別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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もう一度、姫路に行きたいです。
早く工事終わらないかな(無理)。
更新が一ヶ月途絶えていたので、慌ててアップしたら短すぎて意味不明でした。
ので、こっちがマビルです。
終われるかなぁ・・・。
Leadの動画を見ていると、非常に癒される今日この頃。
はー・・・。
東京公演か仙台公演、行きたいなぁ・・・。
というか、4日のダンスイベも行きたいなぁ・・・。
あ。
w-inds.追加ファンイベおめでとうございます。
名古屋・・・私もその最初の時間のがよかったです・・・。
いいなぁ・・・。
しまったなぁ・・・。
という、愚痴。
早く本編終わらせたいです。
途中で切りたい位です。
早く工事終わらないかな(無理)。
更新が一ヶ月途絶えていたので、慌ててアップしたら短すぎて意味不明でした。
ので、こっちがマビルです。
終われるかなぁ・・・。
Leadの動画を見ていると、非常に癒される今日この頃。
はー・・・。
東京公演か仙台公演、行きたいなぁ・・・。
というか、4日のダンスイベも行きたいなぁ・・・。
あ。
w-inds.追加ファンイベおめでとうございます。
名古屋・・・私もその最初の時間のがよかったです・・・。
いいなぁ・・・。
しまったなぁ・・・。
という、愚痴。
早く本編終わらせたいです。
途中で切りたい位です。
漆黒の瞳が、轟惑的に輝いた。
アイセルに詰め寄るマビル、怪訝にアイセルはそれを軽く押し返す。
見慣れたマビルの全身を、思わず爪先から頭部まで見つめたアイセルは軽く溜息を吐いた。
確かに、見た目は絶世の美少女であると、アイセルとて思っていた。
こうして、マビルの魅力に惹き付けられて死ぬであろうと解っていても、男は近寄ってくる。
男の本能、なのか甘美な密を滴らせる危険な花に群がる昆虫の様に。
マビルにとって、男などただの”オモチャ”である。
する事がないのだ、魔族にとって長すぎる時間を持て余すように、マビルは”オモチャ”で遊ぶ。
いつの頃か、マビルは直様美形な男達と肌を重ねるようになった。
最初は快楽目的だと、思っていた。
しかし。
小首傾げて淫蕩な空気を吐き出しているマビルを見つめると、ふと。
稀にだが何かを探すように迷子の猫になったかの様に・・・、切なそうに空を見上げる時がある。
身体を重ねるのは、温もりを欲して寂しいからなのか。
それとも、何か別の?
マビルから”オモチャ”を取り上げる事などできないが、殺しは良くはない。
飽き性なのか、”オモチャ”はマビルの気紛れで死していく。
何人も魔族が忽然と姿を消していれば、いい加減誰かがマビルの存在に気がつくだろう。
強固な結界の中にいるといっても、冷汗ものの”透明な籠”。
神隠しなど、魔族間には有り得ない、マビルが露見するのも時間の問題だ。
「なぁに、真剣な顔して?」
くすくす、と笑い続けるマビルは、そっとアイセルの露出した胸に指を伸ばす。
ゾク、思わずアイセルの背筋に衝撃が走った。
僅かだが身体を強張らせたアイセルに、満足そうにマビルが微笑みツー、と人差し指を軽く動かす。
「妹に、欲情しちゃダメよ、おにーちゃん」
「・・・するか、馬鹿」
マビルの手をはたき、アイセルは一歩後退した。
大袈裟に顔を顰めて、はたかれた手を優しく擦っているマビルの後方から、声が聴こえる。
「兄妹で何イチャついてるの、お二人さん」
おどけた声が、森中に響き渡った。
二人は驚いて反射的に身構えたが、そちらの方角を見つめると脱力。
同時に、名を呼ぶ。
「トーマ! 戻ったのか!」
