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別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。 いい加減整理したい。 ※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。 絶対転載・保存等禁止です。 宜しくお願い致します。
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(’’)
クレロ「勇者達帰す必要なかったな」


→ クレロから話を聴く
   ハイ、リュウに会いに行く
   トビィの過去を知る
   助けに行く、看病する
   ミノル崩壊
   トモハル激怒
   アサギ、5星マクディを見つける

 膨大な光を浴びて、きつく瞳を閉じる。ようやく擦れた光の中で勇者達は瞳を開き始めた、何度も瞬きを繰り返し、視界をクリアにしようと焦点を合わせる。駆け寄ってくる音に、アサギがそちらを振り向いた。瞬間。

「アサギ! お帰り……」
 
 抱き締められた、耳元で囁かれた声に思わず声を張り上げる。

「トビィお兄様!」
「元気そうで何より、会いたかった」
 
 後方でミノルが「数日のみしか離れてねーし! 元気に決まっているし!」と悪態ついていたが、気にしない。トビィは強く抱き締めたままうっとりと瞳を閉じていた。怒り狂うミノルを、必死にトモハルが押し留める、我慢しろ、我慢しろ、と。
 誰かが突っ込みを入れないとトビィが離れなさそうだったので、咳を1つして無表情のマダーニがその肩を叩いた。それでも無反応だったので、耳を引っ張る。ようやくそこで仏頂面のトビィがマダーニに視線を移した。
 
「トビィちゃん、後にして。今はそれどころではないから」
 
 あからさまな舌打ちと共に、軽々とアサギを担いだトビィは促されるままマダーニの後に続く。勇者達もそのまま後に続いた、巻き込まれたのか共に来ていたリュウも飄々とついて歩く。
 数日前訪れた神の居城、まさかこんなに早く舞い戻ることになるとは誰が思っただろう。
 神であるクレロは揃った勇者達に軽く頭を下げると、控えていた天界人に各々の武器を届けさせる。丁重に受取り、ずしりとした感覚に震えた勇者達は改めて顔を見合わせた。ようやく床に下ろしてもらったアサギも受け取った武器を手首に装着し、クレロを見つめる。
 各々の武器を見つめる勇者達に視線を移しながら、満足そうに頷いたクレロはようやく口を開いた。
 
「1星ネロの勇者・ミノルとその剣エリシオン。同じく勇者・ユキとその武器。
 2星ハンニバルの勇者・ケンイチとその剣カラドボルグ。
 3星チュザーレの勇者・ダイキとその剣レーヴァティン。
 4星クレオの勇者・トモハルとその剣セントガーディアン。同じく勇者・アサギとその武器セントラヴァーズ。
 今一度、そなたらの手に託す。さて、急に呼びたててしまい申し訳なかった、状況を説明しよう」
「数日間に何が起こったって言うのだか」
 
 唇を尖らせながらも若干嬉しそうなミノルを、トモハルが肘で突き軽く睨みつける。話の中断をするな、と言いたいようで肩を竦めたミノルは小さな欠伸一つ姿勢を正した。
 
「勇者達が帰宅後、魔王を倒したとしても別の問題が残っていた為、トビィに調査を依頼した。まずはその報告からか」
「破壊の姫君、ですね」
「その通りだ、トモハル。旅の途中で君達も幾度となく単語を耳にしていただろう、シポラに本拠地があることも知っているね。
 破壊の姫君……類稀なる美しさを持ち、彼女はいとも簡単に惑星一つを消滅させてしまうという。この伝承は我らにも語り継がれていた存在だった。そんな彼女がついに姿を現すとのことで、破壊の姫君を祀り崇めている邪教が大陸全土に蔓延っている。移動能力値の高いトビィに、直様シポラへ向かってもらった。上空から眺めていただけでは解らないが、敷地内では頻繁に人が蠢いていることと、出入りも激しかったという。
 今後の勇者達の行動としては、万が一に備え破壊の姫君と戦って貰う為の心構えをして欲しいのだ。お願い出来るだろうか」
「心構えは良いとして、先手を打ってこちらから調査する手立てはないのですか? 破壊の姫君の特徴は? ただ美しいだけでは解りません」
「……今後の調査対象になっている、解っていたら苦労はしない。だが、邪教よりも先に破壊の姫君を捜し出し、何らかの方法で彼女を封印するなりしなければ惑星クレオだけではなく、周辺の惑星も危機に晒されてしまう。大陸全土を支配するという魔王よりも厄介な存在だ、能力地が未知数なのでね」
 
 勇者達は静かに頷いた、緊張が走る。
 
「具体的にはどうしたら?」
「地球での生活もあるだろうが、剣や魔法の鍛錬を怠らないで欲しいのだが……。欲を言えば、呼べばいつでもこちらに来て貰えると助かる。また、調査を依頼することもあるかもしれないのだが」
 
