別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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マビル。
アサギの髪色変化に家族は気付かず、クレロが上手くやってくれたのだと安堵して眠りについた。
翌朝土曜日、勇者達はクレロからの指示を受け、地球から異界へ旅立つ。ユキのみがピアノの稽古がある為、不参加だった。ミノルは気乗りしなかったが、張り切っているトモハルが隣の家から呼んでいるので行くしかない。重たい身体を引き摺って、異界へ出向く。
要請を受け、幻獣星王であるリュウは動く事が出来なかったが、代わりに配下のリングルスとエレンが参加してくれることになっていた。アサギは嬉しそうに二人に手を振り、二人も笑顔で会釈する。他の惑星の皆は復興に全力を注いでいるため、こちらへ人員を派遣することは出来なかったが、最悪の事態となればいつでも駆けつけてくれるとのことだった。
続々と集まる仲間達に、先陣切ってアサギとトビィが天界から飛び出して行く。
「再確認しておこう。アサギとトビィは魔王アレクの従兄弟ナスタチュームと交渉に向かった、協力を得ることが出来ればこんなに心強いことはない。
幻獣星から参られたお二方よ、感謝致す。不慣れな土地ゆえ、こちらの勇者達と組み行動して戴きたい」
ライアン達が戻らない為、勇者達と幻獣星の二人が昨夜騒動があった村へと出向いた。地理に疎いメンバーとなってしまったが、戦闘力は高い。村の人間がリングルス達を見て驚くと行けないので、村へ行くのは勇者だけだ。
簡単に事情を聞いた勇者達は、多少緊張した面持ちで村の外れの洞窟へと出向く。
「宜しくお願いします、俺はトモハルです」
「こちらこそ宜しく、勇者よ。アサギ様のご友人とお聞きしています、リングルスと申します。彼女はエレン、風の魔法に長けている身体からは想像出来ない攻撃魔法の使い手です」
早速トモハルが中心となって自己紹介を始めた、人見知りしないので、こういったことには適任なのだ。他の勇者三人は、ぎこちなく挨拶をする。
「話によると、この洞窟には何もないとお聞きいたしましたが。私とリングルスでこの崖を越え、あちらの出口を調査しましょうか?」
「そうか、飛べるんだ! 是非お願いします、でも、危ない事はしないでください」
「えぇ、承知しております。では、早速」
言うなりエレン達はふわりと舞い上がり、出口へと向かう。それを見送ると、トモハルとダイキが村へ向かい聞き込みを開始した。残されたミノルとケンイチは周辺の探索だ。
「前、みんなと離れ離れになった時も城壁を調べたなぁ。あの時はユキが変な箇所を見つけたんだけど」
「へぇ」
ケンイチが懐かしそうにそう呟きながら、入口の崖を丹念に調べる。
「同じだと思うんだ、あの時追っていた盗賊と今回の件。もし、同じなら絶対に何か手がかりが有るはずだよ」
「そうなんだ」
「……しっかりしてよミノル、どうしたの、ぼーっとして」
トビィからの一言がどうしても苦しくて、未だに浮上出来ないミノルは、必死に草の根分けて何かを探すケンイチに合流できない。溜息混じりに、それでも文句言わずケンイチは可能性を考えていた。
「村を襲撃した魔物、洞窟へ逃げていった。……でも、アサギが通ったら洞窟はアサギ一人が通るだけでも精一杯。なら、魔物は何処へ行ったんだろう? 小さい魔物だったのかな? もし、大きい魔物だとするならば」
思い浮かぶのは、精製に遭遇してしまった不気味な球体だった。
『琥珀色が大蛇、あれは最後に生きた蛇を大量に鍋に投げ込んで製作可能になる。
瑠璃色が吸収、お前達が見た吸い込まれた盗賊はその球のせいだろう。これが最も難解な製作だ。
珊瑚色が大鷲、萌黄色が触手、群青色が死人、漆黒が毒霧だ』
目の前で死んでしまったバリィが教えてくれた禁断の球の効果を思い出したケンイチは、唇を噛むと微かに震えた。
「吸収の玉を使えば、魔物を一瞬にして消すことも出来る」
ケンイチが見たのは、大蛇出現と盗賊を吸収した球、その二種類だけだ。自分の結論を誰かと共有したいが、ミノルは今呆けている。ムーンかブジャタ、せめてユキがいてくれたのならば。
「ねぇ、ミノル。僕さあっち側に行ってくるからトモハル達が戻ってきたらよろしくね」
「あぁ」
岩に座って、空を眺めていたミノルに一応声をかける。苦笑し、ケンイチは一人洞窟へと入って行った。暗くて見えないが、地球から持参してきた懐中電灯のスイッチをオンにする。照らされた洞窟内部に安堵し、脚を踏み入れる。アサギが普通に通過したのだから何もないだろうが、念の為だ。内部に何か手がかりがあるかもしれない、光に照らせば見えるかもしれない。
ケンイチが一人洞窟に入った頃、反対側に到着していたリングルスとエレンは鬱蒼とした草木にげんなりとした。時折虫や鳥の鳴き声が聴こえるだけだ、昨夜鎮火したという焦げた木々が遠くに見える。
「敵は何がしたいのかしら? 魔王が消え、時期魔王になりたい者の犯行?」
「違うと思う……この惑星は、不可解だ」
