別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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なんか重くて制限されたので、二つに分かれてしまいました←
顔を上げて良いものか、不安だったが気になる視線を感じ、思わずそっと様子を窺う。
黒髪の日本人と思われる人間が、こちらを見ていた。可愛らしいお手製のエプロンをつけ、二つに髪を縛っている女性が物珍しそうに見つめている。
彼女が声の主であると、アサギは直感する。
口々に戦乙女様! と懐かしい声が聴こえ始めるが、アサギは彼女を見つめていた。
「この方……誰でしょう、とても、不思議な人」
小さく呟くが、歓声を上げながら殺到してきた者達に取り囲まれてしまい、彼女の姿が見えなくなる。待って、と叫んで手を伸ばすが、自分を慕って集まってきた者達を無下には出来なかった。
口々に自分を褒め称えるが、その度に胸に何かが突き刺さる。どうしてこうも慕われているのか、理解が出来ない。
いや、理解してはいけない。
「あ、あの、私、私は」
「戦乙女様が戻られた! もう大丈夫だ、ご無事そうで何よりです!」
誰も、自分を責めなかった。自分が消えたことで戦が起こってしまったのだが原因である自分を咎めず、まだ盲目的に崇拝している。
「あ、あの、私、私がいなかったせいで、こんな惨劇が」
「もう安心だ、何処へも行かないでください。今までのように皆を見守っていてください」
「ま、待ってください、あの、私は戦乙女ではなくて、本当は」
話を聞いてなど貰えない、何故か涙を流しながら自分に平伏す人々が恐ろしくなる。震えずにはいられない、純粋なのだろうがせめて一人くらい糾弾して欲しかった。
元凶なのだから。
そうこうしている間に、話をしてみたかった日本人と思われる女性が消えていた。埋もれながら必死に探る、意識を集中させると彼女は大木の下にいるようだった。
「……コナラの大木、なんて立派な」
『戻られましたか、アサギ様。ご用命あればなんなりと』
立派な団栗を身につけたコナラの樹が、話しかけてきた。一瞬反応があったことに驚き身体を引きつらせたが、聞き覚えのある声に記憶が蘇る。爪先から頭部まで一気に映像が駆け抜けていった、懐かしい遠い過去の記憶だ。
「ありがとう、ここにいたのですね。立派になってよかったです。……今、あなたの近くに女性がいると思いますが、彼女は何を?」
『元の世界に戻りたいそうです、貴女様なら容易いでしょう。彼女を返してあげてください、それが善かは私には分かりませんが、彼女が望んでおりますのでね』
「……分かりました、お話してみたかったのですがやってみます。その方のお名前、分かりますか?」
『うらら、と呼ばれておりましたよ』
「うらら。……まるで先程の光景のよう、小春かな光を与えてくれる方なのでしょうね。分かりました、彼女を返します」
アサギが誰と会話しているのか、その場にいた者達には理解出来なかった。だがその自分達には見えない何かと会話している姿こそ、戦乙女。神秘に包まれたこの惑星の絶対神である。
邪魔をしてはならないと、皆地面に平伏しアサギの邪魔をすることはなかった。
瞳を閉じ、”うらら”という名の女性の意識を探る。五百円玉を手にし、願をかけて振りかぶった。
「ありがとうございました、この世界に来て、助けてくださって。恩は必ず、お返しします。恐らくは貴女も誤った運命に翻弄された一人なのでしょう」
大木から光が溢れていた、その眩い光に平伏していた者達も徐に顔を上げてそちらを見つめる。「なんて心地よい、暖かな光なのだろう」誰かが呟いていた、心に刺さっていた何かが、その光で溶けて傷口を柔らかく包んでくれるようだった。
何故争っていたのか、何故他人を傷つけていたのか、何故肉親を見捨ててきたのか。
まるで光によって荒んでいた人々の心が洗い流されたように、悪い夢から覚めたかのように皆頭を抑えて低く呻く。
緊張した面持ちでアサギが声をかけた。
「あの。私のせいです、私が消えた為に皆さんを混乱に招いてしまいました、罪は償わねばなりません。罰を受けねばなりません」
ですが、と付け加える。
言い難い、しかし言わねばならない事だ。
