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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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アサギ
マビル
トランシス
偽物



「間に合うかな、何処にいるのかな、見つけられるかな……見つけなくては」

 一人トビィと離れたアサギは、緑の髪を揺らしながら宙を舞った。唇から零れる言葉の意味を、理解していなかった。ただ、行かねばならないということだけは解っていた。

――アサギ様、また勝手な行動を。
――いや、これはこれで好かろうよ。罪を現実として捕らえるだろうから。

 声が、聴こえた気がした。

「クレロ! リングルスが危機に瀕しているなどふざけた冗談は」
「幻獣星の王よ、冗談ではない。勇者達と共に行動していたリングルスが何者かに拉致された、目の前で」

 アサギが単独行動をし、トビィが廃墟と化した村で何者かと接触した頃、天界では神クレロにリュウが噛み付いていた。呼ばれたので血相変えて来てみれば、信じ難い言葉が飛び出し、一気に逆上する。
 淡々と説明され、全くリングルスの身を案じていないような神の態度に憤慨した。歯軋りして食ってかかるリュウを、付き添いのバジルが押し留める。冷静ではあるが、内心腸が煮えくり返る思いである。リュウと違い、表に出さないだけだ。

「今すぐ、そこへ案内して頂きたい。協力は惜しまないつもりでありますが、同胞がそのような危機に直面するなど」
「トビィも合流した、アサギもいる。二人がいればどうにかなるだろう」
「何処までもいい加減な神ですね……その言い方ですと、勇者では役に立たないと言っている様に聴こえます。信じていないのでしょうか、捨て駒なのでしょうか。喰えませんね、神よ」
「……違う、あの二人が異質なのだ。特に、アサギが。王よ、そなたならば私の言わんとすることが解るのでは? アサギならば不可能を可能に出来る、と。善良なる方向へ皆を導く事が出来る、と」

 クレロの問いかけに、急にリュウは熱が冷めた。悔やんだ、この目の前の“神”に感情を見せてはいけないと悟った。現時点で最も信用ならない者の名を挙げよと言われたら、間違いなくリュウはその男の名を告げるだろう。

「“神クレロ”、早くその場所へ。話は後だ、私が優先すべきは護らねばならぬ同胞の命なのでね。それに……友人のアサギも心配だ」

 瞳を細めて背筋を正し言い放ったリュウに、バジルは軽く溜息を吐くと静かに数歩下がり一礼する。自分を取り戻した、この状態のリュウはある意味無敵だ。冷静になればなるほど、その力量を発揮することは、バジルが一番良く知っている。
 周囲で万が一に備えて武器を構えていた天界人達が、クレロが片手をゆっくりと上げた為、武器を一斉に下ろす。緊迫した状況にあったのだが、当の本人達は気にも留めていなかった。

「こちらへ。御武運を」
「神とは……楽な仕事で羨ましいぐー」

 悪態づいて冷めた瞳を投げかけたリュウに、再び武器を構える天界人達だが、やはりクレロが片手で止めた。無意味な争いは不要だ、と怒気を含んだ声で呟く。
 旅立ったリュウ達を見送ると、クレロは深い溜息を吐いた。自分が皆に疑心の目で見られていることなど、知っていた。それでも今は、全てを明らかにすることが出来なかった。何故ならば、神は解らないからだ。真実を手探りで探している状態だからだ。

「しかし便利だぐーな、神の居城からは行きたい場所へ行けるぐーか」
「そのようですね、驚きました」

 天界から地上へと降り立ったリュウとバジルは、淡々と呟く。目の前には静か過ぎる村、その手前には何か焦げたような跡。

「おや、奇遇な」
「奇遇なわけがないぐ、参戦だぐー」

 トビィの竜であるデズデモーナとクレシダが二人に気がつき、首を上げて見つめている。眉間に皺を寄せて苦笑し二人はそのまま足を進めた、と、遠くで何かが吹き飛ぶ音がする。
 同時に、のんびりと眠りに入ろうとしていたクレシダと、周囲を見渡していたデズデモーナが直様立ち上がると上空へと一気に上昇した。
 見上げることなく、村へと侵入する二人を天界では神が見つめている。

「一体何が起こった」
「クレロ様! ライアン殿からも緊急信号が出ておりますが」
「くっ……こんな時に」

 クレロが水晶球を覗き込むと、ライアン達が必死に何かと戦っている。今は会話が出来なさそうだった、誰か派遣出来そうな戦士はいないかと唇を噛む。

「私たちが参りましょう。行きます」

 天界人のソレルとマグワートが、その不安を拭うかのように後方で告げる。暫し悩んでいたクレロだが、それしかない、と不本意ながらに頷いた。

 アサギが身体を仰け反らせる。瞳を閉じ、身体を空中に投げ出したまま、腕を伸ばした。

「視界が途切れています、今」

 凛とした声色で呟くと、瞳を開く。瞬間、その姿が掻き消えた。

――成程、力を取り戻されておる。
――未来はもう決まっている、当然。

 声を聞いた気がしたアサギだが、何もない暗黒の空間で只管何かを探した。怖くはなかった、緊張もしていなかった、ただ、焦っていた。急がねばならないと知っていた。

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