別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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なんのかんので70だということに驚いた・・・・。
惑星クレオ、勇者達の秘密基地。アサギの室内は地球からぬいぐるみやら雑誌やらが持ち込まれており、随分と華やかになった。ソファも机も、簡素なものだがこちらで購入した。狭い部屋だが、二人でいられるスペースはある。
まだ数回しか沈んだことのないベッドは、二人専用だ。「おやすみなさい」と言葉を交しベッドに潜り込む。
嬉しそうに身体を寄せてきたアサギを、更に引き寄せて抱き締めた。顎に手をかけ、上を向かせると軽く口づける。僅かに離したが、再開する。
吐息が零れる、互いの身体が熱を帯びる。
口付けだけでは満足など出来ないトランシスだが、これは儀式で大事な工程だ。徐々に進めていかねばならないことを自身に言い聞かせ、今日は次の段階へと進む。
「アサギ、舌を出して。”愛する者同士が”する口付けだよ」
目的を達成する為には、手段を選ばない。
トビィに咎められる前に、アサギを調教し服従させなければならない。トランシスによるアサギの調教は、会う度に続いていくだろう。
最初に感じた通り、非常に敏感なアサギは煽ればすぐに頬を赤らめて恥じらう。
自分の色に染まり、好みの女に育てるのが愉しみだと……時間はかかるがそれはそれで至福かもしれないと、トランシスはほくそ笑む。
今まで相手にしてきた女とは違う、初物。
それを”繋がる前に”従順な雌に仕立て上げるというのは、なんとも心が震える余興に思えた。
恥ずかしがって上手く出来ない深い口付けだが、一時間も続ければ、ようやくアサギも慣れてきた。
互いの口元が唾液で光る、荒い呼吸が暗い室内に響き渡り、胸の鼓動が速くなる。
愛していると耳元で囁き、「愛する者同士が交わす想いの確認だ」と教え込み、舌を絡ませた。
そういうものなのだと納得したアサギは、微かな抵抗を見せつつも素直に応じる。
アサギに拒否権などない。好きだ、愛していると言われればその言葉を信じて受け入れる。
細かな指示を出すと、泣きそうになりながらも震えて実行する。
トランシスは気が狂いそうだった、面白すぎて、愉快過ぎて、この世の中にここまで幸福な事があったのかと叫びたかった。
口付けでこれなのだから、二人が身体を重ねる時はどうなのだろう。
言うがままに無茶な要望でも応えてくれるであろうアサギを想像するだけで、たぎってくる。
身体を入れ替えながら口付けを交わしていたが、喉が渇いたので一時休憩となった。
水を飲み一息ついたが、また再開するつもりだった。その前に手洗い場へ行き自慰でもしなければもたないかもな、と口元を緩ませ腰を上げた時だ。
「そうでした、トランシス」
「ぅん?」
今日はどの辺りまで教え込もうか浮かれていたトランシスだが、悪意のない言葉に気が遠くなる。
「明日ですけど、トビィお兄様が剣を教えてくれるって」
蒼褪めた。身体が急速に冷えた、そしてあれほど暴れたがっていた下腹部は萎えた。
にこやかに微笑んでいるアサギが、悪魔に見えた。
背後でトビィが薄ら笑いを浮かべている幻覚が見える、小馬鹿にしたように見下して、鼻で嗤われた。
それは稽古、という名目の暴行である。
素直に返事が出来ないトランシスは、言葉を濁した。先程飲んだばかりなのに口内はカサつく。
「えー……そ、そっかぁ」
「トランシスも習いたがっていたよね、トビィお兄様は忙しいけど、明日は大丈夫なんだって。良い機会だよ!」
「あー、うん」
「ここに居るはずだから、声をかけてくるね」
反して、アサギは嬉しそうだ。二人が犬猿の仲であることをアサギは全く気付いていない。鋭い子なのにどうして気づいてくれないのか、トランシスは苛立った。
以前売り言葉に買い言葉だったか、話の流れで剣を教えてもらうだのそんな会話をした記憶は確かに残っている。
しかし、あれは社交辞令というかその場限りのものであって本心ではない。
何故アサギと会える時間に、胸糞悪い相手と会わねばならないのか。
止める間もなく、ベッドから飛び起きたアサギはトビィを呼びに行こうとした。
「あ、待って、アサギ」
その語尾が情けなく掠れる。「アサギ、オレはアサギと一緒にいたいんだー……」
「アサギ、入るぞ」
バーン!
