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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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ねむい。

 ワイバーン達は非常に利口だったらしく、アサギの言うことを理解し、信頼した上で上空で待機してくれていた。彼らに人間を襲うという気などない。ただ、奪われた大事な我が子を取り戻したいだけだ。
「ありがとうございます、急ぎましょう! 卵ですから、温めないとダメなんですよね? 心配です」
 アサギは、失神しているグランディーナを大きく揺さぶって起こした。彼女の父が持っているらしい卵だが、家が解らないのだ。ここはなんとしてでも彼女の協力が必要になってくる。
 無理やり起こされてしまったグランディーナだが、少しでも態勢を崩したら地上に真っ逆さまに落下する状況に、喉が潰れる程悲鳴を上げた。
 デズデモーナがやかましそうに瞳を伏せる、女性の高音は超音波のように耳を刺激し脳を揺さぶる。
「落ち着いてください、私はアサギと申します。大丈夫です、絶対に落ちませんから。ともかく、一刻も早く卵の場所へ案内してください」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアア……そ、そうね、そうだった」
 アサギが抱き締め背を撫でると、ようやくグランディーナが悲鳴を止める。しゃがれた声でそう呟き、恐る恐る下を見渡すと震える手で一点を指した。
「あれよ、あそこが私の家。あの家にあるはずだけど、お父様が避難する際に持ち出していたら知らないわよ。すんごい高額だったって聞いたから。あの人がめついし」
 心痛な溜息を吐いたグランディーナは「守銭奴でケチンぼ、身内には甘いけど。客観的に見たらヤな奴なんでしょうね」と身内に微かな毒を吐く。アサギは聞かなかったフリをした。
「行ってみましょう、でないと始まりませんから」
 アサギはワイバーン達に目配せすると、指示された方角へ向かう。
 
「あれ、そういえばトビィお兄様は?」
 姿が見えないので不思議に思い、瞳を細めて周囲を見渡すとクレシダの姿が確認出来た。距離的に離れた場所にいる、首を傾げたアサギの表情がすぐに険しくなった。
 トビィは何かと戦っている。それは、ワイバーンではない。
 そちらへ行こうと身を捩ったが、デズデモーナは進路を変更しなかった。
「ご安心ください、アサギ様。主にクレシダ、オフィ―リアがいるのです。そう易々とやられませんよ」
「そう、ですよね。解りました、ワイバーンさん達も心配でしょうし……」
 デズデモーナに諭されながらも不安そうに振り返ったアサギには、クレシダの背中から海へと魔法を放つオフィ―リアの姿が見えた。どうやら海から魔物がやって来たようだ、ワイバーンに触発されたのかもしれない。
 なるべく下を見ないように瞳を固く閉じ、それでも恐怖で震えているグランディーナを励ましながら、どうにか彼女の家に到着したアサギは感嘆の溜息をもらした。
 それは見事な屋敷だった、アリナの家には劣るが、街の上空からも目を惹く程の立派な建物である。お蔭で迷わずに済んだ。
 瞬時に、お嬢様だったと知る。
「お父様は市長なの」
 普段ならば胸を張って鼻を高くし言い放つのだが、生憎今のグランディーナにはそんな気力すら残っていない。恐る恐る瞳を開いて、自分の屋敷を産まれて初めて上空から見た彼女は知らず家族を探した。行方が分からない娘の心配をして屋敷前で待っていてくれるのではないか、と淡い期待を抱いていた。
 しかし食い入るように目を凝らしても、見慣れた家族は見つからない。代わりに、市長の屋敷に救いを求めて殺到する人々が目に飛び込んでくる。
 薄々勘付いていたが、父達は真っ先に地下に避難したのだろう。そういう人だ、娘より自分が大事だということは痛い程知っている。
 遣り切れない思いで俯いたグランディーナに、アサギはかける言葉も見つからなかった。
「ワイバーンさん達、どうでしょう、何か感じますか?」
 気まずい空気を払うように、アサギはついてきていたワイバーンを振り返るとそう問う。
「ギギェ」
「そうですか、間違いなくここですか」
 大きく羽根をばたつかせてそう吼えた、ワイバーンが、近所の犬のように愛らしく思える。
 やりとりを見ながらグランディーナは、何もかも諦めたような顔をして微かに笑う。竜と会話する姿を見ていると、世の中には何が起こっても不思議ではないし、こうして助けて貰えたのだから明るくいようと。
 なんだか悩むことが馬鹿馬鹿しく思えてきた。
「よく今ので解るわね、貴女何者なの」
「勇者です」
「そう、勇者……はぁ!?」
 もう何があっても驚かないと思っていたグランディーナだが、想定外の単語に声が裏返る。勇者が現れ魔王を倒した知らせは誰でも耳に入れたことだ、しかしまさか、目の前の美少女が勇者だとは。
 ワイバーンと会話し、竜を引き攣れているので頷けなくもないが、俄かに信じ難い。竜使い、といったほうがしっくり来る。もしくは竜の姫か。
 頭のてっぺんから爪先までを見つめて、今更ながらに溜息を吐く。見れば見る程、美しく不思議な雰囲気のアサギに見惚れてしまう。
 言葉を失ったグランディーナを他所に、アサギは低く唸った。この家にあることは解っても、何処にあるのか。部屋数が多そうだ、いちいち調べるわけにもいかない。
 けれどもワイバーンが近寄って来て、急かすように首懸命に動かすので一つの部屋に目星を付ける。一際大きな窓には、真紅のカーテンがかけられていた。
「お父様の部屋よ、あるならあそこでしょうね」
 感心したように拍手をしたグランディーナに、アサギは確信した。
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