた。
傍らに嬉しそうに笑顔を振りまく女が居る。
「え」
緑の髪と瞳、あれは、自分だ。
唖然と、その光景を見つめた。
混乱し、頭を抑えるアサギ、目の前の不可思議な映像は、止まらない。
『今日は何?』
『ギルザの大好きな焼きそばなのですよ♪ あと、明太子のおにぎりと、玉子たっぷりのスープ、ポテトサラダも作ったのです』
『良く出来ました』
濃紺の緩いウェーブがかった髪の男は、優しくそう微笑むと、アサギらしき人物の頭を撫でた。
くすぐったそうに笑う、アサギらしき女。
多分、自分。
けれども、口調がどことなく違うし、何よりその男を知らない。
「・・・誰」
アサギは眩暈を覚えながらも、二人を見ていた。
自分らしき女は、淡い黄色のフリフリのレースが大量に使われているエプロンを着ている。
慌しく、けれどもそれが最大の喜びであるかのように動きながら、食事を運んだ。
『一緒に食べようか、アサギ』
「!?」
がくん、と腰が抜ける。
あの男は、あの女をアサギ、と呼んだ。
ということは、やはりあれは自分だ。
けれども、知らない。
あの男を知らない、あんな光景を知らない。
未来であるはずもない、何故ならば明日自分は存在自体を消滅させるのだから。
願った夢が、そこにあった。
女の表情を見ていれば分かる、愛する人と幸せな暮らしをしている、そんな夢心地の笑顔。
私じゃないのに、私のような姿の女が、望む暮らしをしている。
渇望した、夢。
知らず、アサギの頬を涙が伝った。
そこに、暖かで優しい空気が流れている。
目の前で繰り広げられる、平凡な、それでいて幸福に満ち足りた食事。
「私、また身勝手な妄想を見てる」
喉の奥で忌々しそうに笑うと、アサギは頭を激しく振った。
ギルザなどという男は、知らない。
あんな口調の自分も、知らない。
不意にアサギが顔を上げると、ギルザ、と呼ばれた端正な顔立ちの男と視線が交差した。
交差した瞬間、その男が穏やかに微笑む。
「っ!!」
アサギは思わず赤面し、身体が電撃が走ったかのように硬直した。
映像が消える。
・・・妄想と視線が交差した。
馬鹿な。
アサギは自嘲気味に溜息を吐くと、深呼吸をし、料理に戻る。
ギルザ。
綺麗な細長い瞳、形の良い唇。
妄想の自分に、惜しみなく笑みを零し、大事に扱っていた。
「・・・いいな」
知らず呟く。
アサギはぎこちなくなった手で料理を辛うじて完成させると、ワゴンに乗せてそれを運ぶ。
ワインを何本か用意して、トビィが部屋で待っていた。
他愛の無い昔話をしながら、思い出して自嘲気味にアサギはトビィに語る。
「さっき、変な映像を見たの。『ギルザ』って知ってる? トビィお兄様」
「ギルザ? 人名か?」
「知らない、よね」
それ切り、アサギはその名を口にすることなく。
運命の夜が明けて行く。
ギルザ。
トビィも忘れていた、その名。
トビィがその名を知るのはそれから数年先の事。
アサギが思い出すのも、それから数年先の事。
今はまだ、知らない自分の未来の姿。
渇望した夢が叶った、自分の未来の姿。
※本編進めましょう、私(倒
トビィが髪を撫でながら耳元で囁いた。
「アサギの手料理が食べたい。最近口にしていなかったから」
最後の晩餐とは言わなかったが、そういうことだろう。
今晩が最後の二人の食事になることは、明白だ。
「では、キッチン借りて作りましょう。何が食べたいですか?」
アサギは軽く笑って、トビィの顔を覗き込んだ。
「いつもの、ポトフ、かな」
トビィがそう寂しそうに笑って注文したので、アサギは軽く眉間にしわを寄せる。
いつもの。
そう、いつもの。
分かりました、とアサギはゆっくり微笑むとその場を離れる。
「焼きたてのパンも必要だな、あと前菜。ワインはオレに任せておけ」
「お願いします、トビィお兄様」
一番最初にトビィ・・・もとい、遥か昔の過去のトロイという名のトビィに食べさせたのがポトフだった。
一瞬瞳を見開いて、トロイは弾かれたように叫んでいた。
「美味いっ」
その一言を、忘れることなく、何度転生してもトビィはアサギのポトフを真っ先に注文していた。
