別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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リュウ復帰
ミラボー倒す
ミラボー倒す
狼狽しているリュウに、幻獣達が一斉に視線を送る。身体を硬直させ、喉が動くほど大きく口内に溜まった唾液を飲み込んだ。
予想外だ、まさかアサギが召喚魔法を扱うとは。勇者の能力がここまでのものとは、リュウとて思わなかったのだ。
あの日、リュウは自身の魔力を使って故郷である幻獣星を封印した。内からも外からも何人たりとも干渉出来ぬ様に、結界を張った筈だった。
破る事が出来るのは、リュウのみ。リュウだけが、解除可能である……筈だったのだが。
身体が震える、自分の大事な仲間達の中心に佇むアサギをリュウは唇を噛み締めて見つめる。
「アサギ様。どちらの召喚師でしょう? 家名をお聞かせ願えれば」
「い、いえ。私は勇者です」
バジルの問いに、アサギが困惑気味に返答する。瞳を丸くしたバジルは、物珍しそうにアサギを見下ろした。
「勇者、ですか。初めてお会いします。……なんともまぁ、不思議なお方で」
「ごめんなさい、勇者っぽくないですよね」
苦笑するアサギに、バジルは瞳を細める。皮膚がピリリ、と何かを感知しているように突っ張る。
沈黙するバジルに、リングルスが声をかけた。
「お久しぶりに御座います、バジル様」
「リングルス、無事でよかった。王子に、助けられたのか?」
「はい。懸命に護ってくださいました、ご立派です」
「何が立派なものか、独断で惑星を遮断し、挙句人様にご迷惑をかけているような戯け王子を。……教育が至りませんで、申し訳ありませんアサギ様。それで、手短に状況をお聞きしますがあの巨大な化物は?」
淡々と語るバジルに、アサギは冷汗をかきながらたどたどしく説明する。一度も優しく微笑んでいないバジルを苦手に感じてしまった。何よりリュウに対して冷徹過ぎる気がする。
教育係なのだから、バジルの態度は間違ってはいないのだろうが。
「魔王様です、倒さなければならないのだと思います。それで、リュウ様はこちらの味方なのか分からない状態で」
「捻じ伏せます、お任せください」
言うなり、バジルはアサギの視界から消えた。ヘリオトロープも消える、リングルス達も続いていく。去り際にエレンがアサギの耳元で囁いた。
「バジル様は王子の幼馴染で教育係なのです、すぐに王子を更生させますから」
「そ、そうですか」
バジルの一撃が、顔を歪めたリュウの腹部に見事に入った。鈍く呻いて前に折れたリュウの背に、空いた手で追い討ちをかけるように叩き込む。口から胃液を吐き出し倒れ込むリュウを、バジルは踏みつけた。
「王子。まず謝罪なさい」
バジルが激怒していることは分かったが流石にそれは、酷すぎる。アサギは青褪めると視線を逸らした。
「王子は何も分かっていない。遮断し、幻獣星の民を護ったつもりでしょうが違います。自分の身より、家族の、恋人の身を案じる我らにとって、それが如何なる苦痛か分かりますが。それだけではなく、愚鈍ですが王子の事も皆は心配したのです。それこそ、食事も喉を通らない。一体何年の時をそうして過ごしたでしょう。
王家は王子のみ、その王子は不在。皆が絶望しながら過ごした時を、どう償いますか」
何も語らないリュウを、更にバジルは踏みつける。アサギは口元を押さえてリュウに近寄っていった。
幾らなんでも可哀想だ、足で踏み潰され説教されては。
「弓も剣も教えたのは誰でした、魔力の流れの掴み方も、誰が教えたのでしたか。
全く、半人前の癖に一時の感情で」
「半人前扱いをしていたのはバジルだろう。何故私に状況を話さなかったっ」
ようやくリュウが腕に力を篭めて起き上がる、バジルの脚が上がっていく。が、冷めた瞳でバジルはそれを観ていた。
