別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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読書し過ぎて書けない(という、いいわけ)。
学校に通いながら、極力異世界へ旅立つ。
「二人共さぁ、なんか急に……でかくなってない?」
「ぇ」
休憩時間にクラスの友人に話しかけられ、一緒にいたダイキとトモハルは気まずそうに顔を見合わせる。異界に行き、普段とは違う筋肉を使っていた。力が旅立つ前よりついたことは解っていたが、見た目に違和感を感じるとは思っていなかった。
「そうかな、な、夏休みの間に色々と」
しどろもどろ誤魔化し始めたトモハルに任せて、嘘をつくことが苦手なダイキは口を噤む。
「なんかさ、意外じゃないか?」
「な、何が」
「松長だよ、日焼けしてる。前より元気そうに見える」
「あ、あー」
言われて二人はユキを見た、地球に居たならば日焼け止めクリームを使っていただろうが生憎、そんなものあちらでは使っていない。病弱で大人しい薄幸の美少女が、こんがりとした色になっていた。本人は必死に地球に戻ってからというもの、美白化粧水でケアしていたがどうにもならない。
「あっちのほうが好きだけど」
「う、うん、健康そうだよね」
適当に相槌を打ったトモハルは、ダイキを盗み見たがそ知らぬ顔して瞳を閉じていた。肩を竦めてトモハルは、ボロを出さないように友人との会話に集中する。
「アイドルもなんか、さぁ」
後ろでダイキが動いたのが解ったが、トモハルは落ち着いて名前を出した。
「アサギ?」
「そう、田上浅葱。なんか前より……」
ダイキが息を飲む、確かにアサギも日焼けしていたが、共にいたので何が違うとか気づけない。
「前より?」
「前より、エロくなった気がする!」
興奮してそう言った友人に、二人は吹き出した。予想外の単語に、咽る。
「思わないか、なんつーの、あれはもう神の領域だよ! 小六だろ、タメだろ!? 胸もでかくなってないか、いや、でかくなってるって!」
「お前どこ見てんだよ」
呆れたトモハルは馬鹿馬鹿しいと項垂れたが、小学六年の男子達は、聴こえた単語に惹かれて集まってくる。こうなると、簡単には止められない。
「思うだろ! なんつーか、前から綺麗だったけど、もっと、その……可愛いけど美人というか、なんてーの、そういうの」
「色気がある、じゃないかな」
「あぁ、それだ、それ!」
ダイキとトモハルは、その場を静かに離れた。親しい友人が悪く言われているわけではないが、聞いていて良い気がしなかった。
「門脇とは別れたんだよな? 今フリーってことだよな」
その単語に、トモハルが鋭く一瞥した。視線を感じ振り返った友人達は、言い知れぬ殺気を感じ、口を閉ざす。誰が言い出すのでもなく、蛇に睨まれた蛙の様に慌てて教室を出ていく。
「……やれやれ、まぁ、詳細知ってるのは俺達だけだからアレだけどさ、アサギの事はそっとしておいて欲しいな」
髪をかき上げながらそう言ったトモハルに、ダイキはようやく口を開く。躊躇しつつだが、本人は意を決して尋ねた。以前から気になっていた事だ、蟠りが残っていては自分で辛かった。
「あのさ、トモハル。その、アサギと付き合ったりしない……というか、お前が一番親しいから、その」
「どしたの、ダイキ?」
まさかそんなことを言われるとは思っていなかったので、驚いたトモハルは苦笑した。自分にも言い聞かせるように、丁寧に言葉を紡ぐ。
ダイキもアサギに恋心を抱いているということは解ったが、本心を語りたかった。
