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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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目標は、毎日更新です。

※一応本気



 一発触発の空気を読まなかったのは、アサギだ。

「あ、そうでしたトビィお義兄様。トランシスにそのうち剣を教えて頂きたいのです」

 却下、と口から飛び出しそうになったトビィだが、飲み込んで堪える。剣の稽古、という名目ならば多少の無茶をしても咎められないと判断したからだ。僅かな間の後、アサギに極上の笑みを浮かべたトビィは「あちらが希望するなら、オレは構わないが?」と挑発的にトランシスを一瞬だけ見た。
 そう言われてはトランシスも受けるしかない、唇を軽く噛みしめるがようやく掌の火炎を消し去ると、仁王立ちになり大きく頷く。

「どうぞよろしく、トビィさん」
「いえいえ、こちらこそ」

 互いに抑揚のない声で、睨みを利かせている。言葉と感情は正反対だ、その冷たい空気にクレシダとデズデモーナは震え上がるが、一人アサギは嬉しそうにはしゃいでいる。

「よかった! 心強いです、二人共同じ歳ですし、きっと気が合うのです。親友になれると好いですね」
「それはないな」
「それはないね」

 流石にその言葉には二人揃って即座に反発した、一気に蒼褪め、互いに額を押さえる。

「でも、先程から行動似てますよね。そういえば髪と瞳の色も不思議な事に同じですし、なんとなく雰囲気も似ている気がします」
「冗談は止めてくれ、アサギ」
「冗談だろ、アサギ」

 間入れず、やはり反論する。そのタイミングの良さに思わずアサギは吹き出して、軽やかに笑い出した。唇を尖らせ、右の人差指一本をこめかみに当てると顔を渋らせた二人。こんな空気にされては、脱力するしかない。
 デズデモーナも大きく肩で息をし、安堵の溜息を漏らしていた。
 しかし、クレシダは唇を軽く動かす。そこから音が発せられることはなかったので、誰も何をクレシダが呟いたのか、思ったのか知らなかった。彼は、こう言ったのだ。「ですが確かに似ております、まとう空気は違えども、あそこまで仕草が似ているとは」無表情で、冷静にその場を見ていた。
 トビィとトランシス、二人の誕生日が同じだということは、もう少し先で発覚する。

「それで、結局今日は何処へ行く予定なんだ? 同行しよう」
「ぇ、いや」
「トビィお兄様が一緒だと助かります! クレシダとデズデモーナに乗せて頂けると、上空から惑星クレオを紹介出来ますね」

 言うトビィにトランシスは全力で拒否しようとしたのだが、アサギが嬉しそうに同意したので口を噤むしかなかった。二人でいたかったのだが、とんだ逢瀬になってしまった。
 アサギの同意を得たので、満足そうにトビィは薄く笑うと、悔しそうに舌打ちしたトランシスに向き直る。

「ならば行こうか」

 すぐさまアサギの肩を抱くと、そのまま歩き出した。
 固く拳を握り締め、二人に追いつくと、トビィから奪うようにアサギを抱きしめ、そのまま担ぎ上げる。小さく悲鳴を上げて頬を染めたアサギだが、気にせずにトランシスはトビィに屈託ない笑みを浮かべた。

「そうですね、いきましょうか」

 身じろぎするアサギに「あまり動くと下着見えるから、大人しくしてなよ」と笑うと、挑戦的に鼻で笑い、トビィを睨み付ける。
 額に青筋を浮かばせて、小刻みに震えているトビィに、クレシダとデズデモーナは再び胃が痛む程緊張感を走らせるしかない。「ここに居ては身が持たない」と思わず口走ったデズデモーナに、クレシダも小さく頷いていた。
 五人で歩き、天界城から出る。クレシダとデズデモーナが竜の姿に戻らなければならないので、その巨体を確保できる場所まで移動した。

「デズ、アイツだけ乗せて振り落せ」
「……また難しいご注文をされますね、それをした場合、私はアサギ様に非難されるのでは」
「どうにか言い訳しろ、合わなかった、とか」
「そんな無茶苦茶な」

 再びデズデモーナの胃が痛みを訴える、産まれて初めて黒竜は多大なストレスを感じた。トビィの目は大真面目だ。気の毒そうにクレシダがそれを見つめているが、自分に被害が被らないよう、ちゃっかりそ知らぬふりをする。
 救援の視線をクレシダに送ったデズデモーナだが、背を向けている同僚に絶望と激しい怒りを感じた。
 
「デズデモーナ、よろしくお願いしますね」

 助けを出したのはアサギである、声が聞えた瞬間に頬を染めて「勿論です!」と声を張り上げたデズデモーナは意気揚々とトビィの傍を離れた。

「私とトランシス、二人乗せても大丈夫ですか?」
「勿論です!」

 後方でトビィの舌打ちが聞えたが、それでも心は晴れやかになった。目の前のアサギに、感謝の念を送りながら跪き、笑みを浮かべる。
 だが、気づかなかった。
 トランシスが冷ややかな視線で、デズデモーナを睨み付けていた事に。

「……コイツで三人目? オレのアサギの周りをうろつく邪な奴らが多過ぎる、すげぇ邪魔」

 キィィィ、カトン。




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