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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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29日 アサギとユキ
30日 トビィとリョウとクレロ
31日 トビィとアサギとサーラ
1日 アサギ天界の図書館 からの ガーベラルート 2日 トランシス無双



 疚しいことがあったから、言えなかった。
 親友のユキならば解ってくれると思ったが、もし彼女に否定されたら、自分の想いに自信が無くなってしまいそうだった。
 
 町が一段落したので、勇者達は地球に帰る。
 各々話がしたいが、明日は学校だ。宿題もあるし、寝なくてはならない。
 一応クレロの計らいで、緊急の時は学校へ行かなくても”そこに居た”という記憶を、他の生徒や教師に植え付けることは出来る。だが、勤勉したことにはならないので、丸一日勉強が遅れてしまう。 
 ミノルは休んででも勇者を優先させようとしたが、トモハルが断固としてそれを拒否した。

「ミノルが一番拙いだろ、勉強しないと」
「でも、学校にいたところで結局、俺真面目に聴いてねーし」

 そう言われては言葉を濁らせるしかないが、ケンイチの後押しもあって、どうにかミノルを説得した。学校を休むことは、非常事態以外は禁止だ、と皆で誓う。
 不服なのはミノルだけだ、世界を守るよりも、ただ学校をサボリたいのだから、皆に止められても仕方がない。
 学校の事はよくわかっていないので、トビィは口を挟まなかった。収束したので、言い忘れていた事を告げる。

「そうだ、アサギ達。アリナがな、ディアスに俺達が住める館を用意してくれたぞ。勇者達一人一人に、個々の部屋が用意されている。自由に使って良いとのことだ」
「え、何それ別荘!?」

 ミノルが好奇心に駆られて身を乗り出す、勇者達は顔を見合わせると歓声を上げた。
 自分の部屋以外に、別の部屋が出来るというのは嬉しいものだ。そこは、家族にも干渉されない、隠れ家である。多感期の子供達は、一気にそれに食いついた。

「やべぇ、そこなら何時間ゲームやっててもいいんじゃねーの、これ!」
「……電気がないから無理じゃない?」
「馬鹿言え、充電して行けばいいんだよ! え、今から行こうぜ」

 興奮しているミノルだが、周囲は引き気味だった。まさかそこまで歓喜するとは思わなかった、そして用途が勇者とは全く関係ない。

「明日。ミノル、明日にしよう」
「えー!」
「今から帰って、持ち込みたいものを用意しよう」
「あ、そうだな」

 トモハルの提案に大きく頷くと、瞳を輝かせたままのミノルは、一目散に帰路に着きたがる。苦笑するトモハルだが、アサギは微笑んで二人のやり取りを見ていた。
 見ていて、心から信頼し合っていると解る。そんな二人を微笑ましく思い、羨ましいとも思った。

「トビィ、ディアスの何処?」
「そういえば、お前達はディアス自体行ったことがないだろ。一応アリナの館の裏側になるが、案内する。明日オレも同伴しよう」
「助かるー! 何持ち込もうかな、カップ麺は必要だよな」

 絶対必要ないものを持ち込みそうだと、トモハルはげんなりするが、自分も何を持ち込むか考え始めた。物が増えすぎて、置けない雑誌などを倉庫代わりに使ってはどうだろうと思案する。
 しかし、それではミノルと五十歩百歩だ。

「それで、転送陣を地球の何処かに設置したい。館の一室にすぐさま来れるようにな、会議もそこで出来る。便利だろ」
「おー、いよいよ正義の司令室みたくなってきた! いーね、いーね!」

 話が進まないので、トビィはアサギとトモハルと詳細を語り出す。
 一応勇者達は、天界城にて紅茶を出された為、それを飲んで待機した。

「ユキは何を? ピアノが置けるといいね、好きな時に弾けそうじゃない? 夜はあんまり弾いたら駄目なんだろ?」
「うん、近所迷惑になるから、夜中は練習できないから嬉しいかも。でも、どうやって運べばいいのかな、それにピアノが消えたら流石にお母さんに不審に思われちゃう」
「あ、そっか、ユキは家族に勇者の事言ってなかったもんね」
「うん。こんなことしてるなんて、知らないから」

 のんびりと話すケンイチとユキの会話を、ダイキは聴いていた。
 結局、地球から仲間達が集う館への転送陣は、アサギ宅の庭になった。臨時なので移動する可能性があるが、すぐに設置出来る場所はそこしか思いつかない。
 設置に関して、マダーニとアーサーが携わるという。

「アーサー様が? チュザーレの復興はもう良いのです?」
「アーサー達も館に集っている、気軽に行き来出来たほうが、情報交換が楽だからな」
「みんなに会えるのですね! リュウ様達はどうでしょう?」
「あいつらは入ってなかったと思うが……サマルト達はいる」

