別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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ひいいいい
薄暗い洞窟で、ようやく自身の傷を癒したマビルはこんな場所はこりごりだ、と一目散に逃げ出した。
あの村へ立ち寄ったせいでこうなった。発端は村だ。
元凶はアサギだが。
村を破壊してやろうかとも思ったが、これ以上アサギの息がかかる場所にいては災いしか降りかからないと思い直し、断腸の思いで諦める。
ふらふらと、マビルは次の街を探した。
自慢の肌は森の湖で磨くことは出来たのだが、汚れて破れた衣服は直すことが出来ない。
一刻も早く煌びやかなモノに囲まれたい、気楽な心で笑って踊って愉しい事だけ選んで暮らしたい。
すっかり暗闇に怯えるようになったマビルは、森で眠るのも嫌になっていた。誰かが襲ってくるのではないか、という恐怖心よりも絶望に近い孤独を痛感する。
ようやく、湖畔に広がる町を見つけた。自然と顔が綻ぶ。
こんな薄汚れた身体で人目に出るのはプライドが許さなかったが、仕方がない。
周囲はすでに薄暗く、それが幸いした。
昼間は賑わっているであろう大通りには、酔っ払いやら客引きの女達が別の賑わいを見せている。路地に入れば、営業中の酒場がずらりと並んでいた。
山から恩恵を受けた水は、湖に注ぎ込まれ、そこから海へと流れ出る。淡水と海水の混じり合うこの湖は貿易が盛んだった。
あどけない顔立ちとは不釣り合いな、悩ましい身体。衣服はところどころ破れ、強姦にでもあったかのよう。
歩くマビルを、男達は値踏みするように見つめる。
男達の視線に、マビルも徐々に機嫌を取り戻した。頬に明るみが戻る。
早速、男が声をかける。
しかし、ゆるりと微笑んだマビルは素通りした。好みの顔ではなかったからだ。
数人あしらい、妥協して一人の男で手を打つ。身なりが今までで一番良かったからだ。金を持っている男は、宝石をこれ見よがしにつけている。
マビルは、経験からそう学んだ。
肩を抱かれ、近くの酒場に入る。綺麗な場所でもなかったし、出て来る料理は正直不味かった。だが、空腹だったマビルは食べた。
「ねぇ、あたし、お洋服欲しい」
「すぐに脱ぐことになるのに?」
肩を竦めたマビルだが、男と二階へ向かう。宿になっているらしい。
言葉通り、マビルは一糸まとわぬ姿でベッドに転がった。暫し、人肌の温もりを愉しむ。
久しぶりの温かさに、安堵の溜息を吐く。
一人ではないことを実感する。
魔物にいたぶられても、自分は可愛らしく、愛される存在なのだと胸に刻んだ。
男の肩に腕をまわし、腰を振って強請る。
もっと、愛されたい。
「お前だろ、最近噂の寝首かく女」
「え?」
月が傾き始める頃、ようやく二人は身体を離した。大きく欠伸をして、シーツに包まり眠ろうとしていたマビルに冷ややかな言葉が降り注ぐ。
先程まで愛し合った男は、葉巻を吸い、衣服を着用していた。
見慣れない光景に、マビルは唖然として瞬きをする。
何処へ行くのだろうか、眠くないのだろうか。
そんな疑問は、目の前に投げ捨てられた紙幣によってかき消された。
自分の事が噂になっていると、気づいた。好き勝手暴れ、面倒になった男達を殺して来た。
あの時は後先考えていなかったし、代わりの男など掃いて捨てる程いると思っていた。
焦燥感に駆られ、初めて狼狽えた声を出す。
今、一人にして欲しくなかった。先程の様に「可愛い」「イイね」と囁き続けて欲しかった。
「べ、別に殺さないよ。ただ、朝まで一緒に眠ってくれれば」
「はい、御代。確かに顔は可愛いし、身体の抱き心地も良いね。でも、それだけだ。隣で眠ってたら殺されてましたー、なんて冗談じゃない」
「こ、殺さないよ! だから」
言い訳も虚しく、移り香だけを残して男はドアから出て行く。
追いかける気力もなく、マビルは落胆して窓から外を見た。
月が神々しくそこにある。
一人きりのベッドは広すぎて冷たすぎる。月の光は、綺麗だけど冷たくて残酷だ。
マビルは、一つ筋の涙を零した。
……あたしは、月より太陽が好き。あったかい、太陽のほうが好き。明るくて、包み込んでくれる太陽が。
両の目から、止めどなく涙が流れ落ちる。
「ふぇっ」
怖い夢を見る。
とてもそれが寂しくて、辛い。
それが嫌で怖くて眠りたくない。
眠いのに。
あったかくして、ただ、一緒に眠って欲しいのに。
……うなされていたら『大丈夫だよ』って言ってくれるオモチャが欲しいの。
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