別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
×
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・・・。
この間、結構書いたんですが、なんか消えてしまった(保存する前にエラーで消えたらしい)ので、書く気が失せています。
よって、中途半端に区切った結果ー、です。
マビルはこの話で終了・・・したい・・・。
79~⇒ミノル&トモハル
っていうか、明日はw-inds.のファンイベです。
いやっほーい。
余計なことかいてたら、こっちが出来なかったです・・・。
うーむ。
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よって、中途半端に区切った結果ー、です。
マビルはこの話で終了・・・したい・・・。
79~⇒ミノル&トモハル
っていうか、明日はw-inds.のファンイベです。
いやっほーい。
余計なことかいてたら、こっちが出来なかったです・・・。
うーむ。
マビルは息を大きく吸い込んだ、力任せにテーブルを殴りつける。
双子の姉。
魔族だと、信じて疑わなかった、どうして”人間の双子の姉”などが存在するのか。
マビルは正真正銘、魔族だ。
魔族と、人間でありながら双子・・・そのようなこと、有り得るのか?
同じ魔族であり、マビルが双子の姉の魔力を認めたらば、自分にとって頼れる存在であり、破壊願望があるであろう時期魔王である姉と世界を破滅に導きたい・・・などと、まれに胸を躍らせていた時期もあった。
そう、恋する乙女の様に胸を高鳴らせて。
今まで思い描いていた姉の姿は、急遽な妄想であったのだろうか・・・。
「本当に、あたしのおねーちゃんなの?」
ぼそ、っと呟く。
胸がざわめく、落ち着かない。
マビルがふと、窓の外に視線を投げかければ純白の鳥が一羽、待っていた。
晴天に、純白の鳥、その美しいコントラストが余計マビルを破壊衝動に駆り立てる。
自分の何処にぶつければよいのか解らない、むしゃくしゃした気持ちを、マビルの心を投げつけるように鳥を睨み付けた。
アイセルの止めに入った声など、聴こえない。
鳥は痙攣しながら、一気に落下し、地面に激突する直前で弾け跳ぶ。
「マビル!」
愉快そうに微笑み、心軽くなったように優雅に紅茶を啜っているマビルを憤慨した様子のアイセルが叱咤するが。
「いつも言ってるだろう、むやみやたらに感情を他者に押付けるな。命を奪うか、そうでなくとも怪我を負うんだぞ!」
「馬鹿みたい、何に拘るの? 人間が抱いている魔族の偶像ってこういうことでしょう? 別にいーじゃない、鳥も魔族も人間も、そう簡単に絶滅しないわよ」
不愉快だわ、立ち上がると凄まじい形相でパンを握り締めて家から出て行くマビル。
何時もの事だった、アイセルが叱咤すれば、するほどにマビルが反抗する。
しかし、アサギが魔界へ来た以上マビルを野放しにしておくわけにはいかなかった。
最悪な事態が起こりうると、マビルがアサギを殺害しかねないのだ。
一度嫌悪感を抱けば、その嫌悪感を解きほぐすのに膨大な時間と根気が必要だ。
妹に、一般常識など通用しない。
気に入らなければ、消し去るまで。
何故ならば自分にとっては不要だから、それだけ。
頭を抱え込み、アイセルはテーブルに突っ伏す。
「あいつが・・・”影”のほうでよかったよ。あれで”光”だったら、世界はもう、混沌の渦に飲み込まれてる」
起き上がって苦笑するアイセルだが、トーマは肩を竦めて作り笑いを浮かべるより他ない。
無理して笑顔を作っているアイセルのことなど、お見通しだった。