木々の間から、ゆっくりと顔を出し歩み寄ってきた少年。
人間だ、12歳程度の。
長い黒髪を一つに後ろで束ね、きつめで大きな瞳を輝かせながら二人へと近寄る。
「ただいま、アイセル、マビル」
トーマ、と二人が呼んだ少年。
アサギとマビルに若干似た、可愛らしい顔立ちだった。
この二人に居ているとなれば、かなりの美貌の持ち主なのだが・・・。
「僕の姉さんが来てるって? 会いたい、ものすごく会いたいんだ・・・。アイセル、連れてってよ」
嬉々として、しかし切なげにアイセルに詰め寄るトーマ。
潤んだ瞳で見上げられ、思わずアイセルは喉を鳴らす。
「マビルより、色香があるな。媚感がないし」
「んぁ? なに?」
思わず口にしたアイセルの本音を聞き逃すわけがなく、マビルが目くじら立ててアイセルの足を思い切り踏みつけていた。
苦笑いで顔を顰めたが、大して痛くはない。
鍛えぬいたアイセルの肉体、華奢なマビルの渾身の踏み付けなど、どうてことないのだ。
それよりも、トーマだ。
無常にアイセルは首を横に振り、ゆっくりと言葉を吐き出す。
「駄目だ、トーマ。まだ。・・・その”時”ではない」
その、平素からは想像できないアイセルの威厳溢れる質感に、一瞬怯んだトーマだが唇を尖らせる。
「ヤだよ。姉さんに、会いに来たんだ。遠くからでも解ったんだ、僕は会いたいよ!」
声を荒立たせ、そっぽを向いたトーマ完全にへそを曲げたようだ。
苦笑いしてアイセルは困惑気味にマビルを見るが、げんなり、と視線の交差したマビルも唇を尖らせ小さな欠伸を一つ。
暫しの沈黙、項垂れながらトーマは口を開く。
「どんな人だった・・・? とっても綺麗な人だったでしょ?」
戸惑い気味に、たどたどしく、気弱に。
地に視線を落とし、そう呟いたトーマの髪をアイセルは軽く撫でる。
傍らで、マビルがさも可笑しそうにクスクス、と笑い出した。
「あたし以上に綺麗な女なんて、いるわけないじゃん」
自信たっぷりに軽々と言い放ち、胸の谷間を強調してウィンク。
苦笑いしたアイセルと、露骨に眉を潜めたトーマ。
確かに、そう言えなくもない、が。
「いや、マビルよりも遥かに美しい、何より優しく穏やかで安堵できる不可思議な空気を持っている。会って損はしないさ、思わず跪きたくなるよ。オレも正直、惚れかけた。・・・が、尊いお方だ。見ているだけで十分」
穏やかに微笑み、瞼の裏に思い描いているのか薄っすらと頬を染めたアイセルにトーマが歓声を上げる。
「あ、やっぱり! そうだよね、マビルなんかと比べたら姉さんが可哀想だよ!」
弾む声は、森に木霊する。
憤りを感じながら、非常に不愉快そうに身体を小刻みに揺らしながら聴いているマビル。
この世で一番美しいのは自分だと、絶対の自信を持っているマビルだ。
憤慨しても、致し方がない。
「何よそれ! 超ムカつく!! 何なわけぇ、信じられない! 私のほうが上、上なのよ!」
マビルの背後から薄黒い煙が立ち昇っているように見えるが、お構いなしに二人は会話している。
妹の、義姉の嫉妬など、しったことではないと言わんばかりに。
「アサギは、素晴らしい少女だ。あの方ならば確実に魔族を導いてくださるだろう」
瞳を輝かせ、その名を狂おしく愛おしく、切なそうに呼ぶトーマ。
「アサギ! アサギという名なんだ! ・・・僕の姉さん。僕のたった一人の姉さん。・・・アサギ。・・・早く、お会いしたいです」
「アサギ? ふん、あたしのほうが響きが良くて可愛い名前よね! 何がいーんだかっ」
三人三様。
誰かの言葉に誰かが反応、反発、口々に。
数分その場で目まぐるしく三人は口を動かしていたが、立ち話もなんだから、と家へと向かい始める。
丘の傾斜近く、石柱転がる廃墟のような空間。
