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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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ベシュタ、アースに会いに行く (団栗)

トリプトル拘束 ⇒ エロースの手中へ



「オレを外せ! あんな馬鹿げた育成に付き合っていられるか!」

 怒鳴り声にガーリャは肩を竦める、初めて聴く声であった。そっと聞き耳を立てる、胸が高鳴った。これが悪いことだと分かっていたが、止められない。
 
「反逆者!? 馬鹿な、オレが一体何をしたって言うんだ!」

 ぼそぼそと女の声が聞こえるが、正確に聞き取ることが出来ない。極力声を抑えているのだろう。しかし、男の声は鮮明に聴こえてくる。

「あの女、処女ではなかった! すでに他の男に」

 夢中になって聞き耳を立てていたので、剣を向けられていることに気づかなかったガーリャは、突然目の前に伸びてきた鋭く光る刃先に思わず硬直する。
 いつの間にやら、小屋から二人出て来ていた。冷たすぎる光に背筋が凍る、長剣ではなかった、短剣での接近を許すほど夢中になっていのか。
 それとも、この二人の気配消しが秀でていたのか。

「あらやだ、ガーリャ様御機嫌よう」

 声に思わず眉を潜める、間違いなく叔母エロースの側近巫女の声だ。

「壁に這い蹲っている女でしたので、どこの小汚い精霊かと思えば」

 含み笑いでそう告げると、巫女ミリアは短剣を収めた。しかし、妙な殺気が放たれているような気がしてガーリャは蛇に睨まれた蛙のように動けない。思わず唇を噛む。

「こんなところで何をなさっているのかしら?」
「別に。話声が聴こえたので立ち寄ってみたのだけれど。叔母様の声に聴こえたので」

 言うべきか迷ったのだが、首を動かすと毅然とした態度でそう告げる。額に汗が浮かんでいたが、このまま引き返しては自身が許せない。
 ガーリャの挑発的な態度に、後方でフードを脱ぎ捨てたユイが警戒して睨みつけている。その前でようやくフードを外したミリアは、その褐色の肌と流れるような紫水晶の髪を露わに、艶然と立っている。
 
「エロース様のことかしら? こちらにはいらっしゃいませんよ?」
「そうなの、聞き間違いかしら? でも、叔母様の側近である貴女達が揃ってここにいるのにおかしな話よね」

 両者の睨み合いが続く、愉快そうにミリアは口の端に笑みを浮かべているだけだ。

「叔母様に用事があったのだけれど、なかなか申請されないものだから暇で」
「エロース様はお忙しいのです、時期男神と噂される旦那様を持つのですから、その程度の知識くらいつけておいてくださいな。血族であれども、女神とたかが精霊では天と地の差があるのですよ」

 中で叔母が誰と会話しているのか気にはなるが、今は目の前のミリアとユイが邪魔だった。ガーリャは仕方なしに大げさに溜息を吐くと、踵を返す。平行線で進展がなさそうだったからだ。

「叔母様にお会い出来たら、私が用事があったとお伝えくださいな。巫女様方」
「伝言でしたら今、お聞きしましょうか?」
「いいえ、結構よ」

 歩き出したガーリャに思いもよらぬ言葉が飛んできた、思わず足を止めた。

「ベシュタ様のことかしら? 政略結婚したのは良いけれど、愛されなくて辛いとでも? それとも、すでに旦那には心に決めた女がいるとでも?」

 暫し硬直していたガーリャだが、優美に振り返り小さく首を横に振る。「いいえ?」
 しかし、全てを知っている様にミリアが嘲笑したので、小走りでその場を立ち去る。
 消えていく金髪を見つめながら、ミリアは瞳を大きく開いて必死に笑いを押し殺していた。

「見た、あの高飛車な女の顔! 図星よ、ベシュタに愛されていないのだわ。面白くなってきたわね、私あの女嫌いだったのよ。エロース様の姪だから何も言わなかったけれど」
「……よく分かりましたね、ガーリャ様の悩み事」
「ユイ。様、なんて敬称で呼ぶ必要はないわ。さぁ、エロース様が”お手隙になるまで”私達は準備を整えましょう」

 短剣を舞わせ、ミリアは東屋を横目で見る。「上手くいけば、気にくわない女が二人消える。アースにガーリャ。ベシュタ様は惜しいけれど、私はトロイがいてくれたらそれで」

 東屋の中では、トリプトルが拘束されたままエロースに怒鳴っている。先程捉えられ、牢に入れられたのだがエロースの計らいでここへと連行された。
 虹色の扇を優雅に振りながら、エロースは勝ち誇った笑みを浮かべている。

「そなたは、土の精霊アースの純潔を奪った。貴重な惑星を死に追いやった反逆者」
「だから、純潔を奪ったのはオレじゃない! その前に奪った奴が、いや、アース自身が捧げた奴がいる!」

 噛み付くように吠えるトリプトルに、満足そうに扇に隠れてエロースは冷笑する。何も言わず、静かにトリプトルの言い分を聴いていた。
 アースの純潔を奪ったのは、ベシュタだ。それはエロースとて知っていた。

「では、一体アースと最初に契を交わした……もとい、妄りに身体を重ねたのは誰であると?」
「ベシュタに決まってるだろ! 女神様の一族だろうが!」

 両手足首を縄で縛られ、それでも身体を捻りながら暴れながら尚も抵抗しているトリプトルを瞳を細めて見つめる。食い込む縄が、苦痛の表情が、それでも手向かおうとする態度が。汗ばむ額が妙に艶かしく、静かにエロースは近寄るとその胸板にそっと指を這わせた。
 驚き、一瞬静かになるトリプトル。「何を」と言葉を漏らすと、そのエロースの美しく細長い指が身体を伝って、言葉を塞ぐように唇に触れた。

「このままでは、そなたは反逆者」
「だから、オレじゃない!」
「……そなたのことは評価している、助けられないこともない」

 
 瞳の奥が光った、その微笑はまさに魔性そのもの。近づく顔に抗うこともできず、目を開いたまま唇を重ねる。身体が一瞬跳ね上がった、エロースは頬に手を触れ、腰に手を回し、下腹部をこすりつけるように密着させ舌を入れて口付ける。
 何が起こったのか分からなかった。

「助かる方法は一つ。この事は他言無用、私は美しい男がとても好き」

 耳元でそう囁かれた、脳に言葉がこだまする。

「……女神様は不埒な女だったんだな」
「そのような口が利けるとは、上等。流石私が目をつけた男」

 絞り出した精一杯の嫌味も、転がすように受けたエロースはそのまま欲望のままに続けた。

「あんな土臭い小娘より、私のほうがよっぽど楽しめると思うが?」

 東屋から、嬌声が漏れるのに時間はかからなかった。
 助けて欲しくば、身体を重ねろという女神からのお達しを、トリプトルは受け入れた。これ以上、アースに関わりたくなかった、逃れる為ならどんなことでもしようと思った。
 二人の唇が重なり合う。

『この唇は、オレのもの。オレの唇は、アースのもの。だから、絶対に他の誰にも触れさせないで。オレも触れさせない。解る?』

 自分が言った言葉など、忘れた。一瞬脳裏を過ぎったが、アースとてベシュタと口づけたのだから無意味だと、忘れるようにエロースの唇を貪る。

「口づけが好きか?」
「……まぁね」

 それが気に入ったらしく、エロースも激しく唇をぶつけ、腰を振る。
 どうでも良くなった、アースの嬉しそうな顔が、次第に薄れていった。

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