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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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2008年1月著・出番待ちにつき、上げ。

「・・・そのまま互いに息絶えました。・・・えぇ!?これで終わり!?」

仄かに光揺らめく図書館にて。
アサギは手にした本を声に出して読み終えた。
遠くから自分の名を呼ぶ声が聞こえたので、返事をする。
数分後、トビィが姿を現した。

「ここに居たのか。何か良い本でも?」
「良い本というかー。可愛らしい童話かと思って読んだんですけど、全滅してるの、この話」
「題名は?」
「それが、なくて」

アサギは手にしていた古めかしい一冊の本をトビィへと手渡す。
黴臭いそれ、手にしたトビィは背表紙を、表紙を、裏表紙を見つめるが確かに何も記載されていない。
本を開こうとすると、遠くから新たな声が聞こえる。

「主、どちらにおられますか、主」
「デズデモーナ、ここだ」

本から視線を放し、相棒である黒竜の名を呼ぶ。
何処となく慌てているようにも聞こえるそのデズデモーナの声に、アサギは首を傾げた。
黒い長髪、耳の上に日本の角、本来は黒竜の姿なのだが、アサギが天界の宝物庫から無断で持ち出した杖の威力で人型に変化することが可能となっている竜。
ドラゴンナイトであるトビィの信頼出来る、相棒の一体だ。

「緊急事態です。クレシダとオフィーリアは待機しておりますので、我らも」
「緊急事態?」

トビィは本を無造作に棚へと押し戻すと、アサギの手をとる。
深く頷くとアサギは手を引かれて歩き出すが、不意に気になって足元を見た。
何か、落ちている。
無造作にそれを拾い上げると、確認する間も無くスカートのポケットへと押し込んだ。
早足で歩きながら、三人は図書館を出てある場所へと向かう。
―――あなたが、願いを間違えなければ。今のまま願い続ければ、叶うの。
―――あなたで、最期。あなただけが、希望。彼と共に生き抜きたいのなら、どうかその願いを変えないで・・・。
アサギが見つけ、トビィが棚に戻した一冊の無題の本が、儚く煌き、役目を終えて掻き消えた。

「三星チュザーレ・港町カーツが、ドラゴンの奇襲を受けている模様です」
「ドラゴンねぇ・・・」
「アーサー殿の報告によれば、そのドラゴンは本来カーツより遙か遠くの山岳にしか住まない孤立したドラゴンで、このように人前に姿を現す事が珍しいのだそうです」
「そこまで調べたならアーサーが赴けばいいのに、な」
「御尤もです。まぁ、アーサー殿も王宮のお抱え賢者故に、簡単に身動きが取れないのでしょう」
「面倒だな。アサギ、やれるか?」

ポケットに押し込んだ物を取り出そうとしていたアサギ、トビィに声をかけられて慌てて押し戻した。

「大丈夫だよ。任せて」
「無理はするな。・・・デズ、アサギは任せる」
「心得ております、主。それで、そのドラゴンですが、非常に外皮が硬い種族で、どうもワイバーンと呼ばれているとか。ただ、敵意を持たなければ襲ってこないので未だ詳しい生態が明らかになっていないそうです」

トビィが重々しい扉を開き、アサギ、デズデモーナが中へと入っていった。
中で数人の天空人が、アーサーと通信を行っている様だ。
トビィはそれには目もくれず、転移装置の前で大人しく待機中のクレシダとオフィーリアへと進む。
クレシダとオフィーリアもトビィの相棒の竜で、クレシダが風の竜、オフィーリアが水の竜である。
共にデズデモーナと同じく現在は人型となっていた。
クレシダは金の肩ほどの髪に、翠の瞳、常に無感情。容姿だけなら人間で言うと20代後半か。
オフィーリアは水色の長い髪を左側の高い位置で縛り、藍色の大きな瞳、一見少女のような細い身体つきで、アサギと同じく12歳程に見える。

「トビィ殿、お待ちしておりました」

存在に気がついた天空人が慌てて敬礼をし、通信装置の向こうに映っていたアーサーがトビィの名を呼んだ。

「説明はデズから聞いた。行って来る」
「御武運を」
「私も行きますから。ええと、再度確認しますけど、ワイバーンは本来ならば人を襲わない生き物なのですか、アーサー様」

ひょこりと顔を出したアサギに、天空人が、アーサーが慌てて止めに入った。
腕を組んで、怪訝にその様子を見つめるトビィ。

「アサギ様は行かずとも良いのですよ。トビィ殿一人でなんとかなります」
「無茶をされると困ります」

頬を膨らませ、アサギはトビィの元へと強引に突き進んだ。

「私、勇者ですから。それに、ワイバーンが何故そんな行動に出たかを知る必要があると思うので、行きます」
「というわけで、アサギとオレ、デス、クレシダ、オフィで行って来る。じゃあ、な」

それでも止めようとアサギの腕を掴む天空人に、トビィは瞬時に背中の長剣・ブリュンヒルデを引き抜くと、一人の天空人の喉下へ剣先を突きつけた。
仰け反らせて、アサギを手放す天空人。