「説明したところで、同じ状況になると思っていたからです。話も聴かずに、暴走することが目に見えていたからです」
リュウの瞳にアサギの脚が飛び込んでくる。憎々しげに見上げた先のアサギは、不安そうに立っていた。
「アサギ! 勝手なことをしてくれたな、一体何なんだ! 勇者ならば、何故あの時にサンテを救出に来てくれなかった!? アサギなら救えた筈だ、サンテを救えた筈だ!」
「ご、ごめんなさい」
産まれてはいない、アサギにはサンテを助けられるわけがない。リュウとてそれは分かっていたが、惨め過ぎる自分を恥じて逆上することしか出来なかった。アサギを責めるのは筋違いだ、それは理解している。
「申し訳ありません、アサギ様。愚鈍な王子の暴言など御気になさらず」
「い、いえ。
あの、リュウ様。私、助けられるなら助けたいです。サンテ様も、リュウ様も、それからミラボー様も。そう、思ってます」
途端、リュウの笑い声が響いた。皮肉めいて顔を歪ませるその目の前で、アサギは哀しそうに微笑む。
「あれだけ光の魔法で攻撃しておいて、よくもそんな」
「……エルフの血肉は。脳を、溶かします。正常な思考が、出来なくなってしまうのです。代わりに、力を得られます。ミラボー様は、血肉を取り込み過ぎました。正常に戻すには、説得では無理なのです」
小さくそう告げるアサギに、リュウは笑うのを止めた。バジルも瞳を細めアサギを見つめる、リングルス達も不思議そうに見つめる。アサギは言い難そうに口を開いた。
「リュウ様。一度考えてください。サンテ様がリュウ様を大事に思って、決断したことを。お2人揃って居られたらよかったのでしょうが、それは無理でした。リュウ様が惑星の皆を大事に思っていることを知っていたサンテ様だから。
優しい友達の願いを叶えたかったのでしょう、きっと、最後までサンテ様は足掻いたのだと思います。自分が死ねばリュウ様が苦しむ事も分かっていた筈です、だから、お願いです。
サンテ様の願いをもう一度思い出してください。サンテ様の最期の願いは、リュウ様が治める平和な幻獣星で暮らしたい。……ですよね。その為には、遮断を解除しなければなりません。リュウ様が幻獣星にいないと無理なのですから。
今、こうして幻獣星は繋がりました。今この場にいる皆さんが無事に戻る事が出来れば、あとはサンテ様の転生を待つだけです。
なので、リュウ様。バジル様、リングルス様。”ここから離れて”欲しいのです、誰一人として今後傷つけるわけにはいかないので」
言ったアサギは、リュウに微笑む。「大丈夫です、私はリュウ様を護りますが、自分も護りますから」
くるりと身体を反転させ、アサギは走り出した。自分がやるべきことは分かっている。
「私は勇者になったの、みんなを護るの。みんなを護って、みんなを幸せにしたらそれはきっと良い事だから。だから」
呟き、ミラボーに向かっていった。
残されたバジルは、微動だしないリュウに深い溜息を吐くとアサギを見つめる。先程から違和感を感じていた、何かは分からないのだが。
「そのような命令をされては……ここから離れるより他、ありませんね」
リュウの片腕を持ち上げ、立たせる。ふらついているリュウの頬を、思い切り殴りつけたバジルは、反対側も殴りつけた。倒れこむところを胸倉掴んで、それを許さない。
「主がそう告げたので、ここから離れます」
我に返ったリュウは、必死にアサギの名を呼んだ。口内が切れていたが、呼び続けた。
サンテのように自分を護って死んでしまったら、どうしたら。
リュウは、震える声で名を呼ぶ。腕を伸ばし、小さくなっていくアサギの姿を目で追い続けた。
「アサギ、アサギ。お願いだから死なないで。私の前で死なないで」
「……よくわかりませんが、あの方は大丈夫だと思います」
耳元でそうバジルが囁いたが、リュウは首を横に振った。嫌な予感がするんだ、と告げて腕を伸ばし続ける。
