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←完成。
所要時間、約80分。
何故私は、こんなめんどくさそうな衣装を模写することを選択してしまったのかっ。
つーかーれーたー・・・。
次は新條先生だっ。
過去を変えた場合。
本編に影響はあるのか、ないのか。
あったら困るので(断言)、続行。
はないちもんめ、について。
振り返って、歌詞を書いたら、なんか変ですね、これ。
童謡は怖い歌が多々あるのですが、これは確か人身売買の歌だった筈・・・。
地方によって歌詞が違いますが、私の子供の頃はこんな感じでした。
○鬼 ×魔物
でしたが。(ちょっと、変更してみた)
ですが、何故おばさん???
子供を買いに来た家が、隣のベテラン(以前子供を売った)のおばさんに助けを求めたのかしら???
でも、人買いが怖くて、行きたくない、ってこと???
うーむ。
描きかけイラスト。
悠宇先生のアラタカンガタリ、4巻の帯(いつかの中表紙)よりー。
カラーにするので。
ここまでで、32分。
ミノルが描きかけです。
少年漫画に移動すると、目がキラキラしていないので、描き分けが凄いなぁ・・・。
みんなの露出が思ったより高くて、描いてみてびっくりしたとか(笑)。
一応真似しているんですが、やっぱり・・・似ない・・・。
雪が降りしきる凍える空気の中、城の一角で産声が上がる。
産まれ出てきた赤子は二人、緑の髪と、黒の髪。
古来より双子は忌み嫌われてきた、ゆえに皆で悲痛な溜息を漏らしても当然だった。
城の城主は高齢だった、出産は無理だと思われていたがこうして無事、元気な双子を産み落とした。
双子を産湯に浸からせて、不安そうに大量の汗をかきながら青白い顔で女王は唇を開いた。
「どうか・・・大事な私の子供を。どうか・・・このまま・・・」
女王は、長い事時間を共にした参謀のクーリヤの手を握り締め、満足そうに微笑んだまま息を引き取った。
女王の言葉は絶対であった、古来より、双子が産まれ出でた場合は占い師により選ばれたほうを正統とし、片方はその場で殺してきた。
殺すことは、出来なかった。
代々、黒髪の女王が君臨していたラファーガ国であった為、妹姫が正統な跡継ぎとされ。
緑の髪であった姉姫は、ひっそりと裏口から籠の中に入れられまるで野菜や果物を運ぶように静かに城下町へと移された。
城下町に、隠居していた騎士団長夫婦が住まう小さな小屋があった為、そこで孫として育てられる事になったのだ。
姉姫の存在は国には出回らず、女王の葬儀と共に新たな小さき女王の誕生を国中で祝う。
姉姫の存在を知るものは、極僅か。
マロー、と名付けられた次期女王は厳しく躾けられ真っ直ぐに成長する。
愛くるしい容姿と、様々に変化する表情は城中の誰からも愛されていた。
一方、元騎士団長に預けられた姉はアイラ、と名付けられた。
平凡で慎ましい生活だが、老夫婦の下で平穏に暮らしている。
やがて、一人で出歩けるようになりアイラは街の中心部へと足を伸ばした。
老夫婦の足腰を考慮し、それまでアイラは遠出をしたことがなく、華やかな中心部の様子にうっとりと瞳を輝かせる。
「見かけない子だな・・・」
ぼう、と突っ立っていたアイラを発見した一人の少年、隣の幼馴染をつつく。
先程、何処かの庭先でこっそりとくすねて来た林檎を齧っていた黒髪の少年は、怪訝に幼馴染を見返した。
物言いたげな黒髪の少年を制し、明るい茶色の髪の少年は非常に興奮した様子で真っ直ぐに左腕を差し出す。
思わず追った視線のその先、少女が一人、立っていた。
「見かけない子だろ? おまけにすっごく可愛い」