 勇者達は顔を見合わせた、学校へ行くより楽しそうだったが頻繁に休むことになると流石に問題だろう。
 
「平日、学校へ行かなければ行けないわけですが、記憶操作して授業に出ていることにしてもらったりとか出来ますか?」
「皆の意識に、存在を植えつける程度なら出来ると思う。実際にはいないので声かけられることはないが、皆の頭の中では勇者達がその場にいる、と誤情報を与えるのだ」
「あぁ、それは助かります。あとは勉強に遅れないようにすればいいだけか」
 
 ミノルは思わずにんまりと微笑んだ、つまり学校へ行って勉強しなくても良いということだ。ゲーム三昧出来ると妄想し、見抜いたトモハルがその足を踏みつける。
「ところで、その学校とやらはどうしても行かねばならない場所なのか?」
「そうです、小学生の“仕事”です。義務ですから」
 
 普段は地球で生活し、呼ばれたら異世界へ出向く。当面の勇者達はそんな生活を送ることになった。
 
「正義の味方っぽいな」
「異世界に自由に行き来できる、っていうのはいいよね。正直嬉しいな、でも、早く破壊の姫君っていうのをなんとかしないと。責任は重大だよ」
 
 ミノルとケンイチが会話しているのを聴いていたトモハルは、周囲を見渡し軽く首を傾げる。
 
「あの。調査するのはクレオの住人と勇者だけですか? 前の仲間のアーサー達に協力を頼んでは駄目なのでしょうか」
 
 その場にいたのは、呼ばれた勇者達についてきた元魔王リュウ、そしてクレオの仲間達だけだった。他の惑星の仲間達は来ていない。クレロは神妙に頷くと、微笑む。
 
「頼んではみた、だが魔王の行動によって復興が必要な惑星の住人達なので、そちらを優先して貰っている。有事の際には来てくれるそうだよ」
「現在どういう状況なのか、知りたいです。他の惑星に行くことは出来ないのですよね?」
「実は可能だったりする、これが」
 
 勇者達は顔を見合わせた、好奇心に満ちた眼差しでクレロを見つめる。小さく頷き、クレロは後方にあった球体に近寄るよう皆を促した。
 
「基本的に、行き来はこの場所を通すことになる。ここが全ての惑星を繋ぐ中心だと思ってもらおうか、まずはハンニバルの様子だ」
 
 球体に手を翳したクレロ、食い入る様に見つめた先にぼんやりと映ったのはムーンだった。忙しなく指示を出している様子が見て取れる。
 
「ムーン王女よ、聴こえるだろうか」
『あら、クレロ様。こんにちは』
 
  テレビ電話だ! とミノルが叫ぶ。大きいモニターに映し出されていると思えば解り易い、ムーンも声に驚き手を振ってくれた。
 
「あら、勇者様方。ご機嫌いかがかしら」
「久し振り! そっちの状態はどうなの? サマルトは?」
「離れた場所で作業中ですわ」
 
 惑星ハンニバル、最初の復興はシーザー城からだった。魔王ハイが消え去ったとはいえ、悪魔や魔物が消えたわけではない。攻防を繰り返しながらも徐々に人を集め、懸命に活動しているとのこと。また、救援物資はクレロから届けられている様で、満足した食事の為に人々も活気に満ちていた。食物争いが起きることもなく、神に見守られていると知ってか人々は笑顔で働いている。クレロとの交信はこのムーンが立っている場所でしか行えないそうだ、城内の中央にあたる。
 
「この世に溢れてしまった悪魔や悪霊の類は……神官ハイが押さえ込んでいる様子です、徐々に数が減少しているのです。彼は、故郷の神殿に戻り一人で活動していると」
 
 アサギとリュウが顔を見合わせる、手伝いに行きたいと思った。
 
「ご恩はお返ししたします、有事の際には必ずお呼びくださいませ」
「ありがとう、ムーン王女よ」
 
 深く礼をし、クレロが球体に手を翳すと次はアーサーが映し出された。
 
「アーサーよ、火急のところすまない」
「おぉ、これはこれはクレロ神。何用でしょうか……と! アサギ、アサギではありませんか! 相変わらずお美しい、ご機嫌麗しゅう」
 
 アサギが視界に入るなり目の色が変わったアーサーに、一同げんなりする。
 
「勇者達を召喚した、以後手伝って貰う。そちらの状況はどうかな?」
「えぇ、救援物資もクレロから戴いておりますし、守備は上々です。魔物を退けることも、希望に溢れた我らならば容易いこと」
 
 アーサーを見たココやナスカも集まってきた、メアリにエーア、セーラにリンも手を振っている。勇者達も大きく手を振った、思わず笑顔になる。
 皆故郷で頑張っている、勇者達は笑顔の仲間達を見ることが出来て安堵し、そして自分達も頑張ろうと決意し直した。
 
