別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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てら遅れておりまするるるるるる。
誰が何の目的で建造したのだろうか、細長い塔の最上階にある小窓から内部へと潜り込んだイエン・アイは小さく溜息を漏らした。人間が罪人を幽閉する為に造らせたものなのか、神に逢おうと天へ向かい造られたものなのか。
この塔の入り口はこの小窓と、付近の森に隠されている隠し通路で地下から進入するしかない。そして石を丁寧に積み上げ造られたその塔の内部には、何もない。ただ螺旋状に階段が上へと続いており、最上階へと辿り着くと小窓と何もない空間がある。大人の人間一人が眠れるだけの、そんな狭い場所だった。
アイはその小部屋の石壁を軽く手の甲で叩く、思ったより頑丈に出来ている事は承知していたが、再度確認した。懐から取り出した鉄製の金具を、壁に豪快に突き刺す。非力な身体からは想像出来ない強力だった。
埋まったその金具を見て、満足そうに微笑んだアイは口元に笑みを浮かべると階段を下りていく。準備をせねばならなかった、来るべき時の為に。
塔の最上階、小部屋の壁に妙な鉄金具が揺れている。手首を拘束する、磔器具がそこにはあった。
村人が異形の化物へと変化し、村側で戦う羽目になった勇者三人。そして洞窟を挟んで反対側では残りの勇者と幻獣二体が、出現した魔物と対峙していた。
「これは一体どういうことですか」
「僕達は、以前“球体”の存在を知りました。人間を生贄にして、魔物などを出現させる球体を製造している邪教の一人と会ったのですが、恐らくその彼が作っていたものです」
ケンイチは背中の剣を二本引き抜いた、片方は自身の剣であるカラドボルグ、そしてもう片方は邪教に従っていた悲運の魔法剣士バリィが所持していた霊剣・火鳥である。思わず火鳥を持つ手に力が籠もる、家族を救いたいが為に否応なしに手を黒く染めていたバリィの悔しさを思い出していた。
掛け声とともに、洞窟から溢れ出てきた動く死体に斬りかかる。死体の魔物には火か光の魔法が効果的だと習った、火鳥からは火花が迸っているので最適だと判断する。
ケンイチが洞窟側へと標的を向けたので、リングルスとエレンは森からやってきた大蛇へと標的を合わせた。
「その大蛇、酸を吐き出すので気をつけてください!」
以前戦ったことがあるケンイチはそう叫ぶ、神妙に頷いた二人は上空へと舞い上がるとエレンが先に風の魔法を詠唱した。無数の刃が大蛇を襲い、攻撃を緩める為にリングルスは刃が消えると同時に瞳を狙うと鋭い爪で眼球を抉る。
慣れ親しんだ二体は見事な連携で大蛇二体をケンイチへ近寄らせないように応戦する、背中が護られているので安心してケンイチも死体に集中できた。
反対側では、勇者三人が身構えたままだ。魔物と戦うのと、“人間が変貌した”魔物と戦うのでは、重みが違うことに気がついた。本当に斬ってよいのか、人間に戻る方法があるならば探すべきでは。嫌な汗がトモハルの額を流れる、手が汗ばみ、足が震える。火炎の魔法で壁を作って来たのだが、そんなものただの足止めに過ぎなかった。火の向こうに揺らめく影が見えている、奇怪な触手が今にも火から這い出てきそうだった。
援軍を待ち続け、痺れを切らしたトモハルは火の壁へと駆け出した。叫んだダイキだが、トモハルは壁を強化すべく再び魔法を放つ。ギリギリまで誰かが到着することを望んだのだ、意図が解った為未だに呆けているミノルを叱咤し、ダイキも火炎の魔法を放つ。三人の勇者が繰り出した火炎は、壁を強固なものにした。だが、完全ではない。
このまま、防衛に徹するべきなのか。しかしいつかはこれも崩れて消え去る、その時に魔力が消耗していた場合、窮地に追いやられてしまう。
「どうする、トモハル」
「……限界直前まで粘ろう、きっと誰かがくる筈だ。村人だった魔物を斬る権利があるのかどうか、解らない」
炎の向こうで蠢く影を見つつ、唇を噛み締めたトモハルは声を聴く。
「そっちはどうなってんの!?」
上から降って来た声に、三人は笑顔で見上げた。反対側で戦闘を終えたケンイチが、リングルスに抱えられてやってきたのだ。思わず肩の力が抜けた勇者達は、心強い仲間に多少涙ぐむ。