トモハラが、早口になりながら話しかけたが、黒髪の少年・ミノリは返答しなかった。
風に緑の髪を靡かせ、始終笑みを絶やさずにくるくる動く瞳、ほんのりと赤みを帯びた頬、華奢な手足、目の前のアイラに見惚れていたからだ。
「な、話しかけてみよう」
無理やり嫌がるミノリを引き摺って、トモハラは一目散に駆け出した。
何故か硬直したミノリの身体、必死にその場に留まろうとするのだがトモハラの異様な力に負けて引き摺られていく。
「やあ! こんにちは」
迷うことなくアイラに話しかけたトモハラ、不思議そうに振り返ったアイラは気さくな笑顔を浮かべているトモハラと、その後ろでまごまごとしているミノリを交互に見比べる。
「初めまして、こんにちは」
「何しているの? 引越しして来たの? どこか案内しようか? 俺はトモハラ、こっちがミノリ。君は?」
捲くし立てるように話し出したトモハラ、一瞬アイラは一歩後退したが、無邪気に微笑むトモハラに負けて軽く唇を舌で湿らせると声を出す。
その、声が。
ミノリを余計に硬直させた、今まで聴いたことがなかった声だったからだ。
色艶やかな花が、歌うような。
精密に作られた高価な銀の鈴が、鳴るような。
「えと、ずっとここに住んでいましたが、郊外に居て。今日初めて、中心部へ来てみました。案内は、次回お願いしたいです。私は、アイラ」
「アイラね、よろしく! ほら、ミノリも挨拶しろよ」
トモハラに腕をひっぱられ、ミノリはふらり、とよろめきながら前へ出た。
小首傾げて自分を見ていたアイラを視線が交差し、ミノリは渾身の力を振り絞るとトモハラの腕を振り切る。
「女となんか遊んでられるか! ばっかみてぇ!」
顔を真っ赤にして、直様身体を180度回転、走り出す。
胸が苦しい、上手く言葉が出てこない、ミノリにはその場から逃げることしか出来なかった。
「・・・しょうがない奴だな・・・。アイラ、またおいでよ、今度遊ぼう」
「でも、私とは遊んでいられないと・・・」
「人見知りが激しいんだ、見かけによらずミノリは。大丈夫、次ぎ会えば初対面じゃなくなるから平気だよ」
そういうものではないと思うが、トモハラの笑みに釣られて思わずアイラも、笑って頷いていた。
数日後。
畑の収穫や手入れが終わったので、アイラは一人街の中央へ。
トモハラとミノリが何処にいるのか解らないが、とりあえず、以前出合った場所へ向かう。
「げ、本当に来やがった・・・」
アイラを見るなりそう叫んだミノリ、思わずアイラは立ち止まる。
非常に嫌そうに見えたミノリの表情、まごまごと足を動かしその場で立ち尽くしたまま、アイラは近寄る事もなく。
「誰、あの子?」
トモハラの姿はなく、ミノリの周囲には同年代の少年が数人群がっている。
「トモハラのお気に入りの女」
ぶっきらぼうに答えたミノリは、面白くなさそうに踵を返し街中へと消えようとした。
のだが。
「可愛い子」
仲間の一人が、ぼそり、と呟いた声を聞き逃さなかったミノリは焦燥感に駆られ思わず振り返る。
見れば、うっとりと皆アイラを見ていた。
心底それが不快に感じたミノリ、大股でアイラに近づいていくと凄みながらアイラの背の方角を指す。
「お前、今日は帰れ。トモハラもいないし、今から男だけで鬼ごっこすんだよ。女は遅いから足手纏いで面白くないし、何でもいいから帰れ」
「鬼ごっこ?」
「・・・お前、知らねーの?」
「うん」
怯えた様な瞳を伏せていたアイラだが、”鬼ごっこ”という単語に興味を持ったのか顔を上げた。
ミノリも、まさか同い年で鬼ごっこを知らない人間がいるとは思わなかったので思わず素直に、聞き返す。