 仲間達との再会に、アサギは胸を躍らせた。
 夢のような場所に思えた、いつでも会いたい時に会いに行けて、話が出来る。天界城を介さなくとも良い事に、気も楽になる。天界城も楽しかったが、忙しないし、何より人間は快く思われていないように見えていた。恐縮していた。
 勇者達は興奮状態で地球へと戻った、顔に出さなかった者もいたが、大掛かりな秘密基地を手に入れたようで、皆浮足立っている。
 アサギの家の前で、皆は解散する。夜も遅いので、アサギの父が勇者達を車で送ってくれた。
 遠いミノルとトモハルが、先に降ろされた。一応帰る前にメールをしたのだが、怒りの返信が届いた。帰宅が遅いと目くじら立てていたミノルの両親だが、アサギの父が謝罪しつつ「皆で勉強をしていたようで」と、機転を利かせて嘘をついてくれた為、どうにか難を逃れる。
 アサギの父に感謝しつつ、ミノルは急いで新たな自室の為、部屋に篭った。
 ダイキを降ろし、ケンイチを降ろし、リョウは自転車で帰ったので、残りはユキだ。
 車内でユキとアサギは、手を繋いでいた。
 アサギは、言おうと思った。トランシスの話を、しようと思った。
 だが、父の前ではどうにも言えない。
 ユキの手を強く握り、別れの挨拶をすると、すぐにメールを打つ。

『今日はお疲れ様! 新しい部屋、楽しみだね』

 アサギが帰宅してから、ユキから返信が届く。

『そうだね、私は雑誌を持ち込もうかな、って。真剣に勉強したい時に使うかも』
『いいね、そういう時便利だね。それでね、ユキ。話がしたくて。明日、休み時間に教室へ行ってもいい?』

 十分程度待ったが、返信が来なかったので、アサギは入浴した。上がると、メールが届いていた。

『どうしたの、メールでいいよ』

 メールだと長くなってしまう気がしたので、アサギは直に話がしたかった。だが、ユキも忙しいだろうと、長文を打ち込み始める。

『あのね、新しい彼氏が出来たの。地球の人じゃないの、勇者になったリョウの惑星の人、だと思う。私、天界城に行ったときに、クレロ様も知らない惑星を宇宙で見つけたの。その惑星がマクディ、っていう名前なんだけど、そこにいた、トランシスっていう五つ年上の人がね、彼氏になってくれてね。変かな、ミノルと別れたばかりなのに。でも、その人の事、とても好きだと思う』

 お気に入りの桃の香りがする入浴剤に浸かり、愛用のシャンプーで髪を丁寧に洗い、トリートメントをつける。汚れた何かを落とす様に、懸命にボディソープを泡立てた。
 目の前の鏡を見つめる、泡に包まれた自分を見つめる。

「彼氏が出来た? ハァァァ、バッカじゃないの!? 何それ、新しい彼氏ってなんなのよ、ソレェェェェ!」

 鏡の中の、ユキが酷く歪む。
 手の中の濃密な泡を、鏡に投げつけ、塗りたくる。
 自分の姿が見えなくなった。
 荒い呼吸を繰り返し、ユキは湯船に浮かんでいたひよこの玩具を掴み上げると、壁に投げつける。

「新しい彼氏!? もう!? もう新しい彼氏が出来たっていうの!?」

 アサギは、特別な子だ。
 誰からも好かれる、特別な存在だ。
 ミノルと別れたことで、狙う男達もいた。それは知っている。
 心の中で蠢く感情が、何か解らない。
 地球の男が彼氏でなくて良かったとは、思った。自分が知らない男が彼氏のほうが、気が楽な気がした。
 だが、やはり何処へ行ってもモテるアサギが羨ましく思った。
 ミノルが好きだといいながら、一度振られただけで諦めて、さっさと別の男に乗り換えるアサギを嘲笑しつつも、自分でもそうするだろうと思い、自己嫌悪する。
 風呂から上がり、鬼のような形相でメールを打ち込む。

『え、新しい彼氏? ミノル君はいいの? とても好きだったんでしょ? アサギちゃんって結構尻軽だったんだね、ショックだな』

 打ち込んで、消した。

『え、おめでとう! どんな人なの、今度紹介してね!』

 打ち込んで、送信を躊躇する。

 アサギより優位に立てていると思ったのに、違った。 
 悔しくて、情けなくて、泣けてきた。アサギに苛立つのか、自分に苛立つのか、解らない。

『違う惑星の人? 大丈夫なのかな、心配だな』

 打ち込んで、消す。

「心配なんかしてないっつーの、バッカじゃないの!?」

 舌打ちして、震えている手元の画面を睨み付ける。
 直に言われなくてよかったと思った、メールのほうが、考えて返答が出来る。感情に任せて言葉を打ち込むことはない、送信しなければ、相手には伝わらない。

『馬鹿馬鹿馬鹿死ね死ね死ね消えろ消えろ消えろ、お前なんかお前なんかお前なんか、大っ嫌いだ』

 ユキは、愉快そうに口元を歪ませて、親友へのメールを打ち込む。
 打ち込んで、下書きに放り込む。幾つも思いの丈を打ち込んでは、下書きへ投げ込んだ。

『明日お話聞かせて、とりあえず私は、今はなんとも言えないけど、アサギちゃんが幸せならそれでいいんじゃないかな、って思う』
 
 翌朝、アサギが起きると、ユキからそんなメールが届いていた。
 

  
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