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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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こっちに転載するの忘れてた(’ ’ )

 他愛のないトランシスとの戦闘に、軽く肩を回してトビィは立ち去る。キッチンへ足を踏み入れると、アサギとミシアが忙しなく動いていた。舌打ちする。
「あら、トビィお兄様。稽古は?」
 ミシアの存在にあからさまに眉を顰めたトビィだが、無視してアサギに話し出す。存在をなかった事にする為、アサギのみに視線を注ぐ。
 
「休憩中。朝食の準備は?」
「もう出来ます、あとはミシアが焼いてくれているパンだけです」
 アサギのあどけない笑みを見つめると、心が安らいだ。
 しかし。
 ゾワァ、と背筋が寒くなる。痛いほどの視線を感じたが、断固としてそちらを向かなかったトビィは、アサギの手を取った。手のぬくもりがどれだけ荒みそうになる心を和らげてくれたか。
 手を撫でられ見上げたアサギは、その唐突な行動に首を傾げる。
 
「皆、腹が減っている。呼びに行くか?」
「そうですね……あ、でも、あとサラダのドレッシングを作ろうと思って」
 一刻も早く立ち去りたかったトビィだが、アサギが肩を竦めて渋ったので唇を噛み締める。その間も、右半身に不愉快でしかない熱烈な視線が突き刺さる。
 屈辱的だったが、トビィは観念した。額には、青筋が浮かんでいた。
 
「ミシア」
「はい、どうしました?」
 嫌々ながらに、名を呼んだ。呼ばれたミシアはパアァっと、後光が差したかのような笑みを浮かべて小走りに近寄ってくる。
 それを右手で制する、これ以上距離を縮められたくない。
 
「皆を呼んで来てくれ」
「かしこまりましたわ」
 あくまでも視線は交わさず、アサギを見続けてトビィは呟いた。しかしミシアは合わせようと、身体を傾け覗き込むように返事をする。
 奇妙な二人のやり取りに、アサギは再び首を傾げていた。
 どこか緊張した様子のトビィと、浮足立っているミシア。頬を染めているミシアがトビィに惚れている事は、容易に解った。美男美女でお似合いだ、とアサギは思ったが、それをトビィが知ったら瀕死になっていただろう。
 微笑ましく見ているアサギの目の前で、ミシアはもじもじっと、身体を揺する。頼まれたものの行きたくないのだろう、わざと歩幅を小刻みに進む姿に、トビィは青筋を浮かべた。
 一時間くらい滞在したのではないか、と思える程、地獄の時間を過ごしたトビィは立ち去った瘴気にようやく肩の荷を下ろす。
 息が詰まりそうだ、斬り倒そうかとも思った。 
「アサギ」
「はい」
「今焼いているパンは、アサギがこねたのか?」
 釜に何気なく目をやったトビィは、アサギの「いえ、ミシアが」という返答に項垂れた。思わず口元を押さえる。
 
「そうか……。他のものはアサギが?」
「あ、はい。スープとサラダ、オムレツは私が」
 辛うじて最悪の事態は避けられたことに感謝したトビィは、アサギの髪を撫でながらトマトを摘まんで口に放り込む。
 
「あっ! つまみ食いは駄目ですよ」
「はは、気にするな」
「もぅ……」
 子供の様なトビィに、アサギはクスクスと笑う。普段は大人っぽいトビィだが、時折可愛い仕草をする。屈託のない笑顔に、トビィも徐々に調子を取り戻していた。
 それでも、パンだけは絶対に口にしないことを決める。
「惚れ薬でも入ってそうだからな」
「え、何か?」
「いや、こちらの話だ」
 ミシアと入れ替わりに、水を取りにやって来たアリナとクラフトが部屋に入ってくる。親し気に触れあっている二人を見て、アリナは眉を吊り上がらせた。
「こら、何やってんだトビィ!」
 怪訝な顔を向けたトビィは「言うなよ」と唇を動かした。ムスッとしたアリナは舌を出し、「一つ貸しな」と呟く。
「アリナ、ご飯出来ました」
「そうか、そうかー。うーん、良い香り!」
「あの、トランシスは?」
 何気なく聞いたアサギに、皆は言葉を詰まらせる。死にかかっていた、とはとても言えない。目を泳がせていたアリナに代わり、トビィがコップに水を注ぎ、強引にクラフトに手渡す。
「与えて来い、疲れているんだろ?」
「まぁ……そうですね」
「歩けるようになったら、連れて来い」
 白々しい演技をしたトビィに、アリナは吹き出しそうになる。睨まれて、慌てて口を押えた。何処となく挙動不審な皆に、アサギは瞳を何度か瞬きする。
 釈然としないまま出て行ったアリナを見送ると、慌ててアサギは準備を再開する。手際よく進めるアサギを椅子にかけて眺めながら、トビィは珈琲を啜った。
「トランシスは、どうですか?」
「まだ剣は使っていない、食後だな。さっきは基礎体力を見ていた」
「強いでしょう?」
「さぁて、どうだろう」
 嬉しそうにアサギが話すので、流石のトビィもげんなりする。全くもってつまらない会話になった。
 賑わう声が聞こえてくる頃には、テーブルに料理が並べられた。パンも焼き上がったようだ。香ばしい麦は空腹にガツン、と効く。
 アサギを挟んで機嫌の悪そうなトビィとトランシスは、同じテーブルについた。意地でもパンを口にしないトビィと、口内が痛んでスープしか口に出来ないトランシス。汁すら、滲みる。
「大丈夫、トランシス」
「あ、あぁ、なんとか」
「午後からは剣を扱うみたいだよ、頑張ってね」
「あー……うん」
 気乗りしないが、アサギに進められては断れない。トランシスは、作り笑顔を浮かべながら、アサギの向こうにいるトビィを睨み付ける。
 視線に気づき、同様にトビィも睨み返した。
「うっわぁ、めっちゃ二人共仲悪い」
「解っていたことだけど、相当険悪な雰囲気よね」
 アリナとマダーニは、顔を見合わせると呆れて深い溜息を吐く。
 和やかに見せかけて心内では暗雲轟かせていた朝食が追えると、暫しの休憩。すぐに動くのはよくない為、一時間の猶予がある。片付けをしているアサギを眺めながら、テーブルに突っ伏したトランシスは、大きな欠伸をした。
 昨日はあまり眠れていない。
 アサギを抱き締めながら至福の眠りに包まれていたい。
「オレ、もうこの世界に来たくないなー」
 ぼやいた。自分の部屋なら、アサギと二人きり邪魔が入らず過ごせる筈だ。
 
