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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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もげらー
もう完結させてしまいたい←
してしまおうか、トランシス出る前に。

 見ているこちらが激痛を覚える程、腫れあがっているアースの身体を思い出すと唇が切れるまで噛んでいた。一刻も早く治療が必要だ、しかし。
「駄目だ……主星は駄目だ!」
 トロイはベシュタ派遣に納得が出来ず、主星に出向いていた。出向いた先で、のらりくらりと会話をはぐらかされ、答えを聞けぬまま半ば無理やり惑星スクルドへと押し戻されてしまったのだが、まさか。
「……必然なのか、オレがスクルドにいたならばこのような事にはならなかったのでは?」
 あまりにも不可解過ぎた、主星アイブライトでは真剣に話を聴いてもらうことなどなく、瞳すら合わせてもらえなかった。それが何者かによる計画だったとしたら。自分は、足止めされていただけなのではないか……そう考えつき、身体が震える。
 しかし、そうだとすればベシュタがやってきたことも納得がいくのだ。出向いてきたのは光の精霊……それも、名家の男である。そのような人物を簡単に派遣出来るとすれば、同じ種族の女神エロース辺りでしかない。
「アースを、失脚させたいのか」
 そのような行為が可能な人物など限られてくる、それこそ神でしか有り得ない。トロイは、愕然とその場に立ち尽くす。
 もし、この恐ろしい仮定が真実であればアースを主星へ連れて行くことなど出来ない。反逆者として、身を拘束されるかもしれない。理由はどうであれ、純潔を失ったことは大罪だ。愛し合う二人で、周囲も認めていたならば祝福を受けるが、それは稀である。
 アースは期待の土の精霊だ、非難と罵声を浴び、糾弾されることなど目に見えている。
 治療は、この惑星でするしかなかった。
「神が……この状態を何処まで把握しているのか」
 トロイは青褪め、ともかく薬草を集めることにした。リュミを捜しに行きたいが、アースの傍を離れることなど、出来なかった。
 薬草学には疎いトロイだが、流石アースの惑星で、質の良い薬草が直ぐ傍に都合よく生えていた。記憶の糸を辿り、それらを磨り潰すとアースに飲ませる。傷に良い草は直接アースの傷口にあてて、布で縛った。
「しっかりしろ、アース。……すまない、オレが離れたばかりに。大丈夫だ、直に良くなる、何もなかった、何もなかった」
 今後アースはどうなるのか。力が消失した状態で、どこまでこの惑星が耐えられるのか、全く検討がつかない。
 アースの手を握り締め、指に口づける。
「アース、オレを頼ってくれ。必ず駆けつける、何があっても味方でいる。願ってくれたのなら、どんなことでも全力で叶えよう。それがオレの存在意義」
 聞いているのかいないのか、しかし、若干首が動いた気がした。それを見たトロイは、かすかに安堵の笑みを浮かべる。必死に手を擦りながら、そっとアースの頬に触れる。しかし、いつまでもこのままでいるわけにはいかない。
 必要なものは、大量の薬草と純潔を失った土の精霊の末路が記された過去の記録だ。
「リュミ、来てくれ、リュミ!」
 鋭く叫ぶと、小屋の外から物音がする。弾かれたように飛び出すと、思わず口元に笑みが浮かんでいた。
「リュミ!」
 黒髪を靡かせて、不思議そうに立っているリュミに大きく手を振る。普段のトロイからは想像出来ない安堵の表情と、表に感情を出していたことから何かあったことなどすぐに解った。
「……どうしたの?」
「薬草学の成績は? アースの治療に専念したい」
 近寄ると直様腕を捕まれ、小屋へと引き摺り込まれる。そこで見たものは、変わり果てた友人の姿だった。美しい顔が見るも無残に腫れ上がり、呼吸すら苦しそうに見える。喉の奥で悲鳴を上げて、一目散に近寄ると肩を揺すりたいのを必死に耐えて瞳に涙を浮かべた。
「な、な……! なんだよ、これ!」
「他言無用だ、純潔を失っている」
「はぁ!? どういうこと、誰が」
 言いかけて、絶句した。思い当たる人物がいる、リュミもよく知っている男だった。名を出すことを躊躇い、小刻みに震えながらトロイを見ることなく「ホントなの?」と呟く。
「信じたくはないが、これが現実だ。奴はどうでもいい、今はアースの身体が最優先だ。薬草を飲ませ、今傷口にあててはいるが……もっと効果的な方法を知っていたら頼む。あと、惑星育成を破棄した土の精霊について記載されているものが読みたい。二人で切り抜けるしかない」
「アース……なんて事だ」
 水を汲みに小屋から出たトロイの代わりに、リュミがアースの手を握る。その痛々しい姿を直視出来ず、視線は逸らしたまま震える声を絞り出した。
「僕の、友達。最初の友達。とても美しい友達は、どんどん綺麗になって、光り輝いて僕の手から離れて行った。けれど、それでもよかった。大事な友達が愉しそうに笑っている姿さえ見られたら……少し悔しいけど、満足だったよ。なのに、こんなことになるなんて! トリプトルだったから、僕は何も言わなかったのに。……僕だって、アース、君を」
 一呼吸置いてから情けなく微笑むと、リュミは項垂れた。押し殺した嗚咽と、か細い声は。
「君を護りたい、アース。君の傍でその笑顔を護りたい、その為に、友達として傍にいたいんだ」
 アースの指をなぞると、頑なに何かを握り締めていることに気がついた。そっと指をほぐして、それを引っ張り出す。
 紅い宝石の首飾りを握っていた、鎖が壊れていたのでリュミはそれを必死に直した。直して、アースの首にかけておいた。離さない様に強く握っていたので大事なものだと分かったからだ、身につけておいたほうが安心出来るだろう、と思った。
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