別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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重くて二分割に。
京紫が低い声ではっきりとそう告げると、皆は同意すべきか迷い、唇を噛み締めた。
「うららに、逢いたい」
京紫がアサギに詰め寄る、アサギは真正面からそれを受け止めた。止めようとする月白を跳ね除け、間近まで迫った京紫の瞳から涙が溢れた。
「うらら、返して」
「……ごめんなさい、それは出来ません。彼女が帰りたいと望んだので願いを叶えました」
「うらら、返して! ワシはもっとうららと一緒に居たいと思ったのだ」
「……ごめんなさい」
「戦乙女様は万能なんじゃろう? ワシの願いも叶えておくれ、どうかうららを」
泣きながら必死に懇願する京紫を、月城と花緑青が引きずってアサギから離したが、嗚咽しながら手を伸ばす京紫に、アサギも涙を零すしかない。なんとかしてあげたいのだが、無理だと思った。
今この場所は、恐らくうららとアサギがいた地球の日本の時代よりも何百年か前の別の惑星である。憶測でしかないが、それが真実だとアサギは”悟った”。
「ごめんなさい、今の貴方達は会えないのです。でも、希望を捨てないで。必ず何処かで会えるから」
「い、嫌だ! そんな地獄のような生活を送るなど! 死んだら、今死んだらうららに会えるのか!? それなら死ぬ、死んでしまいたい!」
押さえつけていた二人を跳ね飛ばし、京紫は再びアサギに詰め寄る。細いアサギの肩を掴むと、揺すって必死に訴えた。悲しそうにアサギは首を横に振ると、絶叫して京紫が地面に転げまわる。
「うららは、暖かい! 近くにある太陽のように、落ち着く! もっと一緒に居たい!」
悲鳴を上げる京紫を憐れみながら、月白が謝罪したがアサギは申し訳なさそうに微笑した。
「ごめんなさい、何も出来なくて」
「いえ、つまり……うららは私たちとは別の世界から来た者だと知っていました。会えなくなることは、皆心の何処かで分かっていました。貴女様が姿を見せたので、期待をしてしまったのです」
「……ごめんなさい」
噛み付くように京紫が血走った目つきでアサギを睨みつける、その風貌に怯え、深緋が目を背けたがアサギは視線を逸らさなかった。
「アンタが来なければ、うららは帰らなかった! いや、帰れなかった! 何で来た!」
「京紫、お前戦乙女様に何ということを!」
吐き捨てられた暴言に一斉に青ざめた者達は、地面にいた京紫を取り囲むがアサギが制する。
「ごめんなさい、それでも私は来なければならなかったのです」
「疫病神! 戦乙女戦なんて、戦乙女なんてー! ああああああっ」
泣きもせずに、凛とした態度で京紫を受け止めたアサギだが、月白は気づいた。……アサギの脚が、震えていることに。気づいて慌ててその横顔を見つめると、唇を噛み締めていることを悟られまいと気丈に振舞っているように見えた。
堪えない筈がない、泣き出したいのだろうが耐えているのだと……そう思った。
「忘れないで、貴方のその想いが強ければ強いほど。うららさんと繋がります、必ず会えますからだから。……希望を捨てないで、懸命に生きてください」
「そんな無責任なこと言われても」
投げ捨てた言葉に、アサギは自らの手に爪を立てた。泣き出したくなる衝動を痛みで押し殺した。震える身体を必死で止め、瞳を大きく開いて涙を堪える。呼吸を整える、話が出来るまで心を落ち着かせる。
「……ごめんなさい。どうか、皆さんに安らぎがありますように。これからは、意見を出し合い、命を尊重して助け合って生きてください。本当に、ごめんなさい」
あなた方に、加護を。
小さく呟いたアサギの姿が、瞬時に掻き消えた。
