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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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ねもねも。
・マビル生存中 ・アイ&タイ行動中 ・アサギ攫われる ・トビトラ久しぶりに二人でアサギの救出に向かう ・アサギ自力で脱出する ・トビトラ、アサギが人質の為敵に手が出せない(ので流血した模様) ・三人合流、記憶一部解除

『待つのだ、トランシス!』

 義母を手にしてた斧で殺し、追ってきた義父。思い出しながらトランシスは魘されていた、気の毒に思った女性が、濡れた布を額にあてがう。

「可哀想に」

 夢の中で、そんな声を聞きながらトランシスは頭部がない義父から逃げていた。

『愛しているわ、トランシス。母さんではなく、名前で呼んでちょうだい』

 前方で、頭部が砕けている義母が全裸で腕を広げていた。それを交わしながら必死に進む、けれども義母は常に前に立っていた。

 ……待たないし、愛していないし!

 叫びながらトランシスは探して走り続ける、緑の髪の美少女を脳裏に描きながら鬼のような形相で全力で宛てもなく彷徨った。

「何処にいる、何処に行った! アース! アリア! アニス! アイラ! アリン! アロス! アミィ!」

 ……アサギ。

「アサギ」

 名を口にして、瞳を開いたトランシス。その瞳から涙が零れ落ちる、目が覚めたことを知り、駆け寄ってきた友人が水を差し出した。

「大丈夫か、酷く魘されていたけれど」
「オレ、今何か言ったか?」
「何か呟いていたけれど、何を言ったのか解らなかった」
「そっか。水、ありがとな。貰う」

 半分ほど入った水を一気に飲み干し、トランシスは髪をかき上げる。紫銀の短髪は美しく、その仕草だけで女達が色めき立った。

「親父さん達の夢を見ていたのか? ……辛いな」
「あぁ、辛い」

 気の毒そうに目を伏せて隣に座った友人に、真顔でそう答えたトランシスは徐ろに立ち上がる。

「上はどうなってる?」
「今は静かだよ、でもまだ警戒してる。警報が出ていない時に親父さん達撃たれたろ、油断できない」
「……あれは自業自得っていうんだけど」

 皮肉めいて小さく言ったトランシスの言葉を友人は尋き直すが、それには答えず歩き出す。

「どうしてあんな所に戦闘機が来たと思う? ……オレ、知ってたんだよね、あそこに来ること。あそこに逃げれば、上手くいけば義父さん殺してくれるって思ったんだよね。殺される前に、殺す。オレの邪魔をするなら先に排除する、オレには目的があるんだ」

 孤児だったトランシスを拾い、育ててくれた夫婦には子供がいなかった。荒んだこの地で稀に見る善人だったが、人目を引く美少年に成長してしまったトランシスに、義母が欲情し、身体の関係を持ってしまった。回数が増えるに従い、義父が疑念を抱くことなどトランシスは解っていた。同じ男だからだ、上手く義母が隠せていると思っても無理な話だ。自分に向けられる殺意を感じ取ったトランシスは、”自らの手を汚すことなく”立ちふさがる壁を排除することを常に思案していた。
 あの日、全裸でトランシスに詰め寄った自分の愚かな妻を斧で斬り砕いたのは、義父。
 半ば狂った義父の標的になったトランシスは、死に物狂いで逃げた。捕まれば、殺される。しかし自分には武器がない、対抗出来ない。勝てるものは未来への希望と、若さ故の体力……そして。
 向かった先は、定期的に偵察機が徘徊している場所だった。それでも走っている自分達を見つけてもらえなかったら意味がない。
 歩きながらトランシスは、そっと左手の人差し指を見つめる。爪の先に、火が灯った。
 誰にも見られないように、その火を睨みつけると瞬時に火が消える。

