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えー、ちなみに1章魔王戦い前のワンシーンです。
尚、勇者の武器は
ミノル⇒リュウが持っているので、魔界にて入手。(アサギが手に入れてミノルに譲渡)
ケンイチ⇒ハイの手下のテンザが持っているので、魔界にて入手。
ダイキ⇒今回通り
トモハル⇒最初から所持
アサギ⇒ミノル&トモハルが手に入れて魔界に持ってくるので、受け取る。
魔界率、高っ!
それは、彼女にとって大変刺激的な光景だった。
刺激的・・・を通り越していた。
本来ならば彼女はその場には居てはならない人物だった、まだ、彼女は未熟な為だ。
だが、無理言ってついてきてしまった。
彼女を守護する為に本来の力量を発揮できない者が出てくるであろうことが容易に推測された為、魔王討伐部隊からは外されていたのだ。
喧騒の中、自分の身は自分で護る為に懸命に集中していたメアリ。
だが、例えば狼の群れに放り投げられた子羊の如く。
スズメバチの巣に単身で挑んだ、ミツバチの如く。
王宮のお抱え優秀賢者2人に、自他共に認める才能の剣士、拳闘士、神官が一人ずつ、と、ひよっこ魔術師。
メアリのすべき事は、背負っている勇者の剣を勇者に渡す事だった。
重すぎる剣は、運搬だけで体力消耗。
しかし、魔法を上手く発動できない魔術師メアリは戦闘において役に立たないので、荷物運び役に抜擢されたわけであり。
本来ならば屈強な男戦士がその役目だったのだが、行きたいと駄々をこねたので仕方なく・・・という現状。
「伏せろ、メアリ!」
「キャー!」
勇者は、魔界へ出向いた後だった。
追いかけて、魔界に上陸した。
上陸したらば、すでに魔王戦が始まっていた。
魔族が魔物達が、行く手を塞いでいた。
しかし、状況を掴めないのだが魔族側も混乱気味な様子で、人間達に目もくれずに何処かへ去っていく者達がほとんどだったのだ。
魔王の城は嫌でも目立つ、前方に聳え立つ白亜の宮殿がそれである。
馬車を盗み、それに乗り込むと一気に城を目指し駆け巡った。
その僅かな時間がメアリの休息で、必死に布に包まれた勇者の剣を抱き締める。
勇者とは、どんな人物なのか。
賢者アーサー曰く、幼い少年なのだそうだ。
メアリよりも年下だと聞き、そんな少年が必死で戦っているのならば自分も出来るはずだと思い込んでの参戦。
胸が高鳴る、速まる。
魔族など、遠目でしか見たことがなく。
使える呪文は、簡単な氷の魔法のみ。
「メアリ、大丈夫? 落ち着いてね」
「ありがとう、セーラ。大丈夫」
心配そうに神官セーラが覗き込んできた、引き攣った笑みを浮かべるメアリは震える声でそう返答する。
大丈夫ではないが、大丈夫と返事するより他ない。
心臓は今にも壊れそうだし、汗が吹き出て止まらない。
遠くで爆音が聞こえる、小さく悲鳴を上げてメアリは縮こまっていた。
「敵と接触! 戦闘準備!」
賢者アーサーが怒鳴った、仲間達が力強い雄叫びを上げる中、メアリは再び剣を紐で身体にくくりつける。
馬車から転がるように飛び出れば、人間が戦っていた。
相手は相当な魔法使いである様子で、見たこともないような破壊力のある魔法を繰り出しそこらの森を崩壊させている。
見たことがない・・・? いや、むしろ。
「危ない!」
見覚えのある火炎の魔法、黒煙の中央に立つ人物に鳥肌が立つ。
名を呼ぼうとした瞬間に、誰かに怒鳴られ気付けば地面に倒れこんでいた。
「っ、アーサーの知り合い?」
黒髪の少年だった。
土で顔がすすけていたが、がっしりとした身体つきの大人びた少年がメアリに飛んで来た木の破片を振り払ってくれたらしい。
唖然と、その少年を見上げるメアリ。
汚れていてもマントをはためかせ、眉間に皺を寄せて立ち上がり剣を構えるその姿。
妙に眩しく感じられ、頼もしく感じられ。
「メアリ、剣! 剣をダイキに渡してください! 勇者だから、勇者だから!」
「え、えぇ!?」
アーサーが防御壁を張りながら焦燥感に駆られて、裏返った声で叫びようやくメアリの意識が戻る。
見知らぬ土地で、見覚えのある魔法使いの呪文の威力を目の当たりにし、助けてもらった少年が・・・勇者。
アーサーから聞いている、勇者の名は”ダイキ”。
メアリより年下の12歳、けれども大人びて身長もメアリより断然高い。
「あ、あの、ゆ、勇者ダイキ!?」
「え、あ、うん・・・一応」
「こ、これ、勇者の剣なの! あ、あなたのなの!」
布をはらり、とはだけて剣を見せる、一瞬たじろぎダイキはメアリに近寄った。
そっと、手が伸びる。
剣を抱えていたメアリの身体が一瞬大きく震える、まるで、正面から抱き締められるような錯覚に陥った。
「・・・間に合った・・・有難う」
力強く、剣を握るダイキ。
見上げたメアリが見たものは、柔らかに微笑み髪をかき上げ剣を掲げたダイキの姿だった。
ときゅん。
はにかんだような笑顔に、つられて笑うしかなかったメアリ。
直様ダイキは剣を握り締め立ち去ったのだが、メアリは力なくずるずると地面に座り込む。
様々な要因が重なって、胸の鼓動を恋と勘違いしたのか、本当に一目惚れだったのか。
例えばもし、助けてくれたのがトモハルだったならば、ミノルだったならば、ケンイチだったならばどうなっていたのかなど誰も知らず。
「メアリ、メアリ! 貴女の力が必要よ、戻って!」
「ふえ?」
セーラに肩を思い切り揺さ振られ、惚けていたメアリはようやく現実に引き戻される。
そう、メアリの鼓動を早めた要因はもう一つ。
「・・・おねぇちゃま!?」
皆が戦っていた相手が、自分の姉だったからである。
黒煙の中、薄っすらと妖艶な笑みを浮かべて立っていたのは、殺されたと思って居た姉だった。
胸が、跳ね上がる。
脳内整理が出来ない、が、隣に来たダイキがそっと囁いたのだ。
「・・・操られているらしいんだ、妹なら、正気に戻す事が出来るかもしれない。君も、お姉さんも・・・必ず護る、説得してみてくれないか?」
必ず護る。
必ず護る。
必ず護る。
凛々しい面立ち、なんて心ときめく胸キュンワード。
「やってみるわ、ダイキ!」
ガッ、と愛用の杖を握り締め、メアリはザッ、と姉の前に立ちはだかった。
メアリの、そんな頼もしい様子を見たのは、皆、初めてであったという。
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