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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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マビルきたよー!
⇒眠くて諦めたよー!

『アサギに似た女が犯人だ』
 トビィがそう皆に伝えたので、捜しやすくはなった。火災が起きていない街や村でも、殺人が起きており、それも同一犯だと推測される。
 アサギに似た、黒髪の美少女。
 一体何者なのか、今存在する仲間達には分からない。世界を見通すことが出来る神クレロならば、過去の魔界を覗き見れば、その存在に気づけたかもしれないが、まだ魔族という情報が上がっていなかった。
 その間にも、世界各所で人が消えるという事件が止まらない。
「人間達が『神隠しにあった』と言っているらしいが、私は誰も隠していないのだが」
「どうでもいいことで悩まないでください、神が最も不可解な存在なのですから、いちいち人間の言葉に反応しないでください」
「うーん」
 多少落ち込んでいるクレロに大袈裟に溜息を吐いた側近のマグワートは、調査しているトビィ達の中にアサギがいないことに気づいた。首を傾げる。
「アサギ様は何処へ? 天界城には出向いてらっしゃるのに?」
「来ているのか? 連絡がとれないのだが」
「えぇ、数人が目撃していますけれど」
 トビィと同じく、クレロも不審に思っていた。真っ先に協力を申し出るであろうアサギが、いない。眉を潜めて、胸を押さえた。
「嫌な予感がする」
「アサギ様をお探しください、すぐに見つかるでしょう」
「うむ……」
 クレロは自慢の球体に、アサギを映し出そうとした、だが、映像は遮断され浮かび上がらない。無情にも球体は揺らめきすら、しなかった。
「妙だな、そんな筈は」
「神の視界を遮っているのです? 一体アサギ様は何処で何を?」
 アサギに対して、不信が募る。ただでさえ今は、アサギに瓜二つの少女が問題になっているのに、これ以上問題を起こして欲しくなかったクレロは、軽く唇を噛んだ。
「何処にいる、アサギ。私の目の届くところにいてくれ」
 小さく、情けなく呟く。「私は今度こそ、そなたを護りたい」そう続けた。
 そんなことになっているとは知らないアサギは、まだトランシスと口づけを交わしている。
「もう、ここに住めばいい。行かないで」
「でも、トランシス。私、小学校にも行かなくちゃいけないし、勇者なのです」
「勇者!?」
 初めてその単語を聞いたトランシスは弾かれたように起き上がると、アサギを見つめる。勇者、というのは偉業を成し遂げた者だと思うのだが、目の前の小柄なアサギが一体何をしたというのか検討がつかなかった。
「えーっと、勇者って? アサギ、一体何者なの?」
「あ、あのですね、それが」
 隠すつもりはなかったが、話すきっかけがなかった。困惑し申し訳なさそうに瞳を伏せるアサギは、徐ろにベッドから下りて床に立つ。
「私は、地球、という青い惑星に住んでいます。そこから、惑星クレオという場所へ旅立ち、勇者になりました」
 おいで、セントラヴァーズ。
 アサギがそう囁くと、左手首の宝石が眩い光を放ち、目を閉じたトランシスが次の瞬間見たものは。
「剣……!」
 片手剣が、アサギの手中にある。微笑し、アサギは小さく頷いた。
「これは、私の武器です。今は剣ですが、その姿を自在に変化させることが出来ます。その世界で、魔王はいなくなったのですが”破壊の姫君”というよくわからない敵? みたいな感じの人? が世界を滅ぼそうとして? いるかもしれないので、今はそれを調査しています」
「疑問符が多いな……それだけ得体が知れないってことなんだ」
「はい、そうなのです。さっぱり掴めなくて」
 剣を仕舞ったアサギに、怪訝な瞳が向けられる。
「あのさ、アサギ。勇者ってことはつまり、危ないことをしてるの? 戦っているってことだろ?」
「はい、魔法も使えますよ」
「いや、そうじゃなくて」
 細い手首を掴んで引き寄せ、抱き締めたトランシスは首を横に振った。
「心配だ、こんなに華奢な身体で戦うなんて止めて欲しい」
「そ、それは流石に無理です、勇者なので」
「じゃあ、オレもその世界に行くよ」
 待ってましたとばかりに、トランシスはそう言って爽やかな笑みを浮かべる。何度か瞬きするアサギは、それはそれで楽しいと深く考えずに頷く。
