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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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 日曜日はサッカーの試合、軽く流す程度。
 その後、ガーベラルートへ入るので、天界城の図書館にアサギはいなければならない。
 外伝3始動。
 君に咲く花のアサギ視点を書く。

 その間に、マビルとアサギを間違える村へアサギが出向く。
 トランシスとのR18をどうにかぼやかして連続投稿。


「アサギ?」
 身体が冷えていた。胸にぽっかりと大きな穴が開いたように、ひゅーひゅー抜けていく空しい風が、より一層寒さを痛感させる。
 トランシスは、愛しい女の名を呼びながら、どうにか上半身を起こすと、重い頭に手を添えて低く呻く。
 脱力感に襲われていた、上手く身体が動かせなかった。息を吸うたびに、妙な不安が体内に取り込まれ、蓄積していく気がした。
 
「アサギ? 何処だ、アサギ!?」
 二十四時間経過したら、アサギとは離れなければならない。次に会うことが出来るのは、五日後になる。
 そのような取り決めも、幸せすぎて忘れていた、
 取り乱したトランシスは、慣れている自分のソファからバランスを崩して床に落下する。その際に負荷がかかり、足首を捻ってしまったようで、鋭く悲鳴を上げた。
 ズキンズキンと、右足が痛む。すぐに腫れてくるだろう、反射的にその箇所に触れたが、次の瞬間押さえられない苛立ちがトランシスを襲った。
 
「アサギ、どうしてオレから離れる!」
 床を、殴りつけた。右の拳で、何度も床を殴った。血が滲み始めた、床がへこみ始めた。それでも、トランシスはやめなかった。
 痛みを、感じることがなかったからだ。
 手の痛みよりも、アサギが消えていたことの胸の痛みが大きすぎて、感じなかっただけなのかもしれない。
 
「アサギアサギアサギアサギアサギアサギアサギオレのアサギアサギアサギアサギアサギッ」
 名を連呼し、血走った瞳で床を殴り続ける。その瞳は、怒りに満ちていた。何に対する怒りなのか、トランシス自身にも解っていなかった。
 ただ、酷く空しくて悲しくて、切なかった。
 
 大きな欠伸をしながら、アサギは目の前で繰り広げられているサッカーの試合を見ている。
 大歓声が上がっているのに、自分だけが欠伸をしていては非常に失礼な気がした。
 しかし、眠い。
 トランシスのいる惑星マクディから地球に半ば強制送還されたのは、今朝方のことだ。
 日曜日である本日は、サッカーの試合を観戦に行く予定があったことを、忘れていたわけではない。早く寝なくては眠い事は承知の上だった、それでも、トランシスと出来る限り一緒に居たかった。
 
「アサギちゃん、大丈夫? みんなには言っておくから、先に帰ったら?」
「大丈夫、少し寝不足で」
 ユキが心配そうにのぞき込んできたので、アサギは力なく笑う。
 恋人であるケンイチが試合に出ているので、ユキは気合が入っていた。九月だが、まだ日差しが強いので薄桃色のリボンをふんだんにあしらった日傘を差し、買ってもらったばかりの繊細なレースのカットソーに、淡い水色の花柄ワンピースを着ている。
 ここでケンイチが何回もシュートを決めてくれたら、堂々と彼女として挨拶に行こうと決意していた。
 トモハルにミノルも同じチームで、二人のほうが技術力は上だ、だが、彼女がいるのはケンイチだけだ。彼女が応援に来ているのだから、普段以上の踏ん張りを見せてくれるのが普通だと、ユキは勝手に妄想している。
 リョウは補欠なので、今は出ていないが、出番が来るかもしれないので身体を温めているところだ。目があったので、アサギは手を振って微笑んだ。
 
「お茶」
 剣道をしているダイキは、アサギとユキと並んで観戦していた。先程一人で席を立ったので、てっきりトイレだと思っていたのだが、気を利かせて二人に飲み物を買って来たらしい。
 
「ありがとう」
 柔らかく微笑んで受け取ったユキと、慌てて財布を取り出し、飲み物代を払おうとするアサギ。
 
「お金はいらないよ、俺が勝手に買って来たんだ」
「え、でも……」
「本当に、いらないから。暑いからね、今日は。気を付けないと」
 やり取りを冷めた瞳で見ていたユキは、内心ほくそ笑む。
 
 ……おバカさんね、アサギちゃん。女の子はね、奢って貰ったら笑顔で応じて素直に喜べばいいの。当然のことなのよ。ダイキ、困ってるでしょ?
 