アイラは今まで老夫婦と三人きりだった、家の中でかくれんぼをしたことならあったが、流石に肉体的に弱い老夫婦では、鬼ごっこは無理である。
ゆえに、知らなかった。
一歩前に進み出て、ミノリに近づいたアイラは懇願するように願い出る。
「見てても、いーい?」
「だ、駄目だっ! 気が散るから、駄目、絶対駄目!」
「面白いの?」
「面白いけど、女は飯事するのがジョーシキだから、鬼ごっこは、駄目!」
「飯事、って何?」
「・・・おまえ、飯事もしらねーの?」
「うん」
段々と気の毒になってきたミノリ、周囲には仲間達も集まってきてミノリとアイラの会話を聴いていた。
「いいじゃん、見てるくらい。一緒にやってもいいし」
「ばっか! こんなんが鬼になったらつまらないだろーがっ」
断固拒否するミノリ、だが、仲間達はアイラの味方だ。
根負けして、結局アイラも含めて鬼ごっこをすることになった。
仲間達は、飯事でもいいと騒ぎ立てたのだが、それこそミノリが断固拒否したのである。
飯事などしようものならば、安易に予想がついた、少女は一人なのだから、”お母さん役”がアイラ。
となると、その夫である”お父さん”役で口論する可能性が出てくる。
じゃんけんをし、鬼を決めると十数える間に他の子供たちは歓声を上げて逃げ出した。
「こっち来い!」
あたふたと立ち尽くしていたアイラ、ミノリは思わず手を差し出し手を握ると二人で走り出す。
思いの外、アイラは足が速かった。
日頃から庭の手伝いをしていたし、老夫婦に代わって力仕事を頑張っていたので体力には自信があったのだ。
結局、ミノリの素早い逃げと、アイラの互角の足では鬼は捕まえる事が出来ず。
夕刻になった頃広場に集合した子供達は、息を切らせながら公園内の井戸から水を飲んでいた。
「花いちもんめ、しよー」
誰かがそういうので、帰る前にそうすることに。
無論アイラは”花いちもんめ”など、知らなかったので簡単に教えて貰った。
歌は、後から覚えれば良い。
そこへ、聴きなれた声が。
「あれ? アイラ、来てたんだ」
トモハラだ、今日は家族で出かけていたのだが先程戻ったらしい。
トモハラとミノリが左右に、中央でアイラは二人と手を繋ぐ。
ミノリにも、勿論トモハラにも解ったのだが、確実に敵はアイラを指名してくるだろう。
相手方には渡すまい、と懸命に手を握り睨みを利かせる二人。
「かーって嬉しい、はないちもんめ!」
「まけーって嬉しい、はないちもんめ!」
「隣のおばさん、ちょっと来ておくれ!」
「魔物が怖くていけませんー」
「お鍋かぶって来ておくれー」
「穴があいてていけませんー」
「座布団かぶってきておくれー」
「破れているからいけませんー」
「あの子が欲しい!」
「あの子じゃ解らん!」
「その子が欲しい!」
「その子じゃ解らん!」
「相談しましょ!」
「そうしましょ!」
アイラは、必死に歌を覚えていた。
が、歌はわからずとも一緒に手を繋いで動く事は、面白い。
組で相談し合い、結果。
「アイラが欲しい!」
敵の大声、ミノリとトモハラは顔を引き攣らせた。
誰がやるか、と叫びたいのを堪える。
「いいか、アイラ。じゃんけんだ、じゃんけん。さっき教えたろ、これがグーで、パーで、チョキ。解るな?」
「うん、大丈夫!」
ミノリが懸命に手を広げ、閉じてアイラに再確認だ。
名指しされた者同士が、じゃんけんをして、勝った組に引き取られるのだが。
祈るような気持ちで、皆じゃんけんを見守った。
ここまで遊びで真剣にじゃんけんの勝ち負けを祈った事が今まであっただろうか、否、ない。
見事に、アイラは買った。