小さな勇者、魔界へ来た可愛らしい人間の娘。不思議な魅力で魔王を、魔族を虜にした勇者。
笑顔を見ていれば、癒された。傍にいると不思議と、安心出来た。
何があっても意志を貫く、頑固な勇者。小さいのに度胸は人一倍の、娘。
「ミラボー様、行きますっ!」
掛け声と共にアサギが剣を振るう、エーアが小さく悲鳴を上げた。ミラボーの最終目的は、エーアが知っている。
「小さな勇者! 単独で行かないでっ! アーサー、彼女を護るのよ、ミラボーの目的はあの子なの! あの子を喰らう事が最終目的なの」
その声が聴こえた者達は、必死にアサギの援護に向かった。トビィも直様アサギの隣に降り立つと、2人で立ち向かう。
何故、アサギを喰らうのか。エーアだけが知っているが話す余裕がない、今は護る事が精一杯だった。
アサギの周囲に勇者が揃い、ハイも駆けつけ一斉に唱えたのは光の魔法。眩すぎる光に埋もれて、ミラボーの絶叫が魔界に響き渡った。光はミラボーの皮膚を焦がし、徐々に溶かしていく。
「や、やったんじゃないか!?」
ミノルの興奮気味な声に、皆が大きく息をしながらミラボーの肉片を見た。溶け出していくその姿は不気味だったが、生命の破片など見つからない。動きもしないし、声すら発しない。
それでも注意深く構えて、ミラボーの成れの果てを見守っていた。消えていく身体、見つめながら皆は打ち震える。
勝利の確信を得ていた、誰かが笑い声を上げる。拍手をすれば、広がっていく。
「ほう、やりましたね。よかったですね、王子。アサギ様はご無事ですよ」
言ったバジルに、それでもリュウは唇を震わせてアサギを観ていた。嫌な予感がしていた。
「やったな、アサギ! 意外と呆気なかったな、強くなりすぎたんだよね、俺達」
「あんまり伝説の剣、使ってないね」
トモハルとケンイチが歓声を上げてアサギの元へ駆け寄ると、ユキが泣きながらアサギの手をとった。思わずアサギも涙を溢す、トビィを見上げて小さく微笑む。集まってきた仲間達と再会し、ハイも満足そうに頷き離れているリュウに手を振った。
上空ではクレシダとデズデモーナが旋回している、トビィは一息つくと剣を一振りし鞘に収めようとした。
しかし。
小刻みに身体が揺れた、皆も何事かと地面を見つめる。
「アサギ、後ろだ!」
リュウが叫んだ、振り返ったアサギの目の前には、勝ち誇ったように笑っている口。大きな口が地中から出てきて、大蛇のような舌でアサギを巻き取るとそのまま連れ去る。分厚い唇が強固な扉の様に閉じられて、アサギの姿は掻き消えた。
口だけの化物が、もっしゃもっしゃと動いている。
「アサギ?」
「アサギィィィィィィィ!」
ハイが、乾いた声で名を呼んだ。途端、トビィが絶叫し口に斬りかかる。絶叫したユキと、慌てて武器を手にし直した勇者達。仲間らも一斉に口を取り囲んだ。
『うまぁい! うまぁい、至上の娘よ! 全ての叡智をその身に秘める娘はなんたる美味なことかぁっ』
ミラボーの声が聴こえた、口が爆ぜる、爆音と共に皆は吹き飛ばされていた。
「…・・・命ずる、アサギを助ける」
リュウが青褪めたまま離れている場所から届く不穏な風に、髪を靡かせ呟いた。静かに頷いた幻獣達は、焦点の合わない瞳で歩くリュウの先を進んだ。
アサギが喰われる瞬間を見てしまったリュウ、地面に何度も転がりそうになりながら、歩き続ける。
地面に倒れ込んだ皆の前。
口から生え出した手足らしきもの、瞳が地面付近に何個もあり、もはや何処が頭なのか分からない造型の化物。
『そらみたことか、異界の勇者の秘めたる魔力はエルフをも凌駕するっ! 溢れ出てくる膨大な魔力、魔力、魔力!』
愉快そうに笑っているミラボーの成れの果ては、必死に立ち上がった仲間達に向かってただ、吼えた。
吼えただけで、皆の身体が引きちぎれるほどの強風に煽られる。
『スバラシィいぃぃいいいいいいィ!』