その中に佇む、決して大きくはない小さな家。
周囲は森で囲まれている、他からの侵入は許さない、隠れ家。
その家の中、並べられた三人の食事。
食事は兄のアイセルが担当する、マビルは作ることが出来ない。
焼き立てのパンに、子羊のロースト、茄子のペーストと赤ワイン。
弟のトーマも皿を並べたり運んだり、ワインを注いだりと手伝っているがその間マビルはゆったりと天井から吊るされていたハンモックで居眠り中だった。
せわしくなく動く兄弟を横目で見やりながら、可愛らしく小さく欠伸。
平素は下僕と化した”オモチャ”に食事を作らせ、運ばせているマビル。
数ヶ月ぶりの再会となった三人は、昔話に花を咲かせた。
この、三人。
アイセル、マビル、そしてトーマ。
黄緑の髪の兄と、美しい漆黒の髪の妹、同じく漆黒の髪の弟。
代々魔王である最も高貴な血族しか知りえない、”予言家”の者達だった。
正式にその力を受け継いでいるのは、無論長男であるアイセルだ。
古来より、最初に生まれ出た子に予言の能力は授けられる。
アイセルの場合、父は婿養子なので母から受け継いだことになる。
受け継いだ、といっても特にアイセルは未だに予言をしていなかった。
母の遺した予言通りに、忠実に行動しているだけである。
アイセル自身、魔力が低い。
その為か、予言の能力は確かに受け継いでいると聞かされたが、実感はない。
ふとした瞬間、確実な未来が視えるらしいが・・・。
魔族の繁栄の為、重要な未来の出来事を予知する力。
嘗ては、王族お抱えの巫女であったらしい。
実際、代々女性だったのだが始めてアイセルが男として第一子となった。
アイセルの母の予言とは。
『アイセル。あなたの、妹です。マビル、といいます。この子に瓜二つな少女が何れ存在します、今はまだ、生まれ出ていません。その子を、探し守護することがあなたの役目です。その子は、現魔王・アレク様に代わって魔族を率いる女王なのですよ』
言われ、生まれでたばかりのマビルと対面。
出産で母から離れていたアイセルは、久し振りの母との再会でそんな目の玉が飛び出る勢いのことを言い放たれた。
鈍器で頭を殴られたように、混乱。
冗談ではない、とは解っていたが乾いた声で笑う。
室内に、アイセルの笑い声が響き渡っていた。
現魔王・アレクはアイセルから見ても衰えない現役の魔王の筈だ。
何年先の事か知らないが、魔王になる少女、とは一体どのような人物なのか。
母の言葉は絶対だ、未来は外れる事がなく運命の輪を回すだろう。
以来、アイセルは少女を探した。
沢山の少女と出会い、情報を掴む為に常に少女達と行動をともにした、ゆえに”女好き”の称号を得る。
アイセルにしてみれば、女王探しの一貫としてそれは非常に好都合。
好色男と見られたほうが、行動を怪しまられずにすむ。
誰にも知られてはいけない、秘密。
それは、予言家の一族以外に魔王の血族しか知り得ない、最大の秘密。
予言家の者が伝えた予言で、外れた事は何もない。
先読みの一族は、こうして古来から魔族達を護り抜いたのだ。
ようやく対峙した妹マビルに瓜二つな少女、アサギ。
唇を湿らせ、重々しく口を開き出す。
アイセルは、アサギについて二人に言って聞かせた。
語らねばならないことは、多々ある。
とにかく、周囲の空気が全く特異なものだ、と。
そして、魔族ではなく”人間”の”勇者”であると。
そう、魔族ではない。
魔族でないから、アイセルは今まで会えなかった。
魔王ハイが、連れてきた勇者アサギ、特異な状況で生まれた必然の出逢い。
口に運んでいたマビルのパンが、床に音なく落ちる。
「人間の・・・勇者・・・?」
搾り出したマビルの声、震えている。
アイセルが神妙に頷き、じっと、マビルを見つめた。
手に取るように、マビルの感情が理解出来るアイセル。
