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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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 それにしては堂々と迷いがない、アサギにバジルは関心を通り越してやはり畏怖の念を抱いた。美しく、強く、完璧な勇者。そんな人間存在するのだろうか、と瞳を細めるが、今は詮索している場合ではない。
 進んでいくと、また分かれ道だ。
 また左へ進むアサギ、再び光の球体をそこに置く。目印にしているのだ、迷子にならないように。
 魔物は出てこない、不気味なほど静かだった。
 何度か分かれ道になったが、アサギは全て左を選択した。やがて、前方に光が浮かび上がるのを見ると、アサギは唇を噛む。

「戻ってきましたね……」

 四人は光の前で立ち止まる、アサギがそっとそれに触れた。

「迷路だぐ」
「……二回目の分かれ道に出たみたいです、大きさを変えておきましたから。右へ行きます」

 軽く拍手したトビィと、口笛を吹いたリュウ、右へと入っていく。再び別れ道に出た、同じように光の球体をそこに置くアサギだが、四人が同時に同じ方向を見つめる。
 何も発しず、ただ右へと走り出す。声が聞こえたからだ。

「来てはなりません!」

 しわがれた声だったが、紛れもなくリングルスの声だった。
 アサギは、左手で杖を掴み、右手に魔力を集中させると、杖へとかざす。前方に光を放ち、全てを照らした。ただの洞窟だったが、最終地点は広い空間が出来ていた。中央に、リングルスが捕らえられている。
 目に飛び込んできた光景にリュウが咆哮し、バジルが直様魔法の詠唱を開始する。

「なんてこと!」

 唖然と見つめた視線の先には、リングルス。ただ、その背からは触手がはえていた。波に揺れる海藻のように、蠢いている。

「お逃げください、身体と意志が繋がっていないような気がします」
「何があったのかは後で聴く! それを引き剥がす!」

 後方に回ったリュウは、剣を構えるが躊躇した。体内から這い出してきているような触手、どう斬ればよいのか解らない。その隙に、触手はリュウ目がかけて鞭のように襲いかかる。
 舌打ちして避け、触手を斬り落とすと、リングルスがくぐもった悲鳴を上げた。声を堪えたようだが、無理だったのだ。

「痛みを……感じるのか!? 神経に繋がっているのか!?」

 愕然としてリングルスの横顔を見つめるリュウに、再び触手は襲いかかる。紙一重で避けたものの、どう扱って良いのか解らない。

「殺してください、もう駄目です。体内を斬られ、何かを植えつけられた気がします。勝手に動きます、何より、自分の中で他にも何かが蠢いている気が」
「馬鹿な!」

 儚げに微笑むリングルスをリュウが叱咤するが、バジルは魔法の詠唱を完成させた。火炎の魔法をリングルス向かって投げつける、顔を引き釣らせたリュウが死に物狂いで間に入り、自ら作り出した魔法壁でそれを天井へと弾いた。が、後方からの触手攻撃を交わすタイミングが遅れてしまう。
 間一髪、トビィがリュウを横蹴りし、難を逃れたが恨めしそうに腰をさすった。

「そんな目で見るな、腰を強打したくらい良しとしろ」
「ぐー」

 再びバジルが詠唱を開始する、激怒し、それを止めようとするリュウだが、先にアサギが止めた。バジルの手にそっと触れて、宥めるように下ろす。
物言いたげに口を開いたバジルに、有無を言わさずアサギは微笑む。途端、硬直したバジルは震えながら詠唱を止めた。
 何も言えない、「任せてください」と瞳で訴えられた。

「まだ、間に合います。元に戻します」

 自分に恐れず近づくアサギに、「来てはいけない」と必死に投げかけるリングルス。だが、アサギは歩みを止めなかった。

「リングルス様、捕まってからのお話をしてください」
「しかし、アサギ様!」
「早く! ……お願いします」

 触手がアサギに襲いかかる、バジルとトビィが攻撃すべく身を屈めたが、リュウが止めた。リュウは見たことがある、意識を操られたスリザを戻したアサギを。あれと同じことをするのではないかと、そう思ったのだ。「行け、アサギ。そなたの力を存分に発揮せよ」不敵に笑うリュウを、バジルは怪訝に見つめる。が、トビィは喉の奥で笑った。

「地上で捕まり、抵抗むなしく地下へ運ばれ、この部屋へ来て」
「遥かなる天空に溢れる、眩い光よこの手に来たれ」
「背中を何かで切り裂かれ、肉に硬く冷たいものが埋め込まれました」
「我の声と共に光を抱きし雲に覆われた天は、応えたまえ」
「身体が動かず、しかし体内では皮膚の下で何か悍ましいものが動き回っているような、喉を掻き毟りたくなるような、発狂して叫び続けて、気がついたらこれが生えていました」
「今、ここへその光を放ちたまえっ!」

 触手が襲いかかってきても、アサギの手前で何かに怯えるように止まる。近づきたいが、近づけない、まるで意志をもつかのように、まごまごと蠢いていた。
 詠唱の完成と共に、光をリングルスが包み込む。眩いそれに、皆俯いたが、アサギは見ていた。光の中で何かが身悶え、苦しそうに地面で転がっている様を。リングルスではない、彼は瞳を閉じ、必死に耐えている。

「得体の知れない生物が、寄生しているのですね。埋められたのは、種なのか、何なのか。なんにせよ、これは禁呪です」

 アサギは素早く転げまわっているそれに駆け寄ると、剣を突き立てる。電車の車輪とレールが軋み、火花を散らして急停止するような、耳に痛い金属音が響いた。
 光は、その部屋の天井にあった穴から、地上へと溢れ出す。
 苦戦していたトモハル達も、その光を見た。少し眩しいくらいだったが、目の前で奇っ怪な敵は続々と倒れていった。

「アサギだ」

 思わず呟いたトモハルは、そう確信し額の汗を拭う。エレンにも記憶があった、間違いなく、アサギだ。
 動かなくなった敵を、それでも見張っているとリングルスを抱えたアサギ達が地下から戻ってくる。一体何か分からなかったが、クレロに報告すべきだとうと判断し、破壊はしなかった。
 リングルスは無事だ、背中に大きな傷跡が残ったが、飛行も出来る。

「一体、何だったのでしょうか。不気味過ぎます、あんな人体実験みたいなこと、魔族のみんなはしていませんでした。敵が何か、目的はなんなのか検討がつきません」

 アサギが静かにそう告げる、皆無言で押し黙った。
 魔王は、いない筈なのに。平穏は、来なかった。
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