別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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マビル
ナスタチューム
アサギ+ミノル
⇒トビィ
ナスタチューム
アサギ+ミノル
⇒トビィ
釈然としない様子のまま、トビィはそれでも神の指示通りシポラを監視していた。クレシダ、デズデモーナの二体の竜と共に上空から様子を窺う。トビィが乗っているのは、緑の竜であるクレシダだ。
「それにしても、以前から気になっていたのですが。あちら側とて我らの気配に気づかないわけないでしょうに」
「何も仕掛けてこないだろうな、こちらが仕掛けない限り。平行線だろう」
デズデモーナがそう話しかけるとトビィが直様答える、よって、退屈極まりない。
「破壊の姫君、とは結局何ですか」
クレシダの問いかけにトビィが軽い溜息を吐く。
「邪教が崇めているらしい存在だ、相当の美しさで現在何処かに確かに実在しているとか。その能力は計り知れないので、危惧されていると」
「私は人間の美しさが解りませんゆえ、なんとも言えませんが。主はアサギ様をお美しいと誉めておいででした、彼女よりもその破壊の姫君はお美しいのですか?」
肩を竦めてトビィが苦笑する、デズデモーナもクレシダの問いに失笑した。
「オレにとって、アサギが世界中の誰よりも美しい。大概の人間は皆そう思うだろうな、破壊の姫君をオレは知らないが、アサギに敵うものなどいないだろうよ」
「ならばアサギ様が破壊の姫君なのですか? 魔王と親しい勇者で、神からも待遇を受けている主が認める美しさだと」
その一言に、トビィは頭を抱える。クレシダは疑問に思った事を口にしただけだった、悪気はない。
「違うだろ」
「ですか」
デズデモーナに軽く視線を投げかけたトビィは、黒竜も項垂れて首を横に振っている様子を見た。同じ竜だが、種族が違うというよりも人間や魔族と同じ様に竜も個性があるもので、比較的デズデモーナの感覚はトビィに近い。クレシダは特殊な感情の持ち主だ。
と、思わずトビィが剣を引き抜き、デズデモーナが吼える、クレシダが身を低くした。シポラの上空に、誰かが立っている。桃色の髪を揺らしながら、こちらを見ていた。何時の間にその場に来たのか、舌打ちしたトビィは瞳を細める。
「魔族、ですね」
漆黒の衣装を身に纏い、剣士というよりかは魔道士寄りだと判断したトビィは剣を握る手に力を込めた。空中戦ならば、剣より魔法のほうが優れている。クレシダの速度に期待し、何時攻撃を仕掛けるか思案する。
背格好的には同じくらいに見えた、顔も整っており冷たい視線でこちらを見ているだけの魔族。
シポラにおける教祖、イエン・タイである。双子の弟のほうだが、そんなことトビィは知らない。彼の存在を知っているのは直に会話しているミシアと、サンダーバードにより攻撃を受けたケンイチ達だ。
互いに牽制し、距離を保ったまま睨みを利かせる。どのくらい経過したのだろうか、不意にタイは身を翻すとシポラへと急降下した。時は夕刻、周囲は暗くなりトビィの視界も悪くなる。下からの攻撃に備えようと様子を窺っていたが、不気味な程静まり返っていた。何も起こらない。
「デズ。すまないがクレロに会いに言ってくれないか、オレは見張っている」
「御意」
視線をシポラに落としたまま、トビィはそう呟く。一つ返事でデズデモーナは優雅に旋回すると、神の居城を目指して全力で飛行した。初めて目の当たりにした敵の姿に、軽くトビィは武者震いする。その震えを感じ取ったクレシダだが、何も言わなかった。
「思いの外手応えがありそうだ」
呟いたトビィの口元に、笑みが零れる。クレシダは、小さく欠伸をしてひっそりと肩を竦めた。極力面倒ごとに首は突っ込みたくない性分なのだ、トビィの相棒なので共にいるが。
全速力で居城へ向かったデズデモーナは、宙に浮遊している石に舞い降りる。天界に浮かんでいる居城は、常に世界を漂っており、微妙に位置が変化していくのだが朝飛び立った方角を覚えていたので迷うことなく辿り着けた。都合よく、居城もシポラ上空へと動いていたので距離が近くなっていたことも幸いした。
舞い降りてきた黒竜に悲鳴を上げて武器を構える天界人達、皆純白の羽を背に持っている、槍を構えてこちらを見ている衛兵に大きく溜息を吐くと、用件だけ伝える。