僅かに手の平に汗が滲んだ、マビルは人間が嫌いだからだ。
わけもなく、嫌いであった。
人間好きの魔族など、数知れているがマビルの人間嫌いは跳び抜けている。
見下した風もあった、何より美貌において魔族のほうが上であるとマビルは思っているからでもある。
美しい男なら、話は別だが少なくともマビルは人間の男を三人しか知らない。
一人は弟のトーマ。
二人目は以前”オモチャ”でもあった金髪の美少年。
三人目は奴隷としてこき使われていた、醜悪な男。
美しいものに執着しているマビルは、無論傍に置いておくオモチャにも、美しさを要求する。
自分に釣り合う美貌の持ち主でないと、傍に居るのも嫌悪感を抱く。
そして、同姓は嫌いであった。
一度、マビルに友達を作らせようとアイセルは一人の魔族の少女を招きいれたがマビルが拒否反応。
理由は定かではないが、一人で居る事が好きなのか何も考えていないのかマビルは常に宙に浮かんで膝を抱えて丸くなり一人の空間を作る。
見る度に心苦しくなるアイセルだが、それもこれも予言の為である。
しかし。
マビルの顔が青褪め、引き攣った。
静かに、アイセルは見守り続けるしかない。
マビルは受け入れなければならないのだ、事実を。
トーマは軽く赤ワインを喉に通し、マビルから視線を外して一人天井を仰いでいる。
小刻みに震えるマビル、自分に双子の姉が存在する、とは聞いていた。
兄も弟もいるのだから、これ以上姉妹は不要だと思うこともしばしばあった。
しかし、今更足掻いても血筋はどうにもならない。
そもそも、”双子”である筈なのに姉は何処にいるのか。
母の腹から同時に出た姉なのか、と尋ねれば『違う』と返答。
・・・それでも双子と言われる所以はなんなのか・・・、マビルは長い事考えていた。
「人間の勇者? ・・・それ、ホントにあたしのおねーちゃん?」
口に出す、冷ややかな口調だった。
感情が籠められていない、無機質なマビルの声。
マビルとて、数日前確かに感じたのだ、”姉の波動”を。
だが、とても人間のものとは思えなかった、そんな馬鹿げた事実あってはならないと思った。
毛嫌いする人間が姉で、おまけに勇者で、自分に勝る美貌を所持している・・・?
ダン!
マビルの拳が、テーブルを叩きつけた。
赤ワインがグラスから零れ、純白のマットに赤い染みを作る。
「・・・っ!」
憎々しげに、マビルはその零れ落ちた赤ワインを睨み付けた。
室内に沈黙が広がる、三人はそれぞれの思いを胸に黙り込んだままだ。
とりわけ、マビルの表情は厳しい。
別に焦がれていたわけではないが、多少、心躍るものがあったのも、確か。
姉。
時期魔王であり、自分を勝る力を秘めた双子の姉。
苛立たしい存在ではあったのだ、納得がいかないのも確かだ。
アイセルに詰め寄るマビル、怪訝にアイセルはそれを軽く押し返す。
見慣れたマビルの全身を、思わず爪先から頭部まで見つめたアイセルは軽く溜息を吐いた。
確かに、見た目は絶世の美少女であると、アイセルとて思っていた。
こうして、マビルの魅力に惹き付けられて死ぬであろうと解っていても、男は近寄ってくる。
男の本能、なのか甘美な密を滴らせる危険な花に群がる昆虫の様に。
マビルにとって、男などただの”オモチャ”である。
する事がないのだ、魔族にとって長すぎる時間を持て余すように、マビルは”オモチャ”で遊ぶ。
いつの頃か、マビルは直様美形な男達と肌を重ねるようになった。
最初は快楽目的だと、思っていた。
しかし。
小首傾げて淫蕩な空気を吐き出しているマビルを見つめると、ふと。
稀にだが何かを探すように迷子の猫になったかの様に・・・、切なそうに空を見上げる時がある。
身体を重ねるのは、温もりを欲して寂しいからなのか。
それとも、何か別の?