叫ぶだけで、脳に攻撃を与える。凄まじい激痛が皆を襲った、嘔吐し、耳を塞ぎ、地面を転げまわる。
勇者アサギは、ミラボーに食われた。
予想外だ、まさかアサギが召喚魔法を扱うとは。勇者の能力がここまでのものとは、リュウとて思わなかったのだ。
あの日、リュウは自身の魔力を使って故郷である幻獣星を封印した。内からも外からも何人たりとも干渉出来ぬ様に、結界を張った筈だった。
破る事が出来るのは、リュウのみ。リュウだけが、解除可能である……筈だったのだが。
身体が震える、自分の大事な仲間達の中心に佇むアサギをリュウは唇を噛み締めて見つめる。
「アサギ様。どちらの召喚師でしょう? 家名をお聞かせ願えれば」
「い、いえ。私は勇者です」
バジルの問いに、アサギが困惑気味に返答する。瞳を丸くしたバジルは、物珍しそうにアサギを見下ろした。
「勇者、ですか。初めてお会いします。……なんともまぁ、不思議なお方で」
「ごめんなさい、勇者っぽくないですよね」
苦笑するアサギに、バジルは瞳を細める。皮膚がピリリ、と何かを感知しているように突っ張る。
沈黙するバジルに、リングルスが声をかけた。
「お久しぶりに御座います、バジル様」
「リングルス、無事でよかった。王子に、助けられたのか?」
「はい。懸命に護ってくださいました、ご立派です」
「何が立派なものか、独断で惑星を遮断し、挙句人様にご迷惑をかけているような戯け王子を。……教育が至りませんで、申し訳ありませんアサギ様。それで、手短に状況をお聞きしますがあの巨大な化物は?」
淡々と語るバジルに、アサギは冷汗をかきながらたどたどしく説明する。一度も優しく微笑んでいないバジルを苦手に感じてしまった。何よりリュウに対して冷徹過ぎる気がする。
教育係なのだから、バジルの態度は間違ってはいないのだろうが。
「魔王様です、倒さなければならないのだと思います。それで、リュウ様はこちらの味方なのか分からない状態で」
「捻じ伏せます、お任せください」
言うなり、バジルはアサギの視界から消えた。ヘリオトロープも消える、リングルス達も続いていく。去り際にエレンがアサギの耳元で囁いた。
「バジル様は王子の幼馴染で教育係なのです、すぐに王子を更生させますから」
「そ、そうですか」
バジルの一撃が、顔を歪めたリュウの腹部に見事に入った。鈍く呻いて前に折れたリュウの背に、空いた手で追い討ちをかけるように叩き込む。口から胃液を吐き出し倒れ込むリュウを、バジルは踏みつけた。
「王子。まず謝罪なさい」
バジルが激怒していることは分かったが流石にそれは、酷すぎる。アサギは青褪めると視線を逸らした。
「王子は何も分かっていない。遮断し、幻獣星の民を護ったつもりでしょうが違います。自分の身より、家族の、恋人の身を案じる我らにとって、それが如何なる苦痛か分かりますが。それだけではなく、愚鈍ですが王子の事も皆は心配したのです。それこそ、食事も喉を通らない。一体何年の時をそうして過ごしたでしょう。
王家は王子のみ、その王子は不在。皆が絶望しながら過ごした時を、どう償いますか」
何も語らないリュウを、更にバジルは踏みつける。アサギは口元を押さえてリュウに近寄っていった。
幾らなんでも可哀想だ、足で踏み潰され説教されては。
「弓も剣も教えたのは誰でした、魔力の流れの掴み方も、誰が教えたのでしたか。
全く、半人前の癖に一時の感情で」
「半人前扱いをしていたのはバジルだろう。何故私に状況を話さなかったっ」
ようやくリュウが腕に力を篭めて起き上がる、バジルの脚が上がっていく。が、冷めた瞳でバジルはそれを観ていた。
「説明したところで、同じ状況になると思っていたからです。話も聴かずに、暴走することが目に見えていたからです」
リュウの瞳にアサギの脚が飛び込んでくる。憎々しげに見上げた先のアサギは、不安そうに立っていた。