「そう……ですよね。別にトランシスがこっちの世界へ来ても良いのですよね」
「剣かぁ、多少は扱えるけど。魔法って、火を操ることも含まれる? オレ、それなら出来る」
 言うが早いか、右手で炎を繰り出し、にっこりと微笑んだ。唖然とその揺らめく炎を見つめつつ、アサギは嬉しそうに頷く。
「すごい! 魔法剣士だったのですね!」
「いや、多分違うけど。戦ったことなんてないけどさ、覚えるよ。オレがアサギの傍にいて、守ればいいだろ?」
「か、かっこいいです」
 微笑んで頭を撫でられ、アサギは思わず口走ってしまった。驚いたトランシスだが、意地悪そうに瞳を光らすと鼻先同士を触れさせる。
「もっかい言ってよ、聴きたい」
 逃げられないように身体を拘束し、唇が触れるか触れないかのところで止める。アサギの身体が震えだし、弱々しい声で「かっこいい、です」と告げれば。そのまま再び口づけた。
 再び、口づけの時間が始まる。
 終わらないように思えたが、身じろぎしたアサギは唇が離れた僅かな時間に「あのっ」と口づけを止める。不服そうに唇を尖らせたトランシスに、申し訳なさそうに呟いた。
「今から、行きませんか? よかったら」
「あぁ、そうだね。早い方がいいかな、また戻ればいいし? 戻ったら続きをしよう」
 口づけはしたかったが、時間はある。トランシスは軽く笑うと、アサギの頬を撫でた。気持ちよさそうにうっとりと瞳を閉じた様子を見て、悪戯心が湧いてしまう。
「その前に」
「ぇ、ひゃあっ」
 胸元の衣服を指で下ろすと鎖骨の下辺りに口付け、強く吸った。
「んっ」
 痛みと熱さで仰け反ったアサギに薄く笑い、唇を離すと紅く染まったそこを指先で撫でる。
「今日逢ったシルシ、会ったら違う場所に一つずつつけていく」
「そ、そうです、か」
 
 赤面し、紅く染まったキスマークを見つめると、アサギは恥ずかしそうに身を捩る。再びトランシスは数回口付け、最後に強く抱き締めた。
「本当に抱き心地がいいなぁ、オレ大好きアサギの身体。甘い香りがして、柔らかくて、食べたいくらい好き」
「ぁ、あぅ」
 やがて二人は、手を握り締めると二人で歩き出す。例の木から戻ることにしているというか、この場から移動出来るのか不安だっただけだが。
 仲睦まじく歩く姿に、数人が気づいた。
「オルビス! あの娘誰!?」
「み、緑の髪っ。トランシスの言うこと、本当だったの!? 誰よ、何処から来たのよ!」
「あ、あれ、トランシスが美少女連れてる」
 トランシスと親しい若者達が、遠目から見ていた。羨ましそうに二人を見る者、興味津々でアサギを見つめる者、嫉妬に包まれて憎悪の瞳で見つめる者。
 それでも二人は、気にせずに歩いていた。砂が多くなればトランシスがまたアサギを抱き上げて、木へと向かう。照れながらも首に手を回し、安堵して瞳を閉じるアサギ。
「剣は、トビィお兄様に習うと良いです。私もそうでした、とても上手ですから」
「へぇ、アサギお兄さんいたの?」
「血は繋がっていないのですが、お兄様です。弟二人もいますよ、血が繋がっています」
 その言葉に若干胸に何か引っ掛かりを感じたトランシスだが、何も言わなかった。「トビィさん。ね?」その名を呼ぶと、水に零した黒インクが沈みながらドロドロと周囲に広がるように釈然としないものを感じたが、何も言わなかった。まだ見たこともないのに、勘だけで「嫌いだ」とはとても言えなかった。
 二人を拒むものは、何もないと思っていた。二人でいれば、大丈夫だと思っていた。二人でいるしかない、など夢にも思わなかった。
 クレロが一人思案していた時、ようやくアサギが戻って来る。鉢合わせした三人だが、悪い事だと思ってなかったのでアサギは狼狽しない。
 ただ、クレロはアサギと共に現れた男を見て、耳鳴りがした。口元を抑え、二人が手を繋いでいることに気づく。
「アサギ? 一体」
「クレロ様! ようやくお会い出来ました、この間は宝物庫から杖を勝手に持ち出してごめんなさい。あの杖がどうしても必要だったのです、ほら、デズデモーナ達は身体が大きいから、こうした建物の中に入れなくて可哀想でしょう? マグワート様達が杖は戻してくださった筈ですが、大丈夫でしょうか」
 言葉を濁したクレロはお構いなしに、アサギは勢いよく謝罪する。面食らったが、問題はそこではない。
「いや、あのな、アサギ。杖はともかく」
「トランシス、この方がクレロ様。惑星クレオの神様です」