「今、別の場所で私は生活しています。そこで私はやらねばならないことがあります、ですから、その、大変言い難いのですが、その後でも良いでしょうか……ダメですよね」
都合が良すぎる、それは分かるがアサギは今”勇者”だ。この場所で戦乙女として生きてしまっては、あの世界がどうなるのか分からない。自分がいなくともどうにかなるかもしれないが、それではこの正解の二の舞になる可能性がある。
皆は困惑した様子もなく、アサギの言い分を静かに聴き終えると悲しそうに微笑んだ。微笑み、皆が頷いていた。
「こちらこそ、申し訳ありませんでした。何故、貴女様がいなくなったことでこのような愚かな事をしてしまったのでしょう。今となっては恥ずかしく、我らこそが罰せられるべき。疑心に囚われ、犯した罪の数々、御赦しください」
「許すもなにも、私のせいでは」
「違いますよ、貴女様は我らと共にいたわけではなかったではありませんか。ただ、時折来てくださっていただけだった……戦乙女様とてお忙しい身であると知っていたのに、何故でしょう、不安で仕方がなかったのです。大気が異変に怯え、死にゆく定めと唄を紡ぐ木々の声に皆が正気を失いました。あの時こそ、一丸となって貴女様いなくとも生きねばならなかったのに」
アサギと対等に話をしているのは老女だった、何処かで見た気がした。恐らくは過去の映像にいた人物だろう。
「行ってくださいませ、戦乙女様。貴女様の役割を私達は知っている筈です。どうか、何処までも身勝手で愚鈍な我らに慈悲をくださいませ。皆で慈しみ、他人に優しさを持って接しますので、どうか」
アサギは大慌てで首を横に振る、自分にそんな権限などない。
「う、上手く言えませんが、どうか痛ましい過去を忘れてはならないでしょうけれど、捕らわれてもいけないと思うので、あ、あの。素敵な日々がこれから待っていますようにと願わせてください。……願わずとも大丈夫でしょうけれど」
申し訳なさそうにそう告げると、アサギは背筋を伸ばした。瞳を閉じ、唇を舌で湿らせ音を出す。その美声に皆、歓声を上げた。「戦乙女様の唄だ! 誰か、楽器を!」
「古の、光を。
遠き遠き、懐かしき場所から。
今、この場所へ。
暖かな、光を分け与えたまえ。
回帰せよ、命。
柔らかで暖かな光は、ココに。
全身全霊をかけて、召喚するは膨大な光の破片」
武器を作っていた為、楽器などなかった。しかし、そこらにあった物を叩き音域を探すと感覚が呼び起こされる。アサギの声に合わせて皆が身体を動かした、遠い昔、祖先達はこうして戦乙女が降臨する度に、舞を曲を披露していたような気がする。
それは紡がれた記憶の破片であり、真実だ。
「行ってくださいませ、戦乙女様。我らはもう、大丈夫です。貴女様と共に過ごした時間を思いだし、心を豊かにする音を今後は紡いでいきましょう。それこそが、我らの使命」
「……ありがとうございます。本当にごめんなさい、私のせいで」
「何かしたいことがあるのではないでしょうか? 生真面目な貴女様が来ないという事は」
言われてアサギは身体を仰け反らせた、脳の奥で歯車が廻る音がする。何か思い出してはならないことが、音と共に忍び寄ってくる。喉の奥で悲鳴を上げると、皆が一斉に音を出した。その音を聞くと、歯車の音が遠ざかっていく。
倒れそうになった身体を、近くにいた者が支えた。
「華奢だねぇ、戦乙女様」
「折るんじゃないよぉ、桜鼠」
二人の女性がアサギを支えている、無理やり笑ったアサギは、彼女達の頬に触れた。脳裏に何かが浮かび上がる、驚いて飛び上がると、自分の身体を抱きしめた。先程までの頭痛も吐き気も消えている、額を抑えながらふと見ると、項垂れている男性が数人立っている。
下を向いて、明らかに皆と違う雰囲気の男性達に近寄ったアサギは、躊躇しつつも声をかけた。
「少し、宜しいですか?」
戦乙女に声をかけられるとは思っていなかったので、慌てふためきながら平伏したがアサギがそれを制すと、渋々立ち上がる。
水色の流れるようなウェーブの髪を靡かせ、一見女性にも見える美しい男が会釈した。雅な刺繍をほどこした着物を身に纏い、明らかに他の皆と比べると身分が上である。
「お初お目にかかります、月白、と申します。河童です」
河童という単語に目を見開いたアサギだが、動揺を抑えて深く頭を下げる。とても河童には見えなかった、特徴的な皿も彼の頭にはない。美しい男である