声と同時に大きくドアが開き、冷たい微笑を浮かべたトビィが室内に入ってくる。まるで外で会話を聞いていたかのようなタイミングだ。
幻覚が実際に出て来たので、呆気にとられたトランシスは絶句した。
アサギだけは小さく会釈をすると、二人から発せられる不穏な空気には気にも留めず軽やかに話し出す。
「丁度良いところに、トビィお兄様。明日ですけれど、予定通り剣の稽古をお願いします。大丈夫ですか?」
「あぁ、問題ない。オレもその確認に来たところだ」
アサギに近寄り、大胆不敵にもトランシスの目の前で抱きしめる。目を見開き青筋浮かべたトランシスに、余裕たっぷりの笑みを投げた。
歯を剥き出してベッドから飛び降りたトランシスは、アサギを背後から抱き締めて奪い返す。
「お忙しいとお聞きしています、オレのことはお構いなくトビィさん。結構ですよ、またの機会で」
「いやいや、遠慮しないでくれ。アサギの頼みだからな」
アサギの頭上で二人の睨み合いが続く。
言葉遣いは丁寧だが、イントネーションに棘がある。
互いの本心が見え見えなので、目で会話した。
『逃げようという魂胆など見えている、覚悟しろ』
『ばーか、ばーか、だぁれがお前なんかに剣を教えてもらうかよっ!』
『意気地なしめ、生死の境を彷徨うのがそんなに嫌か』
『意気地なしでもー生死の境を彷徨うのもーアンタの幻想ですー残念でしたー』
『とりあえず、アサギは離せ。危ないから今日はオレの部屋で寝かせる』
『ばっかじゃないのー! アサギはオレのなんでいい加減触るのやめろよ、この盗人が!』
『盗人は貴様だろう』
『アサギが選んだのが後から来たオレだっただけでーす、ばーかばーかばーか!』
血走った瞳で、互いに一歩も引かず、アサギを抱く腕に力が籠る。歯軋りしながら冷戦が続いた。
「あ、あの、トランシス、トビィお兄様。な、なんだかとっても身体が痛い、です」
アサギのか細い声に二人は我に返ったのだが、慌てて手を離したのはトビィで、トランシスはこれ幸いと腕の中に抱きかかえる。
「あー、ごめんごめん。痛かったね、アサギ」
これみよがしに身体中に手を這わせると、トビィの瞳が座った。その様を舌を出したトランシスが嘲り笑う。
怒りで握っている拳が震えている、嗤い出したいのを懸命に堪え、トランシスは攻撃の手を緩めない。
『アサギが、オレの名を先に呼んだ!』
『だからどうした、このドアホ』
ビキィ!
トビィの殺気で、部屋が揺れる。
「早く寝なさい、アサギ。何かあったら隣にいるからすぐにおいで。……トランシス、では明日”よろしく”」
腸が煮えくり返っているトビィだが、断腸の思いで踵を返した。
「おやすみなさい、トビィお兄様」
「おやすみー、トビィさんー。ごゆっくりー昼まで熟睡してていーですよー」
この戦いはトランシスが勝利を得た、しかし、これが切っ掛けで翌日の訓練という名の半殺し計画は悪化したのだ。
眩しい日の光で目が覚める、まだこの光に慣れないトランシスは、瞼を痙攣させる。
柔らかく甘い香りのするアサギを抱き締め、あわよくば時折胸や太腿やら尻に手を這わせ、至福の時を過ごしていた。
「起きろ、遅い。この愚鈍が」
頭部に痛みを感じ、情けない声を出して目を擦ると仁王立ちしているトビィがいた。
まさに天国から地獄に突き落とされた瞬間である。
朦朧とする頭でアサギを捜す、自分が抱いていたのはアサギの枕だ。
腹を抱えて嗤い出したトビィが、皮肉そうに肩を竦める。
「アサギなら朝食の支度をしている。さっさと来い、オレも暇じゃない」
「暇じゃないならお構いなくー、オレは寝る」
「寝るな、いいから来い」
「ぐぇっ、何すんだよっ」
胸ぐらを掴み、強引にベッドから引きずり落としたトビィは、倒れて呻いているトランシスの頭を踏みつける。
怒りに瞳を揺らして見上げたトランシスだが、鳥肌が立った。
トビィが、冷酷な視線でこちらを見ている。どこにも笑みの欠片がない。そこには、ただの殺戮者しかいない。
有無を言わさずトビィは、トランシスの衣服を掴んでアサギの部屋を後にした。
床を引きずる、二階から一階へ階段にさしかかると流石にトランシスは慌てて立ち上がろうとする。けれども、トビィはほくそ笑んで振り返ると「これも訓練の一環だ」とだけ告げ、容赦なく階段も引きずった。
「いたっ、いって! 後で覚えてろよ!」
「その台詞を吐く奴はな、決まって敗けるんだ」
「トビィ殺す、絶対殺す!」
「残念だな、オレに殺されるの間違いだ」
入口から外に放り出されて、青あざだらけのトランシスようやく自分の足で立ち上がる。不覚にも、すでに足が震えている。
それを見逃すはずがないトビィは、あからさまに肩を竦めて首を横に振ると気の毒そうに目を伏せる。
何も言わないほうが、余計に腹が立った。
「アサギが作ってくれた朝食、口に入らなくて残念だな。知ってるか、スープがとても美味だ」
「知ってるっつーの! アサギが作るのは何でも美味いんだよ!」
肩幅に足を開いたトビィは、余裕たっぷりに両手を後ろで組んで顎を引く。
剣の稽古ではないらしく、トランシスは安堵の溜息を吐いた。これなら死なずに済みそうだ、と思ったのだが、そんなことに安心してしまった自分にも腹が立つ。
「来いよ、これくらいの枷でもしてやらないと貴様死にそうだからな。剣なんて持ってみろ、一撃であの世行きになる……つまらないだろ?」
喉の奥で嗤ったトビィに、トランシスは頭に血が上った。ここまで馬鹿にされていては当然だ。
大声を上げて突進すると、素早く右手で殴り掛かる。
しかし、虚しく宙を切るだけだった。
「え」
「遅い。勇者達ですらこんな無防備な戦いしない」
目の前からトビィが消えたと思ったら、背後から声がして、気がついたら地面に叩き付けられいた。
「ぐぁっ」
「想像以上に……期待外れだ」
憐れむような声が上から降ってくる、両腕に力を籠めて起き上がろうとしたが背の骨が軋んで地面に顔が埋まる。
全体重をかけて右足を背に乗せたトビィは、さらに力を籠めた。
「どうした、起き上がれよ」
勇者秘密基地の入口前は、庭になっている。騒ぎに気づいた通りすがりやら、窓から顔を覗かせている好奇心丸出しのアリナやら、二人には多くの観客がいた。
アサギがいなければ、トビィは本性を出す。
アサギを引き離す為に、あえて早朝を狙ってきたトビィの算段は完璧だった。
二人の為に朝食を作っているアサギは、悔しさで唇から血を滲ませているトランシスに、気づいていない。
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