「へぇ、神? 普通の人に見えるけど。神というなら、オレ達の惑星も助けて欲しいね、っていうか、何やって生きてんの」
「あの……話を聞いてくれないだろうか」
 目の前で二人が盛り上がっているので、遠慮がちにクレロは話しかけた。情けなく手を伸ばし、苦笑いしている。
「ごめんなさい、クレロ様。ところで、トビィお兄様が今何処にいるか知りませんか?」
「アサギ、その人に会うのは今度でいいよ。案内が先だ」
「そうですね……ではクレロ様、失礼します!」
「バイバイ、神様」
 気にも止めず、二人が歩き出したので流石にクレロが声を荒立てた。視線は先程から、トランシスに注がれている。見た瞬間に、血の匂いがした。警告の鐘が今も鳴り響いていた。
「待ちなさい、アサギ! その隣の彼について説明してもらおうか。何処の誰だ?」
 しれっとしているトランシスを見上げつつ、アサギは微笑む。
「トランシスです」
「……名前は先程解った、何処の人だろうか、衣服が」
 地球のものでも、クレオのものでもない。嫌な予感がし、足先からトランシスを食い入るように見つめる。緊迫した空気が、クレロの周辺にのみ漂う。
「惑星マクディの人です、ほら、赤い色した」
「……何故、管轄外の人間がここにいるのか。アサギ、順を追って最初から説明しなさい」
 声色が、変わった。流石にアサギも気づき、何か悪いことをしたのかと、焦りの表情を浮かべる。が、トランシスは変わらぬ態度でいた。腰に手を添えて、アサギの肩を抱き寄せると、憮然と言い放つ。
「人の恋路の邪魔をしないで欲しいんですけど、神様。オレはトランシス、アサギの恋人。よろしく」
「こ、恋人!?」
 すっとんきょうな声を上げて二人を見比べる、恥ずかしそうに俯いたアサギだが、そっとトランシスに寄り添ったのでクレロは目眩がした。口元を押さえる。
 ミノルはどうしたのか、という疑問が浮かんだが、この悪びれない目の前の男を何処かで見た気がしたので必死に記憶を手繰り寄せる。
 しかし、思い出そうとする度に目眩がするのだ。
「あの、それで今からトランシスを色々案内したくて。勝手に連れてきてしまってごめんなさい。あ、剣も魔法も使えるんですよ」
「そういうわけで、バイバイ神様」
 深くお辞儀したアサギと、飄々と手を振ったトランシス。唇を噛み締めながら、クレロは声を荒立てる。
「駄目だ、許可できない。今すぐ帰す」
 後ろからの声に、アサギは弾かれて振り返った。鬼のような形相のクレロが立っている、何故、そこまで怒るのかアサギには解らなかった。が、食い下がるわけにはいかないので反論しようと前に出る。
「どうしてですか、理由を教えてください」
 真正面から言い放ち、トランシスを庇うように前に立つ。後ろでトランシスもクレロを睨みつけていた、二人が引く気など、全くないことはクレロにも解る。
 詳細は知らないが、なるべくアサギの願いは叶えてやりたかった。だが、駄目だと直感したのだ。
「……まず惑星が違う」
「私とクレロ様だって違います、何がダメなのですか?」
「惑星マクディは、私の管轄外だ。未知の領域なのだよ」
「地球や惑星ハンニバルもですよね? 何が違うのですか?」
 引かないアサギに舌打ちするが、折れるわけにはいかなかった。
「地球にはアサギやトモハル、勇者がいた。彼が何処かの惑星の勇者だというならば認めるが、そうではない」
「でも、一緒に戦ってくれる仲間です。今は人が多い方が良いって」
「過酷な戦いになる、何もしれない人間を巻き込むわけにはいかない」
「……いいじゃん、オレがイイって言ってんだから」
 トランシスも参戦する、怒気を含んだ声にアサギは驚いて見上げた。初めて聴く声だった、一瞬身体が引きつった。その反抗的な態度にクレロも感情を抑えつつも、怒りがこみ上げてくる。
「君が良いから、とそういう問題ではない」
「どうして駄目なのか全然理解出来ない、納得できる理由が欲しいね。まぁ、納得したところでオレは絶対に認めないけれど」
「そうだろうと思ったよ、ならば説明する時間が勿体無いな。君を強制的に送還する」
「ま、待ってください!」
 縋るアサギに多少は躊躇したが、クレロは首を横に振った。
「駄目だ、勇者アサギといえども、勝手な行動は許されない。二人が共にいることは、不可能だ」
「なら私、勇者やめます。この間クレロ様と交わした約束も、破棄します!」
 
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