「月白様ですか、初めまして」
「”様”などと、そのようなお戯れは。そしてこちらが深緋、蒲公英、京紫、花緑青、朽葉です」
黒髪の日本人と思われる人間が、こちらを見ていた。可愛らしいお手製のエプロンをつけ、二つに髪を縛っている女性が物珍しそうに見つめている。
彼女が声の主であると、アサギは直感する。
口々に戦乙女様! と懐かしい声が聴こえ始めるが、アサギは彼女を見つめていた。
「この方……誰でしょう、とても、不思議な人」
小さく呟くが、歓声を上げながら殺到してきた者達に取り囲まれてしまい、彼女の姿が見えなくなる。待って、と叫んで手を伸ばすが、自分を慕って集まってきた者達を無下には出来なかった。
口々に自分を褒め称えるが、その度に胸に何かが突き刺さる。どうしてこうも慕われているのか、理解が出来ない。
いや、理解してはいけない。
「あ、あの、私、私は」
「戦乙女様が戻られた! もう大丈夫だ、ご無事そうで何よりです!」
誰も、自分を責めなかった。自分が消えたことで戦が起こってしまったのだが原因である自分を咎めず、まだ盲目的に崇拝している。
「あ、あの、私、私がいなかったせいで、こんな惨劇が」
「もう安心だ、何処へも行かないでください。今までのように皆を見守っていてください」
「ま、待ってください、あの、私は戦乙女ではなくて、本当は」
話を聞いてなど貰えない、何故か涙を流しながら自分に平伏す人々が恐ろしくなる。震えずにはいられない、純粋なのだろうがせめて一人くらい糾弾して欲しかった。
元凶なのだから。
そうこうしている間に、話をしてみたかった日本人と思われる女性が消えていた。埋もれながら必死に探る、意識を集中させると彼女は大木の下にいるようだった。
「……コナラの大木、なんて立派な」
『戻られましたか、アサギ様。ご用命あればなんなりと』
立派な団栗を身につけたコナラの樹が、話しかけてきた。一瞬反応があったことに驚き身体を引きつらせたが、聞き覚えのある声に記憶が蘇る。爪先から頭部まで一気に映像が駆け抜けていった、懐かしい遠い過去の記憶だ。
「ありがとう、ここにいたのですね。立派になってよかったです。……今、あなたの近くに女性がいると思いますが、彼女は何を?」
『元の世界に戻りたいそうです、貴女様なら容易いでしょう。彼女を返してあげてください、それが善かは私には分かりませんが、彼女が望んでおりますのでね』
「……分かりました、お話してみたかったのですがやってみます。その方のお名前、分かりますか?」
『うらら、と呼ばれておりましたよ』
「うらら。……まるで先程の光景のよう、小春かな光を与えてくれる方なのでしょうね。分かりました、彼女を返します」
アサギが誰と会話しているのか、その場にいた者達には理解出来なかった。だがその自分達には見えない何かと会話している姿こそ、戦乙女。神秘に包まれたこの惑星の絶対神である。
邪魔をしてはならないと、皆地面に平伏しアサギの邪魔をすることはなかった。
瞳を閉じ、”うらら”という名の女性の意識を探る。五百円玉を手にし、願をかけて振りかぶった。
「ありがとうございました、この世界に来て、助けてくださって。恩は必ず、お返しします。恐らくは貴女も誤った運命に翻弄された一人なのでしょう」
大木から光が溢れていた、その眩い光に平伏していた者達も徐に顔を上げてそちらを見つめる。「なんて心地よい、暖かな光なのだろう」誰かが呟いていた、心に刺さっていた何かが、その光で溶けて傷口を柔らかく包んでくれるようだった。
何故争っていたのか、何故他人を傷つけていたのか、何故肉親を見捨ててきたのか。
まるで光によって荒んでいた人々の心が洗い流されたように、悪い夢から覚めたかのように皆頭を抑えて低く呻く。
緊張した面持ちでアサギが声をかけた。
「あの。私のせいです、私が消えた為に皆さんを混乱に招いてしまいました、罪は償わねばなりません。罰を受けねばなりません」
ですが、と付け加える。
言い難い、しかし言わねばならない事だ。
「今、別の場所で私は生活しています。そこで私はやらねばならないことがあります、ですから、その、大変言い難いのですが、その後でも良いでしょうか……ダメですよね」
