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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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(’’)

リョウに説明する
田上奈留に出会う

プールに行く

4人で出かける

アサギがリュウを呼び出す
召喚される

目標、4月に完結

 アサギは大きく息を吸い込んでから、ゆっくりと吐き出した。軽く唇を舌で濡らして、言葉を発する。

「とりあえず最後まで聴いてくれるかな、笑ってもいいけど」
「聴くよ、お前が嘘ついたことないだろ。友達だし」

 怪訝にそう言った亮に、アサギは苦笑した。そうだった、二年前に初めて出遭ったとはいえ互いに信頼している友達だ。ユキがアサギにとって親友ならば、亮は異性の親友である。

「あのね、勇者になってたの。そこは……」

 アサギは身振り手振りで亮に説明した、ノートを取り出し、絵を描いて説明する。把握しようと亮も必死だ、しかめっ面でノートを食い入る様に見つめた。

「えーっと、やっぱり……いなかったよな。お前ら」
「凄いね、みーちゃん。もしかして、学校のみんなは覚えているのかな。目の前で魔物とか私達が消えた事を見ているしね。神様も不十分だったのかも」

 異界へ召喚されたメンバーの名前を見ながら、亮が低く唸る。そうだ、思い出してきた。
 行くのを渋っていたミノルの代わりに、自分が勇者になりたいとあの時願っていた。
 
「……これ、どういう基準で選ばれたんだろ。素質?」
「わかんない、でも、みんなそれぞれ勇者の武器を持ってたよ。置いてきたけど」
「まぁ、今手元にあっても困るよなー。見てみたいけど」

 真剣に聴いている亮に思わず笑みを溢したアサギは、死んでしまった魔族の事を話し出す。

「みんな凄く優しくて楽しい方達だったの、でも、護る事は出来なかった……」
「泣くなよ、仕方がないだろ。ゲームだって勇者が登場人物を全員救ってないじゃないか、誰かは絶対死ぬんだ。寧ろ、お前が生きていてくれてよかったよ、ホント」

 思い出して大粒の涙を溢し、突然泣き出したアサギに一瞬狼狽した。が、亮は優しく頭を撫でる。震え出した自分の身体に唇を噛み締め、アサギが泣き止むまでずっと頭を撫でていた。

「トビィに会えてよかった、あの人がいれば何も心配いらない」

 キィィィ、カトン……、カトン。
 部屋に、不可解な音が響く。反射的にアサギを引き寄せ抱き締めていた亮は、左手を前に突き出して唇を開いた。
 何か言葉を発しようとしたが、それが何かは解らない。ただ、驚いて見上げているアサギの視線に気がつき、顔を赤らめると突き飛ばすようにして手を放す。心臓が高まった、まだアサギの体温を胸に感じている。
 不思議そうに首を傾げているアサギに、慌てて亮は話を促した。

「で、で!? どうやって魔王を倒したの、悪い奴はミラボーなんだろ?」
「ミラボー様が悪いけど、ホントは悪くないんだよ。そこ、誤解しちゃ駄目。
 アレク様はお亡くなりになられたから、魔王のリュウ様一同に、魔王ハイ様、それから仲間達で倒したよ。みんなで一丸となって、こう、どかーん! って倒したの」
「人数が多いから、一斉に攻撃出来るよな。トドメは誰?」
「トドメ? トビィお兄様じゃないかな、多分。……ちょっとよく覚えていないけど、一番強いのはトビィお兄様だと思うから。ハイ様や、リュウ様も強いけど」
「そっかー、トビィかー! ゲームで言うと主人公を護るチート気味なキャラっぽいもんな」
「うん、そうだね」

 ノートに描いたアサギのらくがきを見ながら、亮は神妙に頷く。アサギは小さく微笑んだ。

「行きたかったな、どうして居残りだったんだろ」
「みーちゃんにも見せたかったな、あの綺麗な世界」
「もう、行けないのかなぁ?」
「異界から召喚された勇者が、世界に平和をもたらしたら……その後はもう」
「用済み、かな」

 寂しそうに俯いたアサギの肩を、亮が軽く叩く。再び瞳を潤ませて泣き出しそうになったアサギの髪をくしゃくしゃと両手で掻き混ぜて、二人は爆笑した。

「おかえり、アサギ」
「ただいま、みーちゃん。……リョウ」

 一階から、アサギの母が二人を呼ぶ声がする。夕飯が出来たのだ、二人は手を繋いで階段を下りていった。
 田上家の美味しい夕飯を堪能した亮は、自転車に跨って帰宅する。手を振って見送ってくれるアサギに、大きく手を振り返すと自宅へは向かわずに一番近くのコンビニへと進めた。
 特に買う物があったわけではないのだが、ふらりと立ち寄ってみた。
 土曜日の夜だ、人は多い。駐車場には自転車も多く置いてあった、車も多く停車している。
 店内に入り、軽く雑誌を眺める。ゲームの攻略雑誌を手にしたが、戻すとアイスを物色する。
 一本、ソーダ味のアイスを手にすると菓子パンを見に行った。朝食にしようと思ったのだ、明日は日曜日である。父はいるが母は仕事だろうから、朝食はなさそうだ。適当に数個パンを買う、あとで金は貰おうと思いレジに向かった。
 購入して、店内から出る。

「選ばれし者は、六人でした。けれどもそれは始まりで、まだ何も確信には触れていない。なんて長いプロローグ!」

 声が聴こえたので、そちらを見つめると一人の女性が本を手にして立っていた。背が低いが、結構な歳だろう。
 本を声に出して読んだのか、と思った亮はそのまま自転車に跨った。その女性の前を通過して立ち去る。
 瞬間、その女が顔を上げて亮を見た。ゆっくりと頷いて微笑んだ。
 思わずブレーキをかけ、凝視する。見た事がある顔だった、何処かで見た記憶がある。

「奈留? コンビニ前で本を読むの止めたら?」
「そだね。ところでお腹が空いたね、何か食べに行くのが良いと思うよ、思うよ!」

 会釈して、くすりと笑った奈留は車に乗り込む。その姿を亮は見ていた、食い入る様に見つめていた。

「……大丈夫、君もすぐに召喚される。頑張ってね、私はいつでも味方です」
「なっ!?」

 亮の方は見ていなかったが、奈留は確実にそう呟いていた。助手席に座り、手にしていた本を閉じると瞳を閉じた奈留が目の前を通過していく。
 唖然と見ていた、今のは偶然なのか、必然なのか。
 そして思い出したのだ、何処で見たのかを。アサギが召喚されてから、家に帰る途中。転んだ児童に飴を手渡した人物だ。

「……何者、だ、あの人」

 亮の購入したアイスが、半分ほど溶けた。
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