別サイトへ投稿する前の、ラフ書き置場のような場所。
いい加減整理したい。
※現在、漫画家やイラストレーターとして活躍されている方々が昔描いて下さったイラストがあります。
絶対転載・保存等禁止です。
宜しくお願い致します。
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急がないと(’’)
アースとトリプトルが秘密に会っていることなど、知らなかった。リュミはアースがトリプトルに恋心を抱いていることに気がついてしまったが、まだトロイは気付いていない。アースの心は自分に向いていると思っていた、色恋事において破れたことが無かったことが、裏目に出てしまった。
そんなトロイもようやく気がつき始めた、アースとトリプトルが二人でいる機会を多く目にするようになったからだ。アースは誰にでも分け隔てなく笑顔を振りまくと思っていたが、違った。トリプトルへ向けている笑みは、自分へ向けられた笑みとは違う事に気がついてしまったのだ。
親友と、心底惚れてしまった女を見比べトロイは深い溜息を吐く。顔を軽く染めて、トリプトルに寄り添っているアースを見てしまっては何も言えず、トロイは頭をかきながらぼんやりと地面に寝転がった。額には、アースが織ってくれた布。無意識の内にそれに触れ、自嘲気味に笑うしかない。
その夜、トリプトルが訊ねてきた。正直、会いたくなかったのだが部屋に入れないわけにもいかないので渋々ドアを開いて招き入れるといきなり土下座をする。拍子抜けしてトロイは言葉を詰まらせた。床に額を擦りつけ、震える身体で何も言わない親友に、呆れ返ってトロイは溜息を吐いた。
「何なんだ」
「トロイは、親友だ。でも、どうしても譲れない物が出来た、おこがましいが聴いて欲しいことがある」
アースのことだと察したトロイは、すっとぼけようかと思ったのだが土下座している親友に深い溜息を漏らすと長い足を組んでベッドに腰掛け、暫し無言でいた。沈黙を破ったのは、トロイだった。
「アースのことだろ? 何を言いにきた」
一瞬身体を引き攣らせたが、震える声で告げるトリプトル。軽く視線を投げかけながら、トロイは唇を噛んだ。笑みを湛えて。
「愛して、いるんだ。トロイもアースを愛していることは知っている、けれど、どうしても彼女だけは譲れない」
「で?」
「彼女を、オレにくれ。絶対に大事にする、最後まで愛し抜く、トロイの分まで幸せにしてみせるからアースをオレに」
「お前は何を言っているんだ」
仏頂面してトリプトルを見下ろした、恐る恐る顔を上げて二人の視線が交差する。少し機嫌の悪そうなトロイは、眉間に皺が寄っていた。
「オレに断る必要があるのか、アース自身が選ぶのだから気遣いなど要らん。無意味だ。愛した女を最後まで守り抜くのは男の義務なのだから、それもオレに告げる必要なし」
「大事な親友なんだ、だから言っておきたくて」
「……それも、知っている。オレもお前が大事な親友なんだ、祝福するに決まっているだろ」
軽く足で頭部を小突いたトロイは、半分涙を浮かべていたトリプトルを鼻で笑った。喉の奥で笑うと、口笛を吹く。
「アースも見る目がない……オレの方がイィ男なのに。だが、お前もイィ男だ、オレの次だが。
冗談はさておき、万が一にもお前がアースを放棄したらその時は……全力で奪いにかかる。そこだけは了承しとけ」
「手放さない、残念だけどトロイのものにはならないよ」
「へぇ、お手並み拝見?」
火と水の二人、髪の色と瞳の色が同じで双子の様に育ってきた親友。トリプトルは親友の了解を得られたことで晴れ晴れしく、こっそりと袖で涙を拭うと鼻を啜った。
「ごめん、親友だからトロイの恋は応援したかった。けど」
「気にするな、同じ女に惚れたのなら仕方がない。それよりも、手放すなよ? お前にだから譲るが他の男に獲られるのは真っ平だ」
目の前で頷いているトリプトルを見て、半ば呆れ顔でトロイは肩を竦めた。昔から目が離せず、心配だった人物だ。親友だからというのもあるが、落ち込んでいるときは真っ先に手を差し伸べてやりたくなる。そんな男だ。