「主からの伝言だ、シポラ上空に魔族が現れた。指示を仰ぎたい」
ようやくトビィの竜だと気付いた天界人は、一目散にクレロに報告すべく走り去る。それでもまだ、デズデモーナを見張って数人は槍を下ろさずにその場に居た。天界人が竜と接触しない種族だとは解るが、仮にも協力を要請しているトビィの相棒なのだ。もう少し待遇が良くてもよいのではと苦笑する。親しくしたい、とは言っていないが武器を向けられているというのは心地良いわけがなく。
数分して、天界人が戻ってきた。
「監視をクレロ様がされるそうです、トビィ殿には一度帰宅して戴きたいとのこと」
「ふん……伝えよう」
伝令係りになってしまったデズデモーナは不服そうの飛び立つと、トビィのもとへと舞い戻る。そのまま伝言を伝えると、トビィは思ったとおり大袈裟に肩を竦める。
「ならば最初から自分で見張ればよいものを。……行こう、クレシダ、デズ。デズ、ご苦労だったな」
「いえ、飛行する文には問題ありません。が、扱いが不当な気が致します」
「オレもそう思う」
トビィが天界に辿り着いた頃、調査からマダーニ達も戻って来ていた。久し振りの再会に軽く微笑むと、ようやくクレロが登場する。神だから、と敬意を払っている者はライアンとクラフト、ミシアの三人だ。他の者はふてぶてしい態度で仁王立ちしたまま、体勢を崩さない。注意する天界人は毎回のことだが、無視された。
「ご苦労だった、食事を用意してある。こちらへ」
通された部屋で、野菜ばかりの食事にげんなりと顔を顰めたアリナだが、腹が減っていたので文句は言わずに食べ始める。味も薄味だが大量に押し込めばどうにかなると思った。黙々と食べ始める者もいたが、クレロは話を進める。
「さて、ライアン達に調査依頼していた塔だが、特に何もなかったと」
「そうですね、魔物が蔓延っているだけでした。不審な点は何もなく」
「シポラ上空に魔族が現れたのを、トビィが本日目撃した。……容姿を聞きたい、皆も覚えておいてくれ」
ライアンからトビィに視線を移したクレロは、神妙に頷く。軽く舌打ちし、ワインを呑んでいたトビィが口を開く。
「背格好はオレに似ている、髪の色は薄い桃、瞳の色までは見えなかったが結構端正な顔立ちだった。髪の長さは後ろは短いが左右が長く、肩に届きそうな感じで、恐らく魔道士の類だろう。一人きりだった」
「まぁ、魔族には美形が多いって言うし?」
じゃが芋を丸齧りしながらアリナがそう言うと、口内の物が周囲に飛び散る。ミシアがあからさまに顔を顰め、こめかみを引つかせた。クラフトが申し訳なさそうに布でそれらを拭っていく。
「明日からだが、皆には別の場所の調査を依頼したい。アサギの武器・セントラヴァーズが保管されていたピョートル近郊へ行ってもらう、洞窟から魔物が出て来ている様なのだ。
また、シポラの監視はこちらで行い、トビィには新たに出向いて欲しい場所がある。君にしか頼めないことだ」
「人使いが荒い神だな、何だ」
舌打ちし、ワインを呑むことを止めたトビィは睨みを利かせた。気にせず、クレロは続ける。
「魔族のサーラ、知っているだろう? 彼に会いに行って欲しいのだ」
軽く視線を天井に移し、トビィは頷く。廃墟となった城跡で出逢った深紅の髪の魔族の事だ。
「魔王戦が終わったあと、どうやら彼らは魔界イヴァンに来ていたらしいので、詳細を知りたかろう。状況を説明してきて欲しい」
「それは構わないが、ご丁寧なことだな。そもそも仲間なのか? わざわざ出向く必要があるのか?」
「それはトビィ、君ならば解るだろう。彼が敵ではなく、味方であることなど」
見透かされたように微笑して言われ、トビィは舌打ちした。つまらなそうに手前のトマトを摘んで口に放り入れる。話が見えないライアンは、困惑気味にトビィを見た。
「……以前、アサギを救いに魔界へ行く途中、廃墟を見つけた。過去に小国だったらしいその城に世話になったという魔族が、深紅の髪のサーラだ。姫の命日だそうで墓参りに来ていたところに偶然居合わせて話を聞いた。あちらさんはオレのことを知っていたな、人間で竜に乗っていると魔族の中では目立つ存在だったらしく」
そりゃそうでしょ! と、アリナが南瓜の冷製スープを飲みながら叫んだので再び口内から飛び散り、ミシアが悲鳴を上げる。再びクラフトが謝罪しながら、それを丁寧に布で拭き取った。
