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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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めも。


115:トビィ達のどたばた騒ぎ+ホーチミン、トビィに突っ込む

116:ロシファを呼んで、魔界で遊ぶ(マビル登場)


117:湖水浴+ロシファ死亡

 不安そうにアサギが下から見つめたが、ふっ、と顔を緩めるトビィ。そっとアサギの髪を撫でる。ホーチミンが、その様子を食い入る様に見ていた。

「なんだ、ホーチミン。羨ましいのか? 絵になる二人だよなー、いいなー」
「違うわよ。……あの小説の例の二人にそっくりだって言いたいのよ」

 数日前に手にした不可解な小説が、ホーチミンの脳裏に甦った。あの、夫婦そのものではないか。情景が重なる。
 唇を噛締めたホーチミンを、不安そうに見たサイゴンだが、後方で妙な殺気を感じ、振り返った。
 ハイだ。ハイが嫉妬丸出しでトビィを睨みつけていた。
 それはそうだろう、突然やってきて、あぁも親しくアサギに触れ、笑みを独占しているのだから。
 気持ちは解らないでもないが、とサイゴンは苦笑した。

「ハイ様、トビィとアサギ様は兄と妹だとか。仕方がないですよ」
「ん? 兄なのか?」

 フォローしたつもりだった、が、ハイは何を勘違いしたのか血走った目で、トビィに突進したのである。
 止める間もなく、二人の間に割って入った。そして簡易れず一言。

「お兄様、どうか妹さんをお嫁にくださ」
「断る、邪魔だ、退け」

 右脚でハイを蹴りつけると、無表情でそう掃き捨てたトビィ。唖然としているアサギを軽々と持ち上げて、地面に突っ伏したハイには目もくれず、アレクに向き直る。
 物理的には魔王は全く敵わなかった。悲痛そうにハイを見つめるサイゴンだが、仕方がない。自業自得だ。

「詳細が聴きたい、オレは今すぐにでも構わないが」
「そうだな、そうしよう。ただ、皆が浮き足立っている、静かな場所で語りたい」
「当然。そちらが日時を決めてくれ、従おう。それまで、適当に寛がせてもらう」
「あぁ、君の好きにするが良いだろう。改めて、早急に連絡するまではなるべく近場にいて欲しい」
「アサギの部屋があるんだろ? そこにいる」
「あぁ、それが良い」

 いや、良くないだろ! と、ハイが叫びながら突進してきたが、再びトビィの鋭い蹴りによって地面に沈んだ。ハイを一瞥したが、アレクはそのまま無言で歩き出す。
 立ち尽くしているスリザとアイセルに、密かに囁いた。

「私はミラボーとリュウの元へ行く。アイセル、着いて来てくれ。スリザは、ホーチミンと行動してくれないだろうか。サイゴンを呼んで来て欲しい」
「……畏まりました、お言葉通りに」

 スリザが静かに頷くと、アイセルに視線を送る。アイセルも神妙に頷いた。
 アサギに聴き、トビィが移動しようとしていた時、合流したホーチミンとスリザが駆け寄ってくる。離れていくアレクとアイセル、サイゴンを軽く見送りながら、笑顔でトビィに話しかけた。

「お疲れかしら、トビィちゃん。ご飯でも一緒にどう?」
「アサギは?」

 直様トビィは抱き抱えているアサギに尋ねた、先程甘いものを口にしたので、そこまで空腹ではない。寧ろ、剣の修行がしたかった。

「えと、まだお腹は空いていませんが、トビィお兄様が疲れているのなら……あ、何か飲み物でも」
「そうだな、何か飲みたいかもな。というわけだ、ホーチミン」
「決まりね、行きましょうか」

 歩き出した四人の後を、這いずってハイが必死に追う。思った以上にトビィの2撃が効いていた、それもそのはずだ、殺意を篭めて蹴りを繰り出しているのだから、普通の人間ならば今頃生死の境を彷徨っているだろう。

 トビィを追って、数人の女たちも移動したが、他はまばらに散っていった。そこに残されたのは、眠っているクレシダ。
 静寂に包まれ、闇が訪れる中で影が近寄る。

「立派な竜だな、だが、彼は……」
「我ら同胞ではないようですね、元々惑星クレオに居た種族なのでしょう」
「彼も、あの人間に使役されているのか? 哀れだな」

 リュウと、エレンが立っていた。眠っているクレシダの周囲を歩きながら眺めている。
 そっとリュウはクレシダの皮膚に触れた、硬い外皮は美しい緑である。一瞬、哀れみの瞳を投げかけ、悔しそうに唇を噛む。