「だがな、規約がある。惚れているからといって、アースの純潔を奪うような真似は」
「しない、しない! 惑星スクルドを育成してから、正式に婚約を申し込むんだ。冗談言うなよ、オレだって馬鹿じゃないさ。本気なんだ、それくらい我慢できる」
「へぇ、下半身の欲望に忠実な奴だと思ってたが」
「……それ、アースに言うなよ」
挑発的に微笑んだトロイに、トリプトルは舌打ちする苦笑する。徐に懐から何かを取り出したトリプトルは、それをトロイに見せた。光り輝くそれに、軽く頷く。
「紅玉石、成程、火の精霊の守護石」
「そ、これをアースに渡すんだ。手元にこれしかなくてね、母親から貰ったやつなんだけど」
「十分だろ、アースなら何でも喜んでくれる」
「……渡してくる、オレからの愛の証として」
小さく手を振ったトロイに、恥ずかしそうに微笑んだトリプトルは立ち上がると静かに部屋を出て行った。ドアが閉まると同時に、小さな溜息を吐くトロイは、そのままずるりとベッドに倒れ込む。天井を見つめる、唇を噛む。
「幸せになれ、二人とも」
大事な親友と、愛した女が一緒になってくれるのは嬉しいことだ。だが、正直悔しい思いもある。それでも、アースの視線の先が解ってしまった以上はどうにもならない。あんな幸せそうな表情は、初めて見た。
「それでもトリプトル。もしお前がアースを手放すなら、オレが全力で彼女を奪おう」
そうならないことを祈るよ、そう付け加えると強引に瞳を閉じた。
アースの部屋を訪れていたトリプトルは緊張した面持ちでドアをノックし、咳を1つして部屋に入り込む。不思議そうに小首傾げたアースに瞳を閉じるように促す。少し上を向いて瞳を閉じたアースの細い首に、そっとネックレスをかけた。紅玉石の、母からの大事なネックレス。胸元に揺れる、紅色の石。
「いいよ、瞳を開いて」
「……わぁ、綺麗な色! トリプトルの火の色みたい、あったかくて力強くて」
「あげるよ、気に入って貰えるといいけど」
「とても気に入ったよ、ありがとう、ありがとう、こんな素敵なもの……嬉しい、なんて綺麗な色なの。トリプトルの欠片を分けてもらったみたいだね」
想像以上に喜んでもらえたので、緊張の糸が切れた。そのまま真正面からアースを抱き締めたトリプトルは、そっと口付けを交わす。軽く、唇に触れた。確認するようにアースを覗き込むと、アースが腕をまわしてきたので再び口づける。軽く何度も口づける、徐々に音が大きくなり、体重をかけていったトリプトルは、ベッドに二人して倒れ込む。
「アース」
愛おしく名を呼び、頬を撫でながら深く口づける。すっかり慣れてしまったのですんなりと受け入れたアースは、懸命に自ら舌を動かし、互いの唇を貪った。二人の間でネックレスが光を放ち揺れている。
……ずっと、続くと思っていた。
アースという美しく可愛らしい恋人と、頼りになる親友に、物分りの良い第二の親友になりつつある少年。トリプトルは楽園に招かれたようにこの環境に酔いしれた。このまま、四人で、四人でいたい。惑星が完成しても、四人は死ぬまで共に過ごすだろう。揺ぎ無い未来だと、思っていた。アースの手を握り締めながら、信じて疑わなかった。
眉を顰めた男神クリフを他所に、話は進んでいく。口を挟む隙も与えず、淡々と語り続け話が終わった頃にクリフは唇を噛み締めた。嫌な予感がした、胸騒ぎが止まらない。目の前の無表情で立っている男に不気味な何かを感じた、警告音が脳内で鳴り響いていた。
「……以上のことから、光の精霊ベシュタ・ジークリンデを土の精霊アース・ブリュンヒルデが育成している惑星スクルドへ派遣致します。特異な例では御座いますが、議会の一致をもってしてここに可決と致します」
「身に余る光栄、有り難う御座います。しかとお受けいたしました、噂に寄れば有能な土の精霊の惑星とのこと、足を引っ張らぬように誠意努力し、必ずやご期待に備えましょう」