マビルから”オモチャ”を取り上げる事などできないが、殺しは良くはない。
飽き性なのか、”オモチャ”はマビルの気紛れで死していく。
何人も魔族が忽然と姿を消していれば、いい加減誰かがマビルの存在に気がつくだろう。
強固な結界の中にいるといっても、冷汗ものの”透明な籠”。
神隠しなど、魔族間には有り得ない、マビルが露見するのも時間の問題だ。
「なぁに、真剣な顔して?」
くすくす、と笑い続けるマビルは、そっとアイセルの露出した胸に指を伸ばす。
ゾク、思わずアイセルの背筋に衝撃が走った。
僅かだが身体を強張らせたアイセルに、満足そうにマビルが微笑みツー、と人差し指を軽く動かす。
「妹に、欲情しちゃダメよ、おにーちゃん」
「・・・するか、馬鹿」
マビルの手をはたき、アイセルは一歩後退した。
大袈裟に顔を顰めて、はたかれた手を優しく擦っているマビルの後方から、声が聴こえる。
「兄妹で何イチャついてるの、お二人さん」
おどけた声が、森中に響き渡った。
二人は驚いて反射的に身構えたが、そちらの方角を見つめると脱力。
同時に、名を呼ぶ。
「トーマ! 戻ったのか!」
木々の間から、ゆっくりと顔を出し歩み寄ってきた少年。
人間だ、12歳程度の。
長い黒髪を一つに後ろで束ね、きつめで大きな瞳を輝かせながら二人へと近寄る。
「ただいま、アイセル、マビル」
トーマ、と二人が呼んだ少年。
アサギとマビルに若干似た、可愛らしい顔立ちだった。
この二人に居ているとなれば、かなりの美貌の持ち主なのだが・・・。
「僕の姉さんが来てるって? 会いたい、ものすごく会いたいんだ・・・。アイセル、連れてってよ」
嬉々として、しかし切なげにアイセルに詰め寄るトーマ。
潤んだ瞳で見上げられ、思わずアイセルは喉を鳴らす。
「マビルより、色香があるな。媚感がないし」
「んぁ? なに?」
思わず口にしたアイセルの本音を聞き逃すわけがなく、マビルが目くじら立ててアイセルの足を思い切り踏みつけていた。
苦笑いで顔を顰めたが、大して痛くはない。
鍛えぬいたアイセルの肉体、華奢なマビルの渾身の踏み付けなど、どうてことないのだ。
それよりも、トーマだ。
無常にアイセルは首を横に振り、ゆっくりと言葉を吐き出す。
「駄目だ、トーマ。まだ。・・・その”時”ではない」
その、平素からは想像できないアイセルの威厳溢れる質感に、一瞬怯んだトーマだが唇を尖らせる。
「ヤだよ。姉さんに、会いに来たんだ。遠くからでも解ったんだ、僕は会いたいよ!」
声を荒立たせ、そっぽを向いたトーマ完全にへそを曲げたようだ。
苦笑いしてアイセルは困惑気味にマビルを見るが、げんなり、と視線の交差したマビルも唇を尖らせ小さな欠伸を一つ。
暫しの沈黙、項垂れながらトーマは口を開く。
「どんな人だった・・・? とっても綺麗な人だったでしょ?」
戸惑い気味に、たどたどしく、気弱に。
地に視線を落とし、そう呟いたトーマの髪をアイセルは軽く撫でる。
傍らで、マビルがさも可笑しそうにクスクス、と笑い出した。
「あたし以上に綺麗な女なんて、いるわけないじゃん」
自信たっぷりに軽々と言い放ち、胸の谷間を強調してウィンク。
苦笑いしたアイセルと、露骨に眉を潜めたトーマ。
確かに、そう言えなくもない、が。
「いや、マビルよりも遥かに美しい、何より優しく穏やかで安堵できる不可思議な空気を持っている。会って損はしないさ、思わず跪きたくなるよ。オレも正直、惚れかけた。・・・が、尊いお方だ。見ているだけで十分」
穏やかに微笑み、瞼の裏に思い描いているのか薄っすらと頬を染めたアイセルにトーマが歓声を上げる。
「あ、やっぱり! そうだよね、マビルなんかと比べたら姉さんが可哀想だよ!」
弾む声は、森に木霊する。
憤りを感じながら、非常に不愉快そうに身体を小刻みに揺らしながら聴いているマビル。