歓声が後方で上がる、敵チームから指名した人物を貰いうけ、再び歌を。
案の定、敵は再びアイラを指名してきたが、アイラは再び勝った。
四回も繰り返せば、アイラも歌を覚えてくる。
「変な歌だね」
「そうか? 気にしたことねーけど」
「・・・なんだか、とても哀しい歌な気がする・・・」
「そ?」
「・・・」
完全勝利、何度じゃんけんをしてもアイラが負けることはなく。
アイラの前に、敵は誰もいなくなった。
「おまえ、すっげーじゃんけん強いのな!」
ミノリも興奮気味にアイラに笑いかけた、初めて、ミノリの笑顔を見たアイラは、安堵し、そして心が弾んで。
隣のトモハラも、静かに笑うから、思ったのだ。
このまま、3人でこれからも居られたら楽しいのだろうな、と。
そんな数週間後。
次期女王である姫君が、パレードとして姿を見せるという事で街中は賑わっていた。
アイラはトモハラ、ミノリと特等席の家の屋根から見ることにし、慣れた仲間達とその場所へと急ぐ。
皆で持ち寄った果物や菓子を食べながら、半ば興味のなさそうなミノリはアイラを見ている。
思いの外、根性もあるし、今ではすっかり一緒に遊んでも気にならなくなったのだが。
しかし、自分以外の誰かと親しくしているのを見ると、無性に苛立つ事が増え。
それが、恋なのかもしれないとミノリが思い始めた矢先。
アイラはトモハラと一番親しそうで、始終会話も弾んでいる。
相手がトモハラではどうしようもないと、ミノリは半ば諦めつつ。
トモハラはミノリが認めているほど、顔立ちだって整っているし背も高い、頭も良い。
人望も厚いし、お似合いだと思っている。
トモハラも恐らくアイラに好意を抱いているのだろうと、皆も思っていた。
周知の、仲。
・・・だと、誰もが思い込んでいた。
大歓声と、荘厳な楽器の響き。
12歳になった姫君・マローが姿を皆の前に現した。
城から豪華な荷台付きの馬車で運ばれてきたマロー、漆黒の黒髪が光の下に。
眩いばかりの宝石と、豪華な刺繍のドレスよりも、その髪と愛らしい顔立ちの美貌に騒然とする人々。
「あれ? アイラに似てる?」
一人の少年が、隣で林檎を齧っていたアイラを見た。
思わず皆、弾かれたようにアイラとマローを交互に見つめ。
思わず皆、弾かれたようにアイラとマローを交互に見つめ。
納得の声を次々に上げ始めている中で、ミノリは憮然とマローを見つめている。「似てねぇよ」
小声で、不機嫌そうに吐き捨てたミノリだが皆は気に止める事なく。
「すっげぇ似てる! いやー・・・他人の空似ってやつ?」
遠くからでも解る眩く輝く宝石を身に散りばめ、宝石箱の中に眠る最も高価な・・・姫君。
見た目だけならばマロー姫の輝きは、アイラに当然勝っている。
だが、顔の作りが似ているが故に執拗に皆アイラを見つめた。
恥ずかしそうに俯いたアイラは、視線を紛らわす為に林檎を未だに頬張っている。「だから、似てねぇって」
苛立ったミノリは、仲間の一人の肩を軽く突き飛ばした。
ミノリの瞳には、二人が似ているようには映っていない。
比較の為にアイラを見つめ続けている仲間達に、何故か無性に腹が立っての行動だ。
ミノリの態度が勘に障った仲間は、反射的にミノリの肩を押し返した。
「何だよ!」
「何だよ、その態度」
頭に血が上りつつあったミノリは当然、声を荒立て更反撃。
その場は祭りで皆の血の気が上がっていることもあり、騒音でもあるので平素ならば口論にすらならない空気でも今は違う。
あたふたとアイラが止めようとする中、皆の耳に声が聴こえた。
「可愛い・・・」
独り言だった。
が、熱を帯びて聞いたことのない色香のある声で呟いたその独り言。
皆は一斉にそちらを向く。
