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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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ねむい。

ベシュタ、アースに会いに行く (団栗)
エロース、ブリュンヒルデ家へ犯罪通達 ⇒ アースは捨て子だと証言 ⇒ クリフ濡れ衣
スクルド消滅勧告
アース、トリプトルを見つける
スクルドに立ち入り不可となる
ベシュタ、トリプトル、スクルドに侵入を試みる

⇒クリフ気付く
⇒アース覚醒
⇒あぼーん

完。

力が消失したアースを支えながら、トロイは歩く。その二人の背を見つめていたリュミだが、気になることがあった。
 アースの回復力が高過ぎる、ということだ。
 顔面を無残に強打され、包帯で巻いてはいるが、鼻も顎も骨が砕かれていた筈だ。歯は数本欠けて流暢に喋ることが出来ず、耳も鼓膜が破れて聞き取り辛いのは間違いない。
 異常なまでの回復力だった、純潔を失った土の精霊は、惑星育成の能力を失うと同時に、土の精霊特有の大地から生きる糧を吸収する能力も失ってしまうのだと思っていた。惑星と土の精霊は一心同体のようなもの、片方が衰えれば、片方にも影響が出る。
 そう習った気がする。
 しかし、確実に回復しているアースを見てリュミは首を傾げるしかない。
 それでも彼女が無事であればよかった為、良いことだと、思うようにした。
 
 その、ベシュタもまた団栗のなるコナラを目指していた。
 芽吹いた団栗の土台を見に行こうと思ったのだ、話しかけてきた芽が存在するならば、その元の大樹も話すことが可能ではないかと。
 アースの惑星スクルドは、気温が一定している。主星アイブライトもそうなのだが、四季、という季節によって気温が変わる惑星もあれば、住みやすい状況下のまま通年過ごすことが出来る惑星もある。永久的に氷に閉ざされた惑星も存在する。
 スクルドは、ほぼ春の気候に近い。
 春の息吹を待ち侘びることなく、もとはか弱きただの芽は、健やかに成長し実を幾つもならせる大樹となる。
 妙に植物達の成長が著しいと思ったのだが、それが原因としか思えない。惑星スクルドの調査資料から導き出した答えはそれだが、やはり育成主であるアースの力量が大きく関わっているのだろう。

「創世の女神の様だな」

 呟き、立派に育った団栗の下へと足を速めたベシュタは、その下で髪を靡かせているアースを見つけた。何故か顔に包帯を巻いているので、心配になる。他にもトロイとリュミがいたが、それよりも。
 近づいて良いのか、躊躇した。
 処女を奪ってしまった、純潔を失った土の精霊の末路を知らないわけではない。自ら望んで失い、恋に生きる道を選択した精霊がいることは知っているのだが、正直良い話は聞かなかった。
 何より今回、奪ったのは自分であり、将来を約束した中でもない。力を失ったアースを護るものなど、何もない。ベシュタには、妻がいる。アースを妻として迎えいれることなど、不可能だった。女神が許す筈がない、アースを庇うということは計画を破ることになる。

「私は、やはりお前を愛しているのだろうか、求めているのだろうか」

 低く呟き、自嘲気味に笑うと踵を返そうか悩む。しかし、それでも。
 足を進めた、アースを選んだ。

『アース、もし何か困ったことがあれば。あの団栗の大木の下で待つが良い、私は会いに行こう。忙しくなるので早々戻れないかもしれないが、あの場に居てくれ』

 自分が去り際にアースに告げていた言葉を思い出した、あぁ、それであそこにいるのか、とようやく気づくと。嬉しくて笑みが溢れる。愛している男は自分ではないが、頼られていることに違いはなかった。アースの中で自分が特別な存在であると、証明してもらえた気がして、身体中が震え、力強く抱きしめたい衝動に駆られる。
 ベシュタに気づいたアースが、ゆっくりと立ち上がると手を振る。驚いてトロイとリュミもそちらを見つめた、颯爽と歩いてくる姿に苛立ちを感じながらも、唇を噛み締め近づくのを待つ。
 発端は、ベシュタだ。この男さえ来なければ、トリプトルも豹変しなかった筈だと、リュミが睨みつける。鋭い視線に気づきながらも、詳細を知らないベシュタは臆することなく、アースの目の前に立った。

「遅くなった、アース。……その傷はどうしたんだ」
「植物の調査をしていたら、崖から転落してしまいました。黄色い小さなお花の群集を見つけて」

 間入れずそう返答したアースに、トロイとリュミが瞳を泳がせる。その態度を当然不審に思ったが、ベシュタは何も言わなかった。そもそも、崖から落下した傷には思えなかった。原因は他にある、ということは手に取るように解った、そして何かも予想がついた。
 この場にいない男が、一人いる。
 アースはその男を全力で庇うことも知っている、十中百九トリプトルが原因だとは簡単に推測できた。しかし、何がどうしたら痛々しい傷を負う羽目になるのか。
 処女ではなくなったアースに対して、トリプトルが激怒し、暴力を振るわれたのだろうか。
 ……考え難かった、愛した女をここまで痛めつけられるものなのか、疑問に思った。ベシュタが見ているアースの傷は、トロイが救出した時よりも随分と良くなっている。それでも、信じ難い暴行の痕だった。

「あの、ベシュタ様。お訊きしたい事があって」
「……どうした? 何か分からないことでも?」
「あの、その」

 言い辛そうに俯くアースの背を、トロイが優しく抱きしめる。

「立っていては疲れるだろう、小屋へ戻ろう。座りながらゆっくり話したほうが体調に負担がかからない」
「大丈夫、ですよ」
「いや、駄目だ。連れて行く。……アンタも同意してくれるよな?」

 トロイに睨まれ、ベシュタは小さく頷く。言う通りにすることは癪に障ったが、アースの体調を考えると、そうせざるを得ない。
 トロイに抱かれ、四人は居住地へと歩いた。ここからそんなに遠くはない。無理をして辛くなったのだろう、アースは瞳を閉じる。

「何があった」

 静かにリュミにそう告げたベシュタだが、返答はない。頑なに拒んでいる横顔を見て、肩を竦める。分かっていた事だったが、やはり自分は信頼されていないのだと再認識した。「当然か」自嘲気味に笑うと、アースのために何かしてやりたい自分に驚くことはもう止めて、その身を案じた。

 アースを横にし、暖かな毛布をかけてやると、トロイが茶を淹れる。以前はトリプトルがここにいたはずだが、その場所には今ベシュタがいた。
 舌打ちし、苛立ちながらも茶を運ぶ。
 何に苛立つのか。トリプトルが裏切ったことだろうか、アースの傍で守ってやれなかったことだろうか、ベシュタを意地でも追い返すべきだったと自身を悔いているのか。トロイには、分からなかった。全てが疎ましく思えたが、それでもアースの笑顔だけは護りたかった。

「ベシュタ様。……受け入れられなかった愛は、どうしたら良いでしょうか。もう、愛してはいけないものなのですよね。どうやって捨てれば良いですか? 私は、嫌われていたようで、怒らせてしまいました。考えてはいけないのだと思うのですが、私はどうしても、彼のことが気になります。……まだ、愛していても良いですか? ダメ、ですか?」

 アースの切なそうな叫びにも、悲鳴にも似た絞り出した声に、三人は何も言えず、口を噤む。
 名前は出さなかったが、アースが言っている”愛する男”はトリプトルだ。
 暴行を受けても尚、求める。三人は、その時悟った。
 彼女は恐らく、火の精霊であるあの男しか見ていないのだと。今、この場にいない無責任な男を愛し続けるのだろうと。


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