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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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雪が降る、降って積もって凍えてしまった
春の息吹を待ち侘びる、暖かな日差しのその季節
健やかに全てが育つ、生命の息吹を感じて
大樹となりし、もとはか弱きただの芽は
⇒ 実を幾つも幾つも、恩恵を受けてならせたもう
浅葱色した、綺麗な花が咲き誇る
焦がれて欲する私の楽園
そこで咲きましょう、永遠に咲き誇りましょう
勇気を下さい、そこで咲き誇れる勇気を下さい
者は極き、臆病の者
弱くて、強く、反した者達の楽園を


「実を幾つも幾つも 恩恵を受けてならせたもう
 至上の楽園に育つ大木 誰しもが欲し手を伸ばす
 魅惑で甘美なその実を 惜しげもなく人々に分け与えん
 一口齧れば笑み溢し 二口齧れば涙溢れ
 三口齧れば生命湧き出る
 全ての生命の根源は ただ皆に分け与える
 実を口にし、幸せそうに微笑む生命達を
 この上ない喜びだと思い 大木は歓喜する 
 風に乗って声を出し 多くの生命を呼び寄せる」

 翌朝。林檎ケーキを食べながら珈琲を飲んでいたガーベラにトビィが近寄った、前の席を促し無表情で席につく。

「いかが? とても美味しいわ、バターとシナモンがたっぷりで林檎の量がとても多いの」

 皿を差し出すとトビィは首を横に振る、自分も珈琲を注文し、香りを楽しみながら口にする。満足そうにケーキを食べているガーベラの珈琲が自分と香りが違う事に気付いたトビィは、眉を潜めた。

「また酒を呑んでいるのか」
「違うわ、ラム酒が数滴垂らしてあるの。温まるでしょう?」
「それにしても良いご身分だな、優雅な朝食じゃないか。ここでも十分歌姫としてやっていけるんじゃないのか」

 軽く溜息を吐きながらそう呟くトビィだが、気にせずケーキを口に放り込む。甘い林檎とスパイシーなシナモンが、程好く口内で絡み合った。惜しむように飲み込み、小さく頷く。

「……贅沢、してみようと思って。娼婦だった頃は仲間とお菓子を食べに出掛けることもあったし、仲間に作るのが得意な子がいて不自由しなかった。食べ物って大事なのね、一人で出掛けてそれを知ったわ。どれだけ恵まれた環境にいたのかも、思い知らされた」

 珈琲を啜りながら、一見無関心そうに聞いているトビィ。ガーベラはそんな様子にも気にせず、続ける。皿の上のケーキは残り僅かだ。

「唄で成功しようと思って、極力生活を質素にしたつもりだったけど低底にいたわけじゃない。でも、食事は落としていたの。……このケーキ、とても美味しいわ。辛い事も甘い出来事に変えてくれる様な、魔法のケーキよ」
「多少の贅沢は、生きていく活力になる。それは間違いない」
「でしょう? ……ごちそうさま、気合が入ったわ。違う惑星で失敗したら、私はただの娼婦だもの」

 真っ直ぐにトビィを見つめ、挑戦的に微笑んだ。口角を少し上げて珈琲を飲み干したトビィは、ゆっくりと立ち上がる。

「所持金の通貨を、交換する。特定の場所へは連れて行くが、宿も店の手配もしない。……いいな?」
「優しいのね、トビィ。てっきり無一文で投げ出されるのかと思ったわ」

 薄く笑ったガーベラに、トビィも鼻で笑った。

「健闘を祈る。行き先は惑星クレオ、ディアス。市長が信頼できるから、治安も良い。多くの傭兵が集まって来ているから、酒場も多い」
「傭兵? ゴロつきが多いのではなくて?」
「言ったろう、市長が信頼できると。一般常識から外れた者は腕が立てども、あそこには入れない」
「まぁっ、ご立派な方だこと。私が娼婦だったあの港町の市長は、私と同じ歳の娘がいながら上顧客だったわ。惑星が違うと、市長も違うものなのね」

 軽く皮肉めいて悪態づいた、トビィが苦笑する。
 ディアスには、勇者の仲間がいる。今は世界を飛び交っており不在気味だが、規模的にも良い場所だとトビィは判断した。

「それにしても、何の力も持たない私が惑星を移動してしまって良いものなの? 惑星とか実はよく解っていないのだけれど、大陸が違うと思えば良いのよね?」
「簡単に言えばそういう事だ、お前の事を誰も知らない場所へ行くという事実を頭の隅に入れておけ。それから……今回の件はアサギに話し、神に許可を貰って成立した。普通の歌姫ならば不可能な事もよく覚えておけ」
「あら、大掛かりなのね」

 しれっ、と言い放ったガーベラだが、何気なく見つめたトビィは何も言わなかった。その瞳はいい加減なものではなく、意欲に満ちた希望の瞳だったからだ。顔つきも違う、昨日の酒を呑み項垂れていた女ではない。背筋を伸ばし、凛として立っている姿は流石に貫禄がある。
 軽く吹き出し笑ったトビィは、「まぁ、程ほどに頑張れ」とだけ告げた。言わずとも解っていただろうが。

 こうして、港町で娼婦として生きてきたガーベラは。偶然魔物に奇襲され、助けてくれた勇者に何故か気に入られる。心に押し留め言わずにいた歌姫という夢を叶える為、普通ならば有り得ないのだが惑星を移動する事になった。
 もし、彼女が娼婦でなかったら。
 もし、彼女が歌姫を目指さなければ。
 もし、彼女が……。
 誰も自分の事を知らない街でトビィと別れたガーベラは、意気込んで宿を探す。風呂屋と併設しているという宿に滞在することにし、歌姫を夢みるただの十七歳として早速街に繰り出した。人混みの中を、弾む心で歩いていく。
 妙に活気があり、出会う人々は皆笑顔だった。かといって、緩んでいるわけではない、充実した生活を送っているのだろうと思った。時は夕刻、迷子にならぬよう、滞在先に戻れるように目印を覚えながら進んで行き、公園を見つける。
 ガーベラは、大木の下で声を張り上げた。

「何もなき宇宙の果て 何かを思い起こさせる
 向こうで何かが叫ぶ 悲しみの旋律を奏でる
 夢の中に落ちていく 光る湖畔闇に見つける
 緑の杭に繋がれた私 現実を覆い隠したまま
 薄闇押し寄せ 霧が心覆い 全て消えた
 目覚めの時に 心晴れ渡り 現実を知る
 そこに待つのは 生か死か」

 長い金髪は優雅になびく、蒼石のように澄み渡り光る瞳と、細滝から水が流れ落ちるような清清しさのある声。深紅の衣装が映える、上品そうな物腰は貴族の娘を連想させた。足を止めるには十分過ぎた、一人二人と確実にその声に聴き入った。
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