別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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ひいいいいいい今年中には第4章終わらせたいのに←
忽然と姿を消してしまったアサギに、トビィは唇を半開きにしたまま空中で躊躇している。が、舌打ちすると先を急いだ。
アサギが『急いでください、トモハル達が危ないのです。私も直ぐに追いつきます』と言ったからだ。言われなければ、そのまま勇者の援護には向かわず、アサギを捜していた。
「アサギ様は不思議なお方といいますか、突拍子もない行動に出られますよね。どんな時も」
「言うなクレシダ、それがアサギの良いところでもあるだろ。厭きない」
「……ですか、私には分かりませんゆえ」
トビィ達が村周辺に到着する頃、勇者達は無人に見える村へと侵入していた。洗濯物が干してある、井戸から汲み上げた水を入れた桶が、そのまま地面に置かれている。家の中では焚き火が燃え、その上にかけられている鍋からは美味そうな香りが漂っていた。
どう見ても、先程まで生活していた人がいた証拠だ。
二手に分かれて村を慎重に捜索した、しかし、人間所か普通ならば飼われているであろう家畜すら、いない。
「なぁ、援護待ったほうが良くねぇ?」
ミノルが息を殺しながら一軒の家に侵入し、後方にいるケンイチに話しかける。エレンを肩に乗せて、ケンイチは剣を構えたまま様子を窺っていた。
「駄目だよ、リングルスさんが連れ去られたから時間がないよ」
少し怒気を含みそう返したケンイチが上空を見上げると、何処かで見た大きなドラゴンが宙を旋回していた。それに思わず笑みを浮かべて、大きく手を振る。
「来た、トビィだ! やった、強い人が来た!」
実力ならば群を抜いてトップレベルである、喜ばざるを得ない。その嬉しそうな声を聴いて、ミノルも慌てて飛び出してきた。同じ様に大きく手を振る。
やはり、心細かったのだ。魔王を倒した勇者とはいえ、実際直接とどめをさしたわけではない。”魔王と戦った”という事実でしかない、実力は二の次の状態である。勇者のみが所持できる伝説の剣と選ばれた証の石を持っているだけの、地球の小学生だ。
トビィが到着したことは、トモハルとダイキにも無論分かった。やはり笑みを浮かべる。
「何をやっているんだ、あいつらは。……デズ、クレシダ。村近くのあの空き地へ、そこで待機してくれ」
「御意に」
「分かりましたゆえ」
眉間に皺を寄せ、特に危機に瀕してはいなかった勇者達を見下ろすとトビィは地上へと降り立つ。周囲を見渡し現状を把握しようとしたが、特にこれといって不穏な気配は感じられなかった。何が緊急事態なのか、全く解らない。村外れに地面が焦げた箇所があり、不思議に思ったが、特に気にせず視線だけ軽く投げかけた。
村へと歩いていくと、近くに居たトモハル達が入口で手を振っている。流石に癇に障ったので声を荒げた。
「おい勇者、何をやっているんだ。急遽呼び出されて来てみれば、暢気に村の散策なのか?」
「違うよ、村人が突然変化して襲ってきたんだよ。散歩じゃなくて、調査中! というか、一人幻獣星のリングルスさんが連れ去られてしまったんだけど」
瞳を細めたトビィに睨まれ、トモハルが肩を竦める。
「なるほど、それは一大事、だな。お前らは何をやっていたんだ、連れ去られるのを黙って見ていたのか」
「違うよ! 追いかけたけれど忽然と消えて、どうしたらいいのか分からないんだ」
「上空から見た限りでは、不可解な点はなかったが。外で何か燃やしたような焦げ痕があったくらいか」
事情をトモハルが細かに説明すると、トビィが眉を潜める。確かに”緊急事態”だと思った。
「全く、面倒な事をしてくれた。目的がさっぱり検討つかない」
「邪教が関わっているのは間違いないよ」
ともかく、リングルスの救出が最優先である。魔物と化したかもしれない人間を救う手立てなど知らない一行は、遭遇次第攻撃するようにトビィから指示を出された。村の中央で合流したが、やはり村には鼠一匹いない状態である。
「神と交信しろ、リングルスの所在は分からないのか。リュウも呼んだほうが懸命な判断だと思うがな」
トビィに言われた通り、トモハルが交信を試みる。その間、トビィは一人で再び村を散策した。自信があるので、単独行動も平気である。皆も気にしていない。
カタン……一軒の質素な家に足を踏み入れたトビィは、何処かで何かが動く音を聞いた。静まり返っている周囲だが、今確かに……何かが動いたと判断したトビィは口元に笑みを浮かべる。
右手に所持していた剣を一気に振り下ろし、同時に左手で腰に差してあった短剣を床目掛けて投げつけた。小気味よく、木の板に突き刺さった短剣を見つめると、急にそれが押し戻されて天井へと放り投げられる。
「おでましか」
愉しそうに喉の奥で笑ったトビィは、右脚を少し開いて剣を両手で構えた。
その音に勇者達が気づかないわけもなく、皆一斉に走り出す。