惑星スクルドで、仲の良い四人の精霊達が和気藹々と過ごしていた頃。ついに女神の策略により、アース失脚の罠が送り込まれることになっていた。孔雀の羽で作った扇子を仰ぎながら、口元を隠し狡猾に微笑む女神エロースはあと少しだと身体を震わせる。ベシュタに熱い視線を送り、軽く頷いたエロースに気付かぬフリをしてベシュタは惑星スクルドへと、移動した。
自分の使命は、アース・ブリュンヒルデの純潔を奪うこと。軽く唇を動かし、まだ見ぬその精霊を気の毒に思いつつ、野心の踏み台になることを光栄に思うが良いと軽く見下す。
そんなトロイもようやく気がつき始めた、アースとトリプトルが二人でいる機会を多く目にするようになったからだ。アースは誰にでも分け隔てなく笑顔を振りまくと思っていたが、違った。トリプトルへ向けている笑みは、自分へ向けられた笑みとは違う事に気がついてしまったのだ。
親友と、心底惚れてしまった女を見比べトロイは深い溜息を吐く。顔を軽く染めて、トリプトルに寄り添っているアースを見てしまっては何も言えず、トロイは頭をかきながらぼんやりと地面に寝転がった。額には、アースが織ってくれた布。無意識の内にそれに触れ、自嘲気味に笑うしかない。
その夜、トリプトルが訊ねてきた。正直、会いたくなかったのだが部屋に入れないわけにもいかないので渋々ドアを開いて招き入れるといきなり土下座をする。拍子抜けしてトロイは言葉を詰まらせた。床に額を擦りつけ、震える身体で何も言わない親友に、呆れ返ってトロイは溜息を吐いた。
「何なんだ」
「トロイは、親友だ。でも、どうしても譲れない物が出来た、おこがましいが聴いて欲しいことがある」
アースのことだと察したトロイは、すっとぼけようかと思ったのだが土下座している親友に深い溜息を漏らすと長い足を組んでベッドに腰掛け、暫し無言でいた。沈黙を破ったのは、トロイだった。
「アースのことだろ? 何を言いにきた」
一瞬身体を引き攣らせたが、震える声で告げるトリプトル。軽く視線を投げかけながら、トロイは唇を噛んだ。笑みを湛えて。
「愛して、いるんだ。トロイもアースを愛していることは知っている、けれど、どうしても彼女だけは譲れない」
「で?」
「彼女を、オレにくれ。絶対に大事にする、最後まで愛し抜く、トロイの分まで幸せにしてみせるからアースをオレに」
「お前は何を言っているんだ」
仏頂面してトリプトルを見下ろした、恐る恐る顔を上げて二人の視線が交差する。少し機嫌の悪そうなトロイは、眉間に皺が寄っていた。
「オレに断る必要があるのか、アース自身が選ぶのだから気遣いなど要らん。無意味だ。愛した女を最後まで守り抜くのは男の義務なのだから、それもオレに告げる必要なし」
「大事な親友なんだ、だから言っておきたくて」
「……それも、知っている。オレもお前が大事な親友なんだ、祝福するに決まっているだろ」
軽く足で頭部を小突いたトロイは、半分涙を浮かべていたトリプトルを鼻で笑った。喉の奥で笑うと、口笛を吹く。
「アースも見る目がない……オレの方がイィ男なのに。だが、お前もイィ男だ、オレの次だが。
冗談はさておき、万が一にもお前がアースを放棄したらその時は……全力で奪いにかかる。そこだけは了承しとけ」
「手放さない、残念だけどトロイのものにはならないよ」
「へぇ、お手並み拝見?」
火と水の二人、髪の色と瞳の色が同じで双子の様に育ってきた親友。トリプトルは親友の了解を得られたことで晴れ晴れしく、こっそりと袖で涙を拭うと鼻を啜った。
「ごめん、親友だからトロイの恋は応援したかった。けど」
「気にするな、同じ女に惚れたのなら仕方がない。それよりも、手放すなよ? お前にだから譲るが他の男に獲られるのは真っ平だ」
目の前で頷いているトリプトルを見て、半ば呆れ顔でトロイは肩を竦めた。昔から目が離せず、心配だった人物だ。親友だからというのもあるが、落ち込んでいるときは真っ先に手を差し伸べてやりたくなる。そんな男だ。
「だがな、規約がある。惚れているからといって、アースの純潔を奪うような真似は」