都合が良すぎる、それは分かるがアサギは今”勇者”だ。この場所で戦乙女として生きてしまっては、あの世界がどうなるのか分からない。自分がいなくともどうにかなるかもしれないが、それではこの正解の二の舞になる可能性がある。
皆は困惑した様子もなく、アサギの言い分を静かに聴き終えると悲しそうに微笑んだ。微笑み、皆が頷いていた。
「こちらこそ、申し訳ありませんでした。何故、貴女様がいなくなったことでこのような愚かな事をしてしまったのでしょう。今となっては恥ずかしく、我らこそが罰せられるべき。疑心に囚われ、犯した罪の数々、御赦しください」
「許すもなにも、私のせいでは」
「違いますよ、貴女様は我らと共にいたわけではなかったではありませんか。ただ、時折来てくださっていただけだった……戦乙女様とてお忙しい身であると知っていたのに、何故でしょう、不安で仕方がなかったのです。大気が異変に怯え、死にゆく定めと唄を紡ぐ木々の声に皆が正気を失いました。あの時こそ、一丸となって貴女様いなくとも生きねばならなかったのに」
アサギと対等に話をしているのは老女だった、何処かで見た気がした。恐らくは過去の映像にいた人物だろう。
「行ってくださいませ、戦乙女様。貴女様の役割を私達は知っている筈です。どうか、何処までも身勝手で愚鈍な我らに慈悲をくださいませ。皆で慈しみ、他人に優しさを持って接しますので、どうか」
アサギは大慌てで首を横に振る、自分にそんな権限などない。
「う、上手く言えませんが、どうか痛ましい過去を忘れてはならないでしょうけれど、捕らわれてもいけないと思うので、あ、あの。素敵な日々がこれから待っていますようにと願わせてください。……願わずとも大丈夫でしょうけれど」
申し訳なさそうにそう告げると、アサギは背筋を伸ばした。瞳を閉じ、唇を舌で湿らせ音を出す。その美声に皆、歓声を上げた。「戦乙女様の唄だ! 誰か、楽器を!」
「古の、光を。
遠き遠き、懐かしき場所から。
今、この場所へ。
暖かな、光を分け与えたまえ。
回帰せよ、命。
柔らかで暖かな光は、ココに。
全身全霊をかけて、召喚するは膨大な光の破片」
武器を作っていた為、楽器などなかった。しかし、そこらにあった物を叩き音域を探すと感覚が呼び起こされる。アサギの声に合わせて皆が身体を動かした、遠い昔、祖先達はこうして戦乙女が降臨する度に、舞を曲を披露していたような気がする。
それは紡がれた記憶の破片であり、真実だ。
「行ってくださいませ、戦乙女様。我らはもう、大丈夫です。貴女様と共に過ごした時間を思いだし、心を豊かにする音を今後は紡いでいきましょう。それこそが、我らの使命」
「……ありがとうございます。本当にごめんなさい、私のせいで」
「何かしたいことがあるのではないでしょうか? 生真面目な貴女様が来ないという事は」
言われてアサギは身体を仰け反らせた、脳の奥で歯車が廻る音がする。何か思い出してはならないことが、音と共に忍び寄ってくる。喉の奥で悲鳴を上げると、皆が一斉に音を出した。その音を聞くと、歯車の音が遠ざかっていく。
倒れそうになった身体を、近くにいた者が支えた。
「華奢だねぇ、戦乙女様」
「折るんじゃないよぉ、桜鼠」
二人の女性がアサギを支えている、無理やり笑ったアサギは、彼女達の頬に触れた。脳裏に何かが浮かび上がる、驚いて飛び上がると、自分の身体を抱きしめた。先程までの頭痛も吐き気も消えている、額を抑えながらふと見ると、項垂れている男性が数人立っている。
下を向いて、明らかに皆と違う雰囲気の男性達に近寄ったアサギは、躊躇しつつも声をかけた。
「少し、宜しいですか?」
戦乙女に声をかけられるとは思っていなかったので、慌てふためきながら平伏したがアサギがそれを制すと、渋々立ち上がる。
水色の流れるようなウェーブの髪を靡かせ、一見女性にも見える美しい男が会釈した。雅な刺繍をほどこした着物を身に纏い、明らかに他の皆と比べると身分が上である。
「お初お目にかかります、月白、と申します。河童です」
河童という単語に目を見開いたアサギだが、動揺を抑えて深く頭を下げる。とても河童には見えなかった、特徴的な皿も彼の頭にはない。美しい男である
「月白様ですか、初めまして」
「”様”などと、そのようなお戯れは。そしてこちらが深緋、蒲公英、京紫、花緑青、朽葉です」
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