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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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クリフ濡れ衣
スクルド消滅勧告
アース、トリプトルを見つける
スクルドに立ち入り不可となる
ベシュタ、トリプトル、スクルドに侵入を試みる

⇒クリフ気付く
⇒アース覚醒
⇒あぼーん


 アースの想いに気づいた三人は、言葉を失った。そしてトリプトルに暴行を受けた記憶が戻っているらしいことにも、気づいた。
 崖から落ちたなどという嘘を、突き通せるわけがない。真実を知っていても尚、アースはこの場にいない男を庇っている。
 不思議そうに首を傾げ、返答を待つアースと視線を合わせる事が出来ず、ベシュタは言葉を濁す。

「……時が過ぎれば、忘れるだろう。拒否された愛を、無理に忘れる必要はない、捨てることもない。辛いだろうが」
「よかった、忘れなくても捨てなくても良いのですね!? ……勝手に愛するだけなら、誰の邪魔にもならない、ですよね。今まで通りにしていれば、大丈夫ですよね」

 嬉しそうに満面の笑みを浮かべ、安堵したように瞳を閉じたアースに、ベシュタは口を閉ざす。「そう、だな。人を愛することは、自由だ」……そう唇だけ動かした。
 自分に言い聞かせたのか、アースに伝えたかったのか。自分でも分からない。
 何がそこまで、良いのだろう。あの男を求める理由が、三人には解らなかった。

「もう、お会いできないかもしれませんが、それでも、私は」

 首にかかっているネックレスにそっと触れる、リュミが直してくれたとは知らず、暴行を受ける前と同じようにそこにあった頂きものに安堵する。

 ……愛して、います。

 唇を動かし、眉を潜めて自嘲気味に微笑むアースに、三人は項垂れる。
 無理だと、思った。傷ついている今ならば隙を見て奪ってしまえるかもしれないと、少なからず淡い期待を抱いていたが今の表情で砕けた。
 幻影に囚われてしまっている、とトロイは思ったのだが口に出せない。「だがオレはアイツに言った、だから何が何でも」小さく漏らした。

『冗談はさておき、万が一にもお前がアースを放棄したらその時は……全力で奪いにかかる。そこだけは了承しとけ』

 トリプトルにそう告げた自分に、肩を竦めて笑った。まさかこのような事態になるとは思わなかったが、”報われないと解っていても”自分が口にしたことは実行するべきだとトロイは決意する。
 アースの心がトリプトルに向いていたとしても、傍に居続けると誓う。想ってくれなくても構わないから、添い遂げたいと願った。少しでも癒されるのであれば、自分が辛くても代わりになろうと。

「少し休息しろ、アース」

 軽々とアースを抱きかかえると、アースの部屋へと運び無理やりベッドに寝かせた。渋々言われるがままに瞳を閉じたアースに溜息を吐くと、トロイは静かに部屋を出る。考え込んでいるベシュタ、爪を噛みながら右往左往しているリュミに声を押し殺し告げる。

「問題はアースの純潔が奪われている事だ」

 ベシュタの瞳が泳いだが、トロイは気づかず続ける。

「どうする、このまま育成を続行するしかないが、これが露見すると拙い」
「っていうか、肝心のトリプトルは何処にいるわけ? 申し訳ないけれど一発殴らないと気が済まないんだけど」

 アースの純潔を奪ったのは、ベシュタだ。だが、二人の口ぶりからするとトリプトルが奪った事になっている。
 本当にトリプトルもアースを抱いたのか。
 ベシュタは急に怒りが込み上げ、唇を噛み締めると忌々しそうに宙を睨みつける。もし、それが真実であるならば許し難いと憤る。
 アースは自分のものではないが、自分のものであって欲しいと願う自分に気づいてしまった時点で、トリプトルは憎悪の対象になる。
 辱め、暴行したのが事実であるならば理解出来なかった。二人は傍から見ても心を通わせていたからだ、トリプトルが愚行に走った原因は紛れもなく自分であるとは思っている、アースには申し訳ないことをしたと罪の意識に押しつぶされそうになる。しかし、何故トリプトルは怒りの矛先をアースに向けたのかが解らなかった。ベシュタだとトリプトルも気づいた筈だ、何故愛した女を痛めつけたのか。
 躊躇しなかったのだろうか、怒りに身を任せて手を挙げたとしても、途中で我に返らなかったのか。
 トリプトルの犯した罪は、三人ならば目を背けたくなるほど残虐なものだ。
 己を相手を傷つけてしまうほど、狂おしく半ば壊れながら欲し、愛していたトリプトルには、誰も気づかない。
 ただ、トリプトルを厭悪することしか三人には出来なかった。自分達ならば、愛したアースを絶対に傷つけないと、そう思った。

