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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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めも。

~108  トビィVSテンザ
~109  トビィ来る
~110  ロシファ死亡
~111  戦闘開始
~113  勇者達他到着
~120  第二章へ。

あと、12話。
 

 静まり返った図書館に一人きり佇んでいるのは、愁いを帯びたホーチミン。踝までの純白のワンピースを身にまとい、高く結い上げてある見事な金髪をレースで結ぶ。
 一見、良家のお嬢様。実際、男。
 睫毛とて長く、肌も白い、手足も華奢だ。女性から見ても憧れの的である、嫉妬の念にかられているので敵は多いが。
 ホーチミンは、アサギに教える魔法を探しに来ていた。多種多様の魔導書が存在する図書館の一角には、誰しもが入れるわけではない。ホーチミンは高等な魔術師であるため、顔パスで立ち入ることが出来る。
「何が良いかしら。全部教え込ませたいくらいだわ、きっと完璧にこなすもの!」
 ホーチミンとて不得手がある。火炎においては右に出るものがほぼいないという現状だが、他が全くだった。
 最も、サイゴンの姉であるマドリードが亡くなった為にホーチミンの能力が注目されたこともある。マドリードこそ、火炎においては魔界において右に出るものなどいなかった。故に、何者かに殺されたと知ったときは衝撃が走ったものである。
 サイゴンに口付けてから恥ずかしさのあまり逃亡していたのだが、ようやく心身共に落ち着いたので戻ってきた。
 ゆっくりと、指先を唇にあてると微笑する。
「……無理やり、口付けしちゃった」
 こほん、と近くに居た魔族が大袈裟に咳をする。しかめっ面でこちらを見ていたので苦笑しホーチミンは頭を下げた。
 それでも、思い出すと笑みが零れてしまう。自然と顔が赤く染まる。
 実は、二度目の口付けだった。幼い頃、一度サイゴンと口付けを交わしている。
「サイゴンはきっと、憶えてなんていないだろうけど」
 若干寂しそうに、絞り出した震える声。ホーチミンは唇を噛締めると気を取り直すように、軽く頭を振る。
 神経を集中し、本を探す。本来ならばアサギをこの場に連れてきて選ばせたいが、彼女が立ち入れる許可がない。
 アレクに頼めば直様許可を出してくれそうだが、頼むまでに時間を要しそうだったので自ら探しに来た。
 何より、多くの者はアレクに賛成だろうが、反発する者が存在することを忘れてはいけなかった。人間の勇者を、貴重な場所へ招きいれた場合アレク的に立場が危うくなることも視野に入れた。
 アレクが失脚することなど万が一にもないと、ホーチミンは思っている。アレクとアサギが揃っていないと、アレクの夢は達成できない。ホーチミンとて自分の向上の為に魔力を磨いているのであって、人間達と戦う為に自分の力を磨いているわけではなかった。
 争いなど、ないほうが良いに決まっている。
 ホーチミンは人間の世界へ出向いた事がないが、たまに人間界で買い物をしてきた女達の会話を盗み聴いていた。物珍しいものが沢山あるらしく、実に興味が湧いている。
 目に見えない種族という境界線が少しでも薄れれば、自分も行きやすくなるので、アレクの夢は叶えたい。
 何より、勇者であるアサギが永久に魔界にいるわけもなく、人間界に帰った場合でも気軽に会いにいけるようにしておきたい。
「……あら? 何コレ」
 ホーチミンの指先が、止まった。
 眉を潜めて、その”違和感”を感じた本を棚から引き抜く。
 古めかしい本だった。
 厚さ1センチにも満たない本だ、茶色で焦げたような形跡がある。
 表紙には何も書かれていない、紋章すら施されていない。
 不審に思ったが、どうしても気になってしまった。一瞬硬直したが、挑むような目つきで表紙を開いた。
 白紙だった。
 更にめくるが、白紙だった。
 一瞬、ホーチミンのこめかみが引き攣る。が、次のページは。
 文字が書いてあった。
「序章……? 何、これ?」
 瞳を細めて、文字を見つめる。ホーチミンはそれを手にしたまま移動した、所々に設けられてある椅子に深く腰掛けると目を再度落とす。

『私たちを引き離すことが出来ますか
 私たちが出会うことは宿命です
 私たちは愛し合うことを止めないでしょう
 例え、この身が滅びたとしても
 私たちの思い出は消えません
 私たちはいつまでも憶えています
 私たちは、忘れることはありません
 例え、この身が滅びようとも

 一人、灰色にくすんだ空を見上げてあどけなさを残した少年、いや、青年は言葉を紡いでいた。

 我は忘れない、君のことを
 愛しい愛しい、君のことを
 いつの日か、君をこの胸に抱く時を夢見て
 今度こそ、君を抱きしめることを夢見て
 我の思い出は消えることなく
 あぁ、愛しい君
 どうして君はあの時裏切った
 あぁ、愛しい君
 裏切った君が酷く憎らしいよ、こんなにも愛していたのに
 愛しているよ、愛しているよ、戻っておいで
 我の愛しい愛しい美しい君
 神に愛された、美しい少女
 早く、我のモノになれ
 我に、殺される前に』

「え、魔導書じゃない……。何故、この場所に? 誰かが間違えて片付けたの?」
 ホーチミンは呟く。小説のようだった、次をめくると文字がずらりと並んでいる。
 魔界の図書委員は非常に賢明で、仕事に対して厳しい。重要なこの場所に、小説を片付ける事など有り得ない筈だった。
「まさか、必然、じゃないわよね」
 言いながら、再びホーチミンは目を落として読み始める。背筋に汗が吹き出し、流れ落ちていることに気がつかなかった。身体が震えていることに、気がつかなかった。
 読むしか、なかった。
 キィィィ、カトン……。
 音が、鳴った。


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