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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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目標五月までに完結。

ベシュタ、アースに会いに行く (団栗)
トリプトル拘束 ⇒ エロースの手中へ
エロース、ブリュンヒルデ家へ犯罪通達 ⇒ アースは捨て子だと証言 ⇒ クリフ濡れ衣
スクルド消滅勧告
アース、トリプトルを見つける
スクルドに立ち入り不可となる
ベシュタ、トリプトル、スクルドに侵入を試みる

⇒クリフ気付く
⇒アース覚醒
⇒あぼーん

完。

あと10話くらいかな、5月中になるっぽい。



 アースの純潔を奪ったトリプトルは、口元に厭らしい笑みを浮かべて惑星スクルドを後にした。このような惑星にいること自体に、吐き気を覚えた。
 愛しい娘と共に育成してきた惑星であり、自分の力も作用しているのだが、今となってはどうでもよい事だった。
 惑星スクルドを離れ、主星アイブライトへと戻ったトリプトルに、姿を見かけた数人が問う。女神エロースの謁見が終わり、ここへ来る必要などもうないはずだったからだ。「何故、ここにいるのだ」「育成はどうしたのだ」と皆が問う。
 肩を竦めて何も語らず、神殿から出ていこうとするトリプトルの身柄はその場で拘束された。その対応に怒りを覚え、喚き散らす姿を見ていた者達はこう噂したのだ。
『あぁ、やはり噂通り火の精霊トリプトルは育成に不真面目であり、放棄したのだ』
 と。自らが肯定するような態度をとってしまっては、言い逃れなど出来ない。
 騒ぎは大きくなり、早急に女神エロースの耳にも入る。待ってましたとばかりに、麗しい扇の陰でほくそ笑むと、パチン、と豪快に音を立てて閉じる。
「クリフにはもう伝達が?」
「今から参りますが」
「ならばそれはよしなさい、彼が参入してもことを荒立てるだけ。私がトリプトルを説得致します。何処に捕えたのです」
 計画を難なく進める為には、男神クリフの存在が邪魔である。エロースはまだクリフの耳には入っていない事を知ると、幸運は我に有りとばかりに素早く立ち上がる。巫女二人を引き連れて、案内された場所へ機敏に向かった。
 その頃、以前よりも優雅な生活を満喫していたが、特にすることもなく暇を持て余していたベシュタは、妻をベッドで抱いた後何故か空しさを感じ、早々に庭に出た。軽く絹の衣服の布を纏い、胸元は肌蹴たまま気怠く庭の椅子に腰かける。
 気づいた者が、すぐさま紅茶を煎れて運んできた。香りを楽しみながら啜ると、軽い渋みが口内に広がる。瞳を閉じ、人を払うと暫し至福の時だった。
 安らぎは、ここだ。
 以前はこのように無意味に休むこともなかったのだが、結婚してからというもの一人の時間が欲しくなった。以前よりも気疲れしている。
 特に妻との時間が増えたわけでもない、食事と寝所を共にする以外は、別行動だ。しかし、心の片隅でその何でもないような日常が苦痛だと痛感している。
 何を、求めているのか。
 それは、ベシュタにも解っていた。アースと過ごした日々が楽しかった、いや有意義であったと思ってしまったのだ。こうして瞳を閉じていると、アースの声が聞えてくる気がしていた。あの、他人の様子を窺うことなく自分の感情を出している少女。未開の惑星で楽しそうに舞っている、美しい少女。
 彼女を抱いた時にはここまで重く圧し掛からなかったが、どうしようもなく愛おしく感じていた。また、この腕に抱きたいと思ってしまった。
 最後まで疑うことなく、身体を任せてしまったアース。
 申し訳ないと思いつつも、それでもあの時間が貴重でかけがえない時間にすら思えたベシュタは、腕を伸ばして瞳を開く。目の前にアースがいたような気がして。
 自嘲気味に宙に浮いていた腕を見つめて低く笑うと、再び紅茶を口に含む。
 と、庭の片隅に見たことがなかった木が一本、生えていた。 
 庭師が植えたのだろう、と思ったのだが不自然な場所に生えている。誰がこのような場所に、と目を吊り上げるがその種類も謎だった。故意に植えたとしたら悪意か、感性が狂っているかの、どちらかだろう。
 木、と呼んで良いのか解らないほど貧相なもので、ベシュタの脛までもない背丈である。雑草に存在感が増えただけのものだった、簡単に引き抜けそうだったので立ち上がると無造作に近づき、屈む。
 木に手をかけると、その木が若干発光したように思えた。その為眉を顰めて思わず手を放してしまう。しかし、目を凝らしてみるが変哲のないみすぼらしい植物である。ベシュタは面白くなさそうに肩を竦めると、再び木に手をかけた。
……アース様が大変です、どうかお戻りください。
 声が聞えた気がした、軽く瞳を開き、その木を撫でてみる。
……私はコナラの木です。アース様が貴方様に渡した団栗から発芽いたしました。
 目の前で語りかけてくるのは間違いなく植物である、ベシュタは流石に驚き、気味が悪く一瞬は手を放したが、あのアースの惑星で育った植物ならあり得るかもしれない、と再び触れてみる。
……アース様が弱っておられます、どうか、助けに行ってください。賢者のようだと尊敬していたあのお方を、救ってください。
 ベシュタは、返事をしなかった。紅茶の代わりを運んできた者が、庭に屈んでいたベシュタに気づき、小さく悲鳴を上げて何か粗相があったのかと慌てふためいた。しかし、ベシュタはその者を宥めると立ち上がり煎れられた紅茶を一気に飲み干すと、こう告げる。
「珍しい木だろう、柵を作り肥料を与えてやってくれ」
 その時、何故か嬉しそうに微笑んでいたことなど、本人は気づかなかった。知らぬ間に口元が、綻んでいたのだ。その笑みは使用人が見たことのなかったもので、思わず見入ってしまうほど美しく柔らかなものだった。
 
「出掛けてくる」
「あら、どちらに?」
「調べものだ」
 すれ違った妻にそれだけ告げると、ベシュタは逸る気持ちを抑えて神殿へと向かい、惑星スクルドへの手続きを済ませる。
「育成ですか?」
「調査の続きだ」
 出まかせを言ったのだが、何も知らない担当者は納得した。つい先程育成を、放棄しスクルドから戻ってきたトリプトルを抑え込んだ人物だったからだ。欠けた火の聖霊の代わりに、再び女神が依頼したのだろうと勝手に解釈していた。
 その為、問題なくベシュタは通過したのである。
 浮足立っていた、植物の言うことなど誰も信じないかもしれないが、アースに会う口実が出来たからだ。何か理由がなければ動けない、自尊心の高い男である。
 アースに会いたいと渇望していたことに気付いたが、今はそれを考えている場合ではない。純潔を奪った後どうなったのか、気になっていたので会うことが怖いような罪悪感ももちろんあったのだが、それよりもあの髪に触れて抱きしめたい気持ちが勝った。
 故に気づかなかった、妻が跡をつけてきておりスクルドへ行く姿を見ていたことを。
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