視線の先にはトモハラだ。
手にしていた冷やしパインを屋根に落として、惚けて一心不乱に何処かを見ている。
頬を赤く染めてどことなく、嬉しそうに口元を綻ばせて。
皆でトモハラの視線の先を追う、向かった先は勿論。
「可愛いなぁ、マロー姫」
うっとりと呟いて、トモハラが見つめていたのはマローだった。
放っておいたら、屋根からふらふらと飛び出してしまいそうな勢いのトモハラ。
「すっごく綺麗だ、初めて見たよあんな綺麗で可愛くて、お姫様みたいな子」
「おーい、トモハラ」
・・・お姫様みたいな、ではなくて正真正銘お姫様である。
「可愛いなぁ、赤くて大きなリボンをつけてツン、としてる黒猫みたいだ。目が魅力的だよね」
「おーい、トモハラー」
「マロー姫、かぁ・・・。・・・城で働けないかな」
「おーいって、おい、トモハラ!」
「近くで見てみたいなぁ」
「しっかりしろーっ!」
ミノリの一撃、右ストレート。
避ける事が出来なかったトモハラは、軽く呻いて屋根に倒れ込む。
恨めしそうにミノリを睨み付けたトモハラ、ようやく光が瞳に戻った。
赤面し、憤慨した様子でミノリは睨み返した、足で寝そべっているトモハラを踏みつける勢いだ。
「お、お前! 何可愛い可愛い連呼してんだよ! ふざけんな!」
小さく、アイラに視線を投げかけたミノリ。
好きな女の前で他の女を誉めるな、と言いたいらしかった。
しかし、怪訝そうにトモハラを立ち上がると衣服の埃を軽く払い除け再びマローを魅入る。
「可愛いなぁ・・・、俺は高価な宝石なんて知らないけど、どれだけ集めたってあのお姫様には敵いっこないだろうな・・・。見てるだけで眩暈がしてきそうだ」
「・・・お前、それビョーキじゃないのか。熱あんじゃね?」
「あのお姫様の周囲だけ、光が溢れているように見えるよ」
「・・・医者行ったほーが、いいと思う」
「甘い声だよね、なんかもう、言う事聞きたくなるような」
「・・・幻聴だ、ココからじゃ声なんて聴こえるわけねーって」
虜。
ミノリの声など耳に届いていないトモハラは、瞬きする事も惜しんでマローを見つめた。
舌打ちし、アイラを見やれば、アイラは傍らでトモハラの声に耳を傾けて頷いている。
「私もすっごく可愛い子だと思う」
「だろ? アイラは話が解るなぁ。ミノリだってそう思うだろ?」
いきなり会話を投げかけられて、ミノリは口篭った。
思わねーよ、と小さく呟く。
震える声で、呟いて。
トモハルの横に居るアイラに視線を投げかけた。
お前のほうが俺は可愛いと思うよ、と呟いた。
急に恥ずかしさが込み上げる、くしゃ、と前髪を掴んで掻き毟る。
誰にも聴こえないはずだが、言ってから赤面したミノリは照れを隠すようにトモハラの胸倉を掴み。
「お、お前な! 気が多すぎるだろっ!」
「何が?」
しれっとしたトモハラの態度に、顔を引き攣らせたミノリ。
アイラの目の前で、何故こうも他の女を誉めるのか。
アイラの気持ちを考えた事があるのか、と問い詰めようとして。
「ミノリ」
「な、何だよ」
瞳を細めて真剣な声を出したトモハラに、思わず尻込みし胸倉を掴んでいた手を離したミノリ。
「俺さ」
「な、なんだよ改まって」
「マロー姫に一目惚れしたみたい」
「・・・は?」
「初恋は実らないなんて、嘘だよな?」
「・・・はぃ??」
「どうしよう、胸がドキドキする」
「・・・はーぁ???」
「間近で・・・見上げる事出来ないかな・・・俺、明日から城で働いてくるから!」
「・・・」
トモハラは、真剣だった。
今までの何よりも真剣だった、しかし気に食わない。
初恋だの、一目惚れ、だの。
アイラはどうなる?
