別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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連続投稿うぉおおおおおおおおおおお。
※ドリランド熱の為
※ドリランド熱の為
目が見えないアリンの髪に、一輪の花を挿す。桃色の花を丁寧に摘んで、花の香りを嗅がせてから髪へ運んだ。若緑の髪によく映える色合いだ、はにかんだように微笑むアリンに、そっと口づける。
森でいつものように二人は過ごした、近寄ってきた鳥に気付いたトラリオンがそっと耳打ちする。
「アリン、鳥が来た」
「鳥?」
「そう、鳥。茶色っぽい感じで、羽を広げたらオレの両手くらいの大きさかな。コッチを見てる。……あぁ、ほら、今鳴いた」
「今の、可愛いピ、っていうの?」
「そう、それ。地面を歩いてる、何か食べ物を探しているのかな」
「……可愛い?」
「うん、可愛い」
そっと、アリンが右手を伸ばした。鳥は、何度か周囲を見渡していたのだが羽を広げると飛び立つ。アリンの、指へと止まった。思わず声を上げそうになったトラリオンだが、必死に堪えるとその光景を見つめた。
まさか、野生の鳥が懐くなんて。
唖然と見ていると、鳥は鳴く。嬉しそうに笑うアリンの左手を握りながら、トラリオンは瞳を閉じた。
鳥の鳴き声と、アリンの笑い声、平和過ぎて、愛しすぎて、何もかも満たされたように心が軽くなる。力強く手を握る、アリンが軽く動いた。指を絡め、そっと口元に運ぶと優しく口づける。
鳥は逃げることなく、アリンに歌っている。
森に降り注ぐ太陽の光、耳に届く川の流れ、木々の葉が風に揺れて音を立てた。
「目が、見えたら。見えたら良いのに……」
「見えなくてもいいよ、見えなくても何も問題はないんだ」
「でも、鳥さんの色がわからない。触れば形はわかるけれど。シダの顔も、解らない。私は何も、解らない」
「こうして触れ合うだけで、オレは他に何もいらないから。解らない、なんて言わないで」
強引にアリンを引き寄せると、鳥が飛び立つ。小さく悲鳴を上げた口を、唇で塞いだ。
森に、嬌声が響き始めたのは数分後の事だった。指を絡め、口づけながら必死に身体を重ねる。
その日もアリンは、公園の片隅でシダ、という名のトラリオンを待つ。
逢っている時間が、幸せだった。トラリオンの従兄弟、声が似ている従兄弟。
最初に気にしていたのはトラリオンだったが、今はシダが気になっている。恋人、であることだし。
まさか、同一人物だとは思っていなかった。同じ声にしか聴こえなかったが、もし同一人物ならば何故偽って逢うのか意味が解らない。最初は疑念を抱いていたが、今はすっかり信じ込んでいる。
シダ、というトラリオンの従兄弟を。
「よぉ」
「こんにちは……」
シダのことを考えていたら、声をかけられた。トラリオンだ、トラリオンのほうが声が若干低い気がする。緊張気味に背筋を正すと、アリンは声が聴こえた方角を見つめた。
「楽しそうだな」
「そ、そうでしょうか。ちょっと考え事をしていて」
「へぇ? 盲目の娘が何を考えるんだ?」
トラリオンの背後で爆笑している子供達、アリンはその声が苦手だった。笑い方にも種類がある、その声質や高さで感情が解ってしまう。明らかに馬鹿にしている笑い方だった。
「なあ、何を考えていたんだよ?」
髪を引っ張られた、急に引っ張られたので釣られて首が動く。傾いたアリンの身体に、再び子供達が笑った。
声の近さからして、引っ張っているのはトラリオンだろう。似たような声で、シダとは全く違うことをする……。アリンは唇を噛み締めると、俯きながら唇を開いた。
「あ、あの、止めてください……」
「へぇ、最近反抗的だな。なぁ、何を考えていたんだよ」
「こ、恋人の事を」
消えそうな声で、そう呟いたアリンに子供達の笑い声が一気に静まり返る。てっきり再び馬鹿にされるのだと思っていたアリンは、不思議そうに顔を上げた。