その頃、魔族のイエン・タイは山脈の麓に設置した陣で通路を開いた。現われたのはごく普通の人間達である、シポラにいた破壊の姫君を信仰している教徒達である。横たわり、全員眠りについている。
タイは軽やかに宙に浮くと、口笛を鳴らした。地鳴りが聞こえて、転がるように漆黒の巨体が山頂からやって来る。三つの頭部を持つ犬、地獄の門番ケルベロスである。首輪に繋がれており、陣の手前までしか来れず前足で地面を引っかいている。
横たわっている人間達を、炎が燃えているような禍々しい六つの瞳で見据えたケルベロスは、そのまま三つの口で人間に舌を伸ばして食らった。歯が身体に突き刺さったところで、文字通り引き裂かれるような痛みで目が覚めた人間達は、腐敗臭のするその口内で悲鳴を上げる。それが断末魔となった、すぐに人間達は喰われてしまい、満足そうに宙に浮かんでいるタイを見上げたケルベロスは甘えた声を出す。
「もう少ししたら、腹が裂けるほど食べられる。待っておいで」
優しく語り掛けられ、ケルベロスは尻尾を振って嬉しそうに頷くと再び山頂へと戻って行った。見送ったタイは、山脈から最も近い人間の村を見つけるとそこに降り立つ。貧相な村で、際立った建物などない。
入口に姿を現したタイを最初に見つけたのは子供で、背に純白の羽を持つタイを天使だと、純粋に叫んで近寄る。
その姿に嘲笑しつつも、タイは駆け寄ってきた子供達に囲まれながら穏やかな笑みを浮かべていた。やがて大人達も集まり、地面に平伏しているのを得意げに見下ろしたタイは、静かに頷く。
「聞くがよい、人間よ。あの山脈に禍々しい魔物が住んでおる、一度怒り狂えばこの村はおろか近隣の国など瞬時に火の海と化すであろう。口から吐き出される業火と、鋭い爪の前に誰もが恐怖し死を願う。封印されていたが、今、世界は混沌へと傾いた。均衡が崩れ、その封印が解かれようとしている。……再度の封印には生贄が必要だ、出来るだけ若く柔らかい子供や娘らを贄とせよ。雨が降る月明かりのない晩に、祭壇へ捧げるのだ。さすれば、この村は無論、世界も平和に保たれる。捧げなければ、瞬時にこの村は破壊されるであろうな」
村から離れた場所を指差したタイは、それだけ告げるとその祭壇の方角へと向かった。そこは、ただ木々が刈り取られただけの空き地である。陣が地面に画かれ、周囲に色取り取りの花が植えられているだけで、祭壇とは言い難い。
が、天空から目立たないようにするにはこれしかなかった。奇怪で恐怖心を駆り立てられる場所ならば、なんでもよかった。
近くの木々に身を潜め、人間達を待つ。
案の上、人間達はやってきてその空き地を唖然と見つめていた。耳を傾け、話声を聞く。
「今のお方は天使様じゃろうか、生贄を選定せねばならん」
「物の怪の類では? 嘘やもしれん、子供らは村の宝、簡単に差し出せるものでは」
「しかし、生贄出さねば村が破壊されてしまう」
「大変なことになった……」
生贄を差し出さねば、村人全員が一瞬でケルベロスの腹の中に入るだけなので、タイ的にはどちらでもよかった。だが、生贄として自ら餌となってもらえたほうが、神の目を欺くことが出来る。暴れる者など、誰もいないからだ。
二日後、その土地に雨が降り。案の定生贄を出してきた村人に、タイはほくそ笑んだ。今回送られてきたのは、娘だった。特に際立って美しくもない平凡な娘だった。震える足で陣の中心に立つと、その姿が掻き消える。山頂の一角で、悲鳴を上げる前に転送先でケルベロスに喰われてしまった。
タイは陣の付近に、珍しい貴金属を煌びやかな布に包んで置くとその場を離れる。
翌朝様子を見に来た村人数人は、その置かれている高価な物に歓喜し、欲に目が眩んだのか皆で顔を見合わせるとその場でそれらを分けてしまった。村に戻ると『娘はいなかった』とだけ報告し、置かれていた物の事は一言も発しなかった。
タイの思惑通りである、人一人いなくなっても代わりのものさえあれば文句は言わない。ましてそれが自分が欲するものならば尚更である、欲を見てきたタイにとって、手玉にとることなど容易かった。誰も娘の安否など気にしない。持ち帰った宝を各々隠し、秘密を共有してしまった。
やがてその数人の村人は、雨を願うようになった。また、宝が置いてあるかもしれないと、そう思い始めたからだ。毎回ではなかったが、タイは気が向くと”人間達が隠し持って帰る事が出来る”宝石の指輪など小さなものを陣の近くに置いておいた。
こうしてこの村からは、徐々に子供らや娘らが減っていったのである。
子を抱えている親は抵抗したが、村の為だと皆でにじり寄った。それでも首を縦に振らないと、家族ごと生贄にされてしまった。
それを見ていた他の家族は、夜のうちに逃亡を試みたが、捉えられやはり生贄になった。
子供がいなくなったので、仕方なく余命少ない老夫婦が生贄にされ、やがて村は村長一家と報酬を受け取っていた男達だけになり、口論が起きてその村で死に絶えた。
タイは肩を竦めて陣を消すと、同じ様な村を求め、また、同じ様に説き新たな生贄を要求したのである。
しかし、誤算があった。……その誤算とて、微々たるものであったが。
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