どよめく皆は、項垂れている京紫を一瞥したが、そんな中で花緑青が手を差し出す。「……同じこと、思ったよ」
その言葉に、京紫は情けなく笑って頷くと、その差し出された手をありがたそうに掴んだ。
しかし、戦乙女が現れたことにより京紫達はともかく、過去を思いだし今までのことが大きな過ちであると気づいた事は、善きことだと。皆が京紫達を宥めた、辛い思いをさせて申し訳ないと謝罪する者もいた。
「啀み合っていたのに不思議なものだ、今では他人を気遣って」
月白がなんの気なしにそう呟くと、コナラの大木が風に乗って歌うように揺れる。
……アサギ様、こちらはおまかせくださいませ。必ず、護り通します。”誤った運命から逃れられるようにと”。ですからアサギ様、どうか、貴女様も。
そんな声が、月白の耳に届いた。
呆然と、アサギは立っていた。ここが何処なのか分からないが、簡単に言えば宇宙だろう。宇宙としかいい様子がない場所に立っている。
京紫の視線に、身体を仰け反らせてアサギは悲鳴を上げた。「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
今になってようやく震えが来た、自分がしたことの重大さに、吐き気がする。
「と、取り返しのつかないこと、あ、あぁ」
――分かりましたか、でしたらば戻られませり。大罪を犯したのだと認めたのならば、どうか。
『忘れないで、貴方のその想いが強ければ強いほど。うららさんと繋がります、必ず会えますからだから。……希望を捨てないで、懸命に生きてください』
先程自分が口にした言葉が、脳裏に蘇った。一瞬大きく目を開いて、悔しそうに唇を噛み上を向く。
「わ、私も。私も会いたい」
消え入りそうなか細い声で、そう呟いていた。溢れる涙は止まることなく、視界は歪む。その歪んだ先に、男が微笑んで手を伸ばしている。
紫銀の髪が揺れる、よぉく見知った人物だった。思わず笑みを零すと、その手に縋ろうと手を伸ばしていた。
――まだそんな戯けた事を!
絞り出した声に被せるように、憤怒した声が脳内に響き渡ったが。
「よく言った、ならば今はその時ではない。……”どう足掻こうとも、もう未来はすでに決まっている。運命の歯車が終焉を告げるまで滑稽に、足掻くが良いよ”。まだ、終焉は告げていないのだから」
アサギの瞳から、光が消えた。抑揚のない声でそう呟き、ゆっくりと顔を正面に向けると、口元にうっすらと笑みを浮かべる。
――……運命に、抗うのか。
更に口角を上げると、喉の奥で嗤う。
「抗うが善いよ、今はまだその時。会いたいと願うのだから、会わねばならない」
例え、未来が決まっていたとしても。唇を微かに動かし、そう呟いたアサギは身を翻した。「起きろ、アサギ。トビィ達が危険だ、今までの記憶は”忘れて”。そなたは戦乙女ではなく”勇者”なのだから」
アサギは若干満足そうに微笑むと、宇宙を軽く見渡し一点で止めた。
「惑星マクディ、そこにいるのか。隠しても無駄だ、そこに”彼は”いる」
赤い惑星がぼんやりと浮かぶ、次の瞬間、アサギの姿が再び掻き消えた。
――なんと、愚かな事を。
キィィィ、カトン。
不可解な音が、宇宙に幾度も重なり合い、響き渡った。運命の歯車が、廻る。
「トランシスー! 空襲警報だ、地下へ避難しろ!」
「えぇ、またかよ。今から木の実を収穫に行こうと思ったのに」
「命が大事だろ、ほら」
紫銀の髪が、友人に手を引かれて揺れた。はた迷惑そうに露骨に怒りを露わにしながら、トランシスと呼ばれた青年、いや少年は渋々身体を反転させる。目の前には、貧相だが木々が並ぶ小さな森、と呼ぶには相応しくない珍しい場所が広がっている。
近辺の者達が有り難く通っている、美味しくはないが辛うじて食べられる実がなる木である。