しかし、そ知らぬ振りをしてモクモクと料理を食べ続けるトーマ、軽い溜息一つ、アイセルは再び肘をついて考え込んだ。
「とんでもないことになったよ、父さん、母さん・・・。オレには予言など・・・」
暫しの沈黙。
トーマが控え目に、ナイフとフォークを皿に置いて声をかけた。
先程から気になっていたのだ、言うタイミングを窺っていた。
訊きたくて仕方がないのだ、まだ、子供である。
「ねぇ、僕も会っちゃ駄目・・・なの? やっぱり」
思案していたアイセルだが、低く唸り続けながら出した答えは「すまん」の言葉。
解っていた返答だった、期待などしていなかった、だがやはり気落ちしざるを得ない。
寂しそうに俯き、小声で姉さん、を繰り返すトーマ。
「僕、人間だもんねぇ。ここにいるってことだけでもう、変な存在だしね・・・厄介だよね」
「そんなことはない、トーマ。しかし、待つんだ。時期が、まだなんだ」
「いいよ、アイセル。気を遣わなくて」
空元気で、喉の奥にミルクを流し込んだトーマ。
自分の我儘を押し通すトーマではない、耐えて我慢しているのだ。
トーマとて、逆境の中にいるというのに非常に忍耐強くそして物分りが良い。
「マビルも、トーマほど素直だったらよかったんだが」
「そんなんだったら、マビルじゃないよもう」
そう言い合うと二人は顔を見合わせ、ようやく腹の底から笑い始める。
アイセル、マビル、トーマ。
傍から見たら、奇怪な三人だった。
しかし、仲が良い事には間違いがない。
兄・アイセルが武術家として表の世界で名を轟かせ、魔王アレクにも覚えられているほどの強者。
しかし実態は予言家の長男であり、力を引継ぎし者、全ての予言の記録を所持し、先の未来を知っている者。
妹・マビルはアレクの次に魔界を統治する女王に姿が瓜二つ、魂を共鳴させ最も女王に近い者。
影の女王は時として光である魔族の女王を身を挺して護らねばならない、そんな過酷な運命を背負わされていた。
そして弟・トーマ。
最も謎の少年だ。
トーマが生誕したのは今から約10年前のことだった。
忘れもしない、あれは1月5日のことだった。
春は光とともに訪れ、大地を温めてくれる。
土に光を、大気に光を、全ての生きるものに、光を。
暗い部屋に閉じ篭っていたとしても、一筋の光が窓から差し込めば思わず心が浮き足立って外に飛び出してしまう。
光が生み出す色彩は様々だが、夜明けと夕暮れの薄明かりのなんともいえない微妙な哀愁漂う色合いが、アイセルはとても好きだった。
春など、まだ遠いが12月よりも1月のほうがアイセルは心なしか暖かい気がしていた。
やはり、春に近づく足音聞こえる月だからだろうか。
アイセルの家の周りには、スノードロップ、という可憐な小さい花が地表に姿を見せる。
暖かな日差しの中で、小鳥の囀りと小川のせせらぎを聞きながら地面に寝転がり大きく伸びをするのが一番の贅沢だと思っているアイセルは無論、春が大好きだった。
光を身体全体で受け止め、四季様々形を、色を変化させる移ろいを瞳に焼付け、歩調を合わせて生きて行きたい。
その日、雪は降っておらず身体にぴし、っと来る寒さで毛布に包まっていたアイセル。
家には両親とアイセル、そしてマビル。
窓の外を見ながら身震いする、こんな日にはやはり春に焦がれてしまう。
マビルなど、暖炉の前から全く動かずに丸くなって毛布に包まったままだった。
時折吹く風が、窓をカタカタと鳴らしながら去っていった。
どうやらマビルは眠っていたらしい、寝息が聞こえてきた。
だが、キッチンから美味しそうな香りが漂ってくると、重たい瞼をこじ開けてゆっくりと起き上がり小さな欠伸。
「寝起きは、可愛い顔してるんだよな。・・・あ、寝顔もか」
思わず魅入っていたアイセルは、小さく零す。