静まり返った後方を、トラリオンが見つめる。皆、瞳を泳がせながらそれぞれ落ち着かないとばかりに身体を動かしていた。
「も、盲目ですけど、わ、私には素敵な恋人がいるんですっ」
アリンが必死に叫ぶと、子供達は硬直した。トラリオンが唇を噛み締める、案の定だった。自分と同じだ、苛めながらもアリンに興味を持っていたのだろう。好意に近い、興味を。愕然として、静まり返っている友人達に鼻で笑う。
「ふん、盲目の恋人なんてオレは嫌だけどな。ソイツもお前の事、本当は恋人なんて思っていないかも?」
「そんなことありません、とても優しくて、温かい人です! そ、そんな酷い事…・・・し、失礼ですっ」
私の恋人は貴方の従兄弟のシダなのに、と言おうとしたがアリンは唇を噛み締める。仲が悪いと言っていた、露見したらシダが困るかもしれないと咄嗟に判断したのだ。
珍しく声を荒げるアリンに、思わず笑みが漏れたトラリオンは口笛を吹く。嬉しかった、ただただ、嬉しかった。このまま抱き締めてしまおうかと思った、成り行きで強引に恋人になってしまったが確実にアリンは自分である”シダ”に想いを抱いている。
それが理解出来た、優越感に浸れた。
「へぇ、お前みたいな出来損ないに、恋人ねぇ? ろくな男じゃないだろうな。そもそもお前、ソイツの顔知らないだろ」
「私のような、出来損ないにも手を差し伸べてくださる、素敵な方なのです……。悪口、言わないでくださいっ。顔は、知らないですけど、凄く綺麗な顔立ちだと思います。触れたことならありますからっ」
アリンの声が震えている、泣いている様だった。瞳が潤んでいる。時折詰まりながら、それでも反抗するアリン。満足した、アリンの自分への愛は、間違いなく存在している。
自分だが、トラリオン、ではなくシダ、という架空の人物だったが。
何を言ってもアリンはシダを庇うだろう、見ていて愉しかった。腹の底から喜びが溢れ出るようだった、じわじわと這い上がって背筋を伝う。脳に到達したそれは、一気に快楽を全身に回る。
自分で自分とアリンを貶め、アリンの言葉で一気に浮上する感覚。歪んだ感情だった、が、愉快で愉快で堪らない。
身体が震える、目の前の大人しいアリンが、自分の事で怒りの感情を見せているのだから当然か。
「……私の目が見えたら。トラリオンも恐らくこんな仕打ちはしないのでしょうね」
ぼそ、と告げたアリンに眉を潜める。急に冷めた声を出した、思わず手を伸ばしたトラリオンだが背後から衣服を掴まれた。
「またお前か! アリンに金輪際近づくな、鬱陶しい」
「トロンお兄様」
首がしまった、軽く咽たトラリオンが振り返るとトロンが仏頂面で立っている。迎えが来たのだ、今日はシダとしてアリンに逢う事が出来ない。舌打ちし、トロンを睨み付けるとその手を振り払う。乱れた衣服を直しながら忌々しそうに唾を吐き捨てそのまま踵を返した。友人達も気まずそうに二人を見比べ、慌ててトラリオンを追いかける。
「全く……大丈夫か、アリン」
「はい、大丈夫です。今日は早いのですね」
「あぁ、そうだな。ちょっと待ってろ、珍しい屋台があったから今、買ってこよう。食べたら帰ろうか」
「はい!」
優しく頭を撫で、トロンが去っていく。ベンチに座り、安堵の溜息を吐いたアリンの後ろで女性の声がした。とても綺麗な声だった、甘い甘い、声だった。
「お嬢さん、貴女、瞳が見えないのね?」
「え、あ、はい。ええと、あの、どなたですか?」
女は、優雅に微笑むとアリンの右手をそっととる。その綺麗な細長い指を撫でながら、掌に何かを転がした。
「薬師よ。都で流行っている瞳を治す薬をあげるわ。使って御覧なさい」
「え、えぇ!? で、ですが」
「いいの、私はこうして薬を人々に配る薬師。お代はいらないわ、都からお金は支給されているのよ。ただの、人助け」
「え、え、え?」
褐色の肌の女、フードを深く被り顔は見えないが髪はアメジストの様である。口元に笑みを浮かべる、「飲んで御覧なさいな、きっと”世界が変わる”から」そう告げてそのまま何処へとも解らず消えて行った。