「確かに敵ではなかったが、味方かと言われると……」
「君の話次第で強力な味方になってくれるだろう、私では無理だと思うのでトビィにお願いしたのだ。魔族と親しく、信頼もある君ならば。……この先、仲間は多い方が良い」
「まるで先を知っているかのような口ぶりだな」
トビィが眼光を光らせ、黙って訊いていたマダーニも顔を上げてクレロを睨みつける。苦笑し、クレロははぐらかしたがやはり態度が煮え切らない。
勇者達にも渡したという連絡がいつでも取れる便利な水晶を皆渡され、仲間達は顔を見合わせた。
「なんていうかさ、魔王を倒して終わらなかったってどういうことだろ」
「魔王に成り代わる破壊の姫君とやらがいるから、だろ? 正直オレはアサギの傍にいられるならば世界が滅んでも構わないんだが?」
「ボクは世界の終わりは困るなぁ」
アリナとトビィが他愛のない会話をし、食事を終えて紅茶を飲む。クレロは監視があるからと早々に引き上げていたので、この場は人間達だけだった。
「胡散くさいんだよな、神が。大体、宙に浮いている城に住んでいるだけで本当に神なのか怪しい」
「神だろうケド、不気味なところはあるかな。本心が見えないから」
黙って訊いていたマダーニだが、二人に近づくと腰に手を当て、溜息混じりに声を出す。
「多分皆同じことを思っているでしょうね、でも、従うしかないの。頑張りましょう」
状況把握をしておくことにした、同じ惑星に居るとはいえ、頻繁に会うわけではない。
元魔王であるリュウは、時折アサギ、トビィと会話している。幻獣星の立派な王となるべく教育を受けているので、こちら側で積極的に参加することはない。
元魔王ハイは、推定だが病死した。発見者はトビィ、リュウ、アサギ。
ムーン王女とサマルト王子は復興に躍起になっているため、こちら側で積極的に参加は出来ない。今のところ滞りなく進んでいるという。
賢者アーサーと仲間達も復興に躍起になっている。声さえかければ参加可能だが、成るべくならば故郷の支援を優先させたいので、特に連絡はとっていない。
地球にいる勇者達は、アサギが頻繁にこちらへ来ているようだが他の勇者達は動きを見せていない。
問題の神。何がしたいのか目的が不明確であり、信頼性に欠けている。何か大事なことを話していない気がする……ということで一致した。
アサギがミノルと別れた事は、まだ、誰も知らなかった。
「それにしても、以前から気になっていたのですが。あちら側とて我らの気配に気づかないわけないでしょうに」
「何も仕掛けてこないだろうな、こちらが仕掛けない限り。平行線だろう」
デズデモーナがそう話しかけるとトビィが直様答える、よって、退屈極まりない。
「破壊の姫君、とは結局何ですか」
クレシダの問いかけにトビィが軽い溜息を吐く。
「邪教が崇めているらしい存在だ、相当の美しさで現在何処かに確かに実在しているとか。その能力は計り知れないので、危惧されていると」
「私は人間の美しさが解りませんゆえ、なんとも言えませんが。主はアサギ様をお美しいと誉めておいででした、彼女よりもその破壊の姫君はお美しいのですか?」
肩を竦めてトビィが苦笑する、デズデモーナもクレシダの問いに失笑した。
「オレにとって、アサギが世界中の誰よりも美しい。大概の人間は皆そう思うだろうな、破壊の姫君をオレは知らないが、アサギに敵うものなどいないだろうよ」
「ならばアサギ様が破壊の姫君なのですか? 魔王と親しい勇者で、神からも待遇を受けている主が認める美しさだと」
その一言に、トビィは頭を抱える。クレシダは疑問に思った事を口にしただけだった、悪気はない。
「違うだろ」
「ですか」
デズデモーナに軽く視線を投げかけたトビィは、黒竜も項垂れて首を横に振っている様子を見た。同じ竜だが、種族が違うというよりも人間や魔族と同じ様に竜も個性があるもので、比較的デズデモーナの感覚はトビィに近い。クレシダは特殊な感情の持ち主だ。
と、思わずトビィが剣を引き抜き、デズデモーナが吼える、クレシダが身を低くした。シポラの上空に、誰かが立っている。桃色の髪を揺らしながら、こちらを見ていた。何時の間にその場に来たのか、舌打ちしたトビィは瞳を細める。
「魔族、ですね」