この世で一番美しいのは自分だと、絶対の自信を持っているマビルだ。
憤慨しても、致し方がない。
「何よそれ! 超ムカつく!! 何なわけぇ、信じられない! 私のほうが上、上なのよ!」
マビルの背後から薄黒い煙が立ち昇っているように見えるが、お構いなしに二人は会話している。
妹の、義姉の嫉妬など、しったことではないと言わんばかりに。
「アサギは、素晴らしい少女だ。あの方ならば確実に魔族を導いてくださるだろう」
瞳を輝かせ、その名を狂おしく愛おしく、切なそうに呼ぶトーマ。
「アサギ! アサギという名なんだ! ・・・僕の姉さん。僕のたった一人の姉さん。・・・アサギ。・・・早く、お会いしたいです」
「アサギ? ふん、あたしのほうが響きが良くて可愛い名前よね! 何がいーんだかっ」
三人三様。
誰かの言葉に誰かが反応、反発、口々に。
数分その場で目まぐるしく三人は口を動かしていたが、立ち話もなんだから、と家へと向かい始める。
丘の傾斜近く、石柱転がる廃墟のような空間。
その中に佇む、決して大きくはない小さな家。
周囲は森で囲まれている、他からの侵入は許さない、隠れ家。
その家の中、並べられた三人の食事。
食事は兄のアイセルが担当する、マビルは作ることが出来ない。
焼き立てのパンに、子羊のロースト、茄子のペーストと赤ワイン。
弟のトーマも皿を並べたり運んだり、ワインを注いだりと手伝っているがその間マビルはゆったりと天井から吊るされていたハンモックで居眠り中だった。
せわしくなく動く兄弟を横目で見やりながら、可愛らしく小さく欠伸。
平素は下僕と化した”オモチャ”に食事を作らせ、運ばせているマビル。
数ヶ月ぶりの再会となった三人は、昔話に花を咲かせた。
この、三人。
アイセル、マビル、そしてトーマ。
黄緑の髪の兄と、美しい漆黒の髪の妹、同じく漆黒の髪の弟。
代々魔王である最も高貴な血族しか知りえない、”予言家”の者達だった。
正式にその力を受け継いでいるのは、無論長男であるアイセルだ。
古来より、最初に生まれ出た子に予言の能力は授けられる。
アイセルの場合、父は婿養子なので母から受け継いだことになる。
受け継いだ、といっても特にアイセルは未だに予言をしていなかった。
母の遺した予言通りに、忠実に行動しているだけである。
アイセル自身、魔力が低い。
その為か、予言の能力は確かに受け継いでいると聞かされたが、実感はない。
ふとした瞬間、確実な未来が視えるらしいが・・・。
魔族の繁栄の為、重要な未来の出来事を予知する力。
嘗ては、王族お抱えの巫女であったらしい。
実際、代々女性だったのだが始めてアイセルが男として第一子となった。
アイセルの母の予言とは。
『アイセル。あなたの、妹です。マビル、といいます。この子に瓜二つな少女が何れ存在します、今はまだ、生まれ出ていません。その子を、探し守護することがあなたの役目です。その子は、現魔王・アレク様に代わって魔族を率いる女王なのですよ』
言われ、生まれでたばかりのマビルと対面。
出産で母から離れていたアイセルは、久し振りの母との再会でそんな目の玉が飛び出る勢いのことを言い放たれた。
鈍器で頭を殴られたように、混乱。
冗談ではない、とは解っていたが乾いた声で笑う。
室内に、アイセルの笑い声が響き渡っていた。
現魔王・アレクはアイセルから見ても衰えない現役の魔王の筈だ。
何年先の事か知らないが、魔王になる少女、とは一体どのような人物なのか。
母の言葉は絶対だ、未来は外れる事がなく運命の輪を回すだろう。
以来、アイセルは少女を探した。
沢山の少女と出会い、情報を掴む為に常に少女達と行動をともにした、ゆえに”女好き”の称号を得る。
アイセルにしてみれば、女王探しの一貫としてそれは非常に好都合。
好色男と見られたほうが、行動を怪しまられずにすむ。
誰にも知られてはいけない、秘密。