「……どちらさまですか」

 眠っているはずのクレシダが、急に声をかけてきた。瞳は開いていないが、確かに喋りかけてきた。
 エレンが驚いて後ずさったが、リュウは戸惑うことなく話しかける。

「私はリュウ。君に尋ねたい事があるが、良いだろうか」
「はぁ、珍しい事で。どうぞ。ただ、私は上手く受け答えが出来るか解りませんゆえ、難しいことは主に訊いて頂きたく」
「いや、君が良い。……何故、人間と共に行動を? 何か弱みを握られているのか?」

 リュウの問いに、ようやくクレシダは瞳を開いた。大きな瞳を動かし、リュウの姿を捕らえる。
 鼻を鳴らした、匂いで嗅ぎ取ったのだろうか、似たような種族である事を。

「共に行動をしているのは、興味が湧いたゆえ。弱みなど握られておりませぬ」
「興味? 人間に?」

 クレシダは静かに頷くと、再び瞳を閉じた。思案しているリュウを、心配そうにエレンが見つめる。

「楽しいのか? 辛くはないのか? 人間に乗られ、あのように戦闘を無理強いされて悔しくはないのか?」

 ゆっくりと、クレシダの瞳が開く。無感情の光を放つ瞳に、リュウの姿が映った。

「楽しいのか、解りませんが。辛くはないかと聴かれると、確かに好きなときに眠れないのが辛いです。人間に乗られるというよりも、主が乗っているので別に悔しくは。
 ……そういった質問は、私ではなくデズデモーナのほうが宜しいかと思われますゆえ。そのうち戻るでしょうから、そっちに訊いて下さい」
「解った、すまなかったな」

 再び瞳が閉じられる、変わった竜だとエレンは苦笑したが、リュウは不思議そうにクレシダを見つめていた。
 遠ざかりながら、エレンがクレシダを振り返る。

「流されやすい性格なのでしょうか、なんだか全てを諦めているように思えますわね」
「……違うよ、エレン。彼は……違う。疑問に思ってないんだ、人間の傍に何故自分がいるかを。それが当然であると、受け入れている」
「そういう、生き方なのでしょうか? 古来からの?」
「違う。そうじゃ、ない。恐らく、そうではなくて……」

 口を噤んだリュウに、エレンは何も言えなくなった。
 あの竜は、絶対的に人間を信頼している。人間というか、ドラゴンナイトである、”トビィ”を。それこそ、親兄弟のような絆で結ばれているような。
 リュウは、疲労した顔で足取り重く自室へと戻った。あんな関係が、存在しただなんて。
 種族など、関係ない。ただ、個々が繋がっただけだ。姿形など、建前であるだけで。

 いつもの様に、魔界の食堂で会話を始めたホーチミン達。
 多少どころか、相当外野が煩い。トビィを追って、女達が着いてきてしまったのだ。周囲をぐるりと、女達に囲まれてホーチミンはげんなりと、肩を落とす。
 トビィは全く気にしていない様子で、隣のアサギと談話しながら紅茶を啜っていた。
 全くもって、何をしてもさまになる男だ。ホーチミンも思わずテーブルに突っ伏しながら、溜息を吐いた。まだ若い人間な筈だが、どうにもそれだけでは言い表す事が出来ない。
 ホーチミンの隣では、ガツガツと食い散らかしているスリザがいる。雲泥の差である。
 自分用に購入したものを、先程アイセルに1つ渡したので、腹が減っているのだろう。本気で食に走り始めた。
 若鶏の赤ワイン煮込みに、山の様にパンを取り、オレンジソースのサラダと、キャベツのサワースープをずらりと並べている。
 じと目で見ていたホーチミンに、何気なくスリザはパンを差し出した。引き攣った顔で、ホーチミンが丁重に断る。

「トビィちゃん、お帰りなさい。で、今まで何やってたの?」
「アサギが変態魔王に連れ去られてから、こちらへ向かっていた。それだけだが」
 
 アサギの髪に指を通し、愛おしそうに触れているトビィ。アサギは結局、キウイとバナナのフレッシュジュースを飲んでいる。焼き菓子付きで。特に触れられても違和感がないようで、アサギは身動ぎすらしていなかった。

「でしょうね。っていうか、アサギちゃんとは何処で知り合ったのよ?」
「つい最近と言えば最近だな、そういえば」
「そうですね、最近です」

 最近なのに、そんなに親密な仲なのね。……と呆れてホーチミンは項垂れる。
 アサギの髪を撫でるたびに、頬に指が触れるたびに、周囲から黄色い声が飛ぶので気が気ではない。
 喧しい、煩い、非常に苛々する。
 こめかみを引くつかせながら、未だに全力で食べているスリザは無視し、1つ咳をしてトビィに向き直ったホーチミンは、多少声色を変える。

「ねぇ、トビィちゃんって兄弟いる? 同じ髪と瞳の」

 訊きたかった事だ。あの不可解な小説では、トビィには双子の兄がいた。念の為、訊いておきたかった。いなければ、それでいい。ただの杞憂かもしれない。それだけでも、安堵出来る。
 トビィは、顔色1つ変えず、態度も変えず、紅茶のカップを片手に、片手はアサギに触れたままで返答した。

「さぁ、どうだろう」

 曖昧な答えだ。不服そうにホーチミンが身を乗り出す。

「どういうこと? はぐらかすような質問じゃないでしょ?」

 アサギも、トビィを見上げた。不機嫌そうに、ホーチミンを見やるトビィは、何故そこに食いつかれたのか解らない。

「と、言われてもな。オレ、捨て子だったから。もしかしたら双子だったかもしれないし、三つ子だったかもしれないし。兄弟がいたかと訊かれても」
「トビィお兄様、捨て子だったのですか?」

 驚いたアサギに、トビィは軽く頷いた。複雑そうな表情で、アサギが俯く。聴いてはいけない事を聴いてしまったようで、申し訳がなかった。だが、トビィは全く気にしていない。
 頭を軽く撫でると、髪に口づける。「気にしなくて良い、今が楽しければそれで良いし、後悔した人生ではないしな」軽く笑った。本心である。
 だが、ホーチミンは身体中から汗が吹き出ることを止められずにいた。
 確実ではない、だが、確信に近い予感が襲う。
 捨て子のトビィ、双子が居てもおかしくはない。居たとしか思えなくなってきた、それも、同じ髪と瞳の色を持つ兄だ。
 顔面蒼白になったホーチミンは、気分悪そうに傍らの紅茶を啜った。
 ますます、あの小説が無視できない。トビィが笑いながら『兄弟はいない』と言ってくれることを、何処かで期待していたのに。

 ミラボーの部屋を、アイセル、サイゴンと共に訪れたアレクは、普段通りにミラボーに声をかける。
 部屋の外で、サイゴン達は武器に手をかけて、待機した。
 室内に入ることが出来るのは、アレクのみだ。が、万が一何かあれば直様入り込む体勢を取る。

「なんとも珍しい事よ、アレク殿が出向くとは。何かあったのかね」
「大した事ではない、単刀直入に言うと一時、ミラボーの惑星へと戻って戴きたいのだ」

 ミラボーは、不思議そうに首を傾げた。重そうな頭部が軋むくらいに。

「何か?」
「城内に、不審人物が侵入している可能性がある。その者を炙り出すまでは、客人に居てもらっては困る。それだけだ」
「ほう? 魔王を狙う不届き者なのか?」

 瞳を細め、話に乗ってきたミラボーに、淡々とアレクは語った。
 互いに、感情を読み取らせない。大袈裟に何もかも驚くミラボーと、無表情で抑圧のない声で語り続けるアレク。
 
「ふむ、あい解った。早急に戻るとしようかの」
「すまないな、感謝する」

 深く腰を折り、頭を下げたアレクにミラボーは気さくに笑った。気にするな、とばかりに。
 室内を出たアレクは、控えていたサイゴン達に小さく頷くとその場を後にする。
 ミラボーは、忌々しそうに扉から離れていったアレクの姿を見つめていた。
 何段にも重なった顎を撫でながら、頭部についている触角を左右に動かした。

「いけ好かない奴よのぉ。証拠がないにしろ、疑っておるな。……安心するが良い、直に帰る。事が終われば、のぉ?」

 ミラボーは、一瞬立ち止まったが思い出したように室内を歩き回った。

「にしても、面倒よのぉ。愛用の水晶球が二個も割れてしまったわぃ。まぁ、片方は罅が入っただけじゃし、なんとか」

 片方は、介して見ていたトーマに破壊された。
 片方は、介して見ていたアサギの魔法の影響を受け、罅が入った。
 
「んむ?」

 ふと、真っ二つに綺麗に割れている水晶と、罅が入った水晶を見比べる。
 水晶自体は何の問題もない、そうではないのだ。着眼点は別のところにある。

「あの二人。小僧と勇者が似ている気がするのぉ」

 瞳を細め、二人を思い出した。確かに、瞳が似ている気がする。
 ミラボーは自身の直感に自信があった、気になるということは、そこに何かしらあるからだ。
 何かは解らなくとも、自身に有利に成り得る情報が隠されているようで。もしくは、不幸から逃れる術が見つかるようで。

「エーアを呼び戻そうかの、そろそろ。アレクにも急かされたことであるし」

 ミラボーは、身体を揺すりながら罅入った水晶を覗き込んだ。映るのは、黒髪の美女。人間の美女。
 全裸で男と抱き合っている、相手はハイの片腕であった悪魔のテンザである。
 満足そうにミラボーは笑った、流石エーア、心を掌握しているようだった。

「実に優秀な部下を持てて、幸せ者である」

 水晶に手を翳す、エーアが軽く、空を仰いだ。

「戻れ、エーア。そなたが必要だ。以後の指示は戻ってから出す」

 頷いたのか、絶頂を迎えたのか良く解らないが、ともかくエーアの身体が一度大きく仰け反り、そしてテンザの胸に崩れ落ちる。
 時は来たり。忠実な人間の僕と、元魔王ハイの片腕が手に入った。駒は揃っている。
 スリザの呪縛が解けてしまった事だけが不愉快だった、まさか、あの小さな勇者にそこまでの力が秘められていたとは思わなかった。
 飲ませた薬液が体内に残っていれば、まだ操る事は可能だったのだが何度呼びかけてもスリザは無反応である。
 惜しい駒を失くしたと舌打ちしたが、いた仕方がない。
 そもそも、あの薬液は飲ませた者全員の意志を奪えるものではない。そんな代物があれば、とうの昔に使っている。
 自分に劣等感を抱き、対象とする人物を羨望している人物にのみしか発動しない。
 アサギに嫉妬にも近い羨望を抱き、自分を恥じて殻に籠もろうとしていたスリザは、良い標的だった。
 他に、アサギにそういった感情を持ち合わせている人物はいるだろうか? ……ミラボーは低く唸る。
 再びスリザに薬液を仕込んでも良いのだが、流石に警戒しているだろう。特に、周りをうろついていたアイセルが邪魔だった。
 ミラボーは、最早完治しているテンザの容態を報告し、直様魔界へと戻ってきた。人間の黒髪で、瞳が深紅の女を探している事を知っていたので、髪に泥を塗り、白くしてからフードを被りエーアはやって来た。
 無論、アレクの城には安易に入れない。かといって、ミラボーが外へ出向くわけにもいかない。どちらにしても目立ちすぎる。
 けれど、城付近までやってきたエーアはそれだけでよかった。近づけば近づくほど、ミラボーの声が鮮明に聞き取れるのだ。下された指令は、テンザと共にロシファの抹殺に向かうこと。岐路に余裕が在れば他の勇者達を襲撃し、根絶やしにしろと。
 直様エーアは、小船に乗り込みテンザがまだ治療に要している孤島へと向かう。
 さぁ、あの混血のエルフの姫君をどうするか。結界は相当なもので、テンザは十中八九入ることが出来ないだろう。
 姫君と一対一で対峙するには、多少の覚悟と犠牲が必要だ。テンザが居れば造作もないことなのだろうが。
 勇者は別に危惧することもない、ただの、戯れにでも殺せそうだった。
 エーアは、思案した。エルフの姫君を、魔王アレクの恋人を殺害する方法を思案した。
 こちらの戦力を、減らさないようにして、最も簡単に殺害する方法を……思いついてしまった。
 薄く、微笑む。
 遺体は、ミラボーが食わねばならない。エルフの遺体とて時間が経てば腐敗するだろう、殺害してからが問題だった。
 エーアは、孤島で帰りを待っていたテンザの足元に跪くと、暫くしてから耳元で囁いた。
 殺したい女が1人居る、と。そこへ行きたい、と。
 テンザの完治を待って、二人は飛び立つ。悪魔テンザに抱えられ、エーアは艶やかに微笑んだ。

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