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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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伏線回収の回(’’)

 女神エロース達の策略など露知らず、惑星スクルドで懸命に育成を続ける4人。
 生活に随分と慣れたので、各々主星から望んだ物を運び入れた。常に勤勉が日課だったアースも、機織り機を送ってもらった。育った草花で布を染めて、布を織る。
 その様子をトリプトルやトロイは、うっとりと眺めるのが日課になった。アースは、3人に草木染のショールを贈った。それぞれ、イメージした色合いで、同じ大きさのものを手渡したのだ。
 リュミには、姫女苑を主として鮮やかな黄色を。トロイには藍を主として、藍色を。そしてトリプトルには花梨を主として淡い赤色のものを。
 3人同時に手渡したので、軽く照れながら皆首にまく。アースも自身の物を染めていたので、微笑んで肩を覆った。榊で染めた、淡い緑色である。アースが作ってくれた、仲間の証。4人は無意識の内に、それに愛着を抱く。
 
「トロイ。今、大丈夫ですか?」
「どうした、アース?」
「これを作ってみたのですけれど……よかったら」

 ある日のこと、トロイが素振りの練習をしていたところへアースが駆け寄る。手渡された物を見て、感嘆の溜息を吐いた。

「凄いな……これも作ったのか」
「はい。トロイは髪が長いから、動く時に邪魔になるかと思って」
「大事に使おう、有り難う」

 トロイが手渡された物、それは。1つは、髪を束ねる普通の紐である。藍色だった。長い髪を後方で結んでいるので、これは有り難い。早速トロイは、それで縛り直す。
 もう一つは、額に巻く布だった。1色で染めてあるだけでなく、3色使いで手が込んでいる。

「どうでしょう、触り心地は良いと思うのですけれど」

 額に早速巻いた、これならば汗をかいても吸い取ってくれるので目が染みる事もないだろう。前髪も邪魔にならない。

「あぁ、心地良い。アース、本当に有り難う」
「いえ。トリプトルとリュミにも、何か作ろうかな。何が良いのでしょう」

 何気なく呟き、首を傾げたアースにトロイが軽く笑う。不思議そうにこちらを見たアースの頬を、そっと撫でた。
 真っ先に作られた物、貰ったのは自分。アースの中で自分が特別だと、トロイは錯覚した。
 自分に対し、明確に作りたいものが浮かんだので作ってくれたのだろう。その事実が嬉しくて、思わずトロイは笑みを溢す。

「話をしようか、アース。ゆっくりと。時間はあるんだ」
「そう、ですね。トロイとお話するのは、好きです。楽しいです」

 柔らかな笑みを浮かべて頷いたアースに、ますますトロイは思い込んでしまった。3人の中で、アースが誰に惹かれているかを。自信過剰、不敗知らずのトロイはまさかアースの想い人が他にいるなど、思わなかったのだ。
 アースを見ていた、それでも、解らなかった。最初から自分が選ばれたと思い込んでいた、アースの視線の先に自分が直ぐに割り込んだので、後ろに居る人物に気がつかなかった。
 トロイとアースが連れ立って会話を始める、アースを探して駆けて来たトリプトルは、それを見てしまった。
 親しく隣に座り、明るい笑顔を見せながら話を聴いているアース。そして暖かな眼差しで見つめている親友のトロイ。
 トリプトルは、唇を噛む。そんな2人を交互に見つめていたが、静かに踵を返した。
 腹の中に、何かが溜まる。黒い何かが、溜まる。身体が小刻みに震え出す、吐き気が止まらない。何も出てこないが、胃の中から湧き上がってくる不気味な感情が、身体中に流れ出した。
 2人で会話していただけだ、ただ、それだけだ。
 それでも、アースを見つめているトロイの瞳は自分と同じもので。トロイを見つめているアースの笑顔は自分に向けられていたものを同じもので。
 トリプトルは、思わず地面に拳を突き立てる。その場の大地が、沈んだ。周囲の草花が、一瞬にして燃えて灰になった。
 荒い呼吸を繰り返しながら、何度も拳を突き立てる。黒いものが自分を支配しないように、吐き出すようにして何度が繰り返した。トリプトルを中心にして、周辺の大地から、命が消えた。

「……アース。頼むから、オレ以外にそんな瞳を向けないでくれ。トロイ、頼むから。オレからその子を奪わないで」

 震える声で、そう呟き続ける。虚無の瞳で地面をただ、殴り続けた。
 陽が暮れ夜になり、放心状態で戻ってきたトリプトルは直様自室に戻るとベッドに倒れ込んだ。力が出ない、無意味に魔力を放出してしまったらしい。横たわって瞳を閉じ、呼吸を繰り返していると。
 コンコンコン。
 誰かがドアをノックしている。返事する気力もなく、ただ、瞳を閉じて眠りに就こうとした。

「あの、トリプトル。帰ってきましたか? 入っても大丈夫ですか?」

 その声に、飛び起きた。アースの声だ。
 ベッドから転げ落ち、足をもつれさせながらドアへと向かう。慌てて開くと、アースが心配そうに立っている。
 腰に手を回し、無理やり部屋に連れ込むと妙な背徳感からドアを勢いよく閉めた。

「ど、どうした?」
「姿が見えなくて、何処に行っていたのかな、って。その……なんとなく、寂しくてというか、逢いたくてというか」

 言い終わると同時に唇を塞ぐ。頭を押さえつけ、腰を抱き寄せて自由を奪うと無我夢中で唇を吸った。
 何度かアースは抵抗をするように身動ぎしたが、震えながら身体に手を回すと、身を委ねる。
 どのくらいの時間が経ったのか、ようやく唇を離したトリプトルは、軽々とアースを抱き上げるとベッドに下ろした。

「一緒に、寝よう。前みたいに」
「……そう、ですね。前みたいに」
「あの時みたいに、毎晩。毎晩ここへおいでアース、オレと一緒に寝よう」

 毎晩。唇を動かしたアースの頬に触れ、アースに覆い被さったトリプトルは安堵の溜息を漏らした。
 唇を指でなぞり、再び顔を近づける。顎を持ち上げ、唇を塞ぎ、2人はそのまま朝まで口付けを交し続けた。
 
「約束、覚えてる? アースの唇は誰のものだった?」
「トリプトルの、ものです」
「そう、いい子だね……」

 名前を呼びながら、口づける。大丈夫だとトリプトルは言い聞かせた、誰と話をしていても、アースは自分のところへ最終的にやって来る。戻って来る。
 次の日も、その次の日も、アースは夜になるとトリプトルの部屋を訪れた。
 そうして抱き合って、口づけを交わす。
 アースが日中、リュミやトロイと親しく話をしていても、夜には自分の許へやって来るのでトリプトルは焼き焦がれる嫉妬に悩まされなかった。
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