「特異体質なんだよね、オレ」

 火を操ることが出来るのが自分だけだと知ったのは、物心ついてからだった。皆も出来るものだと思い込み、自慢げに義母に見せた時に怒られ「人に見せてはいけない、秘密よ」と説かれた。
 自分が、特別な人間だと知った。
 あの日、義父に追われて向かった先には偵察機が潜んでいる事を知っていた。トランシスは、走りながら操れるだけの火を空に向かって放った。それは、小さな火だったが、暗闇では光り輝く。偵察機がそれを見つけ、何かは分からないがそれに向かって狙撃したのだ。
 地面を転がり、攻撃から逃れたトランシスの後方には、義母を殺害した義父。幾つも放たれた球が、義父の頭部を打ち砕いた。
 直接手をかけたわけではないが、そう仕組んだ。直接手をかけたようなものだ、トランシスが火を放たなければ、義父は死ななかったかもしれない。
 何故、自分が火を操ることが出来るのか知らない。
 が、これは恐らく目的の為に自ら手繰り寄せた幸運の印だと解釈した。
 混沌の世界を平穏に導く……いや、そうではない。

「こんな世界どうでもいい、オレが欲しいのは」

 夢で見る愛しい女、名前を知っているハズなのに思い出せない、緑の髪の美少女。

「火の檻を作って閉じ込めておいたら、逃げないかな」

 人が少なくなった地下の一角、腰を下ろすと再び火を爪に灯す。

「身体の自由を奪って、この火を近づけたら怖がるかな、可愛いな。怯えて震えてオレを見上げるかな、堪らないね」

 下半身が熱くなる、想像したら一気に欲情した。

「早く来いよ、オレの女」

 トランシスは、我慢できずにその場で手淫行為に走った。恍惚の表情を浮かべて、呼びたくても呼べない名前を呼ぶ。名前を知っているようで、知らない。”覚えていない”。

 キィイィィ、カトン……。

 不意に、アサギは小さく胸を抑えた。呼吸が乱れて顔が上気している、先程から胸が落ち着かない。
 紫銀の髪の美しい人を見た、彼に会いたくて腕を伸ばしたが、脳内にトビィが映った瞬間に、身体がそちらへと引き寄せられる。

「トビィお兄様が、危ない。戻らなくちゃ」
 
 確かに、視線は交差した。「また、また来ます! ……よかった、会うことが出来ました」アサギは嬉しそうにそう呟くと、身体を翻す。

 ……惑星マクディ、そこにいる。お前なら行ける筈だ、結末を知っていたとしても抗うのならば、路は開けた。アサギ、最期まで足掻いてご覧。私に交代するその時まで、足掻け。

 その声に小さく頷いたアサギの意識が途切れる、今の声は知っていた。
 自分の声だ。
 悲鳴が聴こえる、目を開いたアサギは、落下する自分の身体を慌てて体勢を整えようと身を捩った。

「アサギ!」
「アサギ様!?」

 リングルスが捉えられた奇っ怪な村に集結していた仲間達、突如頭上から降ってきたアサギに素っ頓狂な声を上げたのは、リュウとバジルだ。

「あ、あれ、リュウ様にバジル様、こんにちは」
「また予測不能な登場の仕方だぐーな!」

 上空を飛んでいたデズデモーナとクレシダもアサギに気づき、目を丸くする。

「流石はアサギ様、追いつきましたね」
「突然現れたように見えたのは、私だけだろうか」

 アサギの登場に喜ぶデズデモーナと、率直な意見を述べたクレシダ。確かに、どうやって今この場に来たのか不可解だった。瞬時に現れたようにクレシダには見えたのだ。

「アサギ様は優秀な勇者であるから」

 何故か浮き足立つように声のトーンが上がるデズデモーナを横目で見たクレシダは、その長い首を微かに動かす。トビィ以外の人間を褒める事などなかったデズデモーナの様子が最近滑稽な気がする、とは思っていた。
 竜なのに、人間の勇者であるアサギに肩入れしているように見えたのだ。主であるトビィとは、また違った服従にも似た感情を抱いているように思えた。
 デズデモーナは気づいていないようだった、だが、アサギを見てから彼は変わったと。

「数奇なお方であることは違いない、アサギ様。私は苦手だ」

 アサギに近寄るべく飛んでいったデズデモーナの後ろ姿を見て、クレシダはそう呟く。二体の竜はまだ知らなかった、そのデズデモーナの感情を”恋”と呼ぶことを。

「ご無事ですか、アサギ様」
「デズデモーナ! トビィお兄様は?」
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