「いただきまーす」
 ペットボトルのキャップを「かたーい」と言いながら開けたユキは、美味しそうに茶を飲んだ。
 
「じゃあ、ありがとう、ダイキ。今度は私が奢るね」
「アサギは律儀だな、気にしなくていいのに。じゃ、何かあったら奢って貰うことにする」
「うん」
 二人の会話をほぼ無視していたユキは、試合自体はつまらないし、埃っぽいし、暑いし、何も良い事などなかったのだが、ケンイチの為に応援をする。
 
「試合は勝てそうだね」
「あいつらがいるから、負けるわけない。見なくても結果は解る」
「愉しそうだね」
「でも、魔物と戦ってたほうが充実してた、ってトモハルがなんか嘆いてた」
「ふふふ」
 二人の会話を、やはり無視していたユキは、半分ほど茶を飲み干していた。
 
 Vネックのグレーニットに、大きめのぼたんがころん、とついているベージュのスカートパンツにスニーカーのアサギは、眠いながらも真剣に試合を見ている。
 
「わぁ、流石トモハル! 相手の動きに合わせてるよね」
「そういうトコ、本当にアイツ上手い。気配りが出来るから、何でもリーダーをこなしてるんだろうな」
 ユキには、ただ、色の違う服を着た人達が、適当にコート内を走り回っているだけにしか見えなかった。
 涙を流して、大きな欠伸をした。
 
 やがて試合は終了し、予想通りトモハル達のチームが勝利した。ミノルとトモハルは何点かゴールを入れていたが、ケンイチは一点もとっていない。
 それくらいはユキにも解ったので、途中からつまらなくなっていた。もっと、大きな動きがあるのだと思っていた。
 勇者達は一緒にファーストフードを食べてから帰宅をしたのだが、始終ユキが不貞腐れているので、試合が終わったばかりで疲労感に押し潰されそうだったケンイチは、余計に気を使って疲れ果ててしまった。
 
『ごめんね、ユキ。暑いのに。でも、来てくれてありがとう。嬉しかった、恥ずかしかったけどね』
『ケンイチ、凄かったね。頑張ってたね!』
 逃げる様に帰宅して、気に入っていた衣服を脱ぎ捨てジャージに着替えると、アイスを齧りながら部屋で転がっていたユキは、ケンイチから届いたメールにそう返信しておいた。
 出来れば、もう行きたくないと思った。
 何が楽しいのか、さっぱり解らなかった。
 
 学校へ行きながら、クレロに呼ばれたら、もしくは用事があったら異界へ行く……。小学六年生の勇者達は、自分達が他の生徒と違って特別だということを誇らしくも思い、異界の自室で遊ぶ分には疲れることもなく愉しかったので、ほぼ毎日入り浸っている。
 ここのところクレロから緊急要請もなく、伝達事項によれば不穏な動きもないらしい。
 一時、一気に連続して起こったが、偶然重なっただけなのだろうと、皆は思い始めていた。
 しかし、点々と火災報告は上がっている。
 
「火災だって、物騒だなぁ。消防車とかないから、火事が起きると大変なんじゃ? 魔法使いがいたら、水の魔法で応戦出来るものなのかな」
 食堂でアリナから話を聞いたトモハルは、神妙な顔つきでそう呟く。「大変ダナー」と気のない返事をしたミノルは、隣りで興味なさそうに携帯ゲーム機で新作ゲームに没頭している。
 そんな幼馴染に、呆れて項垂れた。
 サッカーの試合があった日曜から数日経過し、今日は水曜日だ。育ちざかりの勇者達は、家に帰ってめぼしい食べ物がないと、食料を求めて食堂に集まる癖が出来始めている。
 冷蔵庫なる便利なものはないが、街に出れば店が並んでいるので食べ放題だ。地球のコンビニで買うと小遣いがその分無くなっていくが、異世界では資金が無くなればアリナに告げるだけで追加される。
 度が過ぎた買い物をしなければ大丈夫だと、アリナの太っ腹に感謝した。
 今日も、トモハルとミノルは二人して街に出掛け、露店でイカ焼きを購入してきた。祭りの時くらいしか食べないが、地球のものと似ているので、安心して食べられる。ただ、こちらは醤油タレではなく、香辛料たっぷりの塩味がきいたものだ。
 これはこれで美味いので、二人はほぼ毎日これを一本買っている。それと、隣の露店で売られている、ふかした芋が御馳走だった。
 やがてケンイチもやって来て、ダイキも来る。食堂で四人は目的もなく、コンビニ前で偶然出会ったかのように、他愛のない話をした。
 
