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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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ねむい。



 翌日、アサギは学校から帰ると大急ぎでエプロンを装着し、台所に立つ。米を洗い炊飯器をセットしてから、手馴れた手つきで卵を5個割り、フライパンを取り出す。油をひいて熱している最中に、割った卵に調味料を入れて箸で溶いた。卵を流し入れると、ジュ、と良い音がしてすぐに香りが部屋に充満する。
 卵焼きを作っている、丁寧に焼き上げ、箸を使い上手に巻いていく。普段から作っているからこそ出来る、かなり整った形の卵焼きが完成した。
 香りに釣れて弟達がやってきたので、端を切り落とし与えた。
 美味しそうに顔を綻ばせたので安堵し、次はウィンナーを焼いた。
 お弁当箱に卵焼きとウィンナーを詰めて、炊き上がったご飯でおにぎりを作る。中身は焼き鮭にしておいた、海苔で包むと熱いご飯に熱されて、磯の香りが漂う。
「何処か行くの?」
 弟に訊かれたので、大きく頷く。
 アサギは簡単に卵かけご飯を食べて空腹を満たすと、母に夕飯は要らないことを告げ、大急ぎで家を飛び出した。
 行き先は天界城だ、トランシスに会う為には、一旦そこを経由しなければならない。
 持ち物は、お弁当箱と水筒だ。トートバックに入れているので、一見何か分からない。
「今日の服装、変じゃないかな」
 出かけてから立ち止まる、足先から見つめて顔を顰めた。
「子供っぽいかな」
 学校へ行った服装そのままだ、紺色の襟付きプルオーバーに薄桃色のヒラミニである。昨日トランシスに会った時は、惑星クレオの衣装だった。大人っぽいのはどちらか、と言われたら間違いなく昨日の服装である。
「トランシスさんは、十七歳だから。わ、私では子供っぽいかな」
 着替えようか迷った、一瞬脳裏を、ミノルと共にいた美少女が横切る。同年代だったが、自分よりも大人っぽく見えたあの少女が羨ましかった。
「子供っぽいより、大人っぽいほうがいいよね、ミノルもそうだったし……子供では、駄目かもしれない」
 そんなことは全くないのだが、急に自分が恥ずかしく思えたので引き返そうかと身体を翻す。だが、温かいうちにおにぎりを食べて貰いたかったので、そのまま意を決して走り出した。
 天界城に到着すると、クレロに挨拶すべきだと思ったが、時間が惜しかった。帰ってきたら必ず、と言い聞かせ、昨日と同じ部屋へ出向く。もしかしたらその場所にクレロも居るかもしれないと、期待を抱いて。
 しかし、やはりいなかった。
 アサギは躊躇したのだが、それも数秒のことで直様瞳を閉じ念じる。
『あの惑星へ行き、あの人に会いたい』
 そう願った。アサギの身体は、瞬時にそこから掻き消える。
 
 瞳を開けば、目の前には昨日見た風景が広がっている。ただ今回は木の上ではなく、根元に立っていた。風が頬を撫でる、鼻腔を刺激する薬品の香りが鼻につく。思わず咳き込んだ。
 到着出来て安心したが、ここにトランシスはいなかった。振り返り木々を見つめると軽く会釈をし、歩き出す。
 集落があると聞いた、そこを目指すのだ。
 アサギは、荒野を歩き出す。砂浜のような乾いた砂に、スニーカーが埋もれる。身体が沈む、砂が靴に入って気持ち悪い。
「アサギ!」
 慣れない足場に戸惑っていると、名を呼ばれた。ここで自分を知っている人物など、一人しかいない。
 アサギは嬉しそうに声の主を見つめる、トランシスが手を振りながら走ってきた。思わず手を伸ばす。
「こ、こんにちは」
「遅いよ、待ってたのに」
「ごめんなさい、その、学校があって」
「ふーん、ま、いいケド。なんか来た気がしたから見に来たんだ。オレ凄いだろ?」
「あ、はい! その、嬉しいです」