「しない、しない! 惑星スクルドを育成してから、正式に婚約を申し込むんだ。冗談言うなよ、オレだって馬鹿じゃないさ。本気なんだ、それくらい我慢できる」
「へぇ、下半身の欲望に忠実な奴だと思ってたが」
「……それ、アースに言うなよ」
挑発的に微笑んだトロイに、トリプトルは舌打ちする苦笑する。徐に懐から何かを取り出したトリプトルは、それをトロイに見せた。光り輝くそれに、軽く頷く。
「紅玉石、成程、火の精霊の守護石」
「そ、これをアースに渡すんだ。手元にこれしかなくてね、母親から貰ったやつなんだけど」
「十分だろ、アースなら何でも喜んでくれる」
「……渡してくる、オレからの愛の証として」
小さく手を振ったトロイに、恥ずかしそうに微笑んだトリプトルは立ち上がると静かに部屋を出て行った。ドアが閉まると同時に、小さな溜息を吐くトロイは、そのままずるりとベッドに倒れ込む。天井を見つめる、唇を噛む。
「幸せになれ、二人とも」
大事な親友と、愛した女が一緒になってくれるのは嬉しいことだ。だが、正直悔しい思いもある。それでも、アースの視線の先が解ってしまった以上はどうにもならない。あんな幸せそうな表情は、初めて見た。
「それでもトリプトル。もしお前がアースを手放すなら、オレが全力で彼女を奪おう」
そうならないことを祈るよ、そう付け加えると強引に瞳を閉じた。
アースの部屋を訪れていたトリプトルは緊張した面持ちでドアをノックし、咳を1つして部屋に入り込む。不思議そうに小首傾げたアースに瞳を閉じるように促す。少し上を向いて瞳を閉じたアースの細い首に、そっとネックレスをかけた。紅玉石の、母からの大事なネックレス。胸元に揺れる、紅色の石。
「いいよ、瞳を開いて」
「……わぁ、綺麗な色! トリプトルの火の色みたい、あったかくて力強くて」
「あげるよ、気に入って貰えるといいけど」
「とても気に入ったよ、ありがとう、ありがとう、こんな素敵なもの……嬉しい、なんて綺麗な色なの。トリプトルの欠片を分けてもらったみたいだね」
想像以上に喜んでもらえたので、緊張の糸が切れた。そのまま真正面からアースを抱き締めたトリプトルは、そっと口付けを交わす。軽く、唇に触れた。確認するようにアースを覗き込むと、アースが腕をまわしてきたので再び口づける。軽く何度も口づける、徐々に音が大きくなり、体重をかけていったトリプトルは、ベッドに二人して倒れ込む。
「アース」
愛おしく名を呼び、頬を撫でながら深く口づける。すっかり慣れてしまったのですんなりと受け入れたアースは、懸命に自ら舌を動かし、互いの唇を貪った。二人の間でネックレスが光を放ち揺れている。
……ずっと、続くと思っていた。
アースという美しく可愛らしい恋人と、頼りになる親友に、物分りの良い第二の親友になりつつある少年。トリプトルは楽園に招かれたようにこの環境に酔いしれた。このまま、四人で、四人でいたい。惑星が完成しても、四人は死ぬまで共に過ごすだろう。揺ぎ無い未来だと、思っていた。アースの手を握り締めながら、信じて疑わなかった。
眉を顰めた男神クリフを他所に、話は進んでいく。口を挟む隙も与えず、淡々と語り続け話が終わった頃にクリフは唇を噛み締めた。嫌な予感がした、胸騒ぎが止まらない。目の前の無表情で立っている男に不気味な何かを感じた、警告音が脳内で鳴り響いていた。
「……以上のことから、光の精霊ベシュタ・ジークリンデを土の精霊アース・ブリュンヒルデが育成している惑星スクルドへ派遣致します。特異な例では御座いますが、議会の一致をもってしてここに可決と致します」
「身に余る光栄、有り難う御座います。しかとお受けいたしました、噂に寄れば有能な土の精霊の惑星とのこと、足を引っ張らぬように誠意努力し、必ずやご期待に備えましょう」
惑星スクルドで、仲の良い四人の精霊達が和気藹々と過ごしていた頃。ついに女神の策略により、アース失脚の罠が送り込まれることになっていた。孔雀の羽で作った扇子を仰ぎながら、口元を隠し狡猾に微笑む女神エロースはあと少しだと身体を震わせる。ベシュタに熱い視線を送り、軽く頷いたエロースに気付かぬフリをしてベシュタは惑星スクルドへと、移動した。