「ユキは?」
「ピアノのレッスンだってメールが来たよ」
「お嬢様は忙しいなぁ、アサギは?」
 トモハルのその問いに、三人は一斉にミノルを見たが、慌てて視線を逸らすと、気まずそうに瞳を泳がせる。
 
「悪かったな、情けない元彼氏で」
 ゲームに没頭していたので気づいていないと思っていたのだが、ミノルは空気を完璧に感じ取っていた。自分に降りかかる悪い事だけは、気づいてしまう。
 
「そこまで言ってないけど、結局アサギとはどうなの。俺としては、親友のお前と、大事なアサギが一緒にいて欲しいんだけど」
「……無理だと思う、アサギは、俺ごときがどうこう出来る子じゃない」
「無理だ、って自分で言う時点で無理だろうなぁ、残念。でも、まだ好きなんだろ? あの変な子に浮気したお前が一方的に悪いけど、好きなら諦めるなよ。チャンスはあるかも」
 背中を叩いて励ましてくるトモハルに、面倒そうな視線を投げかけたミノルは、再びゲーム機に視線を戻した。
 
「アサギも、なんでこんなのが好きだったんだか」
「うるせー」
 侮蔑の視線を痛いくらいにその身に浴びて、ミノルは勝手に言え、とばかりに投げやりな態度をとる。自分が悪い事は重々承知だ、良い夢が見られたと思えば、それはそれでよかった。
 アサギの事は好きだが、一緒にいてはいけない気がしていた。罪悪感のようなものが押し寄せてきて、会話も躊躇してしまう。
 自分に非があるせいだと思い込んでいたのだが、それとは別な気がして仕方がなかった。
 
「結局、俺は何度やってもアイツを傷つけるだけで、護れない」
 ぼそ、っとミノルは吐き捨てた。
 その時、トモハル達は別の話題に入っていたので、聞き漏らしていた。
 
 キィィィ、カトン。
 
 音が聞えたので、誰かが入ってきたのだと思い、四人は一斉に入口を見つめる。しかし、見つめて気づいた。
 食堂は、ドアで仕切られていない。
 聞き間違いか、と思い直し、四人はまた、直前の動作に戻った。
 
「そういえば、ユキがなんかおかしな事言ってたんだよね。アサギに新しい彼氏がいるからどうのこうのって」
「は?」
 何気なく呟いたケンイチのそれに、一際大きく反応したのは、案の定ミノルだった。動揺しているのが気の毒なほど解るくらいに、両手のゲーム機が震えており、間違えてボタンを押してしまった為、画面の戦闘は大惨事なことになっている。
 しかし、ミノルの心中は、それ以上に悲惨な事になっていた。
「え、え、え、え、え、え、え、え」
「ミノル、落ち着け! ケンイチ、軽はずみなこと言うんじゃないっ」
「あ、ごめん。でも、やっぱりそんな話誰も知らないよね? 僕はトビィが相手なのかな、と思ってたんだけど」
 音を立てて震え出したミノルを落ち着かせようと、椅子に押し付けているトモハルの目の前で、悪びれた様子もなくケンイチは話を続ける。その横でダイキが地味に落ち込んでいた。
 この時、偶然トビィがどうにか暇を見出し、自分の部屋に荷物を運ぶ為食堂付近にいて、会話を聞いていたのだが、加わらなかった。
 トランシス、という名を口にするのも悍ましかったし、考えたくもなかったのだ。
 勇者達の会話は、続く。
 通りかかったアリナが、気を利かせて食事を頼んでくれたらしく、夕飯が出てきてしまったので話は否が応でも延長された。未だ気持ちの整理がつかないミノルは、草臥れた。
 