「よく勘違いされるけど、前も言った通り俺とアサギは親友だと思ってるんだ。何処までも対等な存在、っていうのかな。間近に感じることもあったりする、だから対の勇者だったのかもね。それで、とても大事な存在なんだけど、俺が好きなのはアサギじゃなくて”マ”……」
マ。
名前を言いたいのに、どうしてもトモハルはこの先が言えなかった。溢れ出る唾を飲み込み、喉まで出掛っている言葉を吐き出そうとするのだが、出てこない。苦しそうなトモハルに、慌ててダイキが声をかける。
「い、いい。そうだよな、前から”マ”って言ってた。でも、少し羨ましいんだ、なんていうのかな、アサギと家が近いわけでもないのに、親しいから。アサギの幼馴染に三河亮っているじゃん、アイツとは違う感じ。互いに恋愛感情はないって、知っているけど、何だろう、傍から見ると仲良い恋人に見える」
「あはは、それ言うとアサギが困りそうだよ」
トモハルは軽く笑い、机に腰掛けた。足を組んで、天井を見上げる。
「仲良い恋人、かぁ。いいなぁ、俺もマビルとそう見てもらえるかな」
小声だったので、ダイキにはよく聞えなかった。「ん? なんて?」聞き直したダイキが見たのは、震える手で口元を抑えているトモハルだ。
「トモハル?」
返事がない、口元を抑えたまま微動だしないトモハルに流石に不安になったダイキは、肩を揺さぶる。と、弾かれたように顔を上げてダイキの肩を掴んだ。
「俺、俺! 今なんて言った!? 何て言ってた!?」
「え、よく聞えなかったんだ、ごめん」
「名前! 俺は今名前を呼んだ、あの子の名前を呼んでた!」
一度口にした筈なのに、もう、思い出せない。
「くそっ、くそっ、なんでだよっ」
知っている筈の名前、それは夢に出てくる黒髪の美少女の名。夢では名前を呼んでいる筈なのに、起きたら忘れている。ずっと、胸に引っかかっていた。
……まるで、誰かが記憶を操作してるみたいなんだ。思い出させない為に、繋がりを消す為に。
思った瞬間、耳元で耳障りな音が聞こえる。
キィィィ、カトン。
顔を顰めて蹲ったトモハルに、ダイキは近くにいたユキに叫んでいた。
「保健室へ! トモハルの様子が」
「えぇ、どうしたの!? 大丈夫?」
保健委員のユキは、すぐさま駆け寄って肩を支える。大丈夫、と掠れた声を出すトモハルに、ダイキとユキは瞳を合わせて頷く。右手に魔力を集中したユキは、回復の魔法を試みた。だが。
「ダメ、だ。ここじゃ、めだ、つ」
苦し紛れのトモハルの声に、唇を噛み締め小さく頷いた。確かに、誰かに見られては言い訳が難しい。ともかく人目のないところへ連れて行こうと、トモハルを左右で支えて歩き出す。
ざわめく教室は、廊下へと騒ぎを変えた。野次馬の生徒達が集まる、何事かと隣の教室にいたアサギも立ち上がって駆け付けた。
「トモハル!? ユキ、ダイキ、どうしたの!?」
まさが騒ぎの中心がトモハルであるとは思わず、アサギは素っ頓狂な声を上げた。
「解らないの、突然苦しみ始めて」
「保健室へ」
ユキの返答に深く頷くと、アサギも付き添う事にしたのだが、違和感を感じ振り返った。
「浅葱、大丈夫か?」
教室から亮が出てきて、アサギに視線を送る。何時の間にかミノルとケンイチも廊下に来て、目を丸くしている。
「……誰」
アサギが小さく声を放った、その瞳は、先程までトモハル達がいた教室に向けられている。肌で空気を感じ取ったミノルとケンイチの身体が動いていた、アサギの左右に立ち、身構える。
アサギが、敵意を露わした気がしたのだ。本能がそう悟った、ダイキも振り返り、トモハルも苦しみつつ首を動かす。
キィィ、カトン。
「浅葱、あいつ診ててやれよ」