「アサギ! 勝手なことをしてくれたな、一体何なんだ! 勇者ならば、何故あの時にサンテを救出に来てくれなかった!? アサギなら救えた筈だ、サンテを救えた筈だ!」
「ご、ごめんなさい」
産まれてはいない、アサギにはサンテを助けられるわけがない。リュウとてそれは分かっていたが、惨め過ぎる自分を恥じて逆上することしか出来なかった。アサギを責めるのは筋違いだ、それは理解している。
「申し訳ありません、アサギ様。愚鈍な王子の暴言など御気になさらず」
「い、いえ。
あの、リュウ様。私、助けられるなら助けたいです。サンテ様も、リュウ様も、それからミラボー様も。そう、思ってます」
途端、リュウの笑い声が響いた。皮肉めいて顔を歪ませるその目の前で、アサギは哀しそうに微笑む。
「あれだけ光の魔法で攻撃しておいて、よくもそんな」
「……エルフの血肉は。脳を、溶かします。正常な思考が、出来なくなってしまうのです。代わりに、力を得られます。ミラボー様は、血肉を取り込み過ぎました。正常に戻すには、説得では無理なのです」
小さくそう告げるアサギに、リュウは笑うのを止めた。バジルも瞳を細めアサギを見つめる、リングルス達も不思議そうに見つめる。アサギは言い難そうに口を開いた。
「リュウ様。一度考えてください。サンテ様がリュウ様を大事に思って、決断したことを。お2人揃って居られたらよかったのでしょうが、それは無理でした。リュウ様が惑星の皆を大事に思っていることを知っていたサンテ様だから。
優しい友達の願いを叶えたかったのでしょう、きっと、最後までサンテ様は足掻いたのだと思います。自分が死ねばリュウ様が苦しむ事も分かっていた筈です、だから、お願いです。
サンテ様の願いをもう一度思い出してください。サンテ様の最期の願いは、リュウ様が治める平和な幻獣星で暮らしたい。……ですよね。その為には、遮断を解除しなければなりません。リュウ様が幻獣星にいないと無理なのですから。
今、こうして幻獣星は繋がりました。今この場にいる皆さんが無事に戻る事が出来れば、あとはサンテ様の転生を待つだけです。
なので、リュウ様。バジル様、リングルス様。”ここから離れて”欲しいのです、誰一人として今後傷つけるわけにはいかないので」
言ったアサギは、リュウに微笑む。「大丈夫です、私はリュウ様を護りますが、自分も護りますから」
くるりと身体を反転させ、アサギは走り出した。自分がやるべきことは分かっている。
「私は勇者になったの、みんなを護るの。みんなを護って、みんなを幸せにしたらそれはきっと良い事だから。だから」
呟き、ミラボーに向かっていった。
残されたバジルは、微動だしないリュウに深い溜息を吐くとアサギを見つめる。先程から違和感を感じていた、何かは分からないのだが。
「そのような命令をされては……ここから離れるより他、ありませんね」
リュウの片腕を持ち上げ、立たせる。ふらついているリュウの頬を、思い切り殴りつけたバジルは、反対側も殴りつけた。倒れこむところを胸倉掴んで、それを許さない。
「主がそう告げたので、ここから離れます」
我に返ったリュウは、必死にアサギの名を呼んだ。口内が切れていたが、呼び続けた。
サンテのように自分を護って死んでしまったら、どうしたら。
リュウは、震える声で名を呼ぶ。腕を伸ばし、小さくなっていくアサギの姿を目で追い続けた。
「アサギ、アサギ。お願いだから死なないで。私の前で死なないで」
「……よくわかりませんが、あの方は大丈夫だと思います」
耳元でそうバジルが囁いたが、リュウは首を横に振った。嫌な予感がするんだ、と告げて腕を伸ばし続ける。
小さな勇者、魔界へ来た可愛らしい人間の娘。不思議な魅力で魔王を、魔族を虜にした勇者。
笑顔を見ていれば、癒された。傍にいると不思議と、安心出来た。
何があっても意志を貫く、頑固な勇者。小さいのに度胸は人一倍の、娘。
