別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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nemui
誉められると嬉しいものだ、ガーベラは浮き足立って宿へと戻る。金が欲しくて歌うのか、聴いてもらいたくて歌うのか。
ぼんやりとそんなことを考えながら歩いていた。自分はどうしたいのだろうか。
すっかり陽が暮れて、辺りを暗闇が覆う。宿へと何気なく歩いていたら、腕を捕まれ引き寄せられた。
驚いて悲鳴を上げようとしたのだが、口を手で塞がれる。湿った手、寒気がした。
細い路地に連れ込まれていた、必死に身を捩るが抵抗しても無駄だった。耳元に生暖かい空気がかかり、思わず全身に鳥肌が立つ。臭い吐息に、吐き気がした。
「みーつけた。港町カーツの人気娼婦さんじゃねぇか、お代は幾ら?」
言葉に青褪めたガーベラは、片足を上げて蹴りを喰らわせようとした。が、その脚を掴まれる。驚いてその手を辿ると、暗くて見えなかったのだが男数人に囲まれていた。
身体が硬直し、一気に震え出す。顔はよく見えないが、ろくな男ではないことは間違いない。
「いやさ、あんたと寝たっていう男が酒場で意気揚々と武勇伝を話していたもんで。ずっと捜していたんだー」
腕に、脚に、胸に、腰に、男達の手が一斉に伸ばされる。悲鳴を上げたくとも後ろから抱き抱えられ、口元を押さえられている状態では無理だった。恐怖で顔が引き攣る、歯がカチカチと音を立てる。それでも涙は出なかった。
「綺麗なお顔と身体だなー、いやはや、遠目で見たことはあったがな。まさかこんなとこにいるなんて、なぁ。歌いたい、って? このご時世、歌でメシを喰っていこうなんざ無理だぜ娼婦さんよ。後ろ盾でもあれば別だろうがなぁ」
数時間後、細い路地からガーベラは脚を踏み出した。男達の吐き出した白濁した液を身体に付着させ、ようやく込み上げてきた涙を拭うことなく、覚束無い足取りで宿へと戻る。
身体を汚されたことよりも、歌いたい夢を貶されたことがガーベラには痛手だった。
無理なのだろうか。
娼婦として働いてきた、囲われた空間にいた自分では無理なのだろうか。
「ルク……嘘つき……貴方の様に私は。歌えない」
夢を見ていた、自分の歌を皆が聞き入ってくれる夢を。最初は小さな店で歌う、噂を聞きつけて引っ張りだこになり、行く先々で歌を披露し思うままに生きていく。
そのうち、騒ぎを聞きつけてルクもやってくるだろう。手を広げてこう言ってくれる筈だ。
『待っていたよ、ガーベラ。君が隣に来てくれる日を』
そんな、勝手の良い夢を見ていた。
高名な吟遊詩人に誉められ、夢が膨らみ過ぎたのだろう。過信してしまったのだ、愚かだった。
「嘘つきね、ルク。私の歌声など、とても……」
翌日、居た堪れなくなったガーベラは、虚ろな瞳で宿の主人に謝罪すると慌ててその街を飛び出した。
引き止める主人を振り払い、お金を強引に手渡してフードで顔を隠し乗合馬車を待つ。
あの男達に、会いたくなかった。また、身体を要求してくるのだろう。確かに金は置いてあった、だが、そんな金は要らない。
馬車の隅っこで丸まって、見事な金髪を隠し整った顔を隠し、ガーベラは次の街を目指した。
願わくば、次の街で。誰かまた、歌を聴いて欲しいと願いながら。
願わくば、次の街には。娼婦ガーベラを知る男はいないで欲しいと願いながら。
ぼんやりとそんなことを考えながら歩いていた。自分はどうしたいのだろうか。
すっかり陽が暮れて、辺りを暗闇が覆う。宿へと何気なく歩いていたら、腕を捕まれ引き寄せられた。
驚いて悲鳴を上げようとしたのだが、口を手で塞がれる。湿った手、寒気がした。
細い路地に連れ込まれていた、必死に身を捩るが抵抗しても無駄だった。耳元に生暖かい空気がかかり、思わず全身に鳥肌が立つ。臭い吐息に、吐き気がした。
「みーつけた。港町カーツの人気娼婦さんじゃねぇか、お代は幾ら?」
言葉に青褪めたガーベラは、片足を上げて蹴りを喰らわせようとした。が、その脚を掴まれる。驚いてその手を辿ると、暗くて見えなかったのだが男数人に囲まれていた。
身体が硬直し、一気に震え出す。顔はよく見えないが、ろくな男ではないことは間違いない。
「いやさ、あんたと寝たっていう男が酒場で意気揚々と武勇伝を話していたもんで。ずっと捜していたんだー」
腕に、脚に、胸に、腰に、男達の手が一斉に伸ばされる。悲鳴を上げたくとも後ろから抱き抱えられ、口元を押さえられている状態では無理だった。恐怖で顔が引き攣る、歯がカチカチと音を立てる。それでも涙は出なかった。
「綺麗なお顔と身体だなー、いやはや、遠目で見たことはあったがな。まさかこんなとこにいるなんて、なぁ。歌いたい、って? このご時世、歌でメシを喰っていこうなんざ無理だぜ娼婦さんよ。後ろ盾でもあれば別だろうがなぁ」
数時間後、細い路地からガーベラは脚を踏み出した。男達の吐き出した白濁した液を身体に付着させ、ようやく込み上げてきた涙を拭うことなく、覚束無い足取りで宿へと戻る。
身体を汚されたことよりも、歌いたい夢を貶されたことがガーベラには痛手だった。
無理なのだろうか。
娼婦として働いてきた、囲われた空間にいた自分では無理なのだろうか。
「ルク……嘘つき……貴方の様に私は。歌えない」
夢を見ていた、自分の歌を皆が聞き入ってくれる夢を。最初は小さな店で歌う、噂を聞きつけて引っ張りだこになり、行く先々で歌を披露し思うままに生きていく。
そのうち、騒ぎを聞きつけてルクもやってくるだろう。手を広げてこう言ってくれる筈だ。
『待っていたよ、ガーベラ。君が隣に来てくれる日を』
そんな、勝手の良い夢を見ていた。
高名な吟遊詩人に誉められ、夢が膨らみ過ぎたのだろう。過信してしまったのだ、愚かだった。
「嘘つきね、ルク。私の歌声など、とても……」
翌日、居た堪れなくなったガーベラは、虚ろな瞳で宿の主人に謝罪すると慌ててその街を飛び出した。
引き止める主人を振り払い、お金を強引に手渡してフードで顔を隠し乗合馬車を待つ。
あの男達に、会いたくなかった。また、身体を要求してくるのだろう。確かに金は置いてあった、だが、そんな金は要らない。
馬車の隅っこで丸まって、見事な金髪を隠し整った顔を隠し、ガーベラは次の街を目指した。
願わくば、次の街で。誰かまた、歌を聴いて欲しいと願いながら。
願わくば、次の街には。娼婦ガーベラを知る男はいないで欲しいと願いながら。
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