アイラとは公然の仲だったのではないのか? そう思って今まで我慢してきた自分はなんだったのか。
ミノルの腹に沸々と、怒りが込み上げる。
殴るか、怒鳴るか。
拳を握り締めわなわなと身体を震わせるミノリに、そっと軽くトモハラは耳打ちする。
「ミノリも素直にアイラに接すればいいのに」
「っ!!! お、俺は別にそんなんじゃ!」
「バレてるよ、解り易いから」
「くっ!」
「俺は言えるよ、俺、マロー姫様を好きになったんだ。可愛くて愛しくて仕方がないんだ」
「遠目で今さっき見たばーっかだろーがっ!!!」
「そうだよ、でも、他の誰よりも好きなんだ」
酸素不足の金魚のように。
ミノリは真っ赤になったまま、口をパクパクと開かせる。
素直に、”好きだ”と言えるトモハラが羨ましくて。
何より自分の心を見透かされていた事が、悔しいやら嬉しいやら恥ずかしいやらで。
唇を噛締めながら、爪が食い込むほど、拳を握る。
苦し紛れにミノリの唇から、零れた言葉は。
「お、男はっ。好きでも簡単に好きなんて、好きな女に言わねーんだよっ! 特別なんだっ」
「好きなものを好きだと言って何が悪いんだよ」
「何でもだよっ、俺はお前と違うんだっ」
「・・・だってさ、アイラ。でも、言って欲しいだろ?」
口元を、いや顔を隠しながら必死に言葉を紡ぐミノリだが、優勢なトモハラに勝てることはなく。
「ふぇ?」
「!!!!!!!!!!!!!!」
まさか、ここでアイラに振るとは思っていなかったミノリ。
もはや、声など出るわけもなく思考回路が停止した。
頭皮から蒸気が出るように、身体中の毛穴から汗が噴き出すように。
「ななななななななななな!!!!」
ここまで口が回るものなのか、と実感している場合ではない。
トモハラとアイラの中に割って入ると、首を横に力いっぱい振り続けるミノリ。
首を傾げて、不思議そうに見ているアイラの視線に合わせることなどできるわけがない。
肩を竦めて溜息を吐いたトモハラに、”余計なことすんな”と憎々しげに視線を投げかけた。
「邪魔。俺、マロー姫様見ていたいんだ」
「か、勝手だなお前っ」
トン
振り上げた腕が、僅かにアイラを掠る。
「きゃ」
「え、あ、わりぃ―――っ」
避けようと後退したアイラは、屋根の端からバランスを崩してそのまま落下した。
目の前からアイラが消えていく瞬間、無我夢中でミノリは手を伸ばす。
トモハラも我に返って直様屋根を蹴り上げ、腕を伸ばしたのだが。
下で悲鳴が上がった、運悪くテントも何もない。
人すらいないものの、壁に農具が吊り下げられ荷台が立てかけられている。
「アイラ!」
ミノリの悲鳴に近い絶叫。
しかし。
何か、黒いものが何処からか飛び出してきて落下するアイラを抱え込んでいた。
それは軽やかに、まるで宙を蹴るように移動し、ざわめきで人が離れた空間にそっと降り立っていた。
アイラは、無事だった。
黒いマントで覆い尽くした、大人の男に抱き抱えられている。
男だとわかったのは、身長と遠目でも判る体格の良さ。
無事な事に胸を撫で下ろしたが、ミノルは何者かわからない男に嫉妬を覚えていた。
「ご無事ですか、あまり無茶されぬよう・・・」
「助けていただいて、ありがとうございました」
「いえ、お気遣いは無用に御座います」
地面に下ろされて見上げれば、深紅の瞳がフードから見えた。
「・・・あまり接するのはよろしくないかと」
「非常事態だ、致し方あるまい」
「・・・手助けせずとも、ご無事だった筈ゆえ」
もう一人。
同じ様に黒いマントをすっぽりと被った男が、音も泣く現れていた。
どこか懐かしいような雰囲気に捕らわれたアイラは、思わず二人に手を伸ばしかけるのだが。
「待て。どうしてお前が一人でここにいる? どちらへ行かれた? 離れるなと言っただろうクレシダ」
「・・・先程、フルーツ盛り合わせの屋台を見つけられてそちらへ駆けて行かれましたゆえ。店先で何か食べられているかと」
「くっ、またか!」
マントの男は、同時にアイラに深く一礼すると風の様に飛ぶように去っていった。
「無事か、アイラ!」
屋根から下りてきたミノリとトモハラに微笑みかけると、アイラはそっと男二人を振り返る。
「へ、変なことされなかったか!? 気分悪くないか? 気持ち悪くないか? 歩けるか?」
「? うん、大丈夫だよ、へっき」