トモハルとダイキは、魔物の奇襲に怯えきっている村人達から有力な情報は得られなかった。自分達ですらよそ者の為嫌悪され、まともに目すら合わせて貰えない。何が攻めて来たのか、何が破壊されたのか知りたくとも、詳細が解らない。
「困ったな。魔物って、何が出たんだろう? よくわからないけど、魔物って俺達みたいに意思がある奴と、動物みたいな奴がいるよね」
「誰かに頼まれてこの村を奇襲したのか、ただ、この近辺で生活していて腹が減って村を襲ったのか、ってこと?」
「そう。クレロからは魔物としか聞いてないけど、何が出たのかって重要じゃないかな」
村をうろついていたが、村人達の異様な視線に耐えかねて二人は気まずく立ち去る事にした。勇者だ、と言ったところで子供の二人では信じてもらえないだろう。と、木々から子供が飛び出してくる。六歳くらいの少年だろうか、二人の目の前で止まった。
「お兄ちゃん達、剣持ってる!」
背にある剣を興味深そうに見つめる子供に、トモハルが屈んで微笑む。
「うん、勇者だからね。村を襲った魔物を追っているんだよ」
子供相手だからと勇者と自ら名乗ったトモハル、ダイキも小さく微笑んで子供に手を振る。
目を輝かせて子供は嬉しそうに手を叩くと、興奮気味に話し始めた。
「勇者、かっこいい! 昨日来た魔物はね、びっくりしたんだよ、どこから来たのかわからないんだよ。気がついたら村にいたんだよ、それでね、突然ね、何処かにね」
途端に子供の動きが止まる、首を傾げたトモハルと、鳥肌が立ったダイキ。二人の武器が、鋭く光り輝いた。
「うわ、うわぁああああっ!」
トモハルの悲鳴に、ダイキが咄嗟に腕を伸ばして衣服を掴むとトモハルを引き寄せた。思わず視線を逸らしそうになったがそれどころではない、剣を引き抜き、震えているトモハルに叫ぶ。
「武器をとれ、トモハル! 来るぞっ」
ダイキは言うが早いか手にした剣で襲い掛かってきた”何か”を斬りつけた、慌ててトモハルも剣を引き抜き、魔法の詠唱を開始する。脚は、震えたままだった。
子供の背中から、何かが飛び出してきた。イソギンチャクのようにウネウネと蠢くそれ、子供の瞳には光がなく、背中から何本も生えているそれの動きに合わせて身体は揺れている。
ダイキが斬ったのは、伸びてきたその触手だ。簡単に斬れたが、子供の身体は確実に前へと進んでいた。子供の向こう側、こちらを見ていた大人達も何時の間にやら背中から触手らしきものを這わせて、ゆっくりと進んできている。
「なんっだよ、これ! 緊急事態だろ!?」
「……身体を斬らないと駄目かもな」
「さっきまで普通に話していた子供だそ!? 人間だったじゃないか、ダイキお前、斬れるのか!?」
「斬らないと、こちらが危ないしそれに多分もう、死んでる」
「くっそっ!」
それでも先程まで笑顔を浮かべていた子供に剣を向けても、斬る事は出来なかった。頭を何度も振りながら、トモハルは詠唱を完成させて地面に放つ。火炎の魔法で行く手を止めることにしたのだ、ダイキも見習って、炎の壁を作り上げる。
「ミノルとケンイチの許へ! 行こう」
二人の勇者は走りながら神であるクレロに危険信号を送った、指示をして欲しかった。相手は魔物ではなく、人間なのだから。死んでいたとしても、だ。
懐中電灯の僅かな光を頼りにして、洞窟を進んでいたケンイチは壁に不審な箇所がないかを調べていたのだが特になかった。もうすぐ出口だ、光が差し込んできている。安堵し、リングルスとエレンの名を呼んでみる。
「ケンイチ殿、ですか? こちらは何もなさそうです」
「解りました、とりあえずそっちに出ます!」
リングルスの返答に笑みを浮かべて、平坦ではない洞窟内部を歩くケンイチは、何かを踏んだ。パリン、という音がこだましたので気がついた。悪寒が走る、思わず足元を懐中電灯で照らすと、不気味な液体と煙が立ち込め始めている。小さく悲鳴を上げ、駆け出そうとした瞬間、右脚を何かに引っ張られた。頼りない懐中電灯の光が浮かび上がらせたもの、自分の足首を掴んでいる骨のような何か。一気に鳥肌が立った、背の剣を慌てて引き抜きそれに突きたてると全力で振り払い出口を目指す。
「で、出たー!」
悲鳴を上げながら飛び出してきたケンイチに、不思議そうに首を傾げたリングルスとエレンだが、顔面蒼白のケンイチの向こうから、何かを引き摺って向かってくる音に攻撃態勢をとる。
そんな三人の後方、パリン、パリン、と何かが割れる音がした。
次いでメキメキと木々を薙ぎ倒す音に、ケンイチが記憶を辿る。
「罠だ、これ」
絞り出した声、木々から姿を現したのは以前ジェノヴァの街で見た大蛇と、洞窟から這い出してきた数体の動き回る死体だった三人は背を合わせ、攻撃に備える。ケンイチは大至急で緊急事態だと、クレロに伝えた。
合流しようと走ってきたトモハルとダイキは、ケンイチの叫び声を聞いた気がして立ち上がっていたミノルに叫ぶ。
「まずいよ、これ、ホラー映画も真っ青展開だよ! ケンイチは!?」
「……洞窟に入ったけど、今悲鳴が聴こえたような」
「はぁ!?」
三人の勇者は、後悔した。魔王がいないその異世界で、何も危険な事などないと考えていた。
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