漆黒の衣装を身に纏い、剣士というよりかは魔道士寄りだと判断したトビィは剣を握る手に力を込めた。空中戦ならば、剣より魔法のほうが優れている。クレシダの速度に期待し、何時攻撃を仕掛けるか思案する。
背格好的には同じくらいに見えた、顔も整っており冷たい視線でこちらを見ているだけの魔族。
シポラにおける教祖、イエン・タイである。双子の弟のほうだが、そんなことトビィは知らない。彼の存在を知っているのは直に会話しているミシアと、サンダーバードにより攻撃を受けたケンイチ達だ。
互いに牽制し、距離を保ったまま睨みを利かせる。どのくらい経過したのだろうか、不意にタイは身を翻すとシポラへと急降下した。時は夕刻、周囲は暗くなりトビィの視界も悪くなる。下からの攻撃に備えようと様子を窺っていたが、不気味な程静まり返っていた。何も起こらない。
「デズ。すまないがクレロに会いに言ってくれないか、オレは見張っている」
「御意」
視線をシポラに落としたまま、トビィはそう呟く。一つ返事でデズデモーナは優雅に旋回すると、神の居城を目指して全力で飛行した。初めて目の当たりにした敵の姿に、軽くトビィは武者震いする。その震えを感じ取ったクレシダだが、何も言わなかった。
「思いの外手応えがありそうだ」
呟いたトビィの口元に、笑みが零れる。クレシダは、小さく欠伸をしてひっそりと肩を竦めた。極力面倒ごとに首は突っ込みたくない性分なのだ、トビィの相棒なので共にいるが。
全速力で居城へ向かったデズデモーナは、宙に浮遊している石に舞い降りる。天界に浮かんでいる居城は、常に世界を漂っており、微妙に位置が変化していくのだが朝飛び立った方角を覚えていたので迷うことなく辿り着けた。都合よく、居城もシポラ上空へと動いていたので距離が近くなっていたことも幸いした。
舞い降りてきた黒竜に悲鳴を上げて武器を構える天界人達、皆純白の羽を背に持っている、槍を構えてこちらを見ている衛兵に大きく溜息を吐くと、用件だけ伝える。
「主からの伝言だ、シポラ上空に魔族が現れた。指示を仰ぎたい」
ようやくトビィの竜だと気付いた天界人は、一目散にクレロに報告すべく走り去る。それでもまだ、デズデモーナを見張って数人は槍を下ろさずにその場に居た。天界人が竜と接触しない種族だとは解るが、仮にも協力を要請しているトビィの相棒なのだ。もう少し待遇が良くてもよいのではと苦笑する。親しくしたい、とは言っていないが武器を向けられているというのは心地良いわけがなく。
数分して、天界人が戻ってきた。
「監視をクレロ様がされるそうです、トビィ殿には一度帰宅して戴きたいとのこと」
「ふん……伝えよう」
伝令係りになってしまったデズデモーナは不服そうの飛び立つと、トビィのもとへと舞い戻る。そのまま伝言を伝えると、トビィは思ったとおり大袈裟に肩を竦める。
「ならば最初から自分で見張ればよいものを。……行こう、クレシダ、デズ。デズ、ご苦労だったな」
「いえ、飛行する文には問題ありません。が、扱いが不当な気が致します」
「オレもそう思う」
トビィが天界に辿り着いた頃、調査からマダーニ達も戻って来ていた。久し振りの再会に軽く微笑むと、ようやくクレロが登場する。神だから、と敬意を払っている者はライアンとクラフト、ミシアの三人だ。他の者はふてぶてしい態度で仁王立ちしたまま、体勢を崩さない。注意する天界人は毎回のことだが、無視された。
「ご苦労だった、食事を用意してある。こちらへ」
通された部屋で、野菜ばかりの食事にげんなりと顔を顰めたアリナだが、腹が減っていたので文句は言わずに食べ始める。味も薄味だが大量に押し込めばどうにかなると思った。黙々と食べ始める者もいたが、クレロは話を進める。
「さて、ライアン達に調査依頼していた塔だが、特に何もなかったと」
「そうですね、魔物が蔓延っているだけでした。不審な点は何もなく」
「シポラ上空に魔族が現れたのを、トビィが本日目撃した。……容姿を聞きたい、皆も覚えておいてくれ」
ライアンからトビィに視線を移したクレロは、神妙に頷く。軽く舌打ちし、ワインを呑んでいたトビィが口を開く。
「背格好はオレに似ている、髪の色は薄い桃、瞳の色までは見えなかったが結構端正な顔立ちだった。髪の長さは後ろは短いが左右が長く、肩に届きそうな感じで、恐らく魔道士の類だろう。一人きりだった」
「まぁ、魔族には美形が多いって言うし?」
