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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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本編に追いついてしまう件(’’)

 辿り着いた先は、際立った特徴のない街だった。静かだが、のどか、というわけではない。人々は疲れた顔でそれでも淡々と仕事をこなしている。生きていく為には仕方がない、と楽しさも見出せず日々同じ事を繰り返しているような。
 今の私には丁度良いのかもしれない……ガーベラはそう自嘲気味に笑うと軽く街を散策した。宿も数件しかなく、小汚いが贅沢は言っていられない。手頃な宿と契約し、その日はすぐに就寝する。明日からまた、頑張ろうと自分に言い聞かせ、少し黴臭い部屋で窮屈な馬車の中、固まっていた身体をほぐすように大きく伸びて眠る。
 翌朝、公園で一人唄ってみた。行き交う人が一瞬立ち止まり聴いてくれるが、最後まで聴く人はいない。それでも関心を持ってもらえるのならと、夕方になるまで休憩をしながら唄い続ける。
 やがて日が暮れて酒場の街灯に明かりが灯ると、ガーベラは大きく固唾を飲み込むと意を決して足を踏み入れた。
 お代はいらない、まずは唄わせて欲しい。
 そう、懇願してみた。代金を払わなくても良いなら、と最初の店が許可を出したので、ガーベラは玩具を与えられた子供の様に瞳を輝かせ店の片隅で唄った。

「健やかに全てが育つ 生命の息吹を感じて
 残酷な現実の冷たい空気に晒されても
 強かに大きく伸びゆく生命の力強さよ
 全ての命あるモノは 一つの夢を抱いて
 懸命にもがいて生きていく 美しくも狂気の世界
 繰り返す輪廻の輪に流されようとも
 行き着く先は 物語の終焉
 自分が決めた たった一つの世界
 願わくばそこが 自身が願ったものでありますようにと」

 聴いているのかいないのか、それでも罵声を浴びさせられることなく数曲ガーベラは唄った。硬貨は無論、拍手すら貰うことは無かった。それでも、店で唄えたことはガーベラにとって大きな前進だったのだ。酒場の主人が、残り物の肉をパンに挟み突き出してきたので、有り難く戴く。

「明日も来てもいいぜ、俺は好きだった」

 去り際に主人がそう言ったので、思わず小さな悲鳴を上げたガーベラは、何度も深くお辞儀をする。涙が込み上げてきた、震えながら宿へと戻り、冷えた美味しくないパンと肉を食べ、持っていたワインで流し込む。それでも、とても美味しい夕飯になった気がした。『俺は好きだった』なんと素敵な一言だろうか。
 翌日もガーベラは店へと出向き唄った、その日は拍手を貰うことが出来た。一人きりだったが、小汚い店には不釣合いな紳士的な老人からだった。酒場の主人がまた、残り物だとパンと肉をくれた。
 翌日は、あの老人が友人らしき人を連れてきていたので、拍手が二人になった。笑顔は浮かべてはいないが、か細い腕で拍手をしてもらえると、感謝の気持ちで胸が一杯になった。自分の歌声を気に入ってくれているのだろうと思い、その人達の期待に応えようと懸命に唄う。
 不思議なもので、緊張もなくなっており声がすんなりと出た。肩の荷が下りたのが伸び伸びと声を出す、酒場の主人が変化に気がつき、軽く目を見開いた。老人達が何か会話を始めていた。
 一週間ほど経過して、最初に拍手をくれた老人が、ようやくガーベラに声をかけてきた。その頃にはガーベラの噂を聞いたのか、呼ばれたのか。客足も増え、普通に拍手や硬貨を貰える様になっていた。

「うむ、良い声じゃ。荒削りではあるが、伸び伸びと唄っているときの声はとても美しいよ。これからも”唄が好きだ”という気持ちを忘れないことじゃな」

 ようやく老人がやんわりと微笑んでくれた、口元に手をあてて、大袈裟すぎるほどに腰を曲げて礼をするガーベラに、周囲の空気も軽くなる。

「ひどく別嬪さんじゃからな、間違われやすいが……あんたは普通の女子じゃな。ただ、唄が上手いだけの」

 そんな言葉を貰ったのは初めてだった、娼婦として美しいと言われ、好きだと思った唄は誰にも言う事がなく。そこに気付いてくれた吟遊詩人を恨みもしたが、歌が好きだという事実は変えることなど出来ない。
 この場所で、唄い続けよう……。ガーベラは小さな店で今日も唄った。

「大樹となりし もとはか弱きただの芽は
 幾多の数奇で過酷な運命を乗り越えて
 それでも必死に足掻いて干からびた大地から芽を出した
 生命の源
 全ては芽の一途な思いゆえ
 何度も輪廻し 魂を回帰し
 神秘の宇宙に飲み込まれて
 唯一の救いを求めて 愛しいモノに手を伸ばす
 永遠の想いをここに 心はそこに
 時はとまりはしない 残酷で愛おしいこの世界で」
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