その声に勢いよく振り返ったミノルとケンイチは、言葉を失う。アサギの幼馴染の亮が、何もかも全て解っているような顔で立っている。唖然としていると、アサギは困惑しつつも頷き、トモハルへと戻る。
アサギの代わりにその場に立った亮は、アサギが見ていた場所を同じように見つめ、いや、睨み付けた。
「お前……」
ミノルの絞り出した声に、亮は見向きもしなかったが言い放つ。
「話は浅葱から全部聞いて知ってる、勇者だったこと、とか」
瞬間、ミノルは項垂れて廊下を見つめていた。
敗北した、と思った。アサギの幼馴染であるこの亮という男を詳しく知らなかったが、隣に立ち『勝てない』と直感した。
……俺ごときがアサギの隣にいなくても、トモハルとかコイツとか、相応しい奴はいっぱいいたんだな。
自嘲気味に笑ったミノルだが、ケンイチが訝しみながら声を発する。
「でも、君は話を聞いていただけだよね? 一体何を感じ取ったっていうの」
勇者として共に居たわけではない亮が、自分達が感じた違和感を解るわけがないと思った。
頷いた亮は、宙を睨み付けながら「うん、でも、なんだろう、なんか、解ったんだ」と静かに告げる。
人が多くなってきた、慌ててアサギ達はトモハルを支えて保健室を目指す。階段の踊り場でトモハルの様子を見ようとアサギが覗き込み、力なく笑ったその頬に手を添える。
「大丈夫、落ち着いて。大丈夫、大丈夫」
それだけだった、アサギがそう言った瞬間に、脳を圧迫されていたような感覚が消え失せていた。急に軽くなったので、唖然とトモハルは額に手をあてる。
「あ、あれ、治った」
嘘ではなく本心だと見て分かったので、三人は深い溜息を吐くと安堵して緊張を解く。
「ごめん、なんか、心配かけて」
「それはいいんだけど、一応保健室行ったら?」
ダイキに促されて、トモハルはユキと共に保健室へ向かった。渋々だったが、ユキもそうしろと言うので言葉に甘えることにした。しかし、気分は晴れ晴れとしている。
気味が悪いくらいに。
「どう思う、アサギ」
「解らないけど、なんだろう、変な感じがしたの」
残されたダイキとアサギは神妙な顔つきで頷き、好奇心の目を向けていた生徒達の中をすり抜けて、亮達のいる廊下へ急ぐ。
「亮!」
「浅葱」
ふと、アサギは亮が来ているパーカーのポケットがやんわりと光っている事に気付いた。それは何か訊こうとする前に、先程の違和感を探すが見つからない。
「大丈夫だと思う、多分」
そう言い放った亮を唖然と見上げたのは、ミノルとケンイチだ。ダイキは状況把握が出来ていないので、首を傾げて聴いていた。アサギは頷き、亮を見つめている。
「……私もそう思う」
キィィィ、カトン。
何か音が聞えた。
肩を竦めてミノルは面白くなさそうに呟いた、妙に気持ち悪く感じ衣服で手を拭く。ぎょっとした、尋常ではない汗が吹き出し、濡れていた。今になって、背筋が凍る。一体自分達は何を感じ取ったのか、足元が掬われる思いがした。
「今日、集合しようぜ」
勇者、としての集会にアサギは狼狽した。出来ればミノルにはもう関わって欲しくない気持ちは、変わらない。反論しようとしたが、察した亮が止めて大きく頷く。
「うん、そう思うよ」
驚いて見上げてくるアサギに微笑み、亮は柔らかに微笑む。
その日、旅立った勇者とアサギの幼馴染である亮が、学校が終わり次第アサギの家に集合することになった。
「どうしよう、ミノルに迷惑かけたくないのに」
家で待機し、怯えた様に震えるアサギを亮が慰める。「気にしすぎだよ、あの人が言い出したんだから、アサギはそんなこと思わなくてもいいよ」
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