ふと、その視線に気付いたのか婀娜っぽい微笑を浮かべ「あら、妹に欲情中なのお兄ちゃん?」っとマビルが鼻で笑った。
「口を開くとこうなんだよな・・・」
「あん? 何か言った?」
料理がテーブルに並べられた、四人でいつもの様に着席、父が奮発して上等なワインを出したのは特に今日が冷え込むからか。
気分だけでも明るく行こう、ということなのだろう。
なみなみとグラスに注ぎながら、マビルがそれをじっと見つめている。
獲物を仕留める猫の様に瞳をクルクル動かせながら、喉をごくり、と鳴らした。
おそらく血液を想像したのだろう、赤ワインの色合いが似ていなくもなかった。
「オレ、ビールがいいなぁ、母さん、ない?」
「上等なワインだぞ! 我慢しろ」
とても微笑ましい光景である、羨むべき光景だった。
人間達は魔族を誤解していた、家族さえも平気で殺せる冷徹な種族だと思われているが違う。
人間とて親兄弟を殺害する人もいるだろう、同じだった。
確かに稀に、魔族にもそういったものがいるがほんの、一握り。
恐怖の対象である魔族、は人間達の心が生み出した虚像。
そういった恐怖心を子供へ、孫へ・・・と伝えていくものだからいつまで経っても誤解が解けない。
乾杯したくてうずうずと身体を揺すっているアイセル、微笑みながら金髪の母が優しくアイセルの髪を撫でる。
明日にしましょうね、と子供をあやすように背中も撫でる。
くすぐったいが、じんわり暖かく、心が安心した。
何しろ、アイセルは物心ついたとき、母がいなかった。
それは、マビルが生まれる直前まで「母は流行病で死んだ」と父親から聞かされていた為である。
母は予言家の者として、籠もりっきりで今後の魔族の行く末を占っていたのだ、ゆえに死んだ事になっていた。
実際、アイセルが眠っている時に、時折母が愛おしそうに髪を撫でに来ていたらしいがアイセルは気付かなかった。
父は頻繁に母に会う為離れた屋敷へ足を通わせていたようだが、それすらもアイセルは知らないこと。
それが、マビルが生まれるというこでいきなり母を紹介されたのだ。
面食らった、死んだと思って居た母は生きていた。
戸惑いを感じていたが、数ヶ月も経てば恥ずかしそうに「お母さん」と呼べるようになっていた。
父は、才色兼備な母と違いどこかスローテンポで正直頼りがいがない。
二人のなり染など知らないが、いつか聞いてみたいものだと思って居た。
今日の食事はチーズ入りのパイ、子羊のローストはブルーベリーソース添え、じゃが芋のから揚げ、サラダ、そして赤ワイン。
母の作るパイは非常に絶品でアイセルとマビルの、大好物でも有る。
話をしながら、家族団欒。
食事を終えて、暖炉の前でパチパチと燃える薪の音を聞きながら至福の時を過ごす。
アイセルは、読書中だった。
マビルは、空腹を満たし再び眠りにつく為に父の膝に頭置いて丸くなっている。
当然の事ながら、父が優しくマビルの髪を撫でていた。
母は、食器を洗っていたのだが・・・。
突如、キッチンから鈍い音が聞こえてきた。
三人、我に返り直様起き上がると皆でキッチンへ直行。
「母さん!?」
真っ先にキッチンへ飛び込んだのはアイセルだった、うつ伏せで倒れている母を発見し顔面蒼白で駆けつける。
抱き起こし、仰向けにさせた三人は思わず息を飲んだ。
言葉を失うほかない、何を言えば良いのか、分からない。
「どういうことだ・・・これは・・・」
呻くように、ようやく搾り出した父の一声。
ふらつく足取りで、母をベッドへと寝かせる。
荒い呼吸を繰り返す母を不安げに見下ろしながら、三人は困惑し憔悴しきって項垂れる。
母の身体に、異常な、いや、有りえない症状が。
先程までの母の見事なプロポーションは、何処へ。
