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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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頑張ろう、11月から毎日更新したいな。




 海苔と白米が大変気に入り、また食べたいと言ったトランシス。卵焼きもふっくらと美味しく、優しい味付けに感動した。
「アサギ料理上手いね、感動した」
「あ、ありがとうございます! 嬉しい、また作ります」
「ココで作ってくれてもいいよ? どうなんだろ、作れそう?」
 台所へ案内したトランシスは、頭を掻きながら顔を顰める。一通りの器具はあるのだが、材料がない。畑で野菜を育てているが共同なので配分は決まっている。
「あ、なら地球から持ってきます。それなら作れますよね」
「お、いいね! 毎日アサギの手料理が食べられるのか、もうここに住みなよ、オレ大歓迎だよ?」
「あ、は、はい、えっと学校があって、その、住めるものなら住みたいのですが、そういうわけにも」
「えー」
 困惑しているアサギに唇を尖らしたトランシスは、軽々と抱き上げると腹も満たされたことなのでベッドに腰掛けた。
 全く警戒していないアサギに苦笑しつつ、抱きしめ頭を撫でる。
「少しずつ、互いのことを話していこう。結構生活環境が違うよね」
「そう、ですね」
「あと、敬語も止めていこうね?」
「はっ、そうでした」
 膝の上に乗せて、正面からアサギを抱き締める。小さい身体を愛おしく撫でた、今日も良い香りがする、と耳元で囁く。
 一瞬身体を引き釣らせたアサギだが、ぎこちなく背中に手を回し何度か大きく息をする。頬をすり寄せ、数分後には瞳を閉じて微笑む。
「意外に小悪魔」
 苦笑したトランシスは、下半身が疼いたのでそのまま反転しベッドにアサギを押し付けると覆い被さる。流石に悲鳴を上げたアサギだが、唇を塞がれて何も言えなくなった。
 慣れた手つきで、太ももに触れる。短いスカートに手を忍ばせ、滑らかで柔らかな太ももを撫でた。
「……面白いね、アサギ。清らかで初々しいが、男を誘う仕草と表情が妙に艶かしい」
 と。
『このオレをコケにしやがってっ! 大金叩いて買ってやった恩が、これかっ! どの男だ!? 間男は何処にいるっ』
 
 床に叩きつけられた、小さな少女。強打され、床に転がり痙攣する。その背に思いきり足を踏み下ろすと、鈍い音が響いた。骨が折れたのだ、少女の身体が海老反りになる。床に広がる赤い染みと、歯の欠片。
 緑の髪の少女は、声も出せずに大きく震えている。いや、この少女は最初から声が出せなかった。
 腫れ上がった顔を見て、トランシスは大きく息を飲む。
「アサギっ!?」
「え、あ、はい」
 顔を赤らめながら、真下でアサギが返事をした。ドッと汗が体中から吹き出し、数滴アサギに垂れる。それを拭うことも出来ずに、不安そうにトランシスを見つめるアサギ。
「大丈夫、ですか? 顔色が悪いです」
「あ、いや、大丈夫、大丈夫だよ。ごめん」
 身体が震えていた、罪悪感で胸が押しつぶされそうだった。何かは分からないが、言い知れぬ恐怖に脳が揺さぶられた。
 ぎこちない動作でアサギの上から退き、横に転がるとトランシスは右腕で顔を覆い隠す。そっと、左手でアサギを捜し、見つけると優しく掴む。
「ごめん、目眩がして。頼む、傍にいてくれないか。落ち着くから」
「はい、あの、タオルに水を含ませて額に乗せましょうか? 私」
「行かなくていい、ここにいてくれ、頼むから」
 絞り出したような声に、アサギは身体を起こすとトランシスに寄り添う。優しく手を包み込み、撫でた。
 優しい心を感じた、涙が込み上げてきたトランシスは小さく嗚咽を漏らす。無性に泣きたくなった、何を意味するのか分からないが、子供のように泣き叫びたかった。
「ごめん、ホントにごめん」
「どうしたのですか、大丈夫ですよ。私、ここにいますから。トランシスさんがいて欲しいなら、ずっといますから。だから、安心してください。望んでくれるのなら、います」
 キィィィ……カトントントン……。
 暫く二人は、ベッドの上で、寄り添っていた。
「行かないでくれ、頼むから」
「大丈夫です」
「本心なんだ、頼むから分かって」
「はい、分かりました」
「頼むよ、オレはアサギが大好きなんだ。嘘じゃない、ホントなんだ、頼む、頼むから」
「大丈夫ですよ?」
 胸が締め付けられた、目の前のトランシスがとても小さく思えて、気の毒で、何かに怯えている様子で。
 アサギは、トランシスの上にうつ伏せになる。両腕で頭を抱えて、何度も撫でた。「大丈夫ですよ、ここにいますよ」と囁いた。
 その重みと温もりに安堵し、落ち着いてきたトランシスは両腕を背中にまわす。じんわりと広がるアサギの全てを愛おしく感じた、何もかもが愛おしかった。
 何故かは検討がつかない、しかし、わけもなく恋に落ちて溺れた。深い恋の沼に落下したら、浮上は出来ない。ただ、沈んでいくばかりだ。
 甘美な水は、飲めば溺れる。けれど、飲んでしまう。苦しくなることはわかっているのに、飲むことを止められない。この水に、自分を溶かしてしまいたくなる。
「愛してる、かもしれない」
「え?」
 突如呟いたトランシスに、アサギは顔を上げた。
「変かな、変だよな。でも、誰よりも愛しく、自分よりも大事な存在に思える。ずっと探していた気がする、会いたかった気がする。愛しているんだ、これ、多分」
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