「アサギ―。アサギが足りないー」
「ど、どうしたの!?」
 食器を洗い終えたアサギがエプロンを外して近寄る。不安そうに眉を寄せて、具合の悪そうなトランシスを覗き込む。
「口付けして、口付け」
「え、えぇ!?」
「早く、出ないと死ぬ」
「あ、あぅ」
 顔を赤らめたアサギだが、せがむ様に唇を突き出したトランシスに観念し、そっと唇を合わせた。
 柔らかい唇が離れる前に、抱き寄せて強く吸う。
 こんな場所で誰かに見られたら、と焦ったアサギだが、トランシスは細い腰に腕を回し、離す気はなかった。腕の力で離れようとするアサギが可愛らしくて、ますます力を籠める。
 唇同士は糸を引き、荒い呼吸を繰り返して離れた二人は熱っぽい視線で「好き」と囁いた。
 時間が来た。
 
 手を繋いで庭に出た二人を、木刀を持ったトビィが待っている。いつの間にやらギャラリーも増え、ミノル達勇者も居た。
 こんな戦いを見逃すわけにはいかない。アリナが連絡をしたのだ。
「トビィ、叩きのめしてしまえ!」
「言われなくともそのつもりだ」
 涼し気に言ったトビィにミノルはガッツポーズをとり、トモハルは嘆く。
 トビィは無表情のまま、トランシスに木刀を一本投げる。弧を描いて青空を待ったそれは、すんなりとトランシスの手の中に収まる。
「トランシス、頑張ってね」
「あぁ、その前に……」
 右手で木刀を掲げ、トランシスは眩しい日差しを避けながら周囲を見渡した。名前はまだ一致していないが、気に食わない男達が揃っていることだけは把握出来た。口角を歪めると、傍らのアサギを抱き寄せる。
 声高らかに、告げる。
「口付けして。アサギ」
「え?」
 赤面し、俯いたアサギにミノルが泡を吹く勢いで倒れた。トモハルが悲鳴を上げて、それを抱き起す。マダーニが口笛を吹き、アリナが唖然とし、トビィの怒りが頂点に達した。
「早く、アサギ。トビィさんを待たせたら悪いだろ? ”さっきみたいに”自分からしてよ」
「え、ぁぅ、え」
 狼狽するアサギに、顔を近づける。海老反りになって逃げようとするアサギだが、限界がきた。
「してくれないの? 応援してくれないの?」
「お、応援はする、けど、その、ここでは、ちょっと、あの、恥ずかしい」
 半泣きのアサギは周囲を気にする、しかし、寂しそうに瞳を落としたトランシスに胸がきゅうぅ、と締め付けられる。
「計算高い男!」
 間入れずマダーニが身を乗り出して呟いた。
「そうなの!?」
「我が物顔の男が、急にしおらしくなる……女心を揺さぶる常套手段!」
「ボクにはわかんないや」
 白熱するマダーニを、アリナが隣で平然と見守る。アサギがどう反応するのか、そればかりが気がかりだ。
 しかし、前方から漂う冷気にアリナの身体が反応する。咄嗟に身構えていた。こちらに敵意は向いていないというのに、殺気が周囲を包み込んでいる。 
 トビィだ。トビィが静かに憤怒している。
 表情は見えないが、凄まじい形相なのだろう。
 アリナの腕に、鳥肌が立つ。
 今にも斬りかからんばかりのトビィだが、辛抱した。声を出す。
「……貴様はもう口を開くな」
 ゆっくりと告げたその声は、絶対零度。冷静さを保とうと務めた。しかし薄ら笑みを浮かべたトランシスに、トビィは堪え切れず怒りを表す。
「アサギ、ほら」
 いやいや、と首を横に振るアサギの頬に涙が伝う。恥ずかしくて死んでしまいそうだった、大勢に見られての口付けなど、無理だ。
 顔から火が出る。
 唇を尖らせ不服そうな表情をしたトランシスは、仕方ないと肩を竦めた。アサギ自ら口付けてくれたらそれこそ効果を発揮したのだが、今は見せつけるだけでもよしとしようと切り替える。
「そうか、じゃあ加護だけもらうね」
「ぅんっ、っ、あっ、んむ」
 トランシスは、先程と同じようにアサギの唇を塞ぐ、頭部を押さえつけ、太腿を撫でながら、舌を侵入させて蹂躙した。
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