経緯を簡単に説明し、瞳を細めたリングルスがゆっくりと上空へと舞い上がる。
「気をつけて、リングルスさん」
「大丈夫です」
火の壁の向こう側を見る為に、高く舞い上がりそっと覗きこんだ。瞬間。
待機していたエレンが風の魔法を放ったが、無数の触手には効果がない。低く呻いたリングルスは、待ち構えていたかのように獲物に向かってきた触手に捕らえられ引き摺り込まれた。
悲鳴を上げるエレンと、反射的に咆哮して火の壁へと突進する勇者達。
斬りかかるしかない、そう皆が判断したのだが火の壁の向こうには触手は勿論リングルスの姿すら、なかった。
ただ、不気味に佇む村が見えるだけだった。
唖然とする勇者達だが、エレンは発狂しそうな勢いで泣き叫んでいる。間違いなく、リングルスは捕らえられた。そんなに時間は経っていないのに、何処へ消えたのだろう。
「村に、行くしかないよ」
トモハルが駆け出した為、他の勇者達もついていく。リングルスの無事を願いながら乾いた風吹く、人気のない村へと足を踏み入れた。
胸騒ぎを覚え、デズデモーナに跨っていたアサギは瞳を閉じた。様子がおかしいことに気付いたトビィが声をかけるが、集中しているアサギは反応しない。
「アサギ、聴こえているのか、アサギ?」
クレシダに近寄らせ、二体の竜の翼が接触しない程度で再度語りかける。ようやくアサギが顔を上げて、トビィを見つめた。
その視線に思わず背筋が寒気を感じた、アサギで間違いないが雰囲気が違っている。大きな瞳は泣き出しそうに潤んでいた、困惑気味に眉を顰めこちらを見ているアサギはトビィが誰だか解っていないようだ。
「アサギ?」
「……アサギ、そうでした、アサギです」
妙なことを口走った。眉間に皺を寄せてこれは休憩すべきだと判断したトビィは、そっと腕を伸ばす。
「トビィお兄様、先を急いでください。私も直ぐ合流しますので」
「どういうことだ?」
デズデモーナの手綱を不意に手放し、するりとその巨体から宙へと身体を放ったアサギは大きく瞳を見開いたトビィに微笑した。
「急いでください、トモハル達が危ないのです。私も直ぐに追いつきます」
「待て、何処へ行くアサギ!」
「……助けてきます。あの方、戻れないから」
それだけ言い残すと、アサギは軽く手を振りそのまま掻き消える。
「…………」
この塔の入り口はこの小窓と、付近の森に隠されている隠し通路で地下から進入するしかない。そして石を丁寧に積み上げ造られたその塔の内部には、何もない。ただ螺旋状に階段が上へと続いており、最上階へと辿り着くと小窓と何もない空間がある。大人の人間一人が眠れるだけの、そんな狭い場所だった。
アイはその小部屋の石壁を軽く手の甲で叩く、思ったより頑丈に出来ている事は承知していたが、再度確認した。懐から取り出した鉄製の金具を、壁に豪快に突き刺す。非力な身体からは想像出来ない強力だった。
埋まったその金具を見て、満足そうに微笑んだアイは口元に笑みを浮かべると階段を下りていく。準備をせねばならなかった、来るべき時の為に。
塔の最上階、小部屋の壁に妙な鉄金具が揺れている。手首を拘束する、磔器具がそこにはあった。
村人が異形の化物へと変化し、村側で戦う羽目になった勇者三人。そして洞窟を挟んで反対側では残りの勇者と幻獣二体が、出現した魔物と対峙していた。
「これは一体どういうことですか」
「僕達は、以前“球体”の存在を知りました。人間を生贄にして、魔物などを出現させる球体を製造している邪教の一人と会ったのですが、恐らくその彼が作っていたものです」
ケンイチは背中の剣を二本引き抜いた、片方は自身の剣であるカラドボルグ、そしてもう片方は邪教に従っていた悲運の魔法剣士バリィが所持していた霊剣・火鳥である。思わず火鳥を持つ手に力が籠もる、家族を救いたいが為に否応なしに手を黒く染めていたバリィの悔しさを思い出していた。
掛け声とともに、洞窟から溢れ出てきた動く死体に斬りかかる。死体の魔物には火か光の魔法が効果的だと習った、火鳥からは火花が迸っているので最適だと判断する。
ケンイチが洞窟側へと標的を向けたので、リングルスとエレンは森からやってきた大蛇へと標的を合わせた。
「その大蛇、酸を吐き出すので気をつけてください!」