「無論、クレオの住人であるトビィ達にはすでに協力してもらっている。皆で一丸となって望もう」
「……お訊きしても良いですか?」
 
 控え目にアサギが前に進み出た、クレロが頷くと遠慮がちに言葉を紡ぐ。
 
「惑星ハンニバル、惑星チュザーレ……クレロ様が神ですか? 違う方では。その方は? また、やはり惑星ネロには協力者がいないので見ることが出来ないものなのですか?」
「ネロ、ハンニバル、チュザーレ。統治している神はエアリーだ、だが連絡がとれない。惑星ネロの様子を見ることは可能なのだが、会話するべき人物がいないので放置している状態だ」
「エアリー様は普段はどちらに? クレロ様は惑星クレオの遥か上空にいらっしゃるのですよね?」
「私も会った事はない、ただ、各惑星の伝承から彼女の名が浮かんでいるだけだ。詳細は知らないのだよ。私と同じ様に何処かの惑星の上空に居城があるのか……謎なのだ」
「あの、クレロ様はクレオ以外の惑星に干渉出来ますよね、地球もそうですし。全宇宙の掌握が出来ている、ということなのですか?」
 
 勇者達がアサギの言葉に顔を見合わせる、それが可能なら地球の誰よりも早く宇宙の謎を解いたことになるのではないかと鳥肌が立った。苦笑し、クレロが首を横に振る。
 
「広大なる宇宙、そこに惑星が散らばっている。私が干渉可能な惑星は限られているのだよ、これを御覧」
 
 球体に手を翳したクレロ、映ったものに勇者達は歓声を上げた。宇宙空間が映っている。
 
「宇宙に関して、私は手を伸ばさない。宇宙を探り、見つけた惑星にならば関与することが可能になる。関与するといってもただ、“傍観”が出来るのみだ。会話可能な生物が存在するならば、直接語りかけることも出来るが。
 クレオ以外の惑星で私が知りえていたのは、ネロ、ハンニバル、チュザーレ、そして元魔王リュウの故郷・幻獣星。地球はそなたらが勇者として召喚されたことにより、宇宙の片隅が光り輝き存在を知った。それまでは知らなかったのだ」
「神さえも知らない地球の人間に、よくもまあ勇者の石が反応したな」
「ここ、惑星クレオとそなたらの地球は相当離れている。正直把握出来ていない、解ったことは地球周辺にも太陽と月があるということだ」
 
 勇者達が顔を見合わせる、気付いた。
 
「つ、つまり、地球で見える太陽と月は、惑星クレオで観ていた太陽と月とは別物、ってこと!? ……確かに、同じ月や太陽だとしたら惑星クレオが太陽系に数えられても良いから違うと考えたほうが無難なのかな。えーっと、混乱してきたぞ」
「太陽系、と私達が呼んでいる空間が、遥か遠くの宇宙にも存在しているって考えれば楽なのかな。宇宙の把握が程遠い私達地球人はクレオやチュザーレという惑星の存在なんて、知る由もない」
「……NASAすら知らない事実を、たかが小学生が知ってしまってよかったのか? ……まぁ、いいか、うん。これは仕方がない、誰にも言わなければ問題ない、うん。無理やり納得」
「ぐー、難しいぐー」
 
 つまらないので、リュウは持ってきてしまったアサギのぬいるぐみで遊び始めた。苦笑し、クレロが皆を見渡す。
 
「簡単に指示を出しておこう、トビィやマダーニ、ライアン達は今後も調査を続けて欲しい。そなた達が頼りなのだ。勇者達も緊急時にはよろしく頼む。トビィはシポラ監視を引き続き頼みたい、マダーニ、ライアン、アリナ、クラフト、ミシアは調査して欲しい洞窟へ出向いて欲しいのだが」
 
 アリナが指を鳴らしながら笑顔で頷いた、お安い御用だ、と言わんばかりに。
 
「ぐー、私も手伝ったほうが良いぐーか?」
 
 ぬいぐるみを抱いたまま、リュウが問う。首を横に振ったクレロは、無表情で球体を指した。そこには。
 
『王! どこをほっつき歩いているのですか! また遊んで!』
「ぐー……」
 
 火竜のバジルが、口から火炎を吐き出しつつ怒り狂っていた。後ずさったリュウに、クレロが一言。
 
「万が一には呼ぶので、それまでは大人しく自星で勤勉に励んで欲しい」
「ぐもー、でも、今回は遊んでいたわけではなくアサギに呼ばれたのだぐー。不可抗力だぐー」
 
 いいわけ虚しく、リュウはペンギンのぬいぐるみを抱えたまま、幻獣星へ強制送還された。渋々嫌々なのが見て取れたが、引き止めるわけにもいかない。彼は一応王なのだから。
 勇者達も地球へと戻された、帰り際に水晶のような石の腕輪を揃いで受け取る。それが光れば、クレロから伝えたいことがあるという。握り締めると、声が聴こえてくるらしい。高性能な通信機器である、勇者達は感嘆の溜息を漏らした。また、連絡を取りたいときも水晶を握り、クレロの名を呼べば応えてくれるらしい。
 
「すげーもの、受け取ったな」
 
 水晶を眺めながら地球のアサギ宅へ戻ってきた勇者達は、それを光に透かして見つめる。各々の武器は置いてきたが、軽く笑い合うと皆で拳を握り締める。
 
「勇者一同、頑張ろう!」
 
 トモハルの掛け声に皆で拳を突き上げる。後方ではアサギの両親がもう何が起きても驚かないとばかりに、微笑んでいた。それしか出来なかった。
 
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