別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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ねむい
軽く口づけをする、どうして良いのか分からずアサギは瞳を閉じたままだった。触れる唇の感覚に都度身体を引きつらせ、離れるとゆっくり肩で息をする。再び触れると、こわばる身体。
上下するアサギが愉快で、トランシスは含み笑いを漏らしながら何度も口付ける。近寄ると、不思議な良い香りがした。髪から香るのか、白く美しい首筋から立ち上る色香なのか。
改めて、トランシスはアサギを見つめる。
不思議な衣装を来ていた、見たことがないデザインだった。
今日のアサギは惑星クレオの調査に出向いていたので、日本の服ではなくクレオのものである。まだ暑いので大きなリボンがついたチューブトップに、プリーツが綺麗な短いスカート、そしてロングブーツ。こんな綺麗な布を見たことはない、目の前のアサギが何処か違う場所から来た人物な気がして、トランシスは腑に落ちない。
「アサギ?」
「あ、はい」
熱に浮かされたような表情で自分を見上げたアサギに、下半身が熱を帯びる。思わず、腕で顔を隠した。顔に熱が集中し、赤くなっているような気がしたので恥ずかしくてトランシスは隠した。
何故、恥ずかしいと思ったのか解らない。だが、こんな自分を見られたくなかった。
「あの、どうかしましたか?」
「べ、別に。……とりあえず、恋人になったんだから、互いのことをよく知り合おう。アサギ、何処から来たの? この辺の子じゃないだろ」
トランシスの顔が見えない、不安に眉を顰めアサギはそっと手を伸ばし、腕に触れた。瞬間、手が弾かれる。
「触るなっ」
「ご、ごめんなさい」
驚いて手を引っ込めた、大声に胸の鼓動が速まる。急に身体が震え出す、今の声を昔聞いたような気がした。
『触るな、気持ち悪い』
耳元で声が聴こえた、喉の奥で悲鳴を上げると、アサギは指を噛む。こうしていないと自分が発狂してしまいそうだった、歯が深く指に食い込んでいく、その痛みでどうにか今の自分を保っている気がする。
キィィィ、カトン。
何か音が聴こえた、トランシスがようやく腕を外し訝しげに周囲を窺う。しかし、何もない、聞こえない。首を傾げてようやく溜息を吐くと、少しは冷えた頬に手を触れてみる。
頭に血が上り、沸騰した数分前。朦朧とする意識、だがアサギの姿だけは鮮明に。少し不安そうな大きな瞳は伏せ目がちで、怯える様子がまた加虐心をそそられた。
思い出したら再び下半身が熱を帯びる、密着していた為、アサギが違和感に気づき身体をよじる。
「う、動くな、大人しくっ」
「木の枝が挟まっているみたいです、何か背中にあたるんです」
「そ、そのうち取れるから、とにかく動くなっ」
「あ、はぃ、あぅー」
手を動かし、異物を取り除こうとするアサギを、懸命にトランシスは止めた。アサギが身をよじるたびに、下半身を刺激する。無邪気にとんでもないことをしてくれた、このまま犯そうかと衣服に手をかけたが。
……ダメだ、彼女の信頼を得なければ。そして順序よく調教せねば、従順な娘に育てなければ、身も心も喜んで差し出す様にならなければ。
「失敗する」
無感情に聴こえた声に、アサギは首を傾げる。必死に首を曲げて顔を覗き込めば、何処か遠くを見つめており、視線が交差しないトランシスがいた。
「冗談じゃない、これ以上取り逃がしてたまるか。今度こそ、今度こそ、オレは手に入れる」
何を言っているのか解らなかったが、急に背筋が冷たくなったアサギは何も言えず、すごすごと肩を窄めながら正面を向く。木から見下ろした大地は、荒野だった。乾いた風が時折鳴き、灰色の空へと舞い上がる。
「ここ、何処?」
トランシスに口付けされすっかり忘れていたが、何故自分がここにいるのか知らない。ようやく事の重大さに気がついたアサギだが、後ろのトランシスに何を説明すれば良いのか。
身体が震え始める、この震えが何から来るのか解らないが、このままではダメだと唇を噛み締めた。必死に記憶の糸を辿る、惑星クレオでクレロを捜していたのを思い出した。
そこから、酷い頭痛に襲われて、この木に引っかかっていたような気がする。
ここは、何処だ。
再度アサギは目の前の大地を見下ろした、そういえばここに木があるが前方には緑色が見えない。いや、緑だけではない、色彩が灰色の世界が広がっていた。
唖然と見つめる、このような退廃した場所がクレオに存在しただろうか。
ふと、トランシスの履いているボトムが気になった。ジーンズに見える、となると、ここは惑星クレオではない。ジーンズはあの惑星に存在しない、トランシスの服装から見ると、どちらかというと日本を彷彿とさせる。
二人して、呆けていた。
見知らぬ場所へ来てしまった勇者アサギと、見知らぬ娘に口付けてしまったトランシス。
トランシスが口づけたことにより、責任をとって恋人になった二人。
地球の日本にいたらば、ここへは来ることが出来なかった。勇者となり、神に信頼され、天界城を徘徊した結果、ここへ来た。
アサギが勇者にならなければ、不可能な出会いだった。
『滅び行く国で、次は勇者になりたい、と願った。勇者になるなら力が必要だ、誰にも負けない力が必要だ。勇者に、なれば。勇者に、なりさえすれば。もう、何も』
少女の願いは、このために、勇者になりたかった意味は、ここに。
勇者にならねば、この目の前の男には、逢えなかった。
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