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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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かーにーかにーしゅうまーかにかにしゅうまー


 涙目のアサギは、きっぱりと言い放った。口笛を吹いて拍手をしたトランシスを忌々しく睨みつけ、クレロは溜息を吐く。
「アサギ、少し考えなさい。勇者を放棄しても彼と一緒にはいられないよ、地球から出ることは二度とない。トビィ達にも会えない」
「トランシスの惑星へ行きます、そうしたら一緒にいられるのでしょう?」
 満足そうに頷いたトランシスは、顎を撫でた。何故自分が神に拒否されているのかよりも、アサギが必死になってくれることが嬉しかった。自分のために、神と口論してくれているアサギを、愛おしく感じた。
「何故、ですか? 何故そんなにトランシスと離そうとするのですか?」
 震える声でそう告げたアサギを直視出来ず、悲しい瞳の色にクレロが口籠る。
 泣かれると、流石に強気で出られなかった。クレロは、アサギに対して非常に弱い。関係を見ていて直様トランシスもそれに気づく、神が偉い筈なのに、何故困惑しているのか。
 冷めた視線をクレロに投げかけ、徐ろにアサギに近づくと背後から抱き締める。クレロの眉が釣り上がったことに、トランシスが気づかないわけがない。
「あぁ、そういうことか」
「え?」
 後方での呟きにアサギは振り返ろうとしたが強く抱き締められ、身動きがとれなかった。が、トランシスの体温が上昇していくのを感じ、不安になる。
「トランシス?」
 名前を呼ぶが返事がない、代わりに腕の力が強くなる。
 ……神のくせに、アサギに愛情を抱いてやがる。
 見透かすような視線で睨みつけてくるトランシスに、クレロは一瞬たじろいだ。妙な威圧感を覚えた、同時に身体の血がザワめき始める。
 
「お前……何者だ」
 絞り出した声に、トランシスは答えることはない。ただ、邪悪な視線を投げつけて、ゆっくりと口角を上げる。
 クレロの第六感が訴える「危険だ」と警告している、だがアサギに本当のことを話す事が出来ないでいた。
 まさか『この男はアサギにとって凶星で、破滅にもたらす”気がする”』とは言えない。憶測でしかないのだ、証拠はなかった。
 今のアサギに、そのようなことを言っても無駄だとも思った。恋は盲目だ、人間界を見てきたクレロは、人間の恋愛感情で人々が啀み合い、殺し合う様とて知っていた。
「……今すぐに許可は出来ない、制限を設けさせてもらう。結論が出たら二人は離れることになるかもしれないが、それでも良いか?」
「嫌だね」
 アサギが答える前に、トランシスが拒否をする。瞬きしていないのではないか、というくらいに、痛い視線を投げ続けていた。負けじとクレロも睨み返した。
「十日だ、十日に一度ならば、会っても良い。ただし、丸一日のみ、だ。地球で言う二十四時間が経過すると、自動的に互いの星へ強制送還させる条件を設ける」
「十日!?」
「二十四時間だけ、ですか!?」
 声を荒立てた二人に、クレロは頷く。
「絶対だ、分かったな?」
「却下」
「……解りません、どうして駄目なのですか」
 当然反発する二人だが、クレロも退くわけにはいかない。トランシスが一体何者なのか判明するまでは、監視が必要だと判断した。
 アサギの、為に。
 だがそのアサギは目の前で泣いている、離れるのが嫌で泣いている。ずっと、泣いている。時折クレロを見上げては、泣いている。
 罪悪感に苛まれたクレロは、その場で何度も足を踏み鳴らし、小声で「ならば七日で」と折れた。
 だが。
「せめて三日でお願いします」
 唇を尖らせアサギが言う、首を横に振り続けるが、アサギは期待を込めた視線を投げかけてくる。痛いほど突き刺さるそれに、クレロは片手を広げて前に出した。床を見つめ、大きく溜息を吐くしかない。
「五日……五日が限度だ」
 どうしても駄目だった、アサギのあの泣き顔は見たくなかった。例えこの先、更に泣くことになろうとも自分が泣かせることだけはしたくなかった。
 何故、あの泣き顔を見ると辛いのか。遠い昔に間近で見たような気がするからなのだが、そんなことは口が裂けても言えない。
 個人的な感情はなるべく押し殺さねばならないのだが、一体この不鮮明な記憶が何かクレロには解らないでいた。
 ただ、アサギが勇者になり惑星クレロへ来てからというもの、時折不思議な夢を見る。アサギが、微笑んでいる夢だ。それを見ている時は、安堵出来た。護られているような錯覚に陥り、その時だけは神という自分を忘れて、緊張を解き安らかな心でいられた。
 だが、夢の中のアサギは時折泣いている。遠くを見て泣いている。その泣き顔が、目の前のアサギと同じだった。
 顔を盗み見ると、アサギは嬉しそうに微笑み、小さく礼をしている。
 それだけで、胸が軽くなった。見た瞬間に「私も甘いな」と、自嘲気味に呟く。喜ぶ顔が見たかったので、有り得ないと思ったが、こう続けた。
「もし、二人が共にいても良いと判断したら、勿論直ぐに伝える。好きにすれば良い」
「ありがとうございます! きっとそうなるって信じています!」
「二人が一緒にいても良いなんて、見てれば分かるだろ? 三日以内に判断してくれよ」
 感謝を述べたアサギと、悪態ついたトランシス。顔を歪めてクレロはあからさまに睨みつけたが、トランシスは鼻で笑っている。
「今日は一緒にいてもいいですか?」
 駄目だ、と言おうとしたが、アサギが再び縋る様な視線を送ってきたので、ぎこちなく頷いてしまった。頷いてから頭を抱えてしまう。
「じゃあ、ちょっと案内してきますね! ありがとうございます、クレロ様!」
「日付が変わるまでだ、いいね、アサギ」
「はい!」
 手を繋いで走り去った二人を落胆して見送るクレロは、姿が見えなくなると表情を引き締める。何故、あぁもあの男を毛嫌いしてしまうのか、自分でも理解出来なかった。しかし危険要因だと、誰かが囁いている。
「アサギを、守らねばならないのに」
 それすらも、何故なのか解っていない。勇者である、大事な人間だから守らねばならないのは当然だが、アサギに関してはそれ以上の想いを感じていた。彼女の笑顔を守ることが、自分の使命な気さえしていた。
「神は私だ、誰にも縋ることなど出来ぬ。私が、やらねば」
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