腹部がまるで子を孕んでいるかのように、膨らんでいるのである。
まさか、とは思ったがマビルは腹にそっと耳を当てる。
かっと、瞳が見開かれ、慌てて離れるとマビルは震える声を出した。
「赤ちゃん・・・いるよ・・・」
「まさか!」
乾いた声を出す父も、アイセルもふらつきながら、同じ様に腹に耳を、そして手を当てる。
・・・何かが、動いている。
呆然とする三人、間違いなくそこには、命が宿っている。
人間と出産の期間はほぼ同じだ、こんなこと、ありえない。
ようやく、母が目を醒ます。
荒い呼吸、苦痛に顔を歪めながら声絶え絶えに。
「最期の・・・予言を・・・。この・・・子、トーマ。弟、なま、え・・・”トーマ”。人間の、赤・・・ちゃん・・・。おねが、育てて・・・何処からかわた、しに、誰かが、授け・・・て・・・。どう、か、おねがい・・・この子を大事に・・・育てて・・・ね・・・。この子は・・・おそら・・・」
母の絶叫。
同時に、元気な赤ん坊のうぶ声が聴こえた、出産だ。
「母さん!? しっかり、母さん!」
母は、事切れた。
半乱狂になったマビルは、産まれ出たばかりのこの赤ん坊を殺すべく手を振り上げたが必死に父に押し留められ。
嗚咽を漏らしながらその場に崩れ落ちた、アイセルは機転を効かせ湯を沸かし赤ん坊を産湯に。
見たことも、やったこともない、助産婦の知り合いなどいない。
だが、助産婦は呼べない、この赤ん坊は・・・人間だ。
「母さんの最期の予言・・・いや、願いだ、”この子を大事に育てて”。従おう、今日から一人仲間入りだ」
1月5日、トーマ魔界イヴァンにて生誕。
母を溺愛していたマビルは、それからもトーマを何度か殺そうとした、だがその度に母の遺言だと父の言葉が甦り感情を押し殺す。
母の仇を、護らねばならないなんて苦痛だった。
おまけに、マビルの嫌いな人間だ。
けれども、トーマはマビルに非常になついており、母性本能がくすぐられたのかマビルもやがて可愛がるようになる。
整った顔立ちをしていたのも、よかっただろう。
母の墓碑は、家の直ぐ裏に。
花に囲まれて毎日四人で墓参りをしている、そんな日常が始まっていた。
この四人での平和な暮らしが訪れたかと思えば、思わぬところから不幸がやってくる。
暫くして、父が他界した。
原因は不明。
出かけてくる、と言い残して一週間。
父は死体として戻ってきた、唖然とするアイセル。
出かけるその当日、虫の知らせだったのだろう胸騒ぎがしてアイセルは父を呼び止めた。
今日は出かけないほうが良い、と念を押した。
だが、優しく父は微笑むとアイセルを抱き締めて安心するように背中を撫で。
「心配するな、ただの散歩だぞ」
その時の父が妙に風格があり、堂々と誇らしくアイセルの瞳に映ったのだが気のせいであったのか。
いや、そうではないだろう。
父は、自分の身に起こることを既に知っていた、意を決して出掛けたに違いない。
父の身に、何があったというのか。
亡骸は、いつものように優しい笑みを讃えたままだった。
マビルとトーマは公にされていない、アイセルは一人きりで父の遺体と向き合う。
死体は、何も語ってくれない。
マビルとトーマが見計らってそっとアイセルの隣に立つ、3人で最期のお別れだった。
亡骸は、母の墓碑と同じに。
仲睦まじい二人だったから、今頃一緒に居るに違いない。
予言家の、アイセル。
時期魔族の女王の双子の妹、マビル。
不可思議な産まれ方をした弟、トーマ。
三人は、その日知らず手を繋いでいた。
トーマの瞳が、蝋燭に揺れていた。
双子の姉。
魔族だと、信じて疑わなかった、どうして”人間の双子の姉”などが存在するのか。
マビルは正真正銘、魔族だ。
魔族と、人間でありながら双子・・・そのようなこと、有り得るのか?