自分の使命は、アース・ブリュンヒルデの純潔を奪うこと。軽く唇を動かし、まだ見ぬその精霊を気の毒に思いつつ、野心の踏み台になることを光栄に思うが良いと軽く見下す。
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めも
「だぐー!」
部屋に響き渡る声、背には色鮮やかな夕日を受けて立っている男。元・魔王リュウ、その人である。
「返せ、それはオレがアサギから貰ったものだ」
対して、こめかみを引きつらせながら静かに言い放ったのは、今にも背の剣を引き抜きそうなトビィ。……の、中間でアサギが狼狽している、まさかこんなことになるとは思わずに項垂れた。
リュウの手元には、涼しげな硝子の器に容れられた瑞々しく光る苺が数個。脇にあるテーブルには、空の同じ入れ物が置いてある。
「お前は苺をもう食べただろう? それはオレのだ」
音も立てずに、トビィが剣を半分ほど引き抜いた。小さく悲鳴を上げるアサギと、そっぽを向くリュウ。
「全宇宙の苺は、私のものだぐー!」
「苺で喧嘩は困ります」
わたわたと中間で手を振って緊迫した状況を打破すべく取り繕うアサギだが、両者は引かない。
「苺は問題じゃない、”アサギがオレにくれたものを横取りされるのが”腹立たしいだけだ」
「ぐー」
目に痛いくらいの眩しい夕日が部屋に差し込む、アサギの涙声も無残についにトビィが剣を引き抜いた。大きな口をあけて一気に苺を飲み込んだリュウは銀髪を靡かせて、にっこりと微笑むと窓から夕陽に向かって飛び出す。
「あっはっはー! まともにやり合うのは面倒だぐー」
「……食いやがったっ」
態度が癇に障ったのだろう、トビィも飛び出した。静まり返った室内で、取り残されたアサギは一人、呟く。
「お、大人気ないのです……」
元・魔王と惑星最強のドラゴンナイト、時折こうして一戦交えているのだが、知っている者は多くない。
「というか、あの、ここ、私の部屋なのですけど」
勇者は嘆いた、はためくカーテンを眺めながら。
部屋に響き渡る声、背には色鮮やかな夕日を受けて立っている男。元・魔王リュウ、その人である。
「返せ、それはオレがアサギから貰ったものだ」
対して、こめかみを引きつらせながら静かに言い放ったのは、今にも背の剣を引き抜きそうなトビィ。……の、中間でアサギが狼狽している、まさかこんなことになるとは思わずに項垂れた。
リュウの手元には、涼しげな硝子の器に容れられた瑞々しく光る苺が数個。脇にあるテーブルには、空の同じ入れ物が置いてある。
「お前は苺をもう食べただろう? それはオレのだ」
音も立てずに、トビィが剣を半分ほど引き抜いた。小さく悲鳴を上げるアサギと、そっぽを向くリュウ。
「全宇宙の苺は、私のものだぐー!」
「苺で喧嘩は困ります」
わたわたと中間で手を振って緊迫した状況を打破すべく取り繕うアサギだが、両者は引かない。
「苺は問題じゃない、”アサギがオレにくれたものを横取りされるのが”腹立たしいだけだ」
「ぐー」
目に痛いくらいの眩しい夕日が部屋に差し込む、アサギの涙声も無残についにトビィが剣を引き抜いた。大きな口をあけて一気に苺を飲み込んだリュウは銀髪を靡かせて、にっこりと微笑むと窓から夕陽に向かって飛び出す。
「あっはっはー! まともにやり合うのは面倒だぐー」
「……食いやがったっ」
態度が癇に障ったのだろう、トビィも飛び出した。静まり返った室内で、取り残されたアサギは一人、呟く。
「お、大人気ないのです……」
元・魔王と惑星最強のドラゴンナイト、時折こうして一戦交えているのだが、知っている者は多くない。
「というか、あの、ここ、私の部屋なのですけど」
勇者は嘆いた、はためくカーテンを眺めながら。
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