 伸ばした手をトランシスは掴んだ、そっと引き寄せると爽やかに笑う。
「当然! オレ、アサギの彼氏だろ」
「は、はいっ」
 赤面し、アサギは俯いた。嬉しくて口元が震えた、気を許すと緩んでしまうほどに、もどかしくて胸がざわめいている。
 軽く笑い、トランシスはしっかりと手を握り締めると歩き出す。その手のぬくもりが嬉しくて、大きな手を見つめながら歩き出すアサギだが、やはり歩き難い。
 それに気づき、トランシスは自分とアサギの足元を見比べた。ブーツを履いているトランシスは、砂が侵入してこない。歩き慣れていることもあるだろうが、苦戦しているアサギの頭を撫でるとそのまま抱き上げた。
「きゃあっ」
「いいよ、連れて行ってあげる。それにしてもアサギは軽いなぁ、軽すぎているのかいないのか、分からなくなる」
「お、下ろしてくださいっ。その、自分で歩きます」
「大人しくしてなよ、こっちのほうが速い」
 至近距離で覗き込まれたので、慌てて視線を外らすと耳まで真っ赤にし小声で礼を述べる。
「は、はい。あ、ありがとうございま、す」
「ふふ、素直で可愛い。オレ、好きだなぁ。そういう従順なトコ」
「は、はぁう」
 素直で、可愛い。
 オレ、好き。
 従順なトコ。
 アサギは何度も心の中でその言葉を繰り返す、そっとトランシスを盗み見ると、間入れず目が合う。驚いて仰け反ると、悪戯っぽくトランシスは舌を出した。
「何、見惚れちゃった? オレ、結構顔イイだろ? どう、好み?」
 言葉に詰まり、アサギはトートバックを握り締め、顔を埋めてから囁いた。
「か、かっこいい、です……。だから、その、恥ずかしいです」
 震えて告げるアサギに豪快に笑い出すと、上機嫌で歩き出す。
「いやー、可愛い可愛い、すんごく可愛い。めっちゃオレ好み! いいよいいよ、もうオレすげぇ好きかも」
「ぇ」
 もうオレすげぇ好き。
 再び台詞を脳内で再生したアサギは、耐えられなくなりトランシスに寄りかかった。控えめだが衣服を握り締め、胸に頬を寄せる。
 そんな様子を上から見ていたトランシスも、身体中を何かが這い回って快楽を与えてくる感覚に陥った。
 もどかしい、今すぐにでもこの腕の中にいる小さくて愛らしい存在を。
「めちゃくちゃにしたい、思う存分、好きなだけ」
 はっきりと、そう告げた。トランシスの顔が引きつった笑みを浮かべている、血走った瞳でアサギを食い入るように見つめ、舌なめずりをした。
 が、アサギは先程から言われている嬉しい言葉たちを脳内で復唱していたので、気づかない。
 そのまま誰にも会うことなく、トランシスの家へ到着する。大丈夫だとは思うのだが、念の為トランシスは施錠した。  
 ギィィィ、ガチャン。
 物々しく扉が閉まる音に、アサギは反応した。
「ようこそ、オレの家へ! さぁ、話をしよう」
「はい! あ、その前に。あの、お口に合うか分かりませんが、お弁当を作ってきたのです。お腹空いてますか?」
 慣れたベッドに腰掛け手招きしたが、そう言われると確かに腹が減っていた。軽く天井に視線を移したが、大きく頷くとベッドから下りて歩き出す。
「貰おうかな、いいね」
 テーブルにお弁当箱と水筒を出したアサギを、静かにトランシスは見つめている。蓋を開いて中身を見せ、水筒から付属のコップにお茶を注ぎれる様子を、うっとりと頬づえついて見ていた。
 それに気づき、恥ずかしそうに身じろぎしたアサギは「どうぞ」と食事を促す。
「いただきまーす、なんだろこれ、初めて見る」
「おにぎり、って言います。外の黒いのは海苔です、白いのはお米で中身は鮭っていうお魚です」
「へぇ、良い香りがする。……うぉっ、なにコレうめぇ!」
 しげしげと形を眺めてから、トランシスは一気におにぎりに齧り付いた。豪快な様子に思わず吹き出したアサギだが、目を丸くしておにぎりを喜ぶ姿に肩を上げて喜んだ。
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