唖然と手の中にある何かを見つめるアリン、小さな小瓶の様だった、必死に指で探る。コルクの蓋がついている、振ってみると音がするので中に硬いものが入っているのだろう。
「目が、見えるようになる……?」
森でいつものように二人は過ごした、近寄ってきた鳥に気付いたトラリオンがそっと耳打ちする。
「アリン、鳥が来た」
「鳥?」
「そう、鳥。茶色っぽい感じで、羽を広げたらオレの両手くらいの大きさかな。コッチを見てる。……あぁ、ほら、今鳴いた」
「今の、可愛いピ、っていうの?」
「そう、それ。地面を歩いてる、何か食べ物を探しているのかな」
「……可愛い?」
「うん、可愛い」
そっと、アリンが右手を伸ばした。鳥は、何度か周囲を見渡していたのだが羽を広げると飛び立つ。アリンの、指へと止まった。思わず声を上げそうになったトラリオンだが、必死に堪えるとその光景を見つめた。
まさか、野生の鳥が懐くなんて。
唖然と見ていると、鳥は鳴く。嬉しそうに笑うアリンの左手を握りながら、トラリオンは瞳を閉じた。
鳥の鳴き声と、アリンの笑い声、平和過ぎて、愛しすぎて、何もかも満たされたように心が軽くなる。力強く手を握る、アリンが軽く動いた。指を絡め、そっと口元に運ぶと優しく口づける。
鳥は逃げることなく、アリンに歌っている。
森に降り注ぐ太陽の光、耳に届く川の流れ、木々の葉が風に揺れて音を立てた。
「目が、見えたら。見えたら良いのに……」
「見えなくてもいいよ、見えなくても何も問題はないんだ」
「でも、鳥さんの色がわからない。触れば形はわかるけれど。シダの顔も、解らない。私は何も、解らない」
「こうして触れ合うだけで、オレは他に何もいらないから。解らない、なんて言わないで」
強引にアリンを引き寄せると、鳥が飛び立つ。小さく悲鳴を上げた口を、唇で塞いだ。
森に、嬌声が響き始めたのは数分後の事だった。指を絡め、口づけながら必死に身体を重ねる。
その日もアリンは、公園の片隅でシダ、という名のトラリオンを待つ。
逢っている時間が、幸せだった。トラリオンの従兄弟、声が似ている従兄弟。
最初に気にしていたのはトラリオンだったが、今はシダが気になっている。恋人、であることだし。
まさか、同一人物だとは思っていなかった。同じ声にしか聴こえなかったが、もし同一人物ならば何故偽って逢うのか意味が解らない。最初は疑念を抱いていたが、今はすっかり信じ込んでいる。
シダ、というトラリオンの従兄弟を。
「よぉ」
「こんにちは……」
シダのことを考えていたら、声をかけられた。トラリオンだ、トラリオンのほうが声が若干低い気がする。緊張気味に背筋を正すと、アリンは声が聴こえた方角を見つめた。
「楽しそうだな」
「そ、そうでしょうか。ちょっと考え事をしていて」
「へぇ? 盲目の娘が何を考えるんだ?」
トラリオンの背後で爆笑している子供達、アリンはその声が苦手だった。笑い方にも種類がある、その声質や高さで感情が解ってしまう。明らかに馬鹿にしている笑い方だった。
「なあ、何を考えていたんだよ?」
髪を引っ張られた、急に引っ張られたので釣られて首が動く。傾いたアリンの身体に、再び子供達が笑った。
声の近さからして、引っ張っているのはトラリオンだろう。似たような声で、シダとは全く違うことをする……。アリンは唇を噛み締めると、俯きながら唇を開いた。
「あ、あの、止めてください……」
「へぇ、最近反抗的だな。なぁ、何を考えていたんだよ」
「こ、恋人の事を」
消えそうな声で、そう呟いたアリンに子供達の笑い声が一気に静まり返る。てっきり再び馬鹿にされるのだと思っていたアリンは、不思議そうに顔を上げた。
静まり返った後方を、トラリオンが見つめる。皆、瞳を泳がせながらそれぞれ落ち着かないとばかりに身体を動かしていた。
「も、盲目ですけど、わ、私には素敵な恋人がいるんですっ」
アリンが必死に叫ぶと、子供達は硬直した。トラリオンが唇を噛み締める、案の定だった。自分と同じだ、苛めながらもアリンに興味を持っていたのだろう。好意に近い、興味を。愕然として、静まり返っている友人達に鼻で笑う。