思い出してアサギは笑う、そんな自分の手料理を喜んで貰えて幸せだ。
エプロンなど持ってきていなかったので、巨大すぎるキッチンから料理人を追い出すと、そのままアサギは支度に入る。
幸い材料は揃っていた。
不慣れな場所で、慣れた手つきで野菜を切る。
「・・・」
失笑。
一度で良いから、一度で良かったから。
パステルカラーの可愛らしいフリルのついたエプロンを身に纏って、愛する旦那様に料理を作ってみたかった。
食べる前に、口付けを。
今日は何かと聞かれたら、笑顔で答えるのだ。
手を止めて、叶わぬ夢に情けなく笑う。
途中の料理の味見をすべく、小皿を取りに行く為振り返る。
『ギルザーっ、ご飯出来たですよーっ!!』
「!?」
誰も居ないはずのキッチンに、人物が二人。
可愛らしい赤のチェックのテーブルクロスがかけてある、二人用のテーブルに一人の男が席に着いていた。
傍らに嬉しそうに笑顔を振りまく女が居る。
「え」
緑の髪と瞳、あれは、自分だ。
唖然と、その光景を見つめた。
混乱し、頭を抑えるアサギ、目の前の不可思議な映像は、止まらない。
『今日は何?』
『ギルザの大好きな焼きそばなのですよ♪ あと、明太子のおにぎりと、玉子たっぷりのスープ、ポテトサラダも作ったのです』
『良く出来ました』
濃紺の緩いウェーブがかった髪の男は、優しくそう微笑むと、アサギらしき人物の頭を撫でた。
くすぐったそうに笑う、アサギらしき女。
多分、自分。
けれども、口調がどことなく違うし、何よりその男を知らない。
「・・・誰」
アサギは眩暈を覚えながらも、二人を見ていた。
自分らしき女は、淡い黄色のフリフリのレースが大量に使われているエプロンを着ている。
慌しく、けれどもそれが最大の喜びであるかのように動きながら、食事を運んだ。
『一緒に食べようか、アサギ』
「!?」
がくん、と腰が抜ける。
あの男は、あの女をアサギ、と呼んだ。
ということは、やはりあれは自分だ。
けれども、知らない。
あの男を知らない、あんな光景を知らない。
未来であるはずもない、何故ならば明日自分は存在自体を消滅させるのだから。
願った夢が、そこにあった。
女の表情を見ていれば分かる、愛する人と幸せな暮らしをしている、そんな夢心地の笑顔。
私じゃないのに、私のような姿の女が、望む暮らしをしている。
渇望した、夢。
知らず、アサギの頬を涙が伝った。
そこに、暖かで優しい空気が流れている。
目の前で繰り広げられる、平凡な、それでいて幸福に満ち足りた食事。
「私、また身勝手な妄想を見てる」
喉の奥で忌々しそうに笑うと、アサギは頭を激しく振った。
ギルザなどという男は、知らない。
あんな口調の自分も、知らない。
不意にアサギが顔を上げると、ギルザ、と呼ばれた端正な顔立ちの男と視線が交差した。
交差した瞬間、その男が穏やかに微笑む。
「っ!!」
アサギは思わず赤面し、身体が電撃が走ったかのように硬直した。
映像が消える。
・・・妄想と視線が交差した。
馬鹿な。
アサギは自嘲気味に溜息を吐くと、深呼吸をし、料理に戻る。
ギルザ。
綺麗な細長い瞳、形の良い唇。
妄想の自分に、惜しみなく笑みを零し、大事に扱っていた。
「・・・いいな」
知らず呟く。
アサギはぎこちなくなった手で料理を辛うじて完成させると、ワゴンに乗せてそれを運ぶ。
ワインを何本か用意して、トビィが部屋で待っていた。
他愛の無い昔話をしながら、思い出して自嘲気味にアサギはトビィに語る。
「さっき、変な映像を見たの。『ギルザ』って知ってる? トビィお兄様」
「ギルザ? 人名か?」
「知らない、よね」
それ切り、アサギはその名を口にすることなく。
運命の夜が明けて行く。
ギルザ。
トビィも忘れていた、その名。
トビィがその名を知るのはそれから数年先の事。
アサギが思い出すのも、それから数年先の事。
今はまだ、知らない自分の未来の姿。
渇望した夢が叶った、自分の未来の姿。
※本編進めましょう、私(倒
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