以前戦ったことがあるケンイチはそう叫ぶ、神妙に頷いた二人は上空へと舞い上がるとエレンが先に風の魔法を詠唱した。無数の刃が大蛇を襲い、攻撃を緩める為にリングルスは刃が消えると同時に瞳を狙うと鋭い爪で眼球を抉る。
慣れ親しんだ二体は見事な連携で大蛇二体をケンイチへ近寄らせないように応戦する、背中が護られているので安心してケンイチも死体に集中できた。
反対側では、勇者三人が身構えたままだ。魔物と戦うのと、“人間が変貌した”魔物と戦うのでは、重みが違うことに気がついた。本当に斬ってよいのか、人間に戻る方法があるならば探すべきでは。嫌な汗がトモハルの額を流れる、手が汗ばみ、足が震える。火炎の魔法で壁を作って来たのだが、そんなものただの足止めに過ぎなかった。火の向こうに揺らめく影が見えている、奇怪な触手が今にも火から這い出てきそうだった。
援軍を待ち続け、痺れを切らしたトモハルは火の壁へと駆け出した。叫んだダイキだが、トモハルは壁を強化すべく再び魔法を放つ。ギリギリまで誰かが到着することを望んだのだ、意図が解った為未だに呆けているミノルを叱咤し、ダイキも火炎の魔法を放つ。三人の勇者が繰り出した火炎は、壁を強固なものにした。だが、完全ではない。
このまま、防衛に徹するべきなのか。しかしいつかはこれも崩れて消え去る、その時に魔力が消耗していた場合、窮地に追いやられてしまう。
「どうする、トモハル」
「……限界直前まで粘ろう、きっと誰かがくる筈だ。村人だった魔物を斬る権利があるのかどうか、解らない」
炎の向こうで蠢く影を見つつ、唇を噛み締めたトモハルは声を聴く。
「そっちはどうなってんの!?」
上から降って来た声に、三人は笑顔で見上げた。反対側で戦闘を終えたケンイチが、リングルスに抱えられてやってきたのだ。思わず肩の力が抜けた勇者達は、心強い仲間に多少涙ぐむ。
経緯を簡単に説明し、瞳を細めたリングルスがゆっくりと上空へと舞い上がる。
「気をつけて、リングルスさん」
「大丈夫です」
火の壁の向こう側を見る為に、高く舞い上がりそっと覗きこんだ。瞬間。
待機していたエレンが風の魔法を放ったが、無数の触手には効果がない。低く呻いたリングルスは、待ち構えていたかのように獲物に向かってきた触手に捕らえられ引き摺り込まれた。
悲鳴を上げるエレンと、反射的に咆哮して火の壁へと突進する勇者達。
斬りかかるしかない、そう皆が判断したのだが火の壁の向こうには触手は勿論リングルスの姿すら、なかった。
ただ、不気味に佇む村が見えるだけだった。
唖然とする勇者達だが、エレンは発狂しそうな勢いで泣き叫んでいる。間違いなく、リングルスは捕らえられた。そんなに時間は経っていないのに、何処へ消えたのだろう。
「村に、行くしかないよ」
トモハルが駆け出した為、他の勇者達もついていく。リングルスの無事を願いながら乾いた風吹く、人気のない村へと足を踏み入れた。
胸騒ぎを覚え、デズデモーナに跨っていたアサギは瞳を閉じた。様子がおかしいことに気付いたトビィが声をかけるが、集中しているアサギは反応しない。
「アサギ、聴こえているのか、アサギ?」
クレシダに近寄らせ、二体の竜の翼が接触しない程度で再度語りかける。ようやくアサギが顔を上げて、トビィを見つめた。
その視線に思わず背筋が寒気を感じた、アサギで間違いないが雰囲気が違っている。大きな瞳は泣き出しそうに潤んでいた、困惑気味に眉を顰めこちらを見ているアサギはトビィが誰だか解っていないようだ。
「アサギ?」
「……アサギ、そうでした、アサギです」
妙なことを口走った。眉間に皺を寄せてこれは休憩すべきだと判断したトビィは、そっと腕を伸ばす。
「トビィお兄様、先を急いでください。私も直ぐ合流しますので」
「どういうことだ?」
デズデモーナの手綱を不意に手放し、するりとその巨体から宙へと身体を放ったアサギは大きく瞳を見開いたトビィに微笑した。
「急いでください、トモハル達が危ないのです。私も直ぐに追いつきます」
「待て、何処へ行くアサギ!」
「……助けてきます。あの方、戻れないから」
それだけ言い残すと、アサギは軽く手を振りそのまま掻き消える。
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