「ふん、盲目の恋人なんてオレは嫌だけどな。ソイツもお前の事、本当は恋人なんて思っていないかも?」
「そんなことありません、とても優しくて、温かい人です! そ、そんな酷い事…・・・し、失礼ですっ」
私の恋人は貴方の従兄弟のシダなのに、と言おうとしたがアリンは唇を噛み締める。仲が悪いと言っていた、露見したらシダが困るかもしれないと咄嗟に判断したのだ。
珍しく声を荒げるアリンに、思わず笑みが漏れたトラリオンは口笛を吹く。嬉しかった、ただただ、嬉しかった。このまま抱き締めてしまおうかと思った、成り行きで強引に恋人になってしまったが確実にアリンは自分である”シダ”に想いを抱いている。
それが理解出来た、優越感に浸れた。
「へぇ、お前みたいな出来損ないに、恋人ねぇ? ろくな男じゃないだろうな。そもそもお前、ソイツの顔知らないだろ」
「私のような、出来損ないにも手を差し伸べてくださる、素敵な方なのです……。悪口、言わないでくださいっ。顔は、知らないですけど、凄く綺麗な顔立ちだと思います。触れたことならありますからっ」
アリンの声が震えている、泣いている様だった。瞳が潤んでいる。時折詰まりながら、それでも反抗するアリン。満足した、アリンの自分への愛は、間違いなく存在している。
自分だが、トラリオン、ではなくシダ、という架空の人物だったが。
何を言ってもアリンはシダを庇うだろう、見ていて愉しかった。腹の底から喜びが溢れ出るようだった、じわじわと這い上がって背筋を伝う。脳に到達したそれは、一気に快楽を全身に回る。
自分で自分とアリンを貶め、アリンの言葉で一気に浮上する感覚。歪んだ感情だった、が、愉快で愉快で堪らない。
身体が震える、目の前の大人しいアリンが、自分の事で怒りの感情を見せているのだから当然か。
「……私の目が見えたら。トラリオンも恐らくこんな仕打ちはしないのでしょうね」
ぼそ、と告げたアリンに眉を潜める。急に冷めた声を出した、思わず手を伸ばしたトラリオンだが背後から衣服を掴まれた。
「またお前か! アリンに金輪際近づくな、鬱陶しい」
「トロンお兄様」
首がしまった、軽く咽たトラリオンが振り返るとトロンが仏頂面で立っている。迎えが来たのだ、今日はシダとしてアリンに逢う事が出来ない。舌打ちし、トロンを睨み付けるとその手を振り払う。乱れた衣服を直しながら忌々しそうに唾を吐き捨てそのまま踵を返した。友人達も気まずそうに二人を見比べ、慌ててトラリオンを追いかける。
「全く……大丈夫か、アリン」
「はい、大丈夫です。今日は早いのですね」
「あぁ、そうだな。ちょっと待ってろ、珍しい屋台があったから今、買ってこよう。食べたら帰ろうか」
「はい!」
優しく頭を撫で、トロンが去っていく。ベンチに座り、安堵の溜息を吐いたアリンの後ろで女性の声がした。とても綺麗な声だった、甘い甘い、声だった。
「お嬢さん、貴女、瞳が見えないのね?」
「え、あ、はい。ええと、あの、どなたですか?」
女は、優雅に微笑むとアリンの右手をそっととる。その綺麗な細長い指を撫でながら、掌に何かを転がした。
「薬師よ。都で流行っている瞳を治す薬をあげるわ。使って御覧なさい」
「え、えぇ!? で、ですが」
「いいの、私はこうして薬を人々に配る薬師。お代はいらないわ、都からお金は支給されているのよ。ただの、人助け」
「え、え、え?」
褐色の肌の女、フードを深く被り顔は見えないが髪はアメジストの様である。口元に笑みを浮かべる、「飲んで御覧なさいな、きっと”世界が変わる”から」そう告げてそのまま何処へとも解らず消えて行った。
唖然と手の中にある何かを見つめるアリン、小さな小瓶の様だった、必死に指で探る。コルクの蓋がついている、振ってみると音がするので中に硬いものが入っているのだろう。
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