同じ魔族であり、マビルが双子の姉の魔力を認めたらば、自分にとって頼れる存在であり、破壊願望があるであろう時期魔王である姉と世界を破滅に導きたい・・・などと、まれに胸を躍らせていた時期もあった。
そう、恋する乙女の様に胸を高鳴らせて。
今まで思い描いていた姉の姿は、急遽な妄想であったのだろうか・・・。
「本当に、あたしのおねーちゃんなの?」
ぼそ、っと呟く。
胸がざわめく、落ち着かない。
マビルがふと、窓の外に視線を投げかければ純白の鳥が一羽、待っていた。
晴天に、純白の鳥、その美しいコントラストが余計マビルを破壊衝動に駆り立てる。
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アイセルの止めに入った声など、聴こえない。
鳥は痙攣しながら、一気に落下し、地面に激突する直前で弾け跳ぶ。
「マビル!」
愉快そうに微笑み、心軽くなったように優雅に紅茶を啜っているマビルを憤慨した様子のアイセルが叱咤するが。
「いつも言ってるだろう、むやみやたらに感情を他者に押付けるな。命を奪うか、そうでなくとも怪我を負うんだぞ!」
「馬鹿みたい、何に拘るの? 人間が抱いている魔族の偶像ってこういうことでしょう? 別にいーじゃない、鳥も魔族も人間も、そう簡単に絶滅しないわよ」
不愉快だわ、立ち上がると凄まじい形相でパンを握り締めて家から出て行くマビル。
何時もの事だった、アイセルが叱咤すれば、するほどにマビルが反抗する。
しかし、アサギが魔界へ来た以上マビルを野放しにしておくわけにはいかなかった。
最悪な事態が起こりうると、マビルがアサギを殺害しかねないのだ。
一度嫌悪感を抱けば、その嫌悪感を解きほぐすのに膨大な時間と根気が必要だ。
妹に、一般常識など通用しない。
気に入らなければ、消し去るまで。
何故ならば自分にとっては不要だから、それだけ。
頭を抱え込み、アイセルはテーブルに突っ伏す。
「あいつが・・・”影”のほうでよかったよ。あれで”光”だったら、世界はもう、混沌の渦に飲み込まれてる」
起き上がって苦笑するアイセルだが、トーマは肩を竦めて作り笑いを浮かべるより他ない。
無理して笑顔を作っているアイセルのことなど、お見通しだった。
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「とんでもないことになったよ、父さん、母さん・・・。オレには予言など・・・」
暫しの沈黙。
トーマが控え目に、ナイフとフォークを皿に置いて声をかけた。
先程から気になっていたのだ、言うタイミングを窺っていた。
訊きたくて仕方がないのだ、まだ、子供である。
「ねぇ、僕も会っちゃ駄目・・・なの? やっぱり」
思案していたアイセルだが、低く唸り続けながら出した答えは「すまん」の言葉。
解っていた返答だった、期待などしていなかった、だがやはり気落ちしざるを得ない。
寂しそうに俯き、小声で姉さん、を繰り返すトーマ。
「僕、人間だもんねぇ。ここにいるってことだけでもう、変な存在だしね・・・厄介だよね」
「そんなことはない、トーマ。しかし、待つんだ。時期が、まだなんだ」
「いいよ、アイセル。気を遣わなくて」
空元気で、喉の奥にミルクを流し込んだトーマ。
自分の我儘を押し通すトーマではない、耐えて我慢しているのだ。
トーマとて、逆境の中にいるというのに非常に忍耐強くそして物分りが良い。
「マビルも、トーマほど素直だったらよかったんだが」
「そんなんだったら、マビルじゃないよもう」
そう言い合うと二人は顔を見合わせ、ようやく腹の底から笑い始める。
アイセル、マビル、トーマ。
傍から見たら、奇怪な三人だった。
しかし、仲が良い事には間違いがない。
兄・アイセルが武術家として表の世界で名を轟かせ、魔王アレクにも覚えられているほどの強者。
しかし実態は予言家の長男であり、力を引継ぎし者、全ての予言の記録を所持し、先の未来を知っている者。
妹・マビルはアレクの次に魔界を統治する女王に姿が瓜二つ、魂を共鳴させ最も女王に近い者。
影の女王は時として光である魔族の女王を身を挺して護らねばならない、そんな過酷な運命を背負わされていた。
そして弟・トーマ。
最も謎の少年だ。
トーマが生誕したのは今から約10年前のことだった。
忘れもしない、あれは1月5日のことだった。
春は光とともに訪れ、大地を温めてくれる。