「ミラボー様、行きますっ!」
掛け声と共にアサギが剣を振るう、エーアが小さく悲鳴を上げた。ミラボーの最終目的は、エーアが知っている。
「小さな勇者! 単独で行かないでっ! アーサー、彼女を護るのよ、ミラボーの目的はあの子なの! あの子を喰らう事が最終目的なの」
その声が聴こえた者達は、必死にアサギの援護に向かった。トビィも直様アサギの隣に降り立つと、2人で立ち向かう。
何故、アサギを喰らうのか。エーアだけが知っているが話す余裕がない、今は護る事が精一杯だった。
アサギの周囲に勇者が揃い、ハイも駆けつけ一斉に唱えたのは光の魔法。眩すぎる光に埋もれて、ミラボーの絶叫が魔界に響き渡った。光はミラボーの皮膚を焦がし、徐々に溶かしていく。
「や、やったんじゃないか!?」
ミノルの興奮気味な声に、皆が大きく息をしながらミラボーの肉片を見た。溶け出していくその姿は不気味だったが、生命の破片など見つからない。動きもしないし、声すら発しない。
それでも注意深く構えて、ミラボーの成れの果てを見守っていた。消えていく身体、見つめながら皆は打ち震える。
勝利の確信を得ていた、誰かが笑い声を上げる。拍手をすれば、広がっていく。
「ほう、やりましたね。よかったですね、王子。アサギ様はご無事ですよ」
言ったバジルに、それでもリュウは唇を震わせてアサギを観ていた。嫌な予感がしていた。
「やったな、アサギ! 意外と呆気なかったな、強くなりすぎたんだよね、俺達」
「あんまり伝説の剣、使ってないね」
トモハルとケンイチが歓声を上げてアサギの元へ駆け寄ると、ユキが泣きながらアサギの手をとった。思わずアサギも涙を溢す、トビィを見上げて小さく微笑む。集まってきた仲間達と再会し、ハイも満足そうに頷き離れているリュウに手を振った。
上空ではクレシダとデズデモーナが旋回している、トビィは一息つくと剣を一振りし鞘に収めようとした。
しかし。
小刻みに身体が揺れた、皆も何事かと地面を見つめる。
「アサギ、後ろだ!」
リュウが叫んだ、振り返ったアサギの目の前には、勝ち誇ったように笑っている口。大きな口が地中から出てきて、大蛇のような舌でアサギを巻き取るとそのまま連れ去る。分厚い唇が強固な扉の様に閉じられて、アサギの姿は掻き消えた。
口だけの化物が、もっしゃもっしゃと動いている。
「アサギ?」
「アサギィィィィィィィ!」
ハイが、乾いた声で名を呼んだ。途端、トビィが絶叫し口に斬りかかる。絶叫したユキと、慌てて武器を手にし直した勇者達。仲間らも一斉に口を取り囲んだ。
『うまぁい! うまぁい、至上の娘よ! 全ての叡智をその身に秘める娘はなんたる美味なことかぁっ』
ミラボーの声が聴こえた、口が爆ぜる、爆音と共に皆は吹き飛ばされていた。
「…・・・命ずる、アサギを助ける」
リュウが青褪めたまま離れている場所から届く不穏な風に、髪を靡かせ呟いた。静かに頷いた幻獣達は、焦点の合わない瞳で歩くリュウの先を進んだ。
アサギが喰われる瞬間を見てしまったリュウ、地面に何度も転がりそうになりながら、歩き続ける。
地面に倒れ込んだ皆の前。
口から生え出した手足らしきもの、瞳が地面付近に何個もあり、もはや何処が頭なのか分からない造型の化物。
『そらみたことか、異界の勇者の秘めたる魔力はエルフをも凌駕するっ! 溢れ出てくる膨大な魔力、魔力、魔力!』
愉快そうに笑っているミラボーの成れの果ては、必死に立ち上がった仲間達に向かってただ、吼えた。
吼えただけで、皆の身体が引きちぎれるほどの強風に煽られる。
『スバラシィいぃぃいいいいいいィ!』
叫ぶだけで、脳に攻撃を与える。凄まじい激痛が皆を襲った、嘔吐し、耳を塞ぎ、地面を転げまわる。
勇者アサギは、ミラボーに食われた。
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