 一方、そんなこととは露知らず。渦中のアサギは、天界城に来ていた。
 慣れてきた純白の廊下を歩き、時折迷いながら、初めて行く場所に足を踏み入れようとしている。
 目的は天界城の、図書館だ。
 人間界とは全く違った書物が保管されているであろう場所だった、クレロに許可は頂いているので、堂々と入ることが出来る。しかし、アサギに対して警戒心を抱き始めた天界人も少なくはなく、行く先々で疑惑の視線を投げかけられた。
 多少の居辛さを感じたものの、笑顔を浮かべて挨拶をしながら横を通り過ぎる。
 人間が徘徊していては嫌なのだろうとは思ったが、一応神の許可は得ているので、どうにか胸を張って歩いた。
 琥珀色した扉の前に立った、ここが図書館で間違いないようだ。図書館といっても過去の記録が綴られた書物があるだけらしいが、惑星クレオの歴史に興味があったアサギは、それを読みたかったのだ。
 二人の管理人が、扉の左右に立っていた。
 恐縮して軽く頭を下げたアサギに、しかめっ面の二人は面倒そうに扉を開いた。やはり、歓迎はされていないようだった。
 しかし、すんなりと中に入ることは出来たので、アサギは顔を綻ばせる。
「ありがとうございます!」
 気落ちしていても仕方がないので、素直に感謝を述べた。
「お聞きしているとは思いますが、持ち出しは厳禁です」
「はい、解りました」
 中に入ると、すぐに扉が閉まった。アサギ以外、室内には誰もいないようだ。図書館というよりも、記録庫と呼んだほうが相応しいのかもしれない。そのような場所には余程のことがない限り、誰も入らないだろう。
 アサギは、胸いっぱいに空気を吸い込んだ。独特の紙の香りはしなかった、ただ、ツンと埃っぽい懐かしい香りがする。
 膨大な記録の中から、何を読んでみようか。出来れば最も古いものから読みたいと思ったアサギは、図書館の奥へと消えていく。思ったよりも広大なその場所の、入口から真っ直ぐ歩いた突き当りで、目の前の棚を不思議そうに見つめる。
 辛うじて手が届きそうな場所に、気になるものが一冊並んでいる。大概、背表紙には天界人の文字で年号が記載されているのだが、その本には何も書いていなかった。
 背伸びをして、右腕を懸命に伸ばす。その惹かれる本に指先が届き、強引に引き抜いた。
 茄子紺色したその本は、丁重に装丁されているが、題名が何処にも記されていなかった。一見、和雑貨店に並ぶノートのようだ。そこまで厚くもない。
 首を傾げて、中を開く。
 一風変わったその本に、興味をそそられても仕方がないことだった。
 目を落とす。そのまま、つらつらと読み始める。とても記録書には思えない内容だった、短そうだったので、全てに目を通す。
 
「……そのまま互いに息絶えました。……えぇ!? これで終わり!?」
 仄かに光が揺らめく、薄暗い図書館にて。
 アサギは手にした本を、読み終えた。想像していなかったラストに、思わず声に出してしまう。
 納得がいかないとばかりに、本を閉じたものの眉を顰めてそれを見つめる。
 しかし、名前を呼ばれた気がして、周囲を見渡した。誰もいない筈だが、微かにアサギ、という声が聴こえた気がした。 
 耳を澄ませると、やはり「アサギ」と声が聴こえる。
 遠くから聴こえたその声に、アサギは振り返った。返事をして駆け出す、近づくその声は、トビィの声だ。
 扉に向かったアサギと、入ってきたトビィが出会う。
「図書館にいると聞いて。何か良い本でも? こんな場所に、面白いものなんてあるのか?」
「良い本といいますか……何かと思って読み始めたら、可愛らしい童話っぽかったので最後まで目を通したのですけど、死んでしまう最後でした」
 幸せな物語ではない、ということだろう。トビィは、瞳を微かに大きく見開いた。内容よりも、こんな場所に普通の本があったことに驚いた。
「題名は?」
「それが、なくて」
 アサギは、手にしていた茄子紺色の本をトビィへと手渡す。
 若干黴臭いそれだが、色は然程褪せていない。不思議な触り心地の紙だと思った。手にしたトビィは背表紙を、表紙を、裏表紙を見つめるが確かに何も記載されていない。
 本を開こうとすると、遠くから新たな声が聞こえる。
「主、どちらにおられますか、主」
「デズデモーナ、ここだ」
 本から視線を外し、相棒である黒竜の名を呼んだトビィは扉に視線を向けた。
 何処となく慌てているようにも聞こえたデズデモーナの声に、アサギは首を傾げる。普段冷静なデズデモーナの声色とは違い、微妙に高く早口だった為だ。
 デズデモーナは黒い長髪、真紅の瞳、頭部に二本の角がある人型の姿で扉から顔を覗かせる。本来は黒竜の姿なのだが、アサギが天界の宝物庫から無断で持ち出した杖の威力で人型に変化することが可能となってから。気に入ったらしく頻繁にこの姿でいた。
 逆に、クレシダは人型に慣れない様子で、竜の姿でいることのほうが多い。
「緊急事態です。クレシダとオフィーリアは待機しておりますので、我らも」
「緊急事態?」
 アサギとトビィは、顔を見合わせた。
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