 今後について摸索している三人を嘲笑うかのように、女神エロースはすでに先手を打っていた。好機を逃すような女ではない。

「待たせたな、トリプトル。そなたはもう惑星スクルドの育成に関与せずとも良い。自由だ」

 極秘に監禁し、室内で脱力気味に天井を見つめていたトリプトルは虚ろな瞳で室内に来たエロースを見つめた。

「ただ、一つ条件を追加する。次期男神にそなたを推薦するので、受けて欲しい」
「結局自由はないんだろ? オレが口外しないように常に監視しておくつもりなんだ、男神だなんてご立派な名目の檻に入れられるわけだ。断ったら死罪?」

 こうなることを予測していたかのように、冷静にトリプトルは呟く。喉の奥で笑うエロースは、自らの衣服を脱ぎながら近寄る。

「生意気なところも気に入っている、そなたの身体は相性が良い。私の身体も好いだろう? 親しい神同士の方が今後の指針を決めやすいのだ」
「親しい? 脅迫されているのに?」

 口を塞ぐようにエロースは唇を舐め上げ、胸元に手を滑らせる。

「利口なそなたは断るなどという愚かな選択をしないだろう。私は心が広い、別に一生私と添い遂げよ、ということではない。私もそなたを縛り付けたくないのでな。自由に生活して構わない、私より劣るが美しい娘をはべらせてみたいだろう?」
「真実さえ口にしなければ、あとは好き勝手に神を演じればイイって事だろ? 今後の指針、っていうのはつまり女神様の独断って事だ。反論しない男神なら誰でも良い
だけなんだろうけど、どうやらオレにはその道しか残されてないらしい」
「ほほ、物分りの良い男だこと」

 何度も唇を重ねながら、身体を貪る。

「あの小娘と、どちらが具合が良い?」
「くだらない事訊くなよ、女神様に決まってる」

 甲高く、勝ち誇ったように笑いながら、女神はトリプトルの上で腰を振った。色欲と貪欲に溺れる女神という名の女を、ぼんやりと見つめながらトリプトルは一瞬アースを思い出す。
 思い出したアースは、後ろ姿で俯いていた。
 最後に見た姿が、後ろから犯していた為だろう。自分を見つめ、頬を赤らめて微笑む姿が、思い出せなくなっていた。

 偶然にも男神クリフが土の精霊であり、類まれな能力を持つ捨て子アースも土の精霊であり。自らの幸運に北叟笑みながら、エロースは水面下で素早く手筈を整え、一気にクリフを糾弾した。
 アースがクリフの子である事はないだろうが、虚偽の証拠を何重にも用意した。アースの両親に
虚辞を連ねさせ、消えた土の精霊の娘の存在を捏ち上げ、クリフから反論
が来る前に畳み掛ける。
 何の前触れもなく、クリフを呼び出したエロースは公衆の面前で陥れる。自分の息がかかった者達もその場に呼び寄せ、援護するように捲し立てた。
 クリフがアースを人一倍気にし、目をかけていたことは少なからず皆知っていた。何故なのかはエロースにも解らなかったが、それが更に追い討ちをかける。

「実娘だから、陰ながら見守っていた」

 と、一言エロースが告げれば、何も知らない者達も納得してしまった。それだけ異常なまでに溺愛していると、皆の目には映っていたのだ。
 クリフの反論も虚しく、”子を捨てる”という大罪の冤罪を着せられ幽閉されてしまった。強引に処女を奪いアースを身ごもってしまった娘は殺害し、我が子を捨て置く……という非情な汚名を着せられて。
 反面、捨て子を育てあげたブリュンヒルデ家には女神エロースから多額の金が譲渡された。裏の意味は”口止め料”である。
 そしてエロースの推しがあり、次期男神にはトリプトルが立つ。まだ若い、と不満の声も上がったが、育成途中の惑星スクルドにも大きな貢献を果たしたとして、また捏造されたトリプトルの成績表を開示すると、些か腑に落ちない点は残ったが、女神エロースの思惑通りに皆が了承する。
 残るは惑星スクルドとアースの処分である。
 この時点で、アースが純潔ではないことは特定の人物以外知らなかった。
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