過度に心配してくるミノリに、不思議そうにアイラは笑いながら未だにマローを見つめているトモハラを見る。
「大丈夫。きっと、会えるよ」
思わず口から、そう零れた。
眩しそうにトモハラは笑うと、照れくさそうにアイラの頭を撫でる。
「有難う、アイラ。直ぐに、今直ぐに。城で働けないか訊いてみるよ」
「頑張って、トモハラ」
「じゃ!」
「え、もう行くわけ!?」
大きく手を振りながら去っていくトモハラ、隣で手を振っているアイラを見下ろしながら、ミノリは困惑気味に手を振る。
「二人でどっか遊びに行って来いよーっ」
「よ、余計なお世話だよっ!」
無邪気に笑うトモハラ、心遣いに感謝したくとも素直に出来なかったミノリは照れ隠しにそっぽを向く。
ざわめく中。
ミノリとアイラは佇んでいたがようやく数分後、ミノリが緊張した面持ちで、アイラの手を握った。
弾かれたように上を見上げたアイラ、赤面しながら無言でミノリは歩き出す。
何処へ、でもなく。
ただ、手を繋いで歩く。
そこだけ燃えるように熱く、もどかしく。
好きだと、トモハラのようには言えないからその代わりに。
強く、ミノリは手を握っていた。
数日後、トモハラが上機嫌でやってきた。
城の警備兵の見習いになれる、というのだ。
それを聞き、ミノリとアイラは大層歓んだのだが事態は急変。
トモハラの家族からその話を聞いたミノリの両親も、勝手に見習い兵になるように手続きをとっており、ミノリともトモハラともアイラが会えなくなってしまったのである。
見習い兵は城に滞在する、時折しか街に戻る事ができない。
酷く落ち込むアイラ、強がって気落ちしている素振りを見せないミノリ。
誰よりも、アイラと共に居たかったミノリだが見習い兵は給料も良く、家庭の為には仕方がない。
そんな二人を見て、一ヵ月後。
トモハラがアイラにも仕事を見つけてきた、それは城での小間使い。
給料も当然出るという、もともと老夫婦に恩返しがしたかったアイラだ、喜んで小間使いをすることにした。
ただ、老夫婦二人きりにすることが、非常に気がかりである。
微力ながらアイラが手伝い食事の用意や、掃除をしていたのだから不安に駆られても仕方がない。
けれども、大丈夫だから、と背中を押されてアイラも簡単な荷物を持ち城に住み込む事になったのだった。
出かけていくアイラの背中を見ながら、老夫婦は思った。
”本来居るべき場所”に戻るアイラを、深く礼をして見守っていた。
「戻るべき場所に、戻るが定めでございますよアイラ姫様」
こうして、運命の双子は再び城内で巡り会う。
所要時間:52分
料金:700円距離:28.2km
●木津用水
| 17:30発
| 名鉄犬山線(東岡崎行)(各停)27分
| 17:57着
○上小田井
| 18:01発
| 名古屋地下鉄鶴舞線(豊田市行)(各停)12分[乗車位置:後]
| 18:13着
○伏見(愛知)
| 18:18発
| 名古屋地下鉄東山線(藤が丘行)(各停)4分
| 18:22着
■新栄町(愛知)
ギリギリかな・・・。
地下鉄東山線・新栄町駅(名古屋駅より藤ヶ丘方面で3番目)2番出口徒歩2分
| 名鉄犬山線(東岡崎行) 25.9km 後
| 17:30-18:08[38分]
| 540円
◇名鉄名古屋/名古屋 [5分待ち]
| 名古屋地下鉄東山線(藤が丘行) 3.5km
| 18:13-18:20[7分]
| 230円
■新栄町
二番出口ー。
■木津用水
| 名鉄犬山線準急(中部国際空港行) 25.9km 後
| 17:13-17:44[31分]
| 540円
◇名鉄名古屋/名古屋 [9分待ち]
| 名古屋地下鉄桜通線(野並行) 5.4km 後方
| 17:53-18:03[10分]
| 230円
◇今池 [4分待ち]
| 名古屋地下鉄東山線(高畑行) 1.6km
| 18:07-18:11[4分]
| ↓
■新栄町
これに乗れると安心・・・。
70円なら乗り換え失敗しないから、こっちだろーか・・・。
会社を17時に飛び出せばギリギリ間に合うかな・・・。
10 | 2024/11 | 12 |
S | M | T | W | T | F | S |
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