別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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勇者達がそれぞれ楽しく”秘密基地”で定着しそうな場所に居た頃、天界城では、三人が静かに沈黙を守っていた。
神であるクレロ、ドラゴンナイトのトビィ、そして新に勇者となったらしいリョウ。
訊きたいことも話したいことも多々ある、しかし、何から言えば良いのか躊躇する。
三人とも、大筋の思いは同じであるというのに。
沈黙を破ったのは、リョウだった。
「僕が勇者だとするなら、アサギと同じように魔王を倒す旅に出るべきですか」
クレロは首を横に振る、その反応に、トビィが意外そうに瞳を細めた。
勇者に選ばれて、旅立たない者などいるだろうか。選ばれた意味がないのではないか。
「いや……君は特殊だ。そもそも、君が勇者となる惑星マクディだが。誰が君の助けを待っているのだろう? アサギ達の場合は、使者としてその惑星の者達が捜しに出向いている。君の許に誰か来ただろうか? 来ていないだろう、石だけが突然出現した。
そして私はその惑星に関して何も知らない、何が起きているのか、本当に勇者を必要としているのか、それも解らない。
君を惑星マクディへ届ける事は可能だ、だが、私とて悪魔ではないので、何も知らない状態で投げ込むわけには」
「ということは、アサギ達勇者の件に関しては、ある程度貴様が事情を把握していたんだな」
トビィがすかさず口を開く、問い詰めるなら今日しかないと思っていた。以前から、クレロには何か隠し事をしている節がある。指示を出す人物がそれでは、気味が悪い。
クレロは、その問いに素直に頷いた。
「その話は後でする。まず勇者リョウから終わらせよう。
惑星マクディという場所は、アサギが発見した。それまで私はその存在すら、知らなかった。その惑星へ、アサギは勝手に出向いてしまった。私はそれも知らなかった。知っていたら、止めていた」
「止めた?」
「うむ、未知の惑星に、何故大事な勇者を行かせる必要がある? 私が下界の対応に追われていた時、アサギが監視を外れてしまってな。出向いたアサギはそこで”トランシス”という少年に出会ったらしい」
その名に、首を傾げたリョウと、顔を引きつらせたトビィ。クレロは続ける。
「そのトランシスという少年がマクディの使者で、リョウの前に姿を現していたのなら、マクディを救うよう動いても良いだろう。だが、彼は勇者など必要としていないように思える」
「魔王の存在は?」
トビィの問いに、クレロは神妙に頷く。
「強いて言うならば、惑星ネロの近いようだ。魔王リュウが支配していた惑星だな。しかし、異なる点が。惑星マクディを支配しているのは、魔王でも、異界からの訪問者でもなく、同じ惑星の人間だ。一人の人間によって、苦しめられているらしい」
「つまり、リョウが倒すべきはその人間か。またけったいなことで」
肩を竦めたトビィに、クレロは苦笑するとリョウに向き直る。
「もしかしたら、君の使命はその惑星を独裁者から救うことなのかもしれない。確かにそれならば、民も望んでいるのだろう。だが、君は渇望された存在なのだろうか? 私にはそうは思えない。だから、あの不気味な惑星には近寄らせない」
「……解りました、ただ、アサギと共に行動する許可はください。僕にはそれが必要だ」
鋭く言ったリョウに、やんわりとクレロは頷く。そのつもりだった、最初から魔法を操る勇者の出現は、クレロにとっても心強い。
「勿論だとも。君はアサギの傍にいて、彼女を守れば良い。君の、思う通りに」
リョウは嬉しそうに微笑み、深く礼をしたが、トビィは釈然としなかった。
「リョウの件は終わりでいいな? その惑星には出向かない、助ける義理はない、ということで。
さて、ここからが本題だ。クレロ、何か隠しているだろう、全て話せ。でないと協力したくない」
神に対して強気で発言するトビィに、多少リョウも驚いた。しかし、トビィが出まかせにそんなことを言うとも思えない。もし、目の前の神が虚偽を語っているならば、リョウにも関わる大問題だ。姿勢をただし、トビィに寄り添ってリョウは瞳を細める。
「隠しているわけではない、真偽が掴めないので、解るまでは話したくなかっただけだ。混乱させたくなかった」
「その言葉がまず嘘くさい、いいから全て吐け」
睨み付けるトビィに、クレロは若干肩を落とす。一瞬躊躇したが、クレロはようやく、口を開いた。
「判断は、君達二人がしてくれ。私は包み隠さず、全てを話そう。
まず、一つ目。アサギ達が勇者になった際の事だ」
キィィィ、カトン。
聴こえた不審な音に、三人は周囲を見渡す。しかしその場には、誰もいない。
舌打ちしたトビィを見つめてから、クレロは再び口を開いた。
「勇者の石。あれは、人間達は勘違いしているかもしれないが、神である私が司っているものではない。だから実は、何故、地球という惑星にいた勇者達の許へそれらが飛んでいったのか、解らない。勇者は、神である私が選んだわけではない、石に意思があると考えたほうが良いのだろうか。その石の出生は私も知らない、人間達の間で『世界が混沌の危機に陥った時、伝説の勇者が石に選ばれ世界に光をもたらす』とされていたが、驚いたよ」
「え、ちょっと待って? その石、本当に勇者の石なの?」
あまりの言葉に、流石のトビィも絶句する。リョウは混乱し、頭を抱えた。