じゃが芋を丸齧りしながらアリナがそう言うと、口内の物が周囲に飛び散る。ミシアがあからさまに顔を顰め、こめかみを引つかせた。クラフトが申し訳なさそうに布でそれらを拭っていく。
「明日からだが、皆には別の場所の調査を依頼したい。アサギの武器・セントラヴァーズが保管されていたピョートル近郊へ行ってもらう、洞窟から魔物が出て来ている様なのだ。
また、シポラの監視はこちらで行い、トビィには新たに出向いて欲しい場所がある。君にしか頼めないことだ」
「人使いが荒い神だな、何だ」
舌打ちし、ワインを呑むことを止めたトビィは睨みを利かせた。気にせず、クレロは続ける。
「魔族のサーラ、知っているだろう? 彼に会いに行って欲しいのだ」
軽く視線を天井に移し、トビィは頷く。廃墟となった城跡で出逢った深紅の髪の魔族の事だ。
「魔王戦が終わったあと、どうやら彼らは魔界イヴァンに来ていたらしいので、詳細を知りたかろう。状況を説明してきて欲しい」
「それは構わないが、ご丁寧なことだな。そもそも仲間なのか? わざわざ出向く必要があるのか?」
「それはトビィ、君ならば解るだろう。彼が敵ではなく、味方であることなど」
見透かされたように微笑して言われ、トビィは舌打ちした。つまらなそうに手前のトマトを摘んで口に放り入れる。話が見えないライアンは、困惑気味にトビィを見た。
「……以前、アサギを救いに魔界へ行く途中、廃墟を見つけた。過去に小国だったらしいその城に世話になったという魔族が、深紅の髪のサーラだ。姫の命日だそうで墓参りに来ていたところに偶然居合わせて話を聞いた。あちらさんはオレのことを知っていたな、人間で竜に乗っていると魔族の中では目立つ存在だったらしく」
そりゃそうでしょ! と、アリナが南瓜の冷製スープを飲みながら叫んだので再び口内から飛び散り、ミシアが悲鳴を上げる。再びクラフトが謝罪しながら、それを丁寧に布で拭き取った。
「確かに敵ではなかったが、味方かと言われると……」
「君の話次第で強力な味方になってくれるだろう、私では無理だと思うのでトビィにお願いしたのだ。魔族と親しく、信頼もある君ならば。……この先、仲間は多い方が良い」
「まるで先を知っているかのような口ぶりだな」
トビィが眼光を光らせ、黙って訊いていたマダーニも顔を上げてクレロを睨みつける。苦笑し、クレロははぐらかしたがやはり態度が煮え切らない。
勇者達にも渡したという連絡がいつでも取れる便利な水晶を皆渡され、仲間達は顔を見合わせた。
「なんていうかさ、魔王を倒して終わらなかったってどういうことだろ」
「魔王に成り代わる破壊の姫君とやらがいるから、だろ? 正直オレはアサギの傍にいられるならば世界が滅んでも構わないんだが?」
「ボクは世界の終わりは困るなぁ」
アリナとトビィが他愛のない会話をし、食事を終えて紅茶を飲む。クレロは監視があるからと早々に引き上げていたので、この場は人間達だけだった。
「胡散くさいんだよな、神が。大体、宙に浮いている城に住んでいるだけで本当に神なのか怪しい」
「神だろうケド、不気味なところはあるかな。本心が見えないから」
黙って訊いていたマダーニだが、二人に近づくと腰に手を当て、溜息混じりに声を出す。
「多分皆同じことを思っているでしょうね、でも、従うしかないの。頑張りましょう」
状況把握をしておくことにした、同じ惑星に居るとはいえ、頻繁に会うわけではない。
元魔王であるリュウは、時折アサギ、トビィと会話している。幻獣星の立派な王となるべく教育を受けているので、こちら側で積極的に参加することはない。
元魔王ハイは、推定だが病死した。発見者はトビィ、リュウ、アサギ。
ムーン王女とサマルト王子は復興に躍起になっているため、こちら側で積極的に参加は出来ない。今のところ滞りなく進んでいるという。
賢者アーサーと仲間達も復興に躍起になっている。声さえかければ参加可能だが、成るべくならば故郷の支援を優先させたいので、特に連絡はとっていない。
地球にいる勇者達は、アサギが頻繁にこちらへ来ているようだが他の勇者達は動きを見せていない。
問題の神。何がしたいのか目的が不明確であり、信頼性に欠けている。何か大事なことを話していない気がする……ということで一致した。
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