トランシスは舌打ちするとその森から視線を外した、しかし、驚くべき速さで戻すと凝視する。
「あ」
森に、美しい緑の髪の美少女が立っていた。
キィィィ、カトン。
「うららに、逢いたい」
京紫がアサギに詰め寄る、アサギは真正面からそれを受け止めた。止めようとする月白を跳ね除け、間近まで迫った京紫の瞳から涙が溢れた。
「うらら、返して」
「……ごめんなさい、それは出来ません。彼女が帰りたいと望んだので願いを叶えました」
「うらら、返して! ワシはもっとうららと一緒に居たいと思ったのだ」
「……ごめんなさい」
「戦乙女様は万能なんじゃろう? ワシの願いも叶えておくれ、どうかうららを」
泣きながら必死に懇願する京紫を、月城と花緑青が引きずってアサギから離したが、嗚咽しながら手を伸ばす京紫に、アサギも涙を零すしかない。なんとかしてあげたいのだが、無理だと思った。
今この場所は、恐らくうららとアサギがいた地球の日本の時代よりも何百年か前の別の惑星である。憶測でしかないが、それが真実だとアサギは”悟った”。
「ごめんなさい、今の貴方達は会えないのです。でも、希望を捨てないで。必ず何処かで会えるから」
「い、嫌だ! そんな地獄のような生活を送るなど! 死んだら、今死んだらうららに会えるのか!? それなら死ぬ、死んでしまいたい!」
押さえつけていた二人を跳ね飛ばし、京紫は再びアサギに詰め寄る。細いアサギの肩を掴むと、揺すって必死に訴えた。悲しそうにアサギは首を横に振ると、絶叫して京紫が地面に転げまわる。
「うららは、暖かい! 近くにある太陽のように、落ち着く! もっと一緒に居たい!」
悲鳴を上げる京紫を憐れみながら、月白が謝罪したがアサギは申し訳なさそうに微笑した。
「ごめんなさい、何も出来なくて」
「いえ、つまり……うららは私たちとは別の世界から来た者だと知っていました。会えなくなることは、皆心の何処かで分かっていました。貴女様が姿を見せたので、期待をしてしまったのです」
「……ごめんなさい」
噛み付くように京紫が血走った目つきでアサギを睨みつける、その風貌に怯え、深緋が目を背けたがアサギは視線を逸らさなかった。
「アンタが来なければ、うららは帰らなかった! いや、帰れなかった! 何で来た!」
「京紫、お前戦乙女様に何ということを!」
吐き捨てられた暴言に一斉に青ざめた者達は、地面にいた京紫を取り囲むがアサギが制する。
「ごめんなさい、それでも私は来なければならなかったのです」
「疫病神! 戦乙女戦なんて、戦乙女なんてー! ああああああっ」
泣きもせずに、凛とした態度で京紫を受け止めたアサギだが、月白は気づいた。……アサギの脚が、震えていることに。気づいて慌ててその横顔を見つめると、唇を噛み締めていることを悟られまいと気丈に振舞っているように見えた。
堪えない筈がない、泣き出したいのだろうが耐えているのだと……そう思った。
「忘れないで、貴方のその想いが強ければ強いほど。うららさんと繋がります、必ず会えますからだから。……希望を捨てないで、懸命に生きてください」
「そんな無責任なこと言われても」
投げ捨てた言葉に、アサギは自らの手に爪を立てた。泣き出したくなる衝動を痛みで押し殺した。震える身体を必死で止め、瞳を大きく開いて涙を堪える。呼吸を整える、話が出来るまで心を落ち着かせる。
「……ごめんなさい。どうか、皆さんに安らぎがありますように。これからは、意見を出し合い、命を尊重して助け合って生きてください。本当に、ごめんなさい」
あなた方に、加護を。
小さく呟いたアサギの姿が、瞬時に掻き消えた。
どよめく皆は、項垂れている京紫を一瞥したが、そんな中で花緑青が手を差し出す。「……同じこと、思ったよ」
その言葉に、京紫は情けなく笑って頷くと、その差し出された手をありがたそうに掴んだ。