「私はただ、異界から美しい娘が現れることを知っていた。膨大な魔力と美貌を兼ね備えた、何からも愛される娘だと。アサギを見た時に、それが彼女の事だと解った。その娘は、目の前に立ちはだかる全てのものを、絶対的な力で払いのけることが出来る……神をも凌ぐ存在だと。その娘を手厚く保護し、なるべく彼女の負担にならないように守護するのが私の役目だと」
最早、トビィもリョウも、何を言っていいのか解らなくなった。
神は、魔王を倒す勇者を待っていたのではない、一人の娘を待っていたらしい。
「トビィ、君に話さなかったのは、ここから先が理由だ。
その娘が来ることは、知っていた。しかし、勇者として大勢の仲間と共に現れるとは、聴いていない。魔王を倒すなどとも、聴いていない。私が待望したのはアサギだと確信しているが、見当違いな現れ方をしているので、どうしたらよいのか」
「……多々突っ込みたいことがあるんだが、最も気になるのはアンタの役目だ。神、の存在意義が知りたい」
勇者を選ぶわけでもない、魔王が下界に居ても特に気にしていない。
ならば、神とは何なのか。
クレロは、軽く瞳を閉じると憂鬱そうな瞳を開き、掠れた声を出す。
「空のこの大地に住まう、天界人達の長。それだけだ、確かに下界の監視は出来る、だが、それだけだ。別に下界の動きを司っているわけでもない、楽園を築こうとしているわけでもない。神とて、交代する、私が初代ではない。おそらく、翼ある者達が天界に住まい、それを見た人間達が、神だと崇め始めただけなんだと、私はそう思っている。
神には、なんの力もないよ」
「下界を監視しているだろう?」
「おそらく、先代達は暇だった。花が溢れるこの場所で、何もすることがなかった。しかし、外科医は違う。日々、考えもつかなかったことが起こった。だから、観ていたのではないだろうか、娯楽として、興味本位で。それだけだよ」
トビィが、失笑する。
リョウが、狼狽する。
クレロが、寂しそうに笑った。
「アンタ含む、この天界に住まう者達が、暇を持て余していただけの種族だとして。アサギの前に魔王を倒した後、姿を見せた意図は何だ。
異界から来たアサギが、魔王をも倒せる者だと知っていたから、最初は保護しなかったんだろ? ならば何故、魔王を倒し、脅威が去った後でアサギを保護するかのように現れた」
鋭利なトビィの視線に、もうクレロはたじろぐことはない。
「地球という惑星のアサギがいた日本は、余程のことがない限り、安全な場所だった。地球を見つめ、それを把握した。ならば、アサギは地球にいることが安全だと思った」
「アンタは、アサギを守護したいからな」
「そう。しかし、トビィも知っているだろう。魔王以外の脅威を、破壊の姫君という存在を」
リョウも、アサギから聴いている。ノートの隅に、アサギが書いた文字を思い出す。
「その破壊の姫君、というもの。魔王を神をも、凌ぐ存在。全てを滅ぼす、美貌の姫君」
そこでトビィは、我に返った。
破壊の姫君の話を、以前ジェノヴァで聴いた時『その姫君はとてつもない魔力と、類稀なる美貌の持ち主だそうです。誰しもが魅了されてしまうと。その姫君が本気を出せば、すぐにでも世界が破滅へと追いやられるとか』こう語られた。
気づいたトビィに、クレロが頷く。
「解ってもらえたかい? 異界から美しい娘は、膨大な魔力と美貌を兼ね備えた、何からも愛される娘。目の前に立ちはだかる全てのものを、絶対的な力で払いのけることが出来る娘。……私が待っていた異界からの娘にそっくりだろう?」
トビィは、口元を押さえた。脳内整理が出来ていないリョウは、トビィを不安そうに見つめる。
「つまり」
トビィの押し殺した声が、響く。
「異界から来た勇者であるアサギが、破壊の姫君?」
「私もそういう考えに行きついた、だから話が出来なかった」
「え、え、どういうこと!? アサギは勇者だよね!?」
リョウを制し、何度か言葉を飲み込み、溜息を吐き、トビィは結局何も言えず舌打ちを続ける。
「確定ではない。解らないことが多過ぎて、私も不用意にこの話をしたくなかったのだ。許してくれ」
「……それは、なんとなく理解した」
「それで、二人に頼みたいことはこれからだ。憶測しても答えなど出ないだろうから、私の思いを聴いて欲しい。
トビィ、リョウ。君たち二人を、アサギの傍にいて最も守護するに適任な者だと判断した。彼女を、護ってやってくれないか」
言いたいことは解るし、言われなくともやる。トビィは渋々頷き、リョウも大きく同意する。クレロが力を無くし、肩を下げた。
「解らないのだ。破壊の姫君というものが、アサギなのか。破壊の姫君の目的が、何か。ただ、私はあの子が傷つかないように護ってやりたい。それだけだよ」
何故、そこまでアサギに肩入れしているのか。恋心を抱いているようにも思えるが、何か違う気がしたトビィは「最後に」と、重々しく口を開く。
「異界から来るらしい娘について、アンタは一体誰から聞いたのか、知ったのか。先代の神からか」
クレロは、真顔で、こう答えた。
その声は、妙に透き通っていて、今までとは違い、妙に威厳を感じられた。
何処かで、何かがまわる音が聞こえる。
「大体合っている。代々神という名の天界人の長に伝わってきたといえば、そうだ。だが、正しくは……この惑星クレオの意思だと思う」
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