「オレが共に居る、何も問題はない。それにアサギとて、貴様らよりか遥かに強い。アサギの意思を尊重しろ」

鬱陶しい、トビィは吐き捨てるとアサギを連れて颯爽とその場を立ち去るかのごとく、転移装置へ。
気迫で言葉が出ない周囲を他所に、トビィはアサギの髪を撫でなでていた。

「・・・お気をつけて」

転移装置が揺らめき、五人の姿が掻き消えた。
暫くして天空人たちの背中に汗が伝う。
神・クレロとその片腕リルが颯爽と扉から入ってきたからだった。

「よいのですかー、クレロ様。アサギを行かせてしまってー」
「まぁ、止めてもあの子の事だから突っぱねて行ってしまうだろうし」
「でも、行き先はカーツですよー、あの娼婦がいる町ですよー?」

リルが無邪気に笑って、突如歌い出した。

「何もなき宇宙の果て 何かを思い起こさせる
向こうで何かが叫ぶ 悲しみの旋律を奏でる
夢の中に落ちていく 光る湖畔闇に見つける
緑の杭に繋がれた私 現実を覆い隠したまま
薄闇押し寄せ 霧が心覆い 全て消えた
目覚めの時に 心晴れ渡り 現実を知る
そこに待つのは 生か死か
・・・この歌を奏でる娼婦がいる町、ですよー? クレロ様、お忘れですか? 気になると何度も呟いていた娼婦の居る場所です。三星に居る娘だから四星と無関係だ、と。娼婦だから勇者とは何の接点もない、と。そう言われましたよね以前。出来てしまいましたね、接点」

後半、のんびりとしたリルの口調が変化した。
笑顔のままだが、冷徹な怒気を微かに含んでいる。
聞き終えるや否や、顔色変えてクレロは近くにいた者に叫んだ。

「アサギを、アサギを呼び戻せっ」
「もう、遅いと思いますー。今呼び戻したらそれこそアサギは激怒して、お城をどかーんなのですわー。それで。あの娼婦は何者ですか」

リルの鋭い問いに、クレロは頭を抱えてその場に蹲る。

その場所より遠い遠い宇宙のとある五星・マクディ。
花畑に一人の男がしゃがみ込んで何かを作っていた。
紫銀の髪が時折揺れる。

「ちくしょー、上手く出来ない」

嘆いて男・トランシスは花畑に転がった。
灰色の空を背景に、創りかけの花冠を溜息混じりに見つめる。
アサギが、喜びそうだからこうして創っているけれど、上手く出来ない。
アサギは喜んでくれるだろうか?
明日、アサギが会いに来る日だ、それまでに創り終えたい。

「今、何してるのかなー?」

愛しい恋人を思い浮かべて笑うのだが、不意に不安そうに眉を顰める。
トランシスがアサギの隣に居ない時、常に本来トランシスが居るべきはずの位置にはトビィが居た。
トビィ。
最もアサギに近い男。
アサギの剣の師匠でもあり、兄でもある男。
兄といっても血の繋がりは全くなく、勝手にアサギが「お兄様」と呼んでいるだけであった。
無性に見ていると腹だたしいのは、お互い様なのだが。
そう、アサギは気がついていないがトビィはアサギを妹とは見ていない。
トランシスと同じように、アサギのことを一人の異性として見ている。
非常にトランシスにとって、邪魔な存在だった。
アサギは自分の恋人だ。
それは理解しているけれど、トランシスがアサギと会えない時間は、トビィが占拠しているわけで。
アサギを信じていないわけではないけれど、どうしても、不安で。
トビィとは出会った瞬間から互いに憎悪の対象となっていた、それ故に尚のこと。
アサギの隣に居るトビィが気に食わない。
自分の恋人なのに遠慮なく肩を抱き、護り続けるトビィが邪魔で仕方がない。
トランシスは、考えれば考えるほど無性に腹ただしくて、手にしていた物を思い切り引き千切った。

「うっわ! あー・・・」

我に返れば、創りかけの花冠が無残に壊されてた。
ちぇ、トランシスは頬を膨らませ花冠を放り捨てた。
もう、創れるシロツメクサがない。
創れない。

「あー、どうしてくれるんだよ、トビィのせいだよ」

頭を掻き毟りながらトランシスは小さく、歯軋りしながら叫ぶ。
トビィ、お前邪魔なんだよ。消えろよ、オレの前から消えろよ、アサギに近寄るなよ。

「オレとアサギしかいない世界に行きたいなー。二人だけで暮らしたい、二人だけが居ればいいから。そうしたら、何も考えなくて済むのに。そうしたら、アサギは何処にも行かないのになぁ」

花冠が、風に揺れた。
忘却の花冠。

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こうして物語は
「君に咲く花」へ続くのでござりゅん。
だから、あそこで止めたのでござりゅんよ。
もう少し、がんばれーわたしーえいえいおー(ぐぅ)。

※睡魔の襲来、おやすみなさい。
まこ 2008/01/02(Wed)03:41:39 編集
出番来ました、よっしゃ!
あと少し頑張れ。
たまこ 2014/11/19(Wed)18:42:15 編集
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