土に光を、大気に光を、全ての生きるものに、光を。
暗い部屋に閉じ篭っていたとしても、一筋の光が窓から差し込めば思わず心が浮き足立って外に飛び出してしまう。
光が生み出す色彩は様々だが、夜明けと夕暮れの薄明かりのなんともいえない微妙な哀愁漂う色合いが、アイセルはとても好きだった。
春など、まだ遠いが12月よりも1月のほうがアイセルは心なしか暖かい気がしていた。
やはり、春に近づく足音聞こえる月だからだろうか。
アイセルの家の周りには、スノードロップ、という可憐な小さい花が地表に姿を見せる。
暖かな日差しの中で、小鳥の囀りと小川のせせらぎを聞きながら地面に寝転がり大きく伸びをするのが一番の贅沢だと思っているアイセルは無論、春が大好きだった。
光を身体全体で受け止め、四季様々形を、色を変化させる移ろいを瞳に焼付け、歩調を合わせて生きて行きたい。
その日、雪は降っておらず身体にぴし、っと来る寒さで毛布に包まっていたアイセル。
家には両親とアイセル、そしてマビル。
窓の外を見ながら身震いする、こんな日にはやはり春に焦がれてしまう。
マビルなど、暖炉の前から全く動かずに丸くなって毛布に包まったままだった。
時折吹く風が、窓をカタカタと鳴らしながら去っていった。
どうやらマビルは眠っていたらしい、寝息が聞こえてきた。
だが、キッチンから美味しそうな香りが漂ってくると、重たい瞼をこじ開けてゆっくりと起き上がり小さな欠伸。
「寝起きは、可愛い顔してるんだよな。・・・あ、寝顔もか」
思わず魅入っていたアイセルは、小さく零す。
ふと、その視線に気付いたのか婀娜っぽい微笑を浮かべ「あら、妹に欲情中なのお兄ちゃん?」っとマビルが鼻で笑った。
「口を開くとこうなんだよな・・・」
「あん? 何か言った?」
料理がテーブルに並べられた、四人でいつもの様に着席、父が奮発して上等なワインを出したのは特に今日が冷え込むからか。
気分だけでも明るく行こう、ということなのだろう。
なみなみとグラスに注ぎながら、マビルがそれをじっと見つめている。
獲物を仕留める猫の様に瞳をクルクル動かせながら、喉をごくり、と鳴らした。
おそらく血液を想像したのだろう、赤ワインの色合いが似ていなくもなかった。
「オレ、ビールがいいなぁ、母さん、ない?」
「上等なワインだぞ! 我慢しろ」
とても微笑ましい光景である、羨むべき光景だった。
人間達は魔族を誤解していた、家族さえも平気で殺せる冷徹な種族だと思われているが違う。
人間とて親兄弟を殺害する人もいるだろう、同じだった。
確かに稀に、魔族にもそういったものがいるがほんの、一握り。
恐怖の対象である魔族、は人間達の心が生み出した虚像。
そういった恐怖心を子供へ、孫へ・・・と伝えていくものだからいつまで経っても誤解が解けない。
乾杯したくてうずうずと身体を揺すっているアイセル、微笑みながら金髪の母が優しくアイセルの髪を撫でる。
明日にしましょうね、と子供をあやすように背中も撫でる。
くすぐったいが、じんわり暖かく、心が安心した。
何しろ、アイセルは物心ついたとき、母がいなかった。
それは、マビルが生まれる直前まで「母は流行病で死んだ」と父親から聞かされていた為である。
母は予言家の者として、籠もりっきりで今後の魔族の行く末を占っていたのだ、ゆえに死んだ事になっていた。
実際、アイセルが眠っている時に、時折母が愛おしそうに髪を撫でに来ていたらしいがアイセルは気付かなかった。
父は頻繁に母に会う為離れた屋敷へ足を通わせていたようだが、それすらもアイセルは知らないこと。
それが、マビルが生まれるというこでいきなり母を紹介されたのだ。
面食らった、死んだと思って居た母は生きていた。
戸惑いを感じていたが、数ヶ月も経てば恥ずかしそうに「お母さん」と呼べるようになっていた。
父は、才色兼備な母と違いどこかスローテンポで正直頼りがいがない。
二人のなり染など知らないが、いつか聞いてみたいものだと思って居た。
今日の食事はチーズ入りのパイ、子羊のローストはブルーベリーソース添え、じゃが芋のから揚げ、サラダ、そして赤ワイン。
母の作るパイは非常に絶品でアイセルとマビルの、大好物でも有る。
話をしながら、家族団欒。
食事を終えて、暖炉の前でパチパチと燃える薪の音を聞きながら至福の時を過ごす。
アイセルは、読書中だった。
マビルは、空腹を満たし再び眠りにつく為に父の膝に頭置いて丸くなっている。
