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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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 例えば一日中泣いていたとして。
 あの子泣いていたよ、大丈夫だよ、落ち込んでいないよ……と言っておいたよ。
 と、言われた場合。「自分も泣いていたよ」と言える人は多いのか少ないのか、どっちだろう。
 ……という話。
  そして「どうせ泣いてるだろ」と言った人にやはり安心するという。
  そんな話。

 二次創作は昔にしかやっていなかったのですが、ストレイボウ×アリシアが書きたいです。


 極秘に呼び出されたアースの両親は、エロースの前で恐怖に震えていた。
 突然の呼び出しに”アースが育成を成功させ、労いの言葉と褒美が貰えるものだ”と、思い込んだ。しかし、迎えに来た馬車に拉致されるかのごとく強引に乗せられた辺りから、不安に襲われる。
 予感は的中し、冷酷な瞳で威圧してくる女神の前にひれ伏すと、生きた心地がしないと歯を鳴らすしかない。
 一体、何をしたのか。何故、このような待遇なのか。……考えられることは、ただ一つだけである。
 アースが、女神の信頼を失ったのだ。失敗したのだろう、それしかない。
 冷たい大理石の床に額を擦りつけ、考えたくなかったことだが的中しているであろう予感に、冷や汗が吹き出る。大理石へと汗は伝い、皮膚が滑る。

「ブリュンヒルデ家の者に告ぐ。そなたらの娘は、禁忌を犯した。自ら純潔を捨て、育成を放棄したのだ。期待を一身に背負い、それを承知の上での愚行と判断する」

 だから男ばかりの育成者では危険だと! 母親はそう叫びたい一心で、気を抜けば口から言葉が飛び出そうにになったが、懸命に堪えた。それは逆効果だと、冷静を失いつつも理解はしていた。
 女神の言葉が脳内に流れ込んでは消えていく、ただ、単語のみを拾うことに専念した。自分達に危害が加わらないよう、それらの単語だけを集中して探す。

「不埒な輩を処罰する。土の精霊アース・ブリュンヒルデとその惑星スクルド、及び惑星に芽吹いた植物達は極刑とする。育成協力者達に非はない為、直様主星へと呼び戻し、別の惑星育成へと向かわせる。ブリュンヒルデ家は多大な損傷を招いたとして、然るべき処遇を与える」

 ブリュンヒルデ家。
 聴いた瞬間に母親が汗を垂らしながら顔を上げ、血走った瞳で女神を見上げた。口が正常に動かない、幾度も噛みながら、言い訳をした。
 言い訳だと、思った。

「あの、子は、娘ではあり、ありません! 捨て子、でした、拾って、そだてまし、た。実の娘では、ないの、です。どうか、どうか、どうか! ブリュンヒルデ家は無関係でございます、今一度ご慈悲を!」

 女神の傍らにいた巫女二人は、眉を顰めた。死に物狂いの出任せだと思った、苦し紛れの嘘だと。
 女神に誓いを捧げ、意のままに操られている数名の側近が、アースの両親に槍を向ける。
 喉の奥で悲鳴を上げ、泣き喚きながら命乞いをする母親の傍らで、父親は押し黙ったまま大理石から額を離さない。
 女神エロースは、瞳を細めて傍らのワインを口にした。濃紫色した濃厚な香り漂う、今年一番の献上品である。グラスの向こう側で揺れている、みすぼらしい土の精霊を鼻で哂った。

「必死でございますね。アースは極刑ですが、家の処罰はまだ発表しておりませんのに。なんて白々しい嘘」

 ミシアが呆れて小さくこぼすと、エロースが愉快そうに口角を上げる。ゆっくりとグラスを回しながら、香りを散布する。
 嘘だと、思った。
 しかし、嘘ではないならば、と思った。
 アースが両親に愛されていない事は、エロースも当然耳に入れている。何故か疑問だった、期待を背負う娘なのだから、甘やかしても良いのではないかと思っていた。
 土の精霊が純潔を手放さないように、と親は教える筈だがベシュタの話ではそれをアースは知らなかったとう。学校では教えていない、親が子を思って言い聞かせるものだったからだ。
 実の娘ではない、それが真実であれば色々と合点がいく。

「信じてください! わ、わたしどもには子がおらず。ある日、川の近くの花畑で泣いているアースを見つけ、連れて帰ったのです。赤子ながら、私が見ても類を見ない魔力の持ち主でしたので……」
「ほう、利用しよう、と思ったのか。強かで強欲であるな」

 言い過ぎた、と歯ぎしりして床に再び突っ伏した母親を睨みつけたままのエロースは、愉快な計画を思いつく。

「……そなたらの娘ではない、という証拠jは?」
「い、一族の中から、あそこまで巨大な魔力の持ち主は、産まれることがありません!」

 にっこりと、優美に微笑んだエロースは、小さく含み笑いをした。

「信じるのですか、このような者の言うことを?」
「真実であったほうが、今後上手く事が進む……」

 微笑んだ女神を見て、ミリアとユイは慌てて視線を床に移した。凶悪な嘲笑だ、何度か目にしてきた。

「信じましょう、ブリュンヒルデ家を。次のことが護れるならば、そなたらを咎めぬ」

 柔らかな口調のエロースに、慌てて顔を上げた二人は、瞳に希望を灯していた。

「クリフの隠し子、である。アースは男神クリフの実子ということにしてしまおうか、他言無用にして欲しい。それさえ守れるならば」

 ミシアが背筋を伸ばした、溜息を吐きかけ止める。
 目障りだったクリフを子供遺棄の冤罪を被せ失脚、罪人アースは真実を語らせる前に処刑。簡単にエロースの思惑通りに事が運びそうだった。


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