それは、予言家の一族以外に魔王の血族しか知り得ない、最大の秘密。
予言家の者が伝えた予言で、外れた事は何もない。
先読みの一族は、こうして古来から魔族達を護り抜いたのだ。
ようやく対峙した妹マビルに瓜二つな少女、アサギ。
唇を湿らせ、重々しく口を開き出す。
アイセルは、アサギについて二人に言って聞かせた。
語らねばならないことは、多々ある。
とにかく、周囲の空気が全く特異なものだ、と。
そして、魔族ではなく”人間”の”勇者”であると。
そう、魔族ではない。
魔族でないから、アイセルは今まで会えなかった。
魔王ハイが、連れてきた勇者アサギ、特異な状況で生まれた必然の出逢い。
口に運んでいたマビルのパンが、床に音なく落ちる。
「人間の・・・勇者・・・?」
搾り出したマビルの声、震えている。
アイセルが神妙に頷き、じっと、マビルを見つめた。
手に取るように、マビルの感情が理解出来るアイセル。
僅かに手の平に汗が滲んだ、マビルは人間が嫌いだからだ。
わけもなく、嫌いであった。
人間好きの魔族など、数知れているがマビルの人間嫌いは跳び抜けている。
見下した風もあった、何より美貌において魔族のほうが上であるとマビルは思っているからでもある。
美しい男なら、話は別だが少なくともマビルは人間の男を三人しか知らない。
一人は弟のトーマ。
二人目は以前”オモチャ”でもあった金髪の美少年。
三人目は奴隷としてこき使われていた、醜悪な男。
美しいものに執着しているマビルは、無論傍に置いておくオモチャにも、美しさを要求する。
自分に釣り合う美貌の持ち主でないと、傍に居るのも嫌悪感を抱く。
そして、同姓は嫌いであった。
一度、マビルに友達を作らせようとアイセルは一人の魔族の少女を招きいれたがマビルが拒否反応。
理由は定かではないが、一人で居る事が好きなのか何も考えていないのかマビルは常に宙に浮かんで膝を抱えて丸くなり一人の空間を作る。
見る度に心苦しくなるアイセルだが、それもこれも予言の為である。
しかし。
マビルの顔が青褪め、引き攣った。
静かに、アイセルは見守り続けるしかない。
マビルは受け入れなければならないのだ、事実を。
トーマは軽く赤ワインを喉に通し、マビルから視線を外して一人天井を仰いでいる。
小刻みに震えるマビル、自分に双子の姉が存在する、とは聞いていた。
兄も弟もいるのだから、これ以上姉妹は不要だと思うこともしばしばあった。
しかし、今更足掻いても血筋はどうにもならない。
そもそも、”双子”である筈なのに姉は何処にいるのか。
母の腹から同時に出た姉なのか、と尋ねれば『違う』と返答。
・・・それでも双子と言われる所以はなんなのか・・・、マビルは長い事考えていた。
「人間の勇者? ・・・それ、ホントにあたしのおねーちゃん?」
口に出す、冷ややかな口調だった。
感情が籠められていない、無機質なマビルの声。
マビルとて、数日前確かに感じたのだ、”姉の波動”を。
だが、とても人間のものとは思えなかった、そんな馬鹿げた事実あってはならないと思った。
毛嫌いする人間が姉で、おまけに勇者で、自分に勝る美貌を所持している・・・?
ダン!
マビルの拳が、テーブルを叩きつけた。
赤ワインがグラスから零れ、純白のマットに赤い染みを作る。
「・・・っ!」
憎々しげに、マビルはその零れ落ちた赤ワインを睨み付けた。
室内に沈黙が広がる、三人はそれぞれの思いを胸に黙り込んだままだ。
とりわけ、マビルの表情は厳しい。
別に焦がれていたわけではないが、多少、心躍るものがあったのも、確か。
姉。
時期魔王であり、自分を勝る力を秘めた双子の姉。
苛立たしい存在ではあったのだ、納得がいかないのも確かだ。
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