当然の事ながら、父が優しくマビルの髪を撫でていた。
母は、食器を洗っていたのだが・・・。
突如、キッチンから鈍い音が聞こえてきた。
三人、我に返り直様起き上がると皆でキッチンへ直行。
「母さん!?」
真っ先にキッチンへ飛び込んだのはアイセルだった、うつ伏せで倒れている母を発見し顔面蒼白で駆けつける。
抱き起こし、仰向けにさせた三人は思わず息を飲んだ。
言葉を失うほかない、何を言えば良いのか、分からない。
「どういうことだ・・・これは・・・」
呻くように、ようやく搾り出した父の一声。
ふらつく足取りで、母をベッドへと寝かせる。
荒い呼吸を繰り返す母を不安げに見下ろしながら、三人は困惑し憔悴しきって項垂れる。
母の身体に、異常な、いや、有りえない症状が。
先程までの母の見事なプロポーションは、何処へ。
腹部がまるで子を孕んでいるかのように、膨らんでいるのである。
まさか、とは思ったがマビルは腹にそっと耳を当てる。
かっと、瞳が見開かれ、慌てて離れるとマビルは震える声を出した。
「赤ちゃん・・・いるよ・・・」
「まさか!」
乾いた声を出す父も、アイセルもふらつきながら、同じ様に腹に耳を、そして手を当てる。
・・・何かが、動いている。
呆然とする三人、間違いなくそこには、命が宿っている。
人間と出産の期間はほぼ同じだ、こんなこと、ありえない。
ようやく、母が目を醒ます。
荒い呼吸、苦痛に顔を歪めながら声絶え絶えに。
「最期の・・・予言を・・・。この・・・子、トーマ。弟、なま、え・・・”トーマ”。人間の、赤・・・ちゃん・・・。おねが、育てて・・・何処からかわた、しに、誰かが、授け・・・て・・・。どう、か、おねがい・・・この子を大事に・・・育てて・・・ね・・・。この子は・・・おそら・・・」
母の絶叫。
同時に、元気な赤ん坊のうぶ声が聴こえた、出産だ。
「母さん!? しっかり、母さん!」
母は、事切れた。
半乱狂になったマビルは、産まれ出たばかりのこの赤ん坊を殺すべく手を振り上げたが必死に父に押し留められ。
嗚咽を漏らしながらその場に崩れ落ちた、アイセルは機転を効かせ湯を沸かし赤ん坊を産湯に。
見たことも、やったこともない、助産婦の知り合いなどいない。
だが、助産婦は呼べない、この赤ん坊は・・・人間だ。
「母さんの最期の予言・・・いや、願いだ、”この子を大事に育てて”。従おう、今日から一人仲間入りだ」
1月5日、トーマ魔界イヴァンにて生誕。
母を溺愛していたマビルは、それからもトーマを何度か殺そうとした、だがその度に母の遺言だと父の言葉が甦り感情を押し殺す。
母の仇を、護らねばならないなんて苦痛だった。
おまけに、マビルの嫌いな人間だ。
けれども、トーマはマビルに非常になついており、母性本能がくすぐられたのかマビルもやがて可愛がるようになる。
整った顔立ちをしていたのも、よかっただろう。
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花に囲まれて毎日四人で墓参りをしている、そんな日常が始まっていた。
この四人での平和な暮らしが訪れたかと思えば、思わぬところから不幸がやってくる。
暫くして、父が他界した。
原因は不明。
出かけてくる、と言い残して一週間。
父は死体として戻ってきた、唖然とするアイセル。
出かけるその当日、虫の知らせだったのだろう胸騒ぎがしてアイセルは父を呼び止めた。
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「心配するな、ただの散歩だぞ」
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マビルとトーマは公にされていない、アイセルは一人きりで父の遺体と向き合う。
死体は、何も語ってくれない。
マビルとトーマが見計らってそっとアイセルの隣に立つ、3人で最期のお別れだった。
亡骸は、母の墓碑と同じに。
仲睦まじい二人だったから、今頃一緒に居るに違いない。
予言家の、アイセル。
時期魔族の女王の双子の妹、マビル。
不可思議な産まれ方をした弟、トーマ。
三人は、その日知らず手を繋いでいた。
トーマの瞳が、蝋燭に揺れていた。
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