しかし、戦乙女が現れたことにより京紫達はともかく、過去を思いだし今までのことが大きな過ちであると気づいた事は、善きことだと。皆が京紫達を宥めた、辛い思いをさせて申し訳ないと謝罪する者もいた。
「啀み合っていたのに不思議なものだ、今では他人を気遣って」
月白がなんの気なしにそう呟くと、コナラの大木が風に乗って歌うように揺れる。
……アサギ様、こちらはおまかせくださいませ。必ず、護り通します。”誤った運命から逃れられるようにと”。ですからアサギ様、どうか、貴女様も。
そんな声が、月白の耳に届いた。
呆然と、アサギは立っていた。ここが何処なのか分からないが、簡単に言えば宇宙だろう。宇宙としかいい様子がない場所に立っている。
京紫の視線に、身体を仰け反らせてアサギは悲鳴を上げた。「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい!」
今になってようやく震えが来た、自分がしたことの重大さに、吐き気がする。
「と、取り返しのつかないこと、あ、あぁ」
――分かりましたか、でしたらば戻られませり。大罪を犯したのだと認めたのならば、どうか。
『忘れないで、貴方のその想いが強ければ強いほど。うららさんと繋がります、必ず会えますからだから。……希望を捨てないで、懸命に生きてください』
先程自分が口にした言葉が、脳裏に蘇った。一瞬大きく目を開いて、悔しそうに唇を噛み上を向く。
「わ、私も。私も会いたい」
消え入りそうなか細い声で、そう呟いていた。溢れる涙は止まることなく、視界は歪む。その歪んだ先に、男が微笑んで手を伸ばしている。
紫銀の髪が揺れる、よぉく見知った人物だった。思わず笑みを零すと、その手に縋ろうと手を伸ばしていた。
――まだそんな戯けた事を!
絞り出した声に被せるように、憤怒した声が脳内に響き渡ったが。
「よく言った、ならば今はその時ではない。……”どう足掻こうとも、もう未来はすでに決まっている。運命の歯車が終焉を告げるまで滑稽に、足掻くが良いよ”。まだ、終焉は告げていないのだから」
アサギの瞳から、光が消えた。抑揚のない声でそう呟き、ゆっくりと顔を正面に向けると、口元にうっすらと笑みを浮かべる。
――……運命に、抗うのか。
更に口角を上げると、喉の奥で嗤う。
「抗うが善いよ、今はまだその時。会いたいと願うのだから、会わねばならない」
例え、未来が決まっていたとしても。唇を微かに動かし、そう呟いたアサギは身を翻した。「起きろ、アサギ。トビィ達が危険だ、今までの記憶は”忘れて”。そなたは戦乙女ではなく”勇者”なのだから」
アサギは若干満足そうに微笑むと、宇宙を軽く見渡し一点で止めた。
「惑星マクディ、そこにいるのか。隠しても無駄だ、そこに”彼は”いる」
赤い惑星がぼんやりと浮かぶ、次の瞬間、アサギの姿が再び掻き消えた。
――なんと、愚かな事を。
キィィィ、カトン。
不可解な音が、宇宙に幾度も重なり合い、響き渡った。運命の歯車が、廻る。
「トランシスー! 空襲警報だ、地下へ避難しろ!」
「えぇ、またかよ。今から木の実を収穫に行こうと思ったのに」
「命が大事だろ、ほら」
紫銀の髪が、友人に手を引かれて揺れた。はた迷惑そうに露骨に怒りを露わにしながら、トランシスと呼ばれた青年、いや少年は渋々身体を反転させる。目の前には、貧相だが木々が並ぶ小さな森、と呼ぶには相応しくない珍しい場所が広がっている。
近辺の者達が有り難く通っている、美味しくはないが辛うじて食べられる実がなる木である。
トランシスは舌打ちするとその森から視線を外した、しかし、驚くべき速さで戻すと凝視する。
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