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緑の髪の娘は、どうやら突破に出向いたらしい夫の後ろを、数年前から一緒に居るドラゴンのクレシダに乗って追っていた。
別に新婚ではないのだが、結婚して数年経った今でも、緑の髪の娘にとって、愛する夫は眩しい憧れの存在だった。
そう、初めて出会ったあの日から、今も変わらず、ずっと。
どきどきしながら後をつける。
綺麗な濃紺の柔らかなウェーブがかった髪を靡かせて、一言。
「混沌とか、好き」
夫は軽く邪悪な笑みを浮かべると、そのまま某国の正面突破を試みる。
瞳を輝かせながら、その様子を見つめる緑の髪の娘。
ちゃっかりデジカメ持参でバシャバシャ撮影中である。
「きゃー! きゃー! かっこいいのですよーっ!どーしよーっ。クレシダ、クレシダ、見てる? 見てる?」
ばしばしと興奮気味にドラゴンの背中を叩きつつ、シャッターを切るのを止めない娘。
出会った頃と何一つ変わっていない・・・というか、愛する男の為には何をするのも惜しまないところは以前より格段に上がっているのですね、とクレシダはぼんやりとそう思いつつ。
・・・デズデモーナ、交代してくれないだろうか。
と、別のドラゴンの名を小さく呟いた。
どうもクレシダに緑の髪の娘の世話は出来ないようで。
きゃーきゃー叫びながら背に乗っている緑の髪の娘に、項垂れる。
「殺戮も、好き」
夫が二人目に到達したらしい。
緑の髪の娘は、その夫の姿に見惚れて、暫く呆けていた。
「とても、大好き」
小さく呟いて、祈りながら見守る。
無駄のない動き、微笑したまま敵を斬るその凶悪な美しさ。
・・・出会った頃と変わっていない。
「とても、とても、大好きなのです」
けれど、緑の髪の娘は知っている。
夫が自分には優しいことを。
何時も傍に居てくれて、辛いときは何も言わず抱きしめてくれる。
好きすぎて、好きすぎて。
結婚して隣に居る今でも、夫は手が届かないような憧れの人。
だから。
「―――っ」
夫が微かに顔を顰め、その場を去った。
どうやら負けてしまったらしい。
緑の髪の娘は、慌てて夫に駆け寄ろうとしたのだが、そこを堪えた。
夫の性格からして、その姿を見られたくないかもしれないと思ったから。
代わりに。
「あの人、嫌いなのです。叩き潰すのです」
「アサギ様の力では無理だと思いますが。ギルザ殿が弾かれたのです、我慢して下さい。アサギ様が怪我をされますと、私が主に怒られますゆえ」
「でも、あの人嫌いなのです。よくもアサギのギルザにっ」
緑の髪の娘は、その名も無き防衛兵を叩き潰すことにした。
憎々しげに、その人を見つめる。
「クレシダ、アサギ行きます」
「・・・あー・・・」
いつも、一緒が良いのです。
どんな時でも、どんな場所でも、一緒に居たいのです。
これからも、傍に置いておいてね。
大好きな、大好きな、あなたへ。
「あ